大変、励みになります。
では、本編です。
────サクタロウ宅。
「……んっ……んぅ……?」
身体が少し痛い。特に……お股が。
腕や太腿、首筋にキス跡や噛み跡……マリーの身体全体がマーキングされた感じ。
「んっ………あれ?」
むくっと起き上がって、濡れたシーツに思いを馳せながら周りを見渡すと、窓から差す朝の光が見えない。少し薄暗く、夕暮れを思い浮かばせる様な景色。
時間を見る。今は……19時を周ろうとしていた。
「そっか……私、彼と朝からお昼過ぎまで、ずっと……~~~~っ!!」
くしゃっと布団に顔を埋め、羞恥で赤くなるのを抑えようとする。
だがそれは無意味な抵抗で、その布団から匂う『彼と彼女の体液』と云った、何とも興奮の起爆剤に成り得る匂いが染み付いて、現実から逃がしてはくれない。
そう、この二人はヤッたのだ………付き合って数秒で、だ。
「何だか、展開が早過ぎて、何だかっ………~~~っ……!」
色々と思い出す。乱れて、淫らに乱れ、彼に全てを預け、捧げ、狂う様に、獣のように……愛し合った。
「……きもち、よかった……」
不意にそんな呟きが漏れる。
正直、気持ち良かった。最初は初めて故、やはり痛みは感じた。血も少量ながら出た。
それでも彼は慣れた手順で、マリーのペースに合わせてくれた。
お陰で最終的には想いやら何やら色々と溢れ出て、気付けばもう7時前だ。何時寝たのか、少し思い出せないが、きっと長い時間繋がっていたのだろう。
「……あれ?そういえば、サクタロウさんは……?」
思えば彼が居ない。
何処に行ったのか、居間だろうか?それともトイレ?何だか静かすぎて家に居るのか分からなくなる。
……もしかして、外に?
そう思ったら、急に不安になってしまった。なんでだろう、でも今は傍に居てほしい。
瞬間、マリーはベットから完全に身を起こそうとして、立とうとした……だが。
「っ!きゃっ……!!」
”ドサっ……!”
マリーはガクンと膝を曲げ、床に手を着く。
足腰に力が入らない。身体全体が少しだけ怠い。
「うぅ……サクタロウさん、やりすぎですよっ……」
身体中に有る彼の噛み跡やキスマークの印。
少し痛いお股や足腰に力が入らない怠さ。
マリーの気を遣っていたとはいえ、行為中は完全にサクタロウのペースだった。
後半に関しては容赦が無かった。転んだ先にあるごみ箱の中にはティッシュと、ゴムがあった。
コンドームの数は…ざっと6個。あれが本来、このナカに出されていた筈の彼の体液。
……イケナイ感情が芽生える。だが何とかシスターとしての精神で自制する。
そう思っていた時だった。
”ガチャっ”
「んッ……マリー、大丈夫か」
「あっ……サクタロウさん」
寝室のドアが開く。
そこにはサクタロウが佇んでいた。
良かった……ずっと此処に居たんだ。
彼の存在がマリーに安堵を覚えさせる。
サクタロウはマリーが床に這いつくばっている様子に、即座に駆け寄る。
「マリー、余り無理をするな。身体全体が痛い筈だ。身体も真っ裸だしよ……倒れた拍子で何処か痛む場所は?」
「あ、いえっ!何処もお怪我はしてないので大丈夫です!……身体は彼方此方が少し……」
「そうだろうな。俺もらしくなく刻み過ぎた。すまなかったな……ふんッ」
「ひゃっ…!あっ……えへへ、ありがとう御座います」
サクタロウはマリーにコートを掛け、そのままお姫様抱っこを行う。
マリーは少し恥ずかしい気持ちに成るが、それよりも彼の気遣いが凄く嬉しくって堪らなくなる。
「ベットの掃除とかしなきゃだから、マリーは居間のソファーで寝かせるぞ。身体が落ち着くまで横に成っていろ」
「すみません、サクタロウさん……本当は私がよ、汚してしまったのに……何も出来ない何て……」
「気にするな。お前の乱れっぷりは俺も楽しめたしな、シーツの染みは男からしたら勲章でもある。まぁつまり俺は嬉しいから気にするなって事だ」
「な、何だか恥ずかしいですよ~……っ!」
そう言いながら、サクタロウはマリーと会話をして、ソファーに優しく寝かせる。
