ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか 作:救護騎士団オラリオ支部
凶悪なモンスターが蠢く魔窟。
多くの冒険者が挑み、そして散っていった死地。
祖父の言っていたような“出会い”を求めてオラリオを訪れ、
ようやく恩恵を授けてくれる神様に出会い、冒険者となってダンジョンに足を運ぶ。
手に持つのは、ギルドから支給された頼りない剣一本。
いずれは幾度もレベルアップを重ね、強大なモンスターを相手取り――
その背後には守るべき美少女。
そんな“ありもしない未来(妄想)”を望んだ代償だろうか。
『ヴモォオオォォォォオ‼』
僕は――“死”そのものに追われていた。
ミノタウロス。
それが、目の前に立ちはだかる死そのものだった。
こんな階層にいるはずがない。
レベル1の僕では到底敵わない、化け物。
逃げるしかない。
足が動く限り、ただ前へ――
足を止めた瞬間、命を喰い尽くされる。
「……ごめんなさい、神様」
脳裏に浮かぶのは、ただ一人の神様。
僕を優しく迎え入れてくれた恩人。
きっと今頃、アルバイトに精を出している頃だろう。
確か、もう一人眷属の人がいるって言ってたっけ。
なら、僕がここで倒れても、その人がなんとかしてくれるだろうか。
『ヴオオォォォォオ‼』
雄たけびとともに床が割れ、亀裂が走る。
攻撃は避けたが、足がはまり転倒する。
口の中に広がるのは、血と土の味。
壁に叩きつけられ、顔を上げた瞬間――
“死”は、そこにいた。
――あぁ、結局、僕はここで。
走れない。
――いやだ……。
立つことすらできない。
――いやだ!
逃げられない。
――いやだ!!
僕は、“英雄”になんてなれなかった。
目の前でミノタウロスが拳を振り上げる。
拳が振り下ろされ、思わず目をつぶる。
――あぁ、これで終わりか。
なんて滑稽な人生だっただろう。
英雄どころか、これじゃ道化だ。
そんなことを思いながら、最後の時を覚悟した――その時。
『ガキンッ!』
金属を打ちつけるような音が響いた。
「大丈夫ですか?」
目を開けると、視界に映ったのは巨大な盾。
左腕に装備されたそれが、ミノタウロスの拳を受け止めている。
「命に関わるほどの怪我はないようですね。でしたら、こちらを優先します」
透き通るように澄んだ声。
凛とした、けれどどこか温かい声。
妖精の歌声のように心を震わせる声だった。
その声の主は右腕を構え――
「救護!」
ミノタウロスの腹部めがけ、拳を突き出した。
ただそれだけで、ミノタウロスは声を上げる間もなく塵と化した。
「もう、大丈夫ですよ」
安心を促すような声。
ローブとフードに包まれた全身。
そこからわずかに覗く蒼い髪と、翠の瞳。
全容が見えずとも、美少女だとわかる。
「ぁ……」
「あの……どこか具合でも悪いのでしょうか?」
その美しさを理解した瞬間、心臓が爆発しそうになった。
無意識に背を向け、走り出す――
「ああぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!?」
「救護!」
「ぐぇ⁉」
……殴り飛ばされた。
いや、救護って何⁉
「落ち着いてください。大丈夫です。貴方を害するものは、ここには何もありません」
「あ、え、え?」
「怪我も既に完治しているはずですが、痛むところはありますか?」
いや、今のが痛いんですけど!?
でも体を確認すると――
ミノタウロスにやられた傷まで、治っていた。
「な、治ってる? なんで……」
「軽傷でしたが、怪我をしていたようなので治療しました」
あの一瞬で?
詠唱もなかった。ポーションの使用も感じなかった。
どうやって……?
