ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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知識が中途半端でアストレアとライラの口調がわからない…。


小人族の師弟

日が真上に差す頃、ベルとミネはアストレア・ファミリアの本拠、星屑の庭の前に立っていた。

 

「……ここが、アストレア・ファミリアの本拠、なんですよね?」

 

 蒼髪を風になびかせながら、ミネは穏やかに微笑む。その緑の瞳には、どこか懐かしむような光が宿っていた。

 

「えぇ。ただ、昨日遠征から帰ったばかりなので、皆さんがいらっしゃるといいのですが……」

 

 柔らかな声に、ベルは思わず息を呑んだ。静謐で、けれどどこか厳粛な空気が漂っている。彼女の言葉には、ここがただのファミリアの拠点ではなく、何か“信仰”にも似たものが宿っているように感じられた。

 

 ミネは整えられた庭を進み、本拠の玄関の横に添えられた呼び鈴を鳴らす。澄んだ音が庭に響き、金属の鈴音は昼の空気の中でいくつもの輪を描くように消えていった。

 

 その音を追うように、屋敷の奥から小さな足音が近づいてくる。やがて、玄関の扉がきい、と軋む音を立てて開いた。

 

「……どちら様ですか?」

 

 現れたのは、栗色の髪を二つに束ねた小柄な少女だった。ぱっちりとした瞳には、わずかに警戒の色が宿っている。しかしその顔を見た瞬間、ミネがふわりと微笑んだ。

 

「こんにちは、リリルカさん。昨日の今日で続けて訪ねてしまい、申し訳ありませんが、アストレア様にお目通り願えませんでしょうか?」

 

「――ひ、ひぃっ!? み、ミネ様!?」

 

 少女の顔が一瞬で強張り、ほとんど反射的に一歩下がる。

 

 ミネはにっこり微笑み、ベルに振り向いた。

 

「実は遠征中にヘスティア様が新しい眷属を迎えられまして、その紹介に来ました」

 

「えっと……ベル・クラネルです。よろしくお願いします」

 

 ベルが頭を下げると、リリルカは少し警戒しながらも、ぺこりとお辞儀を返した。

 

「な、なるほど、そういうことならどうぞお入りください。ただ、アストレア様と師匠以外は皆さん外出しておりまして……」

 

 リリルカの声はまだ少し震えていた。わずかに硬直していた肩も、ゆっくりと力が抜けていく。ベルはその様子に気づき、少しだけ微笑む。ミネも優しくうなずきながらリリルカを見つめた。

 

「ありがとうございます。失礼しますね」

 

 ミネがそう言って一歩踏み出すと、リリルカは軽くお辞儀を返し、扉を開けて屋敷の中へ招き入れた。

 

 中に入ると、柔らかな光が廊下に差し込み、静かで落ち着いた空気が漂っていた。ベルはミネの隣に並び、深呼吸を一つする。外の明るい庭とはまた違う、内に秘められた厳粛さがここにはあった。

 

「……アストレア様にご挨拶ですね」

 

 リリルカの声にはまだ警戒が残っているが、どこか落ち着きも感じられる。過去の出来事が彼女の心に影を落としていることは、ほんのわずかにうかがえる程度だった。

 

 ミネは静かにうなずき、扉の奥へ進む。ベルも後に続く。足音は柔らかく、しかし確かな決意を伴って響いた。

 

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「へぇ、ヘスティアの所に新しい子が来たのね。そういえば、ヘスティアと貴方がオラリオに来てちょうど10年だし、今まで新しい眷属がいなかった方が問題よね」

 

 淡い光の中で笑みを浮かべる女性の声に、ベルは少し緊張しながら耳を傾ける。彼女の姿は堂々としているが威圧的ではなく、どこか親しみやすい雰囲気を纏っていた。

 

「ヘスティア様は、何というか……肝心な時は頼りになりますので……」

 

 ミネが控えめに返すと、女性は微笑みを広げ、穏やかな声で応じた。

 