体が冷えぬよう毛布を被せ、そのままキッチンに向かい、コップに水を入れる。
「マリー、飲めるか?」
「はい、ありがとう御座います」
コク、コク、コク……小さな口で水を飲む。
喘いで、咥えて、また喘いで……マリーは小柄ながらも、彼の大柄で長硬なブツを何とか扱いたのだ。直ぐに敗北したが、初めてとは思えないマリーの扱いに、サクタロウは逸材だと感じたほど。
話が逸れたが、マリーは口内を少し酷使した。サクタロウはマリーの体調が心配だったが、この様子を見るに杞憂だと思う。
「初めてなのに、まさかお前の口を使う事になるとは思わんかった。最高だったが、嫌じゃなかったか?」
「んッ!……い、嫌ではありませんでした。寧ろ貴方が喜んで頂けたから、それで嬉しかったですし。あ…で、でも、だ……出す時は言って下さいね?」
「あ?いや、イッタが……」
「そ!そういう意味じゃなくてですね!?え、えぇっと……お口に出す時は、ちゃんと出すと事前に言って下さいって事ですっ……イキナリお口に出されちゃうと、その、溢れて零れちゃうので……」
「……お前ってつくづく不埒だよな」
「ふ、不埒じゃないです…っ!」
いいや不埒(確固たる意志)
男の情緒をこれでもかと擽るマリー。サクタロウの強度な精神力で無ければ、また襲われていたかもしれない。何とも危ない子だ。
サクタロウはマリーの頭を撫でる。
「その状態だと後1時間は足腰が疲労で立てないかもな。お腹空いただろう、今日はデリバリーを頼むが、何か食べたい飯はあるか?」
「あっ……え、えっと…」
「安心しろ。俺も食う。お前と食う飯だから良いんだ、お前は何も気にしなくて良い」
そう云われても、何とも難しい話だ。
確かにお腹は空いている。それに何だか今日はデリバリーを頼みたい気分だ。
でも、サクタロウは……味覚が無い。彼は気にするなと言っているが、マリーはどうしても気にしてしまう。人の痛みを理解出来る女の子だからこそ、難しいのだ。
サクタロウはマリーの心情を察したか、とある記事が掲載されているスマホの画面を見せる。
「これ、今日はカゲムシャハンバーガーのセットとウルトラチーズバーガーのセットが10%オフで販売されている。昔食った事があるが、美味かった記憶がまだある食いモンだ」
「え?あ、本当だ……美味しそうですね」
「そうだろ?あー……い、一緒に食わないか?コレ」
「……ッ!」
本音を伝えた。それはマリーにとっても衝撃的なことだった。
だが直ぐに意図を察知する。マリーは……二つ返事で応える。
「はいっ!一緒に……私と貴方で食べましょう!」
「っ!よし…あ、いや、分かった。あーっと……じゃあこの二つで良いか?」
「はい、大丈夫です!あ、私コレ食べてみたいです」
「カゲムシャバーガーか、分かった。じゃあ俺はウルトラチーズバーガーにしよう……ポテトはSとMとLがある。ジュースも何が良い」
「ポテトはMで、ジュースは……では野菜ジュースのMでお願いします」
「了解した。じゃあ俺は……全部Lで、ジュースはコーラで良いか」
サクタロウがポチポチとスマホを操作し、デリバリーを注文する。
「よし……これで10分もすれば来るだろう。此処から店の距離は近いからな」
「ありがとう御座いますサクタロウさん!で私のバックから財布を出して、お金を……」
「いや、いい。今回は俺の奢りだ」
「え?い、いえいえ、それは駄目ですよ。ちゃんと私の分は払わせていただきまs」
「必要ない」
「…………」
「……そんな目をしてもコレは譲らんぞ。俺が奢るっつったら奢る」
「うぅ……はいぃ…ありがとう御座います」
「それで良い。今回は俺の自制が効かなくてお前に負担を掛けてしまった、その償いと思ってほしい」
「サクタロウさん…………(気にしなくても良いのに)」
マリーはそう思うも、口には出さない。
彼が自分の為を想っての行動だと知れば、どうも否定が出来ない。彼は変わろうとしている、それを気にしなくて良い何て、思っても口には出せなかった。
……そういえばと、マリーがふと思った事を告げる。
