ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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連続更新3話目です。
これが本日最後の投稿となります。
以降は不定期投稿に切り替えます。
申し訳ないのですが多分投稿頻度が落ちます。


五十階層の密談

ダンジョンの五十階層。

ロキ・ファミリアの団員たちがキャンプの設営を進める中、フィン、リヴェリア、ガレスの三人は、テントの奥で先ほど合流した二人――オッタルと、フードを深く被った謎の女性について話し合っていた。

 

「……少なくともレベル5。それ以下はありえないだろう」

リヴェリアは小さく息を整えながら言った。

オッタルとの合流からここに至るまで、一度たりとも件の女性はこちらに隙を見せなかったことを思い返し、眉がわずかに寄る。

 

「レベル6すらあり得るぞ。オッタルの奴、どこからあんな奴を連れて来おった」

ガレスの低い声がテントを振るわせる。

「実力がまるで読めん。あれだけの巨盾を持ちながら、体格はヒューマンの女だ」

 

フィンは静かに頷いた。

あの場にいた全員が感じた、得体の知れない圧――それはオッタルの隣にいた女性冒険者から発せられていたものだった。

 

「そして、もう一つ気になるのは……オッタルの態度だよ」

フィンは指で机代わりの木箱をコンコンと叩く。

「君たちも見ただろう? あのオッタルが、あんな風に『詮索するな』と言った。女神フレイヤのこと以外で、あんなことを言うのは初めて聞いたよ」

 

リヴェリアも頷いた。

 

「ああ。オッタルは必要以上に隠し立てするタイプではないが……今回は明確に線を引いていた」

 

「女神フレイヤの関係者なのか……それともよほど特別な関係なのか」

ガレスの渋い声が重く響く。

 

テントの空気が静まり返る。

誰もが考えていたことはただ一つ――

 

――オッタルほどの男が、あれほどまでに気を配る存在。

 

その正体が気にならないはずがなかった。

 

フィンはしばらく沈思したのち、静かに口を開いた。

 

「だが、ひとつだけ確かなことがある。

あの女性は――オッタルが『認めている』存在だ」

 

リヴェリアとガレスが息を呑む。

 

オッタルが認める者など、都市を探しても片手で数えられるほどしかいない。

まして異性の、しかも正体の見えない冒険者となればなおのこと。

 

「……で、どうするんだ、フィン。この先にオッタルと彼女を連れていくのか?」

ガレスの問いは重く、テントの空気をさらに沈ませた。

 

ここから先――五十一階層以降は、ロキ・ファミリアでも“選ばれた者”だけが進む場所だ。

隊列はさらに絞られ、行動も緊密になる。その中に、あの二人を入れるかどうか。

 

フィンは迷いなく答えた。

 

「連れていくよ」

 

リヴェリアが驚いたように眉を上げ、ガレスは無言で腕を組み直した。

 

「……理由を聞いても?」

リヴェリアが慎重に問う。

 

「逆に聞くけどね、二人を置いていく理由があるかな?」

フィンは穏やかな口調で言ったが、目は鋭かった。

「オッタルが自分からついてきてくれるんだ。

断る理由が見つからない。

あの戦いを見たろう? 彼が同行するだけで、僕たちの安全は桁違いになる」

 

その言葉に異論を挟む者はいない。

オッタルの力を否定する者などオラリオに存在しないからだ。

 

「問題は、あの女性の方だが……」

フィンは小さく息をつく。

 

「彼女は――“危険”だ。だが同時に“害意がない”ことも確かだ」

 

リヴェリアとガレスは静かに耳を傾ける。

 

「オッタルがあれほど守るような態度を取った。

そして彼女自身も、僕たちに一切の敵意を見せなかった。

そして気になったのが彼女の視線だ」

 

「視線だと?」

 

「彼女はね、見ていたんだよ。僕たちの中の誰かを」

 

フィンの言葉に、テントの空気がピンと張り詰めた。

リヴェリアが静かに瞬きをし、ガレスは無言のまま眉をひそめる。

 

「……誰を、だ?」

ガレスの低い声が、ゆっくりと地を這うように響く。

 

「僕の勘違いじゃなければ、彼女が見ていたのは――」

 

ーレフィーヤだ。

 

----------------------------------

 

