ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか 作:救護騎士団オラリオ支部
「“救護”を開始します」
その一言が、戦場に落ちた瞬間だった。
「……は?」
最初に声を上げたのは、アポロン・ファミリア前衛の一人だった。
「救護? 何を意味不明なことを言ってやがる!!」
嘲笑と苛立ちが混じった叫び。
剣を握る手に力が籠もり、前衛たちが一斉に踏み出す。
「ふざけるなよ!」
「ヒーラーが前に出るだと? 正気じゃねぇ!」
四方から殺気が迫る。
ベルが倒れた場所を囲むように、再び形成される包囲網。
――だが。
ミネ・シルヴァリエは、動かなかった。
逃げない。
構えない。
「【我が名の下に誓おう。砕けぬ盾よ、】」
「詠唱だと!? 止めろ!!」
怒号と共に、数人が踏み込む。
剣が振り下ろされ、
槍が一直線に突き出される。
――次の瞬間。
槍が粉々に砕け散った。
「は?」
「【天より降り立ち、全ての穢れと災厄を退けよ。】」
砕け散った槍の残骸が、乾いた音を立てて地面に降り注ぐ。
「――な、何が……」
踏み込んだ前衛たちが、揃って動きを止めた。
今、何が起きた?
刃は届かず、武器だけが壊れた。
ミネ・シルヴァリエは一歩も動いていない。
「【鉄壁の城塞となれ――】」
ーアストラ・ファエル
「…ん?何も起きねぇじゃねぇか!」
「こけおどしかよ!」
そう言った前衛の二人が斧と剣をミネに向ける。
武器が…砕ける。
「――は?」
二人の前衛が斧と剣を振り下ろす。
――だが、武器は空中で粉々に砕け散った。
「ち、ちくしょう……な、何だこれは!」
観戦していた者の一部はその光景に戦慄する。
フィンは冷や汗を流しながら一緒に観戦していたロキ・ファミリアの面々に説明した。
「素手で武器を砕いている。ただそれだけだよ。ただその動作が恐ろしく早くて勝手に武器が砕けているように見えるだけだ」
フィンの言葉に、ロキ・ファミリアの面々は息を飲んだ。
「――素手で武器を砕いている?」
目の前で次々と武器が粉砕される光景と、説明の簡潔さとの落差に、言葉を失う。
確かに、ミネの手がぶれて見えている気もする。
ただそのブレさえもレベル3以下には捉えることすらできない。
だからレベル3が最大戦力のアポロン・ファミリアには何が起きているのさえ理解できないだろう。
눈_눈
「レフィーヤ~、顔がすごいことになってるよ~」
ティオナの声が飛ぶ。
隣にいるレフィーヤは、鏡の中に映る姉――ミネの異常な力の光景を前に、何とも微妙な表情をするしかなかった。
ミネが次の動作に入る。
砕けた武器の柄を呆然と見つめる冒険者に対し…、
「"救護"!!」
見事なアッパーカットが炸裂した。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
誰の目にも捉えられるように加減された拳が、冒険者を上空へ吹き飛ばした。
奇妙な悲鳴を残し、前衛の一人は錐揉みしながら宙を舞い、そのまま地面に叩き落ちる。
血は出ていない。骨も折れていない。
「ああああぁぁあああ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!?」
地面に転がった前衛が、情けない悲鳴を上げながらのたうち回る。
――意識ははっきりしている。
四肢も動く。致命傷はない。
「な、なんで今のを喰らって無傷なんだよ?」
「治しました」
「は……?」
「打撃と同時に治癒を施しました。痛みはありますがダメージはありません」
あまりにも淡々とした説明だった。
殴り飛ばされた前衛は、涙目のまま呆然とミネを見上げる。
確かに、全身が焼けるように痛い。
だが――動く。折れていない。血も出ていない。
「勿論、これからの攻撃に対しても同じことをします。怪我の心配はありませんので遠慮なくかかってきてください」
――その言葉が、完全に状況を凍結させた。
「……え?」
前衛の一人が、間の抜けた声を漏らす。
遠慮なく?
怪我の心配はない?
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁああ!」
敵を回復する?