「サクタロウさんって、偶に頑固なところがありますよね」
「………あぁ?」
「ひぃ!……す、すみません、お気に触るような事を言ってしまいました……」
「…………だよ」
「え…?その、何と仰いました……?」
「お前だけだよって、言ったんだ……二回も言わせるな」
「え?私だけ?」
「……ふんッ」
サクタロウはぷいっと、そっぽを向いてしまう。
彼の性格はどちらかと云えばツンツン系だ。マリーは彼の性格は理解しているつもりだが、何で自分にだけ?と、少し思ってしまう。
「私だけなのは、教えて頂けたり……?」
「何で言わなければならない」
「えっと、その、気になってしまいまして……」
「………」
「あ……い、いえ!全然お教えにならなくても大丈夫ですよ!不躾でしたね、申し訳御座いません…」
「……惚れた女には」
「へ?」
サクタロウがマリーの顔を見据えながら、告げる。
「────惚れた女には、楽にさせてやりたいんだよ……そんな事言わせんな」
「あっ…~~~っ!」
顔がボッと赤くなる感覚。
彼は時折こういう事を言ってくる、本当に、ずるい人だ。
「あり、がとうございます……そのお気持ちは、本当に嬉しいです…っ」
「そうかよ……」
「で、でも!私だって貴方には無理をしてほしくありませんっ……な、なので、これからは一緒に折半していきましょう?」
「……あぁ、分かった。そうしよう」
でも、やっぱり無理はさせたくなかった。これは性分だ。
サクタロウはマリーの言葉に少し考え、頷く。
一人が頑張って、一人が楽をする。
それは対等な【恋仲】とは言えない。マリーは自分だけが楽をするなんて真っ平ゴメンな女の子だ。サクタロウもそれは分かっているのだが、だからこそマリーを甘やかしたい気持ちがあった。
何とも、まぁ、少し甘酸っぱい光景だ。
互いを知っていく過程と云うのは……本音を伝えるのが一番手っ取り早いのだろう。
”ピンポーン”
『出前でーす』
「む…来たか。少し出て来る」
「はい、ありがとう御座います」
意外と長く話し込んでいたのか、時刻は10分を過ぎ、出前が届いた。
数分後、サクタロウが袋を持って居間に戻って来る。
「ふぅ、さて食うか。マリーは確かカゲムシャセットだったよな?」
「はいっ!わぁ、美味しそうですね!」
「あぁ、そうだな……随分と楽しそうだな、そんなに食いたかったのか?」
「ふふっ、私こういったジャンクフードは偶に食べたりするので、この新商品が結構楽しみだったり!」
「ふぅん、そうか……ジャンクマリー」
「太るぞって言いたいんですか!?」
「あぁ、だが太るマリーも、俺は愛そうと思うよ」
「ふ、太りません!でも…愛してくれてありがとう御座いますっ!」
「ふんッ……」
「……どんな貴方も、私は愛しますよ?」
「ッ……勝手に…いや、ッ……クソっ」
「あ、照れました?」
「照れてない」
「ふふふっ、そうですか」
マリーは意外とお茶目な所がある。
こうして素直になれない彼に、時折いじっちゃう。
だが彼はそんなマリーのいじりが……何だか、妙に悪くない感覚だった。
そうして、マリーとサクタロウはハンバーガーを食べていく。
サクタロウは食べる時も無表情で、相変わらず味はしないが、マリーの美味しそうな表情を見て……粛々と食べ進めていく。
「ん~!美味しいです!」
マリーは小さな口でパクパクと食を進めていく。
自分とは対照的な、小柄な体躯。
大きい口で食う自分は、気付けばもうポテト数本だった。
マリーを見ながら食べていた。そしたら、これだ。
「(……この光景がずっと見れる。マリーが笑い、喜び、ずっと傍に居る。俺からしたら新鮮なこの光景は、マリーからしたら普通の光景。そう、普通…………悪く、ないな)」
口内の中で広がる、味のない……砂や泥を食べている感覚。
気持ちが悪い。
ハッキリ言って、味覚が無くなってから食事をした事は極少数だ。
誰に誘われても、忙しいと言って断っていた。
マリーに誘われ、最初は断ろうとした。
