ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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運命と書いて処刑方法と読む。


運命を決める神会

 戦争遊戯ウォーゲーム規則ルールや形式を決める神会。

 

 そこには多くの神々が、興味津々といった雰囲気で溢れかえっていた。

 

 神々の視線は、一点に集まっている。

 今回の対戦カード――ヘスティア・ファミリアと、アポロン・ファミリア。

 

 規模、戦力、名声。

 あらゆる面で不釣り合いなその組み合わせは、神々にとって格好の娯楽だった。

 

「いやぁ、これはまた分かりやすい構図だねぇ」

「弱小対中堅。勝敗は火を見るより明らか、ってやつ?」

 

 囁き合う声に、くすくすと笑いが混じる。

 

 そんな中、悠然と立ち上がったのはアポロンだった。

 

 彫像のように整った顔に自信満々の笑みを浮かべる。

 

「ヘスティア、まずこちらの要求を伝えておこう。我々が勝ったら、ベル・クラネルを貰う」

 

「へぇ? じゃあ、僕が勝ったら君たちにはいくつかボクからの要求を呑んでもらおうかな?」

 

「はっはっはっ、何でも言ってくると言い。君が勝てると思ってるならね」

 

 見た目上は弱小ファミリア対中堅ファミリアの圧倒的な戦力差に見えるが……。

 

 実態は、最強ファミリア対中堅ファミリアという、壮絶なイジメにしか見えない。

 

 内情を知っているアストレア、ヘファイストス、フレイヤは、

 揃って養豚場の豚を見るような目でアポロンを眺めていた。*1

 

(……自分が、何に喧嘩を売っているのかも分かっていない)

 

 アストレアは静かに息を吐く。

 ベル・クラネルという輝きに隠れたもう一つの、名もなき蒼き光。

 

 それらを承知した上で、この神会にいる神は――ごく一部だ。

 

「では、戦争遊戯ウォーゲームの形式を決めようか」

 

 アポロンの声に、神会の空気が引き締まる。

 

「ボクからはファミリア代表の1対1を提案するよ。君たちも一方的な試合なんてつまらないだろう?」

 

 周囲の神々を見回しながら、ヘスティアは問いかけた。

 

 ざわ、と小さな動揺が走る。

 

「ほう?」

「代表戦か……」

 

(よく言うわよ。あの子ミネを出したら、どんな試合だって塩試合じゃない)

 

 ヘファイストスの呆れたような視線を、ヘスティアは完全に無視した。

 

 ――分かっている。

 だからこそ、ここで切る。

 

 この神会の前、ヘスティア・ファミリアの要求はギルド側に通り、

 ミネを正式に冒険者登録する予定だ。

 

 ギルド側は誓約書の内容に、

既に冒険者登録をしている者ベル・クラネルは除く』

他ファミリアから改宗した者アストレア・ファミリアは対象外』

 といった文言を巧妙に盛り込んでいた。

 

 だが、その内容で同意した。

 

 どちらも――

 本命ミネを通すには、何の関係もない縛りだったからだ。

 

 ギルド側は、

(してやったり)

 と思っているかもしれない。

 

 だが、こちとら――

 処理不能の爆弾ミネを、十年も抱えてきている。

 

「……代表戦、ね」

 

 アポロンは一瞬だけ考える素振りを見せた後、笑った。

 

「ファミリアの団員が少ないのは君の怠慢だろう?そんな泣き言に付き合ってやる義理はないな」

 

(それはそう)

 

 実際、ヘスティアは10年もありながら団員はベルとミネだけ。

 

 世間的にはベル一人とみられているが数的には大差ない。

 

 あのぐうたら女神はこの10年もの間、碌な勧誘もせずに居たのだから、これにはヘファイストスもアストレアも反論できない。

 

「ここは公正にくじで決めようじゃないか」

 

 愉快そうな声が上がり、神々はそれぞれ羊皮紙に形式を書き込んでいく。

 代表戦、団体戦、攻城戦――

 娯楽性の高いものから、明らかに戦力差が露骨に出るものまで、好き勝手に放り込まれていった。

 

 小さな箱に札が集められ、中央の台へ置かれる。

 

「誰が引く?」

「公平を期すなら、当事者以外がいいだろう」

 