明らかにこの女は、俺たちを――
完全に、見下している。
「囲め!! 一斉に行け!!」
怒号と共に、アポロン・ファミリア前衛が一斉に動いた。
数の力。
それだけが、彼らに残された唯一の選択肢だった。
剣、斧、槍。
徒手の者まで混じり、四方八方から殺到する。
――だが。
武器が砕かれる。
近づいた者は殴り飛ばされる。
攻撃が、まるで当たらない。
「くそっ……! 当たれよ!!」
剣を振るった瞬間、
刃が“何か”に触れた感触だけを残して霧散する。
「……っ!?」
次の瞬間、
胸に叩き込まれる衝撃。
「ぐはっ――!!」
吹き飛ばされた前衛は、空中で一回転し、そのまま地面に叩きつけられた。
――しかし、血は出ない。
骨も折れていない。
「いっ……痛ぇ……!!」
地面を転がりながら、前衛が悲鳴を上げる。
胸を押さえ、呼吸を整えようとするが――身体は、動く。
「……あ?」
折れていない。
血も出ていない。
致命傷どころか、戦闘不能ですらない。
ただ、痛いだけだ。
「“救護”」
淡い光が降り注ぎ、残っていた微細な損傷すら完全に消える。
「な……何度も、殴って……治して……」
前衛の声が、震え始める。
「ふざけんな……! こんなの……!」
再び剣を構えようとした瞬間――
柄を握る手が、言うことをきかなくなっていることに気づいた。
恐怖だ。
死なないと分かっている。
怪我をしないと分かっている。
だからこそ、終わらない。
「ひ、引け! 一旦距離を――」
誰かが叫んだ、その直後。
「下がらないでください」
静かな声が、戦場を切り裂いた。
ミネ・シルヴァリエは、歩いている。
ゆっくりと、確実に。
「救護は、まだ済んでいません」
一歩。
「考えを改めるまで」
二歩。
「自身の行いを悔い改めるまで」
三歩。
「私は、治し続けます」
前衛の一人が、後ずさった。
「……っ、来るな……!」
背を向けた瞬間――
視界が反転する。
「“救護”」
背中に叩き込まれた拳が、身体を宙へ放り出した。
「が――っ!」
落下。
衝撃。
そして、回復。
「や、やめろ……! やめてくれ……!」
声が、もはや怒号ではなく、懇願に変わっていた。
もはや勝ち負けではない。
逃げ場のない安全な地獄。
「リトル・ルーキーだ……! 奴を人質にしろ!」
錯乱した声が上がる。
倒れているベルへと、数人が駆け出した。
「蒼髪のエルフ!投降しなければベル・クラネルの身の安全は保障しないっ!」
ベルを確保し、その首筋にナイフを添える。
それを見ながらもミネは止まらない。
アポロンの眷属達を蹂躙し回復し精神を削っていく。
「おい、聞こえてるだろ!投降しろ!!」
だがやはりミネは止まらない。
「畜生!後悔しやがれ!!」
ベルの首にナイフを突き立てたその時だった。
蒼い透明がナイフを拒む。
「な、なんだよ……これ……!」
ミネは、視線だけを向けた。
「ベルさんには、障壁を張っています」
淡々と。
「先程の詠唱はベルさんに防御障壁を展開するためのものです。
人質には、なりません」
その言葉で、理解してしまった。
勝ち筋が、存在しない。
「……く、そ……」
剣を落とす音が、一つ。
次に、もう一つ。
そして、次々と。
膝をつく者が増えていく。
だが――
「言いましたよ、自身の行いを悔い改めるまで、救護は続きます」
その宣告に、誰一人として安堵できなかった。
ミネ・シルヴァリエは、静かに拳を構える。
「次の方」
その声は、あまりにも穏やかで。
「どうぞ。
“救護”は、平等です」
戦場は、完全に沈黙した。
それは、慈悲ではない。
治すことを許された、絶対的暴力だった。
「何をしているお前たち!」
怒号が、戦場を貫いた。
空気が――変わる。
膝をつき、武器を落とし、怯え切っていたアポロン・ファミリアの前衛たちが、一斉に顔を上げた。
「ヒュ……ヒュアキントス様……!」
「距離を離して魔法で対応しろ!奴に接近を許すな!奴の魔法は既に2つ割れている!攻撃魔法はもっていない可能性が高い!」
その声は、
恐怖に縛られていた前衛たちの背を、無理やり押した。
「き、聞いたな! 距離を取れ!」
「魔導士! 詠唱開始だ!!」
前衛がミネを通さないように後衛を守る。
いくら強かろうが――
魔法で圧倒してしまえば。
それが、
ヒュアキントスの結論だった。
「構えろ! 前衛は盾になれ!」
「魔導士、斉射だ!!」
後衛が詠唱に入る。
魔力が渦を巻き、空気が震え始めた。
火球。
風刃。
光弾。
質は低い。
だが数がある。
――本来なら、それで十分だった。
ミネ・シルヴァリエは、 魔法が吹き荒れる嵐の中で悠然と歩を進める。
雷光が弾かれ、火炎が散り、氷が砕ける。
ミネ・シルヴァリエの周囲には、
淡く、しかし揺るぎない蒼光が展開されていた。
「な……っ、効いてねぇ……!?」
「全部、弾かれてるぞ!!」
後衛の魔導士たちに、動揺が走る。
「障壁だ……!