だが必死なマリーに目が離せず、つい共にクッキーを食べた。
気持ちが悪い。
結局、味覚が無いと何も感じなくなる。
感情が分からなくなる。
今すぐ吐き出したくなる。
────気持ちが悪い。でも、今はそれ以上に……嬉しい。
「ん?わっ……サクタロウさん、もう食べ終わっちゃったのですか?」
「あ?あぁ……思いの他、食い易かった。お前はゆっくり食っていい」
「そうですか?ふふっ、分かりました!」
そんな事、絶対に言わないが。
言う必要が無いし、それに……何か言いたくない。
マリーは自分の事をツンツン系と言っていた。妙に的を得ていて、言い返せない。
……好きな子の前では、素直に成れない。典型的なツンデレが完成されていた。
▽……数十分後。
「────申し訳御座いません、サクタロウさん……お掃除、手伝てなくって」
「気にするな。掃除は嫌いじゃないからな」
「サクタロウさん……ふふっ、本当にお優しい御方ですね」
「ふんッ……」
少し経ち、二人が夕食を食べ終える。
サクタロウとマリーは共に風呂に入り、身を清める。まだ身体が思う様に動けないマリーは至る処をサクタロウに洗って貰っていた。羞恥の極みだが、それ以上の事を済ましているから、もう何でも良かった。
サクタロウはマリーをソファーに横にした後、寝室のベットのシーツを洗濯機に入れる。換気を終え、歯を磨き、寝室の掃除が終われば気付けば9時過ぎ。
マリーを確認しに行けば、微弱だが歩ける程度にはなっていた。
そのまま二人は歯を磨き、そして……今は綺麗な状態のベットに居る。
「それよりも、俺が此処に居て良いのか。1人用のベットだから狭いだろう、それに俺は無駄に幅を使うしよ」
「何を仰いますか!此処はサクタロウさんのお家ですよ?本来ならば私がソファーで寝るべきです!」
「ふざけんな。なんで俺がお前をソファーで寝かせなきゃならん」
「では、一緒に寝て下さい!それで解決です」
「……そうだな」
何だかマリーの掌の上でコロコロと転がされてる感覚。
別に嫌では無いが、一応こちらの方が年は上だ。経験も。
妙に悔しい。だが、まぁ……偶には、こういうのも良いのかもしれない・
新鮮な感覚。サクタロウはこの感情の名前を知らないが、心地良い事は、確かだと知った。
「………あ、あの、サクタロウさん」
「ん?なんだ」
少し会話に華を咲かせると、ふと、マリーがおずおずと謂った様子で問い掛ける。
サクタロウが疑問に思うと、マリーは……少し間を淹れ、発語しちゃう。
「その……きょ、今日の、えっ………えっち…の事で、お聞きしたい事があ、ありまして……」
「エッチ?あぁ、なんだ?これからの事だ、良い事だったり嫌なことだったり、言いたい事は何でも言え」
「あ、いえ!その、サクタロウさんとの行為は、そのっ…本当の本当に、気持ち良くって、すごくてっ……毎日したい位には、好きに成ったので!嫌なことは一切ないのですが!その、ですね……」
「お、おう…」
サクタロウがマリーの言動にムラムラするが、マリー自身なんか気付いていない様子なので、一旦それは無視する。
マリーがすぅ~…と、息を吸い、息を吐き、告げる。
「────サクタロウさん、素人な私から見ても、その…とっても御上手で、キスもスムーズで……その、もしかして………サクタロウさんは、もうそういった御経験が、あるのかな~と…思いまして」
「………あぁ、あるよ」
瞬間、マリーの中で確かな軋みが生じる。
そう、マリーは彼が経験者だと思いながらも、真実を聞きたかったのだ。
マリーとて淑女である前に乙女だ。彼の初めてに成りたい欲は、マリーの中で渦巻いていた。
否定に期待するも、だが返って来たのは、肯定の頷き。
マリーはキュっと心が痛みが走る。
いや、それは虫が良い話。それに分かり切っていた事だ。
「あっ……そ、そうですよね!あ、あはは……」
「一応言うが、今迄の行為は全て【仕事】だぞ。恋仲になったのはお前が初めてだ」
「え?え、へ……仕事?」
察したサクタロウが、即座に言を投げる。
だが妙な単語が入っていた。仕事…?
