ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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反省はしています、後悔はしていません。などと供述しており…

 猛者オッタルのレベル8昇格にオラリオ中が沸く最中――。

 

 アストレア・ファミリアの本拠、《星屑の庭》の一室では、異様な光景が広がっていた。

 

 ヘスティア、アストレア、ヘファイストスの三女神。

 そして、アストレア・ファミリア団長のアリーゼと、団員のライラ。

 

 彼女たちは円を組むように、一人の少女を囲んでいる。

 

 言わずもがな――オッタルの依頼を終え、帰還していたミネであった。

 

 ミネは極東で言う正座の姿勢を取り、ただ静かにうつむいている。

 

「で、ロキ・ファミリアの幹部と椿に、盛大にばらしたと。何やってんだ、お前は」

 

 ライラの低い声が、《星屑の庭》の一室に落ちた。

 

 それは怒声ではない。

 だが、怒声よりも鋭く、逃げ場のない問いだった。

 

 ミネは正座したまま、肩を小さく震わせる。

 

「……すみません」

 

 小さく、しかしはっきりとした謝罪。

 

「謝って済むなら、ここに女神三柱も集まってねえんだよ」

 

「ライラ、ちょっとは言葉を――」

 

 アリーゼが窘めるが、ライラは肩をすくめ、首を横に振った。

 

「アリーゼ、これは感情論じゃねえ。

 ミネの存在がバレれば、下手すりゃ都市全体を揺るがす。

 それをわかってて、こいつは正体をさらしたんだ」

 

「うぅ……ミネくぅん……」

 

 ヘスティアはミネの背後で頭を抱えている。

 

 紐はいつも通りだが、今はまるで首を絞められているかのように、力なく垂れていた。

 

 全員、事情は知っていた。

 

 故郷を出るときに別れた妹分がロキ・ファミリアにおり、その子のために正体を明かしたのだと。

 

「弁明はある?」

 

 アストレアが静かに問う。

 

 裁定を司る女神の声音は、感情を排した透明な刃だった。

 

 ミネは一度、深く息を吸った。

 

「……いえ、ありません。

 どのような事情があろうと、私は皆さんとの約束を反故にしてしまいました」

 

 ミネの声は震えていなかった。

 それは言い訳を捨てた者の、静かな断定だった。

 

 一瞬、《星屑の庭》の一室から音が消える。

 

 ライラが眉をひそめ、舌打ちを噛み殺した。

 

「……開き直りか?」

 

「いいえ」

 

 ミネはゆっくりと首を横に振る。

 

「責任の所在を、曖昧にしないためです。

 結果として、秘密は漏れました。それは事実です」

 

 膝の上で、指がわずかに握られる。

 

「どんな理由を並べても、約束を破ったことは変わりません。

 ……ですから、処分は甘んじて受けます」

 

 その言葉に、ヘスティアが顔を上げた。

 

「ミネ……?」

 

 思わず名前を呼んでしまうほど、あまりに迷いのない声音だった。

 

 アリーゼは目を閉じ、短く息を吐く。

 

「……あなたは、それで納得なの?」

 

「はい」

 

 即答だった。

 

「私が守るべきだったのは、秘密そのものではなく、

 それを信じてくれた皆さんとの関係でした」

 

 沈黙。

 

 その言葉は、剣よりも鋭く、場を切り裂いた。

 

 ライラが腕を組み、天井を仰ぐ。

 

「……ちっ。

 ほんと、最悪な答えだ」

 

「ライラ?」

 

「正論すぎて、殴りようがねえ」

 

 苛立ちを隠さない声だったが、その奥には、別の感情が滲んでいた。

 

 ヘファイストスが顎に手をやり、ミネを値踏みするように見る。

 

「椿のことなら安心して。

 私からも事情を話しておくから」

 

 その言葉を受け、部屋の空気が再び張り詰める。

 

 ならば、あとはロキ・ファミリアの方だ。

 

 ロキ・ファミリア――

 都市最大派閥の一角。

 

 その幹部に知られたという事実は、椿とは比べ物にならない重みを持つ。

 

 ライラが低く唸った。

 

「……フィンには、アタシから話しておく。

 これまでの事情も、諸々な」

 

「それが一番よさそうね。ライラ、お願いできる?」

 

 アリーゼもまた、静かに口添えした。

 

「ったく……お前は時折、酷いやらかしをしやがる。

 一体、誰に似たんだか……」

 

 そんな時だった。

 

 コンコン、と控えめなノック音。

 

「……失礼します」

 

 扉を開けて入ってきたのは、金髪を揺らすエルフ――リュー・リオンだった。

 

 一歩足を踏み入れた瞬間、室内の空気を察したのだろう。

 

 張り詰めた沈黙。

 正座したまま俯くミネ。

 女神三柱に団長、そしてライラという顔触れ。

 

「取り込み中のところ、すみません。

 少し、問題が起きまして……」

 

「問題?」

 

 アストレアが即座に反応し、リューに顔を向けた。

 

 リューは一度だけミネに視線を向け、すぐにアストレアへと向き直った。

 

「リリとクラネルさん、それとパーティーを組んでいたヴェルフ・クロッゾの三人が、アポロン・ファミリアの者たちと揉め事を起こしまして……」

 

「……アポロン?」

 

 その名を聞いた瞬間、ヘスティアの背筋が跳ね上がった。

 

「な、なんでアポロン!?

 ベルくんとリリルカくんが!?」

 

「ヴェルフも?何やってるのよ、あの子は…」

 

「詳細は現在、確認中ですが――」

 

 リューは淡々と続ける。

 

「酒場で乱闘騒ぎを起こし、

 太陽の光寵童ポエブス・アポロ病院ディアンケヒト・ファミリア送りにしたとのことで、

 現在は三人ともガネーシャ・ファミリアに拘留されています」

 

 ――何やってんだ、あいつらあの馬鹿弟子共

 

 ライラは、今日の説教が日を跨いでも終わらないことを、静かに確信した。




なんでこの時点のベル君がヒュアキントスを病院送りにできたって?
リリ助がレベル2なのとアストレア・ファミリアの可愛がりで対人戦が異様に強化されてるので侮っていたヒュアキントスはスキを突かれて無様をさらしました。

ミネの説教は基本ライラが担当です。
一番面倒を見ていたためミネが一番頭の上がらない相手となります。

ミネもライラの弟子に当たりベル君はアストレア・ファミリア全員の弟子扱いなので
ライラはミネ、リリ助、ベル君と3人の弟子がいるわけです。
その内二人は時折核爆弾級の問題を持ち込むため被害担当がライラに集中する予定。
コネや問題解決能力がアストレア・ファミリアの中で一番高そうなのが悪い。

このSSのフレイヤ様は…

  • 普通のフレイヤ様
  • アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様
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