翌朝、五十一階層に続く通路の前に錚々たるメンバーがそろっている。

 

勇者フィン・ディムナ、九魔姫リヴェリア・リヨス・アールヴ、重傑ガレス・ランドロック、

剣姫アイズ・ヴァレンシュタイン、凶狼ベート・ローガ、怒蛇ティオネ・ヒリュテ、大切断ティオナ・ヒリュテ、

超凡夫ラウル・ノールド、千の妖精レフィーヤ・ウィリディス、単眼の巨師 椿・コルブランド、

 

猛者オッタル、

 

そして――フードを深く被り、目元すら見えない“謎の女冒険者”がそこにいた。

巨大な盾を静かに地面へ立て掛け、ただ周囲を静観しているだけなのに、その場の空気がわずかに引き締まる。

 

五十一階層へ挑む選抜メンバーが全員揃った瞬間だった。

 

「……不思議な人だよね、あの人」

ティオナが小声でティオネへ囁く。

 

「オッタルの隣に立つんだから、只者じゃないわね」

ティオネの瞳にも、得体の知れぬ緊張が宿っていた。

 

一方で、レフィーヤは落ち着かない様子で列の端に立っていた。

隣のアイズが不思議そうに首を傾げる。

 

「……レフィーヤ、緊張してる?」

「えっ!? い、いえっ……ちょっとだけですっ……!」

 

視線が泳ぐ。

なぜか、あの謎の女性が近くにいるだけで胸がざわつく。

理由も分からない不安――それとも直感か。

 

アイズはレフィーヤの反応に首をかしげるが、レフィーヤの肩越しに一瞬だけ、謎の女性が視線を向けたことに気づいていた。

ただし、アイズはそれを「敵意」ではなく、むしろ「何か柔らかいもの」に近いと感じていた。

 

その視線に気づかないまま、レフィーヤはひとつ震える息を吐いた。

 

「さて、これから五十一階層に突入するけど。これだけは聞いておかないとね」

 

フィンが槍の石突きをコツンと床に当て、全員の視線を集める。

張り詰めた空気がさらに研ぎ澄まされ、誰もが戦闘態勢へと心を切り替えた。

 

「彼女のことだ。オッタル、彼女は何ができる? ここから先、彼女はついてこれるのかい?」

 

フィンの問いかけに、全員の視線が一斉にオッタルへ向いた。

 

巨躯の男はわずかに顎を引き、フードの女冒険者へ視線を投げる。

すると――フードの奥で、その女は静かにオッタルを見返した。

 

短い、だが確かな“確認”の時間。

 

そしてオッタルは、淡々と、しかしどこか誇るような声音で言った。

 

「……問題ない」

 

その言葉だけで、場の空気が震えた。

 

「彼女がいれば、貴様らの安全は保障されているようなものだ」

 

オッタルの低く響く声がこだました瞬間、空気がわずかに揺らぐ。

控えていたロキ・ファミリアの団員たちの背筋が、ほとんど反射のように伸びた。

 

「……本気で言ってるのか、オッタル?」

 

リヴェリアが静かに問うが、その声音には僅かな震えすら混じっていた。

 

オッタルは静かに頷く。

 

「――本気だ」

 

その視線が自然とフードの女冒険者へと集まる。

彼女は静かに立ち、巨盾の縁に手を添えただけで、周囲の気配を察知するかのように微動だにしない。

 

オッタルはその女を一瞥すると、ゆっくりと低く告げた。

 

「彼女はオラリオで最高の治癒術師だ」*1

 

その言葉が放たれた瞬間、列の空気が一層張り詰めた。

 

「――治癒術師?」*2

ティオナの声が小さく震える。

あんな巨盾を持っているのに?

 

オッタルは淡々と頷いた。

 

「そうだ。ヘイズすら超える回復魔法を使用できる」*3

 

フードの女は微動だにせず、巨盾に手を添えたまま静かに頷く。

その静けさが逆に存在感を強め、列の空気はさらに引き締まった。

 

「覚えておけ。彼女は誰も死なせはしない」

*1
ただしオッタルを殴り倒せる

*2
ただしオッタルを殴り倒せる

*3
ただしオッタルを殴り倒せる




誕生日おめでとうございます、団長。

このSSのフレイヤ様は…

  • 普通のフレイヤ様
  • アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様
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