マリーが疑問に思うと、サクタロウが続けて告げる。
「俺が14とか15の頃か、風紀委員に入る前は傭兵をしていた時期があったんだ」
「あっ…あの日記にも書いてあった……」
「あぁ、そうだな。カイザー……そのPMCの雇われ傭兵として、俺は活動していた。身を削り、武を習い、極め、殺し合い、潰して潰されて、瓦解して、破壊して殲滅して………地獄だったのは間違いない。当時から俺は不死性が顕著に表れていて、睡眠も必要無かったから不眠不休で働かされたな」
「っ……」
彼が話す言葉はどれもこれも聞くに堪えない裏の話だった。
カイザーの下で働いていたのは知っていた。あの日記を読んだからだ。
そのどれも凄惨だったのは、記されてはいなかったが、直感的に理解はできた。
それが今こうして彼の口から聞ける。怖くて苦しくなるけど、自分が問うた事だ、聞かなければならない。
「そんな中で俺は隠密や情報戦、破壊工作が得意でな。まぁ工作員……スパイ的な任務がかなり多かった。そうなってくると、まぁ、俺は都合の良い男だ。キヴォトスで唯一の人型の男子生徒、自慢じゃないが無駄に大きいガタイも相まって、裏社会の重鎮からは最悪な事によく使われたな」
「それって……」
「言っちまえば【性道具】だった。10代の女から、
最早、言葉に出来なかった。
始めては自分が良かったなんて、軽い話だった。
彼は非常に大きな闇を抱えていたのだ。それはレイプだ、人道に反する愚行。
マリーは口元に手を添え、悲観な想いを覚える。
だが、サクタロウが告げる。
「あぁ、だがマリーと性行為をするのは好きだぞ。いや、好きに成ったと謂うべきか」
「え……ん?」
「好きでも何でもない女とヤルより、マリーとヤッた方が100倍は気持ち良かった。これは否定しない。なんせ、6発とお前の口内に出した1発、合計7発をたった1日で出したのは初めてでな。仕事の時は事務的に1発で終わらせていたのに、お前には自制が難しくなった……まぁ、そういう事だ」
「あっっ………あぁぁぁあ……~~~!!!」
カアァァ~っ…と、全身が真っ赤に染まる。
言葉の全てに想いが乗り、マリーに襲い掛かる。
彼は本音を喋った。結構センシティブな内容ではあったが、包み隠さずに話した。
だめだ、恥ずかしいっ……でも、すっごく嬉しい…っ!