「それは遠回しに、普段は頼りにならないと言っているのかしら? ヘスティアが泣くわよ」

 

 女性の軽やかな笑い声に、ベルは思わず顔を赤らめる。ミネは慌てながらもヘスティアをフォローした。

 

「い、いえ、そのようなことは……」

 

 ミネが少し慌てて弁解すると、アストレアはくすりと笑った。

 

「ふふ、そう慌てなくても大丈夫。貴方の言いたいことはちゃんと伝わってるわ」

 

 柔らかい声に、ベルも少し安心したように肩の力を抜いた。

 

「それで、この子がヘスティアの新しい子供の……」

 

「べ、ベル・クラネルです! よろしくお願いします!」

 

 ベルが元気よく自己紹介すると、アストレアは優しい目で彼を見つめた。

 

「ふふ、なるほどね。ヘスティアが選んだのだもの。とてもいい子なのでしょう? これからもよろしくね」

 

 アストレアの柔らかな声に、ベルは少し照れくさそうに肩をすくめた。

 

 部屋の静けさを一瞬で破るように、桃色の髪を揺らしながら小柄な小人族が元気よく駆け込んできた。

 

「よぉ、ミネ! 後輩が出来たんだってな!」

 

 声の大きさに、ベルは思わず目を見開き、ミネはくすりと微笑む。その後ろにはライラを呼びに行っていたリリルカの姿もあった。ライラは弾むような足取りでベルに近づき、両手を腰に当ててにっこり笑った。

 

「で、お前がヘスティア様んとこの新人か! アタシはライラだ、よろしくな!」

 

「は、はい……ベル・クラネルです」

 

 ベルは少し緊張しながらも、精一杯の笑顔で答える。

 

 ライラは興味津々の瞳でベルを見つめ、にやりと笑った。

 

「弟子ともどもこれから色々教えてやるから、覚悟しとけよ!」

 

 そう言ってライラはリリルカの頭をくしゃくしゃとなでる。

 

「ちょ、やめてください、お師匠様!」

 

 リリルカは慌てて手を振りながらも、どこか嬉しそうに顔を赤らめる。ベルはその様子を見て、少し戸惑いながらも微笑んだ。

 

「……なんだか賑やかですね」

 

 ライラは満足そうにリリルカの頭をくしゃくしゃにしたまま、にやりと笑った。

 

「で、ベルの紹介だけってわけじゃないんだろ? 予想はつくが、言ってみろよミネ」

 

 ミネは少し微笑みながら、落ち着いた声で答えた。

 

「少しの間、ベルさんをアストレア・ファミリアの皆さんで鍛えてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「だとよベル、よかったじゃねぇか。ウチは美人ぞろいで有名なんだ。もちろん、アタシも含めてな!」

 

 ベルが少し戸惑いながら顔を赤らめるのを見て、ミネは柔らかく微笑んだ。

 

「では、ベルさんを皆さんにお預けしますね。申し訳ありませんが、私はこの後フレイヤ・ファミリアで数日間過ごすことになると思うので……」

 

「あ~、いつものやつか。まぁ、ベルのことはしっかり鍛えといてやる」

 

 ベルは深く息を吸い込み、決意を込めて返した。

 

「……はい、頑張ります!」

 

 そんなベルをリリルカは、まるで養豚場に出荷される豚を見るような目で見つめていた。

 

「…えっ、もしかしてファミリア全員で鍛えるのですか? ベル様、生き残れるのでしょうか?」

 

 ファミリア全員の鍛錬となると、加減を知らない団長とかむっつりエルフとか不安要素が多すぎる。

 

 リリルカは不安そうにベルを見つめ、そっと手を胸に当てる。

 

「まぁ、今回はミネ様は不参加のようですし……多分大丈夫でしょう、きっと、多分……」

 

 リリルカの不安げな呟きは、誰にも届かないまま消えていった。




なんでリリがアストレア・ファミリアにいるかって?
集団アル中共はすでに"救護"済みだからです。
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