「この階層にミノタウロスがいるなんて聞いたことがありません。被害が出る前に助けられてよかったです」
「あ、あの、あなたは?」
少し考えるように沈黙し、彼女は言った。
「申し訳ありません。私は名乗ることができない事情がありまして」
「あ、そ、そうなんですね。ごめんなさい……」
「いいえ。謝るべきは、然るべき礼を欠いている私のほうです」
――悪い人では、ない。
言葉の端々に、誠実さが滲んでいた。
「僕は、ベル・クラネルっていいます」
「ふむ。ベルさん、ですね」
彼女は僕の体を確認するように目を通し、ふっと微笑んだ。
「もう大丈夫なようですね。見たところ、冒険者になって間もないご様子。ここは五階層――少し潜りすぎです。今日は引き返して、浅い階層を探索なさってください」
「は、はい。ごめんなさい」
「素直に聞ける方なら、“救護”の必要はありませんね」
そう言って、彼女は立ち上がり背を向けた。
僕と同じくらいの背丈なのに、その背中はなぜかとても大きく見えた。
「それでは、仲間のもとに戻りますので――」
「ミネ~!」
ダンジョン内に響く声。
赤髪の少女が、彼女に勢いよく抱きつく。
「ミネ~! 探したんだから! いきなり走り出すからびっくりしたのよ!」
「アリーゼさん! ダンジョン内で名前を呼ばないでください!」
ミネ――それが、彼女の名前。
赤髪の少女が叫んだその名を、僕は忘れないだろう。
「ベルさん、その……私の名前は、できるだけ秘密にしていただけると」
「あ、ミネさんっていうのは本名なんですね」
固まるミネ。
凛とした雰囲気の奥に、意外な抜けっぷりを見た気がした。
「……くれぐれも、よろしくお願いしますね」
どうやら押し通すつもりらしい。
最初の威厳はどこへやら、だ。
「アリーゼさん、皆さんのところに戻りますよ」
「ちょ、引っ張らないでミネ~! 自分で歩けるから~!」
「だから、名前を呼ばないでください!!」
――僕にとっての“出会い”は、嵐のように訪れ、嵐のように去っていった。
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「アリーゼ・ローヴェル氏の情報?」
「はい。アストレア・ファミリアの団長ですよね」
ダンジョンから出てすぐ、ギルドを訪れた。
助けてくれたミネさん――いや、彼女の仲間であるアリーゼと呼ばれた少女を調べるためだ。
ミネさん本人を調べれば迷惑が掛かる。
だが、アリーゼはオラリオでも有名な人物。
アリーゼ・ローヴェル。
アストレア・ファミリア所属、レベル6。
正義を掲げ、数多の人を救ってきた英雄。
彼女と行動を共にしていたなら、ミネと呼ばれた少女も決して悪い人ではない。
けれど――名乗らなかった以上、事情はある。
ならせめて、仲間の方を調べようと思った。
「ギルド職員として、公になっている範囲しか言えないけど」
そう前置きして、彼女は教えてくれた。
アリーゼの経歴、そして噂。
正義のファミリアとして活動し、幾多の人を救った。
五年前、オラリオを蝕んでいた悪人たちを討伐し、レベル5に到達。
その後も、仲間を一人も欠かさず深層探索を成功させている。
「ベル君が来る少し前にアストレア・ファミリアが長期遠征から帰ってきたって聞いたけど…、もしかしてベル君、ローヴェル氏と会ったの?」
「はい、ミノタウロスから助けてもらったので、お礼が言いたくて」
「……ミノタウロス? ベル君、それどういうこと?」
「あ」
……やってしまった。
その瞬間、エイナさんのお説教が始まった。
駆け出しの僕が五階層まで潜って、ミノタウロスに遭遇――。
当然、見過ごせる話ではない。
ダンジョンの危険、心構え、命の重さ――
延々と続く説教。
エイナさんの説教が終わる頃にはオラリオの町は夕日の光で赤く染まっていた。
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赤く染まったオラリオの街を駆ける。
エルフ、ドワーフ、獣人等の冒険者や市民が多く歩くメインストリートを外れ人気のない裏路地に入る。
その先にある崩れかけた教会、その地下にある暖かい光の漏れるドア。
「神様~、戻りました~!」
「ちょ、ベル君!今はダメ‼」
「……え?」
硬直する僕。
視界の中で、神様――ヘスティア様が、青髪の女性の背中に跨っていた。
女性は上着を少し脱ぎかけで、白い肌がちらりと見えて……。
……え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉
あまりにも混乱した光景に、思考が追いつかない。
神様が、女の人の背中に乗ってる。
しかもその女の人――どこかで見たような青い髪……。
「……っ!? べ、ベルさん!?」
「え、えぇぇ!? み、ミネさん!?」
青髪の女性――あの時にはフードに隠れてわからなかった長い青髪。
澄んだ翠の瞳が、ばっちり僕を見据える。
その顔に見覚えがないはずがなかった。
あのダンジョンで、僕を救ってくれた恩人だ。
「ベ~ル~く~ん~」
「ひぃっ!?」
神様がすごい形相で僕をにらんでくる。
「いつまで乙女の柔肌を眺めてるつもりさ!ミネ君が着替えられないだろう!」
「ご、ごめんなさ~い‼」
慌てて先ほど入ってきたドアから外に出る。
び、びっくりした。
でもなんでミネさんがここに?