そんなごちゃごちゃな感情がマリーを襲う。情緒を破壊してくる。
「ふぅ……耳まで真っ赤だな、こういうのを可愛いって言うんだろうな」
「ひゃあっ!?きゅ、きゅうに、そんなっ……あうぅ!」
「モフモフ、いやスベスベ?猫耳の獣耳は滑らかで綺麗だな。マリー、可愛いな、お前は」
「ひゃうぅ!……は、はずかしい、ですよぉ…っ」
「……ふんッ」
「きゃっ!」
”ドサ……”
サクタロウがマリーを優しく押し倒し、一緒に横に成る。
マリーの視線の先には、サクタロウの胸板がある。
猫耳を弄り、その次に頭を撫で、そして……ギュっと抱きしめる。
そんな彼に、少し珍しさを覚えるマリー。
ちょっと強引だ。全くもう……と、甲斐甲斐しい想いを馳せる。
「あうぅ……もう、強引なんですからぁ」
「それの方が好きって言っていたのは、どこの誰だったかな」
「っ!……いじわる、しないでください……」
「ごめんな、まぁ、アレだ。好きな女にはイジワルしたくなるってヤツだ。許してくれないか?」
「んっ!もうっ………サクタロウさん」
「なんだ」
マリーが、告げる。
どうしても、聞きたい事を。
「もう……他の女性には、そういう事……しない、ですよね?」
「あ?当たり前だろ。俺を何だと思っているんだお前は」
サクタロウはマリーの頬を片手でプニプニさせ、左手で猫耳を摘まむ。
ちょっとムカついた。信じられていない感じがして、少しマリーに仕置きを加える。
そしたら、ひゃ~っといった様子で、マリーは可愛らしい悲鳴を上げる。
「はうぅ、ごえんなさいぃ~……あうっ………その、どうしても気になってしまいまして…」
「不要な心配を……俺は、もうお前しか居ないんだ。どちらかと云えば、お前が俺の傍から離れるんじゃないかって怖いんだが」
「そっ!そんな事、有り得ません!絶対絶対!ぜーっていに離れませんから!」
「それと一緒だ。マリー、お前と俺は同じ思いを抱いている」
「あ……た、確かにです」
「────だがそれも、余計な心配をさせた俺が悪いな……不安にさせて、悪かった」
「あ、謝らないで下さい!それこそ、私が……」
「いや、俺が………むぐっ」
マリーがサクタロウの唇に人差し指を押し、謝罪を発する事を禁ずる。
「そ、それ以上謝り続けたら、いくら私でも怒っちゃいますよ!」
「……だが」
「私はもう不安に感じません。それに……決めた事があります」
「なに?……決めた事?」
「はい!それはですね────私が上書きしちゃえば良いんです!」
「……は?」
それは、思ってもない発言。
サクタロウは頭が真っ白に染まるが、マリーは続ける。
「サクタロウさんが昔の女性を忘れる位、私がこれから上書きしてしまえば良いんです!」
「………」
「そしたら、貴方はずっと、わ、私を見て………────むぐっ!?」
「っ……ん、んっ…」
サクタロウがマリーに口づけを。
少し強引に、10秒程度の接吻を。
ピクピクと、マリーが身を震わせ、身体がふわっと浮く様な感覚に成る。
「んっ!んぅぅ………ぷひゃっ!は、はっ…はぁぁ……っ」
「ふぅぅ……良くもまぁ、此処まで情緒を狂わせてくれる」
「さ、サクタロウ、さん…?」
「上書き、か………────ぷっ!くふっ、ハハハ、ははは……ツ」
「え────」
マリーの瞳に、とんでもない光景が見映る。
それは……何と、サクタロウが……笑ったのだ。
マリーと共に練習した、あの笑顔の顔で……笑っている。
「ははっ、ははは……ん?どうした?マリー」
「さ、さ…サクタロウさん、あ……わ、笑って…っ!」
「あ?………あ、確かに」
「うそ、うっ…あの仏頂面で、怒った表情しか見せなかったサクタロウさんが、こんなに綺麗に、笑って…っ!」
「む……マリー、泣いているのか?」
マリーがポロリと泣く。
仕方のない事だった。あの無を極めて、能面そのものだった男が……こうも爽やかに笑うとは、思っても居なかったからだ。