ベル・クラネルに張ったのと同じ……!」
誰かの叫びが、戦場に転がった。
その瞬間、
後衛の魔導士たちは“理解”してしまった。
――あの蒼光は、防御ではない。
拒絶だ。
害意を、
殺意を、
戦意そのものを――
弾くための結界。
ミネ・シルヴァリエが、
歩いてくる。
「……来るな……」
前衛の一人が、掠れた声を漏らす。
盾を構えている。
武器も、握っている。
だが――足が、動かない。
「止まれ……!
これ以上近づくな……!!」
叫びは、威嚇ではない。
懇願だった。
「“救護”」
淡々とした宣告。
次の瞬間。
盾が、砕けた。
金属が破壊された音ではない。
まるで“役目を終えた”かのように、
静かに、粉へと崩れ落ちる。
「――っ!?」
衝撃が、腹部を打つ。
「ぐ……ぁ……っ!!」
宙を舞い、叩きつけられる。
だが。
骨は折れていない。
内臓も、無事だ。
打撃の痕跡すら消える。
「……は……?」
前衛は、仰向けのまま、天を見た。
動ける。
立てる。
――立ててしまう。
「な……なんだよ……これ……」
恐怖が、形を持ち始める。
殺されない。
壊されない。
終わらない。
「ヒュアキントス様!!
近接は無理です!!」
後衛の叫びに、
ヒュアキントスは歯を食いしばった。
「……構わん!!
精神力が尽きるまで撃て!!
あの障壁は万能じゃない!!」
自分に言い聞かせるような声。
「質は問わん!
数で押せ!!」
魔導士たちが、再び詠唱に入る。
火球が、
風刃が、
光弾が――
降り注ぐ。
――だが。
蒼の障壁は全てを防ぐ。
「オラリオの奇跡…」
神の一人がそう口ずさむ。
暗黒期にあの障壁と同じものを見た覚えがある。
――無辜の民を救い、いつの間にか消えていた冒険者。
その記憶が、神々の脳裏を掠める。
「おいおい、まさか……!?」
「今更、表舞台に出てくるのか……!」
神々のざわめきが、観戦席を満たす。
暗黒期。
秩序が崩れ、街が血に沈んだ時代。
英雄でも、覇者でもない。
ただ――救い続けた者。
戦場へと、視線が戻る。
ミネ・シルヴァリエは、歩みを止めない。
蒼光の結界をまとい、
魔法の嵐の中を、静かに。
「……来るな……」
誰かが、呟く。
だが、その声はもう誰にも届かない。
「“救護”」
宣告。
次の瞬間、
前衛の一人が吹き飛ばされる。
叩きつけられ、
転がり、
呻き――
そして。
淡い光に包まれ、立ち上がる。
「……っ、は……?」
自分の身体を見下ろし、
何度も、確かめる。
折れていない。
裂けていない。
血も、出ていない。
――生きている。
だが。
「……っ、やめろ……」
声が、震える。
「もう……やめてくれ……」
剣を握る手が、下がる。
それを見て、
別の者が、武器を落とす。
また一人。
また一人。
膝をつく。
だが――
「……違います」
ミネの声は、怒りでも嘲りでもなかった。
ただ、問いだった。
「私が聞きたいのは――
そのような懇願ではありません」
膝をついていた前衛の一人が、びくりと肩を跳ねさせる。
「え……?」
何が違うというのか。
もう武器も捨てた。
戦意もない。
これ以上、何を求めるというのか。
ミネ・シルヴァリエは、その者の前で足を止めた。
見下ろす視線は、冷たいわけではない。
だが――逃げ場がなかった。
「あなた方は、何をしましたか」
静かな問い。
「何を奪おうとしましたか」
前衛の喉が、ひくりと鳴る。
「……お、俺たちは……」
言葉が、続かない。
「神が命じたからですか」
淡々とした声。
「眷属を奪っても良いと?
