ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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そして舞台は遊戯に至る

 待ちに待った戦争遊戯ウォーゲーム当日。

 

 ギルドの前に勝手に設営された舞台で、褐色の肌を持つ青年と、象の被り物をした神が、否応なく注目を集めていた。

 

『お待たせしました皆さん! 今回の戦争遊戯ウォーゲームの実況を務めさせて頂きます、ガネーシャ・ファミリア所属!

 喋る火炎魔法こと――イブリ・アチャーでございます!』

 

 拡声器越しの派手な声が、広場一帯に響き渡る。

 

 集まった大勢の人々は、冒険者、商人、一般市民、そして神々。

 戦争遊戯ウォーゲームという非日常を一目見ようと、ギルド前は人で埋め尽くされていた。

 

『そして私の隣! 説明不要! 我らが主神、オラリオの愉快な象さん――ガネーシャ様でございます!』

 

『俺がガネーシャだ!!』

 

 象の被り物をした神が、堂々と両腕を広げる。

 その瞬間、広場は歓声と笑いに包まれた。

 

 ――それを、少し離れた高所から見下ろす影があった。

 

 バベルの三十階。

 石造りの外廊に腰掛け、足をぶらぶらと揺らしながら、ロキは地上の喧騒を眺めていた。

 

「おー、大分盛り上がっとるなぁ」

 

 ロキだけではない。

 

 この場には戦争遊戯ウォーゲームの主役であるヘスティアとアポロンを始め多くの神々が集まっていた。

 

 この場に居なくとも酒場に赴き冒険者と一緒に賭けに興じる神や自分の本拠で眷属達と戦争遊戯ウォーゲームを楽しむ気の神などもいる。

 

 全員の共通点はただ一つ、戦争遊戯ウォーゲームをいかに楽しむかだった。

 

「…頃合いかな」

 

 ヘルメスは懐中時計の針が正午を目前としているのを確認し宙に向かい話しかける。

 

「ウラノス、『力』の使用許可を」

 

【許可する】

 

 重々しい神威のこもった宣言が響き渡りヘルメスは『神の鏡』を施行する。

 

 その瞬間、酒場や街角のいたるところに『鏡』が出現する。

 

 人々は色めき立ち、神々は一斉にその光景へと視線を向けた。

 

『では鏡が置かれましたので、あらためて説明させていただきます!

 今回の戦争遊戯ウォーゲームは【ヘスティア・ファミリア】対【アポロン・ファミリア】、形式は総力戦!

 両陣営の戦士たちは既に戦場に赴き始まりの正午を待つばかりとなっております!!』

 

 イブリの声に合わせ、《神の鏡》の映像が切り替わる。

 

 映し出されたのは、今回の戦場――

 

 隠れることすらできない広大な大草原である。

 

『勝利条件はただ一つ!相手陣営の眷属達を全て戦闘不能にすること!

 ――見渡す限り遮蔽物なし!

 奇襲も伏兵も通用しない、純然たる力と戦術が試される戦場でございます!!』

 

 イブリの声が、興奮を隠しきれずに弾む。

 

 《神の鏡》に映るのは、果てしなく続く緑の絨毯。

 なだらかな起伏こそあれど、岩も林もなく、身を隠す場所は皆無。

 

 逃げも隠れも許されない。

 ただ正面から、力と力をぶつけ合うためだけに用意された戦場だった。

 

「もういいかぁー!賭けを締め切るぞ!!」

 

 実況が外に響く中、とある酒場では冒険者主導の賭博が行われている。

 

「ー兎に十万!!」

 

「おいおい、モルド! 頭がおかしくなっちまったのか?」

 

 酒場にどっと笑いが起こる。

 荒くれた冒険者たちの視線が、一斉に声の主へと向けられた。

 

「相手はアポロン・ファミリアだぞ!?

 人数差、装備、経験――全部向こうが上だ!」

 

「兎一匹に十万ヴァリス? ドブに捨てる気かよ!」

 

「うるせぇ!勝てば100倍だ!!後で泣きついてきても奢ってなんてやらねぇぞ!!」

 

 モルドは椅子の上でふんぞり返り、杯を片手に《神の鏡》へと視線を固定した。

 

「……来るぞ」

 

 その一言に、酒場の喧騒が僅かに静まる。

 

 鏡の向こう――

 大草原の両端に、二つの陣営がはっきりと映し出されていた。

 

 アポロン・ファミリア。

 

 重装備の前衛が横一列に展開し、その後方に弓兵と魔導士が控える。

 

 対するヘスティア・ファミリア。

 

 映っているのは、たった二人。

 

「おい、だれだアイツ」

 

 酒場の誰かが、鏡の一点を指差した。

 

 白髪赤眼の少年、ベル・クラネル。

 そして、その隣。

 

「蒼髪の…エルフやと?」

 

 ロキは愛しいアイズが数日間探し続けていたその存在に瞠目する。

 

『えー、ただいま入った情報によりますと!

 ヘスティア・ファミリアの今回の戦争遊戯ウォーゲームの参加者は――二名!!』

 

 イブリの声が、意図的に間を取って響く。

 

『一人はご存じ! 白髪赤眼の新星!

 リトル・ルーキー、ベル・クラネル!!』

 

 歓声と、野次が入り混じる。

 

「おおー!」

「兎だ兎!」

「とはいえ一人じゃ無理だろ!」

 

 だが、イブリはそこで終わらせなかった。

 

『そしてもう一人――!』

 

 《神の鏡》の映像が、ベルの隣へとズームする。

 

 蒼い長髪が、風に揺れる。

 透き通るようなエルフの耳。

 細身の体躯に軽装――盾は…持っていない。*1

 

『蒼髪のエルフ!

 名前は――ミネ・シルヴァリエ!!』

 

 ざわり、と空気が変わる。

 

『レベル不明!ギルドより公的にレベル申請の拒否権を持っていると言う情報だぁ!

 つまり実力不明の謎の美少女エルフだぁ!!』

 

 実況の最後の一言が、広場と酒場、そして神々の観覧席にまで波紋のように広がった。

 

「ヘスティア~、まだあんなかわいい子を隠していたのかい。どうせならあの子も貰ってあげようじゃないか」

 

 アポロンの余りに恥知らずな発言に、ヘスティアのこめかみがぴくりと跳ねた。

 

「調子に乗るなよ、アポロン。ミネ君もベル君もボクの大事な眷属だ。

 勝手に口説くのも、奪うのも――許さない」

 

「ははっ、怖い怖い。だが勝者は全てを得る権利がある。そうだろう?」

 

 アポロンは愉悦に満ちた笑みを浮かべ、《神の鏡》へと視線を戻す。

 

「力で示してもらおうじゃないか。

 その“謎の美少女エルフ”とやらが、本物かどうかをね」

 

 ーあぁ、存分に思い知るがいいさ。君が何に喧嘩を売ったかをね。

*1
ロキ・ファミリアの装備の整備などでゴブニュ・ファミリアは過労死寸前だったので自分の盾はいつでもいいと後回しにしてもらった




山吹色の妖精や剣姫がアップを始めました。
所属がバレれば突撃するだろう二人だからしょうがないね!

このSSのフレイヤ様は…

  • 普通のフレイヤ様
  • アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様
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