「だってっ……嬉しい…っ!」
「な、泣くなよ……ほ、ほら。こうやって………あれ、どうやって笑ったっけ」
「あっ……っ!………ふふっ!練習したから、出来た事。もう一度復習しましょっか!サクタロウさん、こうやって……にこーっ!って感じで笑うんですよ!」
「指は、使わない方が良いか。あっと……にこーっ」
「おっ、んっ!ふふっ!さっきと違って、何だかニヤケ面って感じです。それもまた素敵ですが、やっぱりさっきの笑顔が100点満点でしたので、もう一度見たいですね……」
「……俺って、笑えるんだな」
サクタロウが、ふと、自分の頬を触る。
寝っ転がりながら、互いに視線を合わせて、ムニムニと触る。
「マリー、俺って表情筋が硬い部類だとは思ってたんだが……もしかして、そうでも無いのかな」
「きっとそうなのでしょうね。ただやり方が分からないだけで、それが理解出来れば感情も合わさって、きっと上手く表情を作る事が出来ますよ!」
「感情に、表情……何だか、マリーには貰ってばかりだな」
「いえいえ!そんな、私だってサクタロウさんからは頂いてばかりで……」
「……マリー」
「え?……ひゃっ……あ、サクタロウ、さん?」
サクタロウがマリーの胸元に顔を埋める。
華奢な体躯で、ふっくらと張りのある胸がサクタロウの顔に当たる。
「………一度でいい、頭を、撫でてはくれないか?」
「っ!……えぇ、何度でも」
サクタロウの頭を、マリーが撫で付ける。
甘えた事のない彼の、精一杯の甘えだ。
愛を知らぬ子供……マリーはサクタロウの生い立ちを知ってしまい、彼の本質を理解した。
彼の性格は基本的にはツンツン系だ。だからきっと、これは最後の甘えなのだろう。
本当に、本当によく頑張ったと思う。
マリーは心の中でそう思いながら、彼を甘やかす。
「っ……も、もういい。十分、だ」
「あら、もう宜しいのですか?」
「いい……俺の性分じゃない。ちょっと、甘えたかっただけだ……」
「ふふっ!分かりました。でも甘えたくなったら、何時でもきてくださいね?」
「……ふんッ」
「ひゃっ……ん、んぅ……っ」
「小娘が、誰にモノ言ってる。お前だって甘え慣れていない癖に……次は俺がお前を甘やかす」
「あ、んっ……ふふっ………不器用なんですから」
「聞こえているぞマリー。舐めているな?仕置きだ……」
「あうぅっ!み、耳は、弱いんですよぉ…!」
「だから仕置きだって言ったろ。お前の耳が性感帯な事はよく知っている、流れでイっても構わんぞ」
「っっ!!!」
そうして、夜の10時……ゲヘナの寂れたアパートで。
トリニティの聖女と、ゲヘナの狂人による……何とも見てられない触れ合いがまた、行われたのであった。
▽────数日後。
────シャーレ:執務室
「────榊サクタロウ……ゲヘナ学園【”元”風紀委員会】の生徒。風紀委員では破壊工作と隠密捜査で一躍を買って出て、縁の下の力持ち的な立ち位置だった。気付けば敵の懐に入り、組織を瓦解させ殲滅するその躊躇のなさは風紀委員会に新しい風を吹かせたとされ、次期副委員長候補として推薦されていた中での電撃引退……巷では【ゲヘナの狂人】に加え、裏社会では【ゲヘナ学園の
「いいえ!あの子には私も感謝していますから!でもここ数ヶ月アビドスに来てなくって、少し寂しいです……連絡もしてくれなくって、それで急に風紀委員会を引退して……サクタロウ君は仏頂面で感情も読めなくて難しい子で、でも立派に生きていける子だとは理解しているんですけど、やっぱり心配です……」
「そうだね……────うん、ちょっと会ってみようかな。アロナ……え?…うん…………そっか、分かった。よし!行くよユメ!」
「え……あ、ちょっ先生!?何処へ!?あ、ま、待って下さいよ~!」
次回は遂に邂逅を果たします。
え?ちょっと待て?何か居るぞ?はて……?
誤字脱字、感想お待ちしています。