「ま、待ってくださいヘスティア様、そこは――あっ、ちょ、くすぐったいですっ!」
「おとなしくしてミネ君! はいはい、じっとね~! 背中のここに神聖文字が――あぁもう動くなってば!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
……ドア越しに聞こえてくる声に思わず赤面してしまう。
(あ、ステータス更新……!)
ようやく理解が追いついた。
背中に神聖文字を刻む――冒険者にとっての“恩恵”の更新。
僕もいつも、寝転がってヘスティア様にやってもらっている。
つまり今の状態は、まさにその途中。
なのに僕は、よりによってその最中に飛び込んでしまったのだ。
「はい、終わったよミネ君。さ、早く服を着ないとベル君が入ってこれないよ」
「は、はい……ありがとうございます、ヘスティア様」
わずかに息を弾ませながら、ミネは上着を整える。
白い肌に残る淡い光が消えていくのを見て、ヘスティアは満足げに頷く。
「ふぅ~……今回の遠征は長かったねぇ。
アストレアの子たちも無事なんだろ?」
ヘスティア様の問いかけに、ミネさんは静かにうなずいた。
淡い青髪が肩のあたりでさらりと揺れる。
「はい。全員無事に帰還しました。
アストレア様も、ヘスティア様によろしくと」
「そうか~。あの真面目な子たち、無理してないといいけど……」
ヘスティア様はほっと息をつき、胸に手を当てた。
その姿を見て、ミネさんは柔らかく微笑む。
「ヘスティア様も、お変わりないようで……安心しました」
「そりゃもう! 毎日がサバイバルだよ! でも、ミネ君が帰ってきたおかげで、やっと心が休まる~!」
ヘスティアは勢いよくミネの背中に抱きついた。
胸の奥からあふれるような安堵の声に、ミネは少し驚きながらも、ゆっくりとその細い腕を受け止める。
「……ご心配をおかけしました」
「ほんとだよぉ。もう三ヶ月も音沙汰なしだったんだからね? アストレアのところの子たちも強いのはわかってるけど、それでも深層遠征だろ? 気が気じゃなかったんだよ!」
「申し訳ありません……ギルドからの遠征期限もあって今回は長い間留守にしてしまい…」
「全然大丈夫だぜ! ミネ君が無事で帰ってきてくれたことが一番なんだ!」
少し涙ぐんだ声に、ミネは苦笑を浮かべた。
神の抱擁は温かく、どこか懐かしい。
彼女がこの小さな女神のもとに帰るたび、いつも胸の奥がじんわりと満たされる。
「……おかえり、ミネ君」
「ただいま戻りました、ヘスティア様」
二人の声が重なり、地下室に柔らかな静寂が流れた。
やがて、ヘスティアが目元をぬぐいながら顔を上げる。
「そうだ、ベル君にもちゃんと挨拶しないとね。たぶん、外で固まってるよ~」
「……そ、そうですね」
先ほどの事故を思い出し、ミネの頬がうっすらと紅潮する。
ヘスティアはにやりと笑い、まるで悪戯を企む子供のような目をした。
「う~ん、ベル君、きっと真っ赤な顔してるね。ねぇミネ君、あれ完全に見られてたよ?」
「っ、ヘスティア様っ!?」
ベルは深呼吸をひとつ――顔を真っ赤にしたまま、意を決して地下室のドアに手をかけた。
「……失礼します」
ドアの隙間から差し込む温かな光が、ベルの目に映る。
そこには先ほどまでの騒動の余韻が残る、微笑ましい光景が広がっていた。
ミネは背中をまっすぐに伸ばし、上着を整えながら、少し照れたようにベルを見上げる。
ヘスティアはというと、まだミネの背中に抱きついたまま、にこやかにベルを見ていた。
「……あ、あの、ベル君?」