尊厳を踏みにじっても良いと?
弱者を人質にしても、許されると?」
一歩、近づく。
前衛は、反射的に後ずさった。
「ごめんなさい!!」
確かに響いた。
戦場の喧騒を、魔法の炸裂音を、恐怖の喘ぎを――
すべてを押し退けて。
声の先には、黒髪の少女がいた。
アポロン・ファミリア後衛。
カサンドラ・イリオン。
震える両膝を抱え込み、額を地面に擦りつけている。
「命令だからって……
考えもしないで……
私も……同じだったからって……!」
肩が、小刻みに震える。
「……怖かったんです……
逆らったら……
捨てられるって……」
カサンドラの指先が、土を掴む。
「でも……
それでも……
それは……」
声が、詰まる。
「……間違ってました……!」
沈黙。
ミネ・シルヴァリエは、少女を見下ろしていた。
蒼光は、揺らがない。
だが――
「顔を、上げてください」
その声に、怒りはない。
少女は、恐る恐る顔を上げた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔。
だが、視線は逃げていない。
「あなたは、今――
自分で考えました」
ミネの拳が、ゆっくりと下ろされる。
「恐怖を理由にせず、
命令を盾にせず、
自分の行いを、間違いだと認めました」
ミネの手が幼子をあやすようにカサンドラの髪に触れる。
「……あ……」
ミネは、戦場全体を見渡す。
「悔い改めとは、
許しを乞う言葉ではありません」
一歩、前へ。
「自分の行いを、
自分の言葉で否定すること」
二歩。
「恐怖の中でも、
正しさを選ぼうとすること」
三歩。
「それができた者には、
私は、拳を振るいません」
――選択肢が、示された。
戦うか。
逃げるか。
そして――考えるか。
「……っ」
最初に武器を落としたのは、
魔導士の青年だった。
「……俺もだ……」
膝をつく。
「……何も考えてなかった……」
次に、若い前衛が盾を手放す。
「……俺は……
命令に従ってただけだって……
思い込んでた……」
次々と、
武器が地面に落ちる音が、重なる。
だが――
「ふざけるな!!」
怒号が、戦場を裂いた。
ヒュアキントスだ。
「泣けば許されるとでも思っているのか!!
これは戦争遊戯だ!!
勝者が全てを得る!!」
その声に、
何人かの眷属が、びくりと震える。
だが。
ミネは、ヒュアキントスを見据えた。
「お前さえ倒してしまえばいい!
それで全てが解決する!!」
ヒュアキントス・クリオは、吠えた。
「勝てば正しい!
勝てば奪っていい!
勝てば許される!!」
歪んだ笑み。
「それが戦争遊戯だろうが!!」
その言葉に、
誰も同調しなかった。
武器を落とした者。
膝をついた者。
泣きながら顔を伏せる者。
誰一人として、
もう“勝ち”を見ていない。
――ただ一人を除いて。
ミネ・シルヴァリエは、
ヒュアキントスを見ていた。
蒼光の奥。
一切の揺らぎのない視線。
「……あなたは」
静かな声。
「アポロン様を止めるべきでした」
「黙れ!!」
ヒュアキントスが剣を振り上げる。
「俺は選ばれた!!