 そうして指名されたのは、ヘルメスだった。

 

「おやおや、僕かい? これは責任重大だなぁ」

 

 軽い調子で言いながらも、翼帽子の神は中央の台へと歩み出る。

 小箱の中で、羊皮紙がかすかに擦れる音がした。

 

 神会に集う神々の視線が、一斉に注がれる。

 

 ――戦争遊戯ウォーゲームの形式。

 それ一つで、勝敗の流れは大きく変わる。

 

(まあ、どれを引いても……)

 

 ヘルメスは内心で肩をすくめた。

 結果そのものより、そこに至る過程が、すでに“見世物”として完成している。

 

 彼は箱に手を入れ、一枚を引き抜いた。

 

「――さて、と」

 

 ゆっくりと羊皮紙を広げ、目を通す。

 

 一瞬の沈黙。

 

 次の瞬間、ヘルメスはにやりと笑った。

 

「決まったよ。形式は――総力戦だ」*2

 

「ヘルメスぅぅぅぅぅぅう!!」

 

 ヘスティアが思わず叫ぶ。

 

 ――ふざけるな!

 ――何でよりによってそれを引くんだ!!

 

 内心の悲鳴が、表情にありありと出ていた。

 

(こっちはミネ君の実力を低く見せたいんだぞ!

 総力戦なんて、一番目立つじゃないか!!)

 

 総力戦、

 

 文字通りファミリアの全戦力をもってお互いのどちらか全てが戦闘不能になるまで死力を尽くすファミリアの実力が最も出る戦争遊戯ウォーゲームの種目。

 

 実力が拮抗したファミリア同士なら大いに楽しめるが実力が離れていれば一方的な戦いになる。

 

 神会の空気が、目に見えてざわめいた。

 

「総力戦だと?」

「はは、これはまた派手なのが出たねぇ」

「弱小が粉砕される様を、じっくり楽しめるってわけだ」

 

 好奇と嘲笑が入り混じった視線が、ヘスティアへと突き刺さる。

 神々にとって、戦争遊戯ウォーゲームとは“娯楽”だ。

 勝敗よりも、どれほど派手に散るか――それが重要なのだから。

 

 アポロンは、一瞬だけ目を見開いた後、すぐに破顔した。

 

「――素晴らしい。実に素晴らしい選択だ」

 

 愉悦を隠そうともせず、両手を広げる。

 

「総力戦。つまり、逃げ場なし。小細工も通じない。

 ファミリアの“格”が、そのまま結果として示される」

 

 愉悦を浮かべた瞳が、ヘスティアを射抜いた。

 

「後悔しても、もう遅いぞ? 今からでも降参するかい?」

 

「……するわけないだろ?」

 

 見てみろあの三女神の顔を。

 

 アストレアは遠い目をし、

 ヘファイストスはこめかみを押さえ、

 フレイヤに至っては、愉悦と憐憫が混ざり合った微笑みを浮かべている。

 

(……ああ、やってしまったな)

 

 ヘルメスは内心で苦笑した。

 これは“引き”が悪かったのではない。

 最初から、どれを引いても同じだったのだ。

 

 神会の神々は知らない。

 この総力戦が、娯楽ではなく――救護と言う名の蹂躙劇になることを。

*1
ヘルメス「なんて羨ましいんだ!そこを代わってくれアポロン!」

*2
ヘスティア、メンゴ!ヤバいの引いちゃった




ブルアカならやっぱ総力戦だよね!

ミネを表に出す方法は1話時点で既に固まってました。
というのも原作でのアポロン・ファミリアに対するギルドの対応があんまりだったのでヘスティア・ファミリア側からの要求があってもおかしくない案件だと思っていたので。

なおこの神会の裏でオッタルは絶賛ボコられ中。
何せミネと1日中戦うたびにステイタスがトータル100以上上昇(主に耐久)するのでオッタルとしては可能な限り戦っていたい模様。
その度に洗礼は中止となり満たす煤者達は休暇を得られるので満たす煤者達には好評だけど他の団員には滅茶苦茶不評。
そろそろ他幹部連中もミネに突撃してきそう。

このSSのフレイヤ様は…

  • 普通のフレイヤ様
  • アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様
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