ヘスティアの呼びかけに、ベルは咳払いしながら言葉を探す。
「え、えっと……あの、その……!」
ミネが軽く肩をすくめ、視線を外しながらも小さく頷く。
「……先ほどぶりですね、ベルさん」
「は、はい……ミネさん、ですよね。あの、その……助けてくれて、本当に……」
ベルの言葉はつまずき、言葉を探しては途切れる。
緊張と興奮が混じった声は、地下室の静寂に少しだけ響いた。
「ふふ……ベル君、落ち着いて。無理に話さなくても大丈夫よ」
ヘスティアが柔らかく手を振り、場を和ませる。
ミネも小さく微笑む。
「……あの、その、僕、改めて言わせてもらいます。命を救ってくれて、ありがとうございます!」
ベルは両手を握りしめ、全力で感謝を伝えた。
ミネは少し驚いた顔をしてから、静かに言う。
「貴方が無事であることが何よりも嬉しく思います」
ベルの言葉を聞き、ミネは一瞬視線を逸らしたが、すぐに落ち着いた表情で彼を見つめ返した。
「それにしても遠征から帰ってきたらまさか後輩が出来ているとは予想外です」
「え、あ……」
ベルは思わず言葉を詰まらせた。
目の前にいる、ダンジョンで命を救ってくれた美少女――ミネ。
そのミネが、なんとヘスティア・ファミリアに所属しているという事実に、頭の中が一気に混乱した。
「えっと、同じファミリア……ですか?」
「はい。私はヘスティア様の眷属です」
淡々と、しかしどこか誇らしげに告げるミネ。
その口ぶりに、ベルは思わず息を飲む。
「そ、そんな……僕、同じファミリアに――」
ベルは言葉を切り、咄嗟に頭を抱える。
目の前で、あの美しい救護の手を差し伸べた少女が、自分と同じ仲間だと考えただけで、胸が高鳴る。
「……そうですね。ベルさんも、ヘスティア様の眷属でしたね」
「は、はい……でも、ミネさんは……僕よりずっと強くて……」
「私とベルさんを比べる必要はありませんよ」
ミネは静かに、しかし優しくベルを見つめる。
その視線は、先ほどダンジョンで見せた凛とした瞳とはまた違う、温かさに満ちていた。
「だって、僕……五階層まで行って、ミノタウロスに――」
「危険な場所に行ったのは、ベルさんの勇気です。ですが、無茶は禁物です」
ベルは頷き、口元を引き結ぶ。
ミネに怒られるわけではない――いや、叱責ではなく、心配されているだけだとわかっていても、緊張で体が震える。
「……ベルさん、これからはお互いに支え合えますね」
その言葉に、ベルは心臓が跳ねるのを感じた。
そうか……これからは、僕もあのミネさんと一緒に……
「……はい! よろしくお願いします、ミネさん!」
思わず大きな声で答えるベル。
ミネは一瞬目を細めて微笑み、そして少し照れたように顔をそらした。
「……くれぐれも無理はしないでくださいね」
ベルは深く頷く。
頭の中で考えていた“冒険者としての英雄像”や“妄想の未来”が、一瞬で現実味を帯び始めた。
同じファミリアで、命を預けられる仲間が――ここにいる。
ヘスティアはそんな二人の様子を見て、くすくすと笑った。
「何二人きりの世界を作っちゃってるのさ~、僕も混ぜろ~!」
「ヘスティア様……」
ベルが小さく声を漏らすと、ヘスティアは手を振って制止する。
「もう、ベル君、そんなに固まらなくても大丈夫だよ~。ほら、ミネ君も笑顔だし!」
ミネは少し視線を逸らしつつも、微かに頬を赤くしている。
背筋はまっすぐ、しかし柔らかい雰囲気がそこにある。
ベルはその表情を見て、胸が高鳴るのを感じた。
「僕たちは家族なんだ。だから僕にもミネ君にも遠慮は禁止だぜ」
ベルは深呼吸をひとつして、やっとのことで心を落ち着けた。