アポロン様に見初められた!!」
だが。
剣は、ミネに届かない。
触れる前に、
刃が“役目を失った”かのように崩れ落ちた。
「……な……」
拳が、構えられる。
「“救護”」
その言葉は、
もはや宣告ですらなかった。
当然の処置。
避けられない工程。
――拳が、鳩尾に沈む。
「――がっ……!?」
身体が宙を舞い、
叩きつけられる。
だが。
骨は折れない。
内臓も壊れない。
即座に、回復が走る。
「……は……?」
息ができる。
立てる。
――立ててしまう。
「な……
なんで……!」
叫びが、震えに変わる。
「どうして……
終わらない……!!」
ミネは、歩み寄る。
一歩。
二歩。
「ファミリアの団長と言う立場は重いものです」
三歩。
「ファミリアの代表として表に立ち責任のある立場です」
四歩。
「だからこそ主神が間違ったときは一番に止めなければならない」
ヒュアキントスは、後退する。
「……ふざけるな!……神の望みをかなえてこその眷属だ……!」
「“救護”」
衝撃。
「ぐ――っ!!」
叩きつけられ、
回復し、
立たされる。
「や、やめろ……!」
声が、掠れる。
「本当に敬愛しているのなら間違いを間違いと教えるべきです」
ミネの声は、
あまりにも静かだった。
「……っ、黙れ……!」
剣の柄だけを握りしめる。
もう、刃はない。
「俺は……
間違ってない……!」
――答えない。
拳が、振るわれる。
「“救護”」
また。
そして、また。
倒れては、治され。
立たされては、殴られる。
血は出ない。
骨も折れない。
だが。
心だけが、削れていく。
「……っ……
アポロン様は……
間違ってなど……」
その言葉に、
戦場が凍りついた。
ミネは、足を止める。
拳が、下ろされる。
「――他者を害することが間違いでない筈がありません」
一歩、近づく。
観戦席の神々が、息を呑む。
これは制裁ではない。
処刑でもない。
アポロンは、言葉を失っていた。
ヒュアキントスは、
ついに膝をつく。
「……俺は……」
震える声。
「……間違ってなど……」
「もうやめてくれ!!」
その叫びは、戦場ではなく――
観戦席から響いた。
神アポロンの声だった。
一瞬、誰もが耳を疑う。
だが確かに、それは主神自身の悲鳴だった。
「これ以上は……!もう、やめてくれ!!
私の眷属達をこれ以上傷つけないでくれ!!」
神々の視線が、一斉にアポロンへ向けられる。
「……降参する。
私が……間違っていた!!」
アポロンの叫びは、
神としての威厳も、誇りも、すべて投げ捨てたものだった。
観戦席が、凍りつく。
神が――
自らの非を、認めた。
「……もう、やめてくれ……」
震える声。
逃げ場のない恐怖ではない。
理解してしまった者の声だった。
「私の眷属達は……
私の望みを叶えようとしただけだ……
それを……
ここまで……」
――ゴォォン……!!
重く、低い銅鑼の音が、戦場を包み込んだ。
一度。
二度。
そして、三度。
誰の耳にも等しく届く、終わりの合図。
『――戦争遊戯、終了!』
解説役のイブリの声が、わずかに震えながら響いた。
『勝者――ヘスティア・ファミリア!
アポロン・ファミリアがまさかの降伏だぁ!』
戦争遊戯終了の銅鑼の音を聞いたミネは、ヒュアキントスに背を向ける。
もう、拳を構えることはない。
「…貴方の主張は認めることが出来ません。ですが…」
ヒュアキントス・クリオは、その背中を見つめたまま、動けずにいた。
「……主神を想うその気持ちは、本物だと思います。できれば――」
ミネ・シルヴァリエは、ほんのわずかに言葉を区切った。
「その想いを、正しい方向に向けてほしいものです」
それは叱責でも、裁断でもなかった。
まして勝者の言葉でもない。
ただの――忠告だった。
ヒュアキントス・クリオは、何も言えなかった。
否定する言葉も、怒鳴り返す力も、もう残っていない。
ミネは静かにベルの傍に寄り、その身体を抱き留めた。
「さぁ、帰りましょう、ベルさん。皆さんが待つオラリオに」
返答はない。
ただ抱き留められたベルはとても穏やかに眠っていた。
【金剛聖癒(ディアマンティーク・ブレス)】
・打撃属性の攻撃に回復効果を付与
・精神力を消費し任意発動
元ネタは言うまでもなくクレイジー・ダイヤモンド。
与えたダメージの倍の回復を与える。
打撃と言うワンアクションで速攻発動できるので緊急回復手段に使われる。
相手の意思だけを折ることが容易にできるため暴徒鎮圧に便利!
このSSのフレイヤ様は…
-
普通のフレイヤ様
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アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様