ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか 作:救護騎士団オラリオ支部
そのため表向きは完璧なクールビューティーな女神で通してますが裏ではポンコツ具合マシマシです。
勿論そのことは眷属全員把握してます。
それでも忠誠は変わらずフレイヤを慕っている眷属一同…、
フレイヤ・ファミリアが便利屋68になっちゃったじゃん!あなた達のせいだよー!
ルームの中はひんやりとした空気が漂い、魔物の気配がまだ僅かに残っていた。
ベル・クラネルは新調したナイフを握り直し、戦闘での疲れを押し殺すように息を整える。
リリルカ・アーデも小さく頷き、構えを固めた。
――そのとき、奥から軽やかな足音が響く。
ルームの空気が張り詰め、二人の心臓が同期するかのように速く打った。
「お待たせしました」
声の主は、間違いなくミネ・シルヴァリエ。
フードで長い蒼髪と顔を隠し、凛とした立ち姿で現れる。
戦闘中の厳しさは微塵も感じさせないが、その背中からは内側に秘めた力強さが確かに伝わった。
「ミネさん!」
思わず弾んだベルの声に、リリルカも微笑みながら頭を下げた。
「お待ちしておりました」
ミネは静かに微笑み、二人の前に歩み出る。
少し前、アリーゼから「ミネ、ベルは後輩なんだから任せっきりにせず面倒を見なさい」と言われ、反省したのだ。
ヘイズに休暇を申請し、こうしてダンジョンでベルたちと合流した。
「ベルさん、今日はよろしくお願いします。ダンジョン内では名前を呼ぶのは控えてください」
ミネの自然な声に二人は少し安心する。
「私は今回、余程のことがない限り手を出しません。危険な場合のみ介入しますので、お二人の判断で行動してください」
その柔らかな指示は、二人に確かな安心感を与えた。
奥から魔物の気配が近づく。ベルは一歩前に踏み出し、心臓の高鳴りを抑えつつ構える。
目の前の敵はゴブリン。数は多いが個々の力は弱く、手早く排除できるだろう。
憧れの人の視線を背に受け、ベルは思い切って駆けだした。
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9階層に足を踏み入れた瞬間、空気はひんやりと重くなる。
魔物の気配は濃く、壁に反射する光さえも鋭く感じられた。
「……何かがおかしいですね」
リリルカが低く呟き、周囲を警戒する。
低く唸る声が壁の向こうから響き、地面が微かに振動した。
ベルはナイフを握り、心臓の鼓動を抑える。
ミネはフードの影から彼を見つめ、静かに頷く。
その視線は言葉以上に、ベルに安心感を与える。
「最初にも言いましたが、私は余程のことがない限り手を出しません。お二人の判断にお任せします」
その声は落ち着いているが、揺るがぬ決意を秘めていた。
暗がりから現れたのは――ベルにとって因縁のあるモンスター、ミノタウロス。
巨大な角を持ち、筋肉隆々の巨躯。前回の戦闘で刻まれた恐怖が、ベルの胸に蘇る。
赤く光る瞳が、少年の恐怖と決意を見透かすようだった。
「……二人とも下がってください。さすがにこれは私が対処します」
ミネの声にリリルカは少し驚いたが、すぐに後方へ下がる。
ベルも一歩下がろうとしたその瞬間――
ミネが宙を舞った。
横から突進してきたのは――オッタル。
その巨体は一瞬でミネの前に立ちふさがり、静かに言い放つ。
「手合わせ願おう、ミネ」
猛者オッタルが、ミネの前に立ちはだかる。
その威圧感に、ベルは息を呑んだ。
「…フレイヤ様ですか」
「いや、俺の意思だ。思えばお前がどれほどの実力を持つのか知る機会もなかったからな」
オッタルは剣を構えた。
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フレイヤは微笑んでいた。
白銀の長椅子に腰掛け、膝を組み、頬杖をついた姿は絵画にも勝る艶美さを持ちながら――
その女神の心は、ただ一人の少年へと向けられていた。
「ふふ……また、あの子が輝く姿を見られるのね」
その声音は、期待を隠そうともせず甘く響く。
怪物祭の一件から数日。