目の前にいるのは、ダンジョンで命を救ってくれたあの少女――ミネ。
そして同じファミリアに所属していることが分かった今、胸の奥が熱くなる。
「……あの、ミネさん」
ベルは少し震える声で呼びかける。
「今日から……僕たち、一緒に……」
ミネは静かにベルを見つめ、そしてふっと小さく頷いた。
「ええ、ベルさん。これからは、お互いに支え合えますね」
ベルは自然と背筋を伸ばす。
「はい! よろしくお願いします、ミネさん!」
その声に、ヘスティアはくすくすと笑いながら手を叩いた。
「ほら~、二人で真剣な顔しちゃって~。ベル君、そんなに固まらなくても大丈夫だよ!」
ミネは少し視線を逸らし、頬を赤らめて微かに笑った。
ベルはその表情を見て、心臓が跳ね上がるのを感じた。
「あ、でも私は明日からフレイヤ様のところでアルバイトがあるのでしばらく留守にしますね」
「「えっ?」」
ベルは思わず二度見した。
「え、あ、あの……ミネさん、留守に……ですか?」
ミネは淡々と、しかし穏やかに答える。
「はい。実は私、冒険者登録をしていないので冒険者としては金銭を得られないのです。なのでフレイヤ様のところでのアルバイトが主な収入源となります」
「……そ、そうですか、アルバイト……」
ベルは言葉を探しながらも、頭の中は混乱していた。
ダンジョンで命を救ってくれたミネが、同じファミリアで、しかも普段は僕の知らない場所で活動している──その事実が、胸の奥に小さな高鳴りを残す。
「……でも、無理はしないでくださいね」
ミネの声は静かだが、どこか柔らかく、そして確かに優しい。
ベルはその声に、自分でも知らぬうちに頬が熱くなるのを感じた。
「ヘスティア様、明日、フレイヤ様のところに行く前に、ベルさんをアストレア様に紹介しようと思います」
ベルは一瞬、頭が真っ白になった。
「……アストレア・ファミリアの皆さんに、僕を……ですか?」
思わず声を漏らすベルに、ミネは穏やかに頷いた。
「はい。ベルさんのような冒険者の卵は、経験と指導が必要です。私一人では限界がありますから、アストレア様のご助力をいただくのが一番だと思います」
ベルはうなずき、深呼吸をひとつ。
胸の中で、小さな決意が芽生えた――今日から僕の冒険は、ただの“妄想の未来”ではなく、現実として始まるのだ、と。
「それじゃあ、僕、頑張ります……!」
「安心してください。アストレア・ファミリアの皆さんはとてもいい人ばかりですので」
ミネは微笑み、少し首をかしげた。
その仕草が、なんとも柔らかく、安心感を与えてくれる。
「それでは、今日はもう遅いので、明日の準備をして休みましょう」
「は、はい……」
ベルは深くうなずき、地下室の小さな光の中で体を落ち着けた。
外ではヘスティア様がまだ楽しそうに笑いながら、ミネの背中に寄り添っている。
――明日から、僕は“本当の冒険者”になるんだ。
胸の奥で、希望とわずかな不安が入り混じる。
でも隣に――いや、同じファミリアに――ミネがいることを思うと、どんな困難も乗り越えられる気がした。
ベルは布団に身を横たえながら、心の中でそっとつぶやいた。
「……明日、よろしくお願いします、ミネさん……」
窓の外には、オラリオの街を柔らかく染める夜の光。
その光に照らされ、ベルの胸の中には新たな決意が静かに燃え上がっていた。
ヘスティアは原作より10年早く下界の入りてきています。
またミネは"蒼森ミネ"本人ではなく蒼森ミネに憧れているだけの転生者です。
ただ憧れの度が過ぎて魔法やスキルに影響が出まくっています。