ベル・クラネルは確かに光った。
あの子が自らの意思で、危険の中へ飛び込んでいったとき――
その輝きは、どんな宝石よりも眩しかった。
しかし、足りない。
だから今一度試練を与えましょう。
フレイヤはベル・クラネルに相応しい試練を用意するようオッタルに命じた。
そして今日、その準備が整い待ちに待った瞬間がやってくるのだ。
「オッタルが調えた“贈り物”……ふふ、楽しみね」
赤いワインを口に含む。
甘く、深く、そして妖しい香りが胸の奥まで広がる。
あとは――
ベルと一緒にいるであろうアストレアの眷属たちから、あの子を引き離し、
用意した試練と“ぶつける”だけ。
「そろそろかしら?」
「神の鏡」を使いダンジョンの内部を映し出す。
ミノタウロスと対峙するベル・クラネル。
同じくベルと共にミノタウロスと立ち向かうリリルカ・アーデ。
そして――
オッタルの頭を片手で掴み、地面に何度も叩きつけているミネの姿だった。
――スゥゥゥ。
フレイヤは肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
女神としての威厳も何もかも捨てて絶叫しそうになる自分を、
全力で押しとどめる。
(ち、ちょっと待ちなさい……どういうこと……?)
鏡には容赦ない光景が続く。
ミネがオッタルを吊るし上げ、
横薙ぎに振り回し、
地面に叩きつけ、
さらに追撃で蹴り飛ばし――
そのたびに、巨体が地鳴りのような衝撃を立てて跳ねる。
隣に控えるアレンは、驚愕の表情で絶句していた。
女神の目がゆっくりと彼へ向く。
「……アレン」
「はい」
「あなたたち、ミネの“本気”をどこまで把握しているのかしら?」
静かに問うフレイヤの声に、アレンは首をかしげた。
「…レベルがそれなりに高いことは察していました。しかし、アイツがやるのは治癒魔法だけなので、ただの後方要員だと思っていました…、なので…」*1
「ミネがどれだけ戦えるかは把握できなかったと…」*2
フレイヤは鏡を見つめながら、頬に手を当てた。
鏡の中――そこには、もはや“試練”でも“贈り物”でもない、地獄のような光景が広がっていた。
オッタルが──埋まっている。*3
床に。
めり込んで。
動かない。
その上から、ミネは砂埃を払うようにぱんぱんと手を叩いた。
女神は指先でこめかみを押さえた。
ミネが治癒魔法だけでなく、その戦闘能力がオッタルを超えるものだったのも…まぁ、納得しよう。
しかしよりにもよって、ベルの試練の真っ最中に発覚する必要はなかったはずだ。
鏡の端を見ればベルの姿が映る。
ミノタウロスと刃を交える少年は、息を荒げながらもその瞳に強い光を宿していた。
――それを見て、フレイヤは少しだけ胸を撫で下ろす。
そう、本来ならあれだけを見ていれば良かった。
彼の輝きは、確かに今もそこにある。
……ただし。
「オッタル立ちなさい!*4 全力でミネを止めるのよ!
ミネに乱入されたらミノタウロスが粉になるじゃない!!
そもそも、なんであなたがそこにいるの!?
今の時間なら戦いの野で働いているはずでしょう!?」*5
女神の威厳は彼方へと飛んで行ってしまった。
鏡の中、オッタルを完全に黙らせたミネが、ベルの後方へ小走りで駆けていく。
(来る……来る……来ないで……っ!!
それはベルが“自分の意志で”越えるべき壁なのよ……!)
ソーマ・ファミリアが救護済みのためオッタルはイシュタル・ファミリアの襲撃を受けましたが予定通りにミノタウロスをベルにぶつけることに成功。
そのため、ロキ・ファミリアは事態を把握出来ずに素通りです。
ロキ・ファミリアのフラグは完全に爆破解体されてます。
きっと地下に温泉でも埋まってたんでしょう。
このSSのフレイヤ様は…
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普通のフレイヤ様
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アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様