ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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行くぞ5周年、石の貯蔵は十分か?
44000。
う~ん、微妙。
無料100連合わせて4人揃うか?
特にアリスとケイは絶対に来て欲しいが。


ラキア王国

 ライラはオラリオの中央通りから一本外れた、落ち着いた喫茶店の奥席で椅子に身を沈めていた。

 磨かれた木製のテーブル、壁に掛けられた古い冒険譚の絵、微かに香る焙煎豆の匂い。戦場とは正反対の、穏やかな空間だ。

 

「……はぁ」

 

 自然と、ため息が零れる。

 カップに注がれたミルクティーに口をつけながら、ライラはここ数日を思い返していた。

 

 ――ミネのやらかし。

 

 その一言で片付けるには、あまりにも規模が大きすぎた。

 オラリオを震撼させたイシュタルファミリアの壊滅。

 後始末に奔走した結果、ライラは文字通り休む暇もなく働き詰めだった。

 

 ギルド、各派閥、神々への説明。

 処分内容のすり合わせ、被害の補填、情報統制。

 裏で動いた者たちの洗い出し――。

 

 どれも一歩間違えれば、次の火種になりかねない綱渡りだった。

 

「……アイツは、本当に」

 

 ライラは苦笑し、言葉を飲み込む。

 怒りよりも、呆れと――ほんの少しの心配が勝っていた。

 

 イシュタル・ファミリア壊滅という結果は、表向きは都市の浄化として歓迎されている。

 だが裏では、均衡が崩れたことで動き始めた者たちが確実に存在していた。

 

 表通りでは、そんな緊張など存在しないかのように人々が行き交っている。

 露店の呼び声、子供の笑い声、冒険者たちの軽口。

 だが都市の中枢では、確実に歯車が噛み合わなくなり始めていた。

 

(……運が悪い、ってレベルじゃねぇな)

 

 ライラは心中でそう呟く。

 

 ラキア王国の侵攻。

 オラリオにとってはもはや季節行事のようなものだ。

 ロキ・ファミリアをはじめとした主力派閥が迎撃に回り、追い返す――いつもの流れ。

 

 だからこそ、致命的ではない。

 だが、問題は“同時期”であることだった。

 

「イシュタル・ファミリアの残滓を洗うには、人手が足りなすぎる……」

 

 ぽつりと零れた独り言は、湯気とともに消えた。

 

 表向き、イシュタル・ファミリアは完全に崩壊した。

 神は送還され、拠点は押収、団員は散り散り。

 だが――それで終わるほど、長年オラリオの闇に根を張ってきた派閥ではない。

 

 裏帳簿。

 地下組織との繋がり。

 都市外部への資金や人材の流出。

 

 多くの証拠を確保したが全てを回収できたとは思わない。

 

 取り逃がした“糸”は、必ずどこかに繋がっている。

 それが地下であれ、都市の外であれ――あるいは、別の神の手の内であれ。

 

(……静かすぎるのが、一番嫌な兆候だ)

 

 ライラはそう判断していた。

 

 イシュタル・ファミリアの名は消えた。

 だが、彼女たちが築き上げた闇そのものが、都市から消えたわけではない。

 

「お、お師匠様ー! ようやく見つけました!!」

 

 場違いなほど大きな声が、喫茶店の空気を一気に引き裂いた。

 

 何人かの客が驚いて振り返り、給仕が慌てて眉をひそめる。

 だが当の本人は気にも留めず、入口から全力で手を振っていた。

 

「……」

 

 ライラは一瞬、目を閉じる。

 

 ――ものすごく、いやな予感がする。

 

 ライラはゆっくりと目を開き、覚悟を決めたように振り返った。

 

 リリルカが、乱れた髪をなりふり構わずに揺らしながら、店の入口に立っていた。

 息は荒く、頬はわずかに紅潮している。

 明らかに――全力で駆け回ってきた後だ。

 

「……リリ」

 

 ライラが名を呼ぶと、彼女はぱっと顔を上げた。

 

「お師匠様! よ、良かった……本当に、ここに……!」

 

 その声は安堵に震えている。

 ただの騒がしさではない。

 “切羽詰まった報告”があると、一瞬で理解できた。

 

「簡潔に言え。何があった?」

 

「ヘスティア様が誘拐されました!!」

 

 一瞬――

 喫茶店の音が、すべて消えた。

 

 露店の喧騒も、カップが触れ合う音も、給仕の足音すらも。

 世界から“音”という概念だけが、すっぽりと抜け落ちたような感覚。

 

「……は?」

 

 ライラの口から零れたのは、疑問とも呆然ともつかない、短い一音だった。

 

 リリルカは、その反応を予想していたかのように、すぐに続ける。

 

「アレス様がヘスティア様をオラリオ外に連れ去ったとさっきガネーシャ・ファミリアから!!」

 

 軍神アレス。

 

 ラキア王国の主神にして、何度もオラリオに侵攻しては敗北を重ねてきた“常習犯”。

 戦を司る神でありながら、その戦略眼は――正直、評価が難しい。

 

「……はぁぁ?」

 

 今度こそ、はっきりとした声がライラの喉から零れた。

 

 驚愕ではない。

 怒りでもない。

 

「……ミネはどこだぁ!!!?」

 

 喫茶店の奥席で抑え込まれていた空気が、一瞬で破裂した。

 

 低く、だが明確に殺気を孕んだ声。

 給仕がびくりと肩を震わせ、近くの客が思わず身を引く。

 

 リリルカは一瞬たじろぎ、それから必死に首を振った。

 

「すでにオラリオの外に飛び出してます!!」

 

 マジでふざけんなよアイツ!!

 

----------------------------------

 

「くそ~、剣姫め! ヘスティアを取り逃がしてしまったではないか!」

 

 そう言って地団太を踏むアレスは兜を脱ぎ捨てていた。

 荒野に張られた天幕、規則正しく並ぶ槍と盾。

 そこかしこに立つ兵士たちは、いずれもラキア王国正規軍――とはいえ、その視線は一様に気まずそうだ。

 

「まったく……あと一歩、あと一歩だったのだぞ!?」

 

 オラリオの神を確保しオラリオに対して要求を突きつける。

 

 そして偶然ヘスティアを確保し王国に撤退中に剣姫や万能者の追撃に会いヘスティアを逃がしてしまった。

 

 マリウスは深く息を吐いた。

 ため息というより、長年積もりに積もった諦観の吐露だった。

 

「……もう少しだった、ではありません。

 “失敗した”のです、アレス様」

 

「なにを言うかマリウス! あれは不運だ! 剣姫が追撃に来るなど――」

 

「オラリオの神が誘拐などされれば追撃が来るのは当たり前です。

 そんなことは、子供でも分かります」

 

 淡々とした口調。

 だが言葉の一つ一つは、容赦なく事実を突きつけていた。

 

「そもそも、都市の神を拉致する作戦自体が――」

 

「それは成功したではないか!」

 

 アレスが食い気味に遮る。

 

「ヘスティアは確かに我が手中にあった!

 あと少しで王国領に――」

 

 アレスの肩にポンッと手が置かれる。

 

 アレスの肩に置かれた手は、驚くほど軽かった。

 それでいて――背筋に走る冷気は、刃を突き付けられた時よりも鋭い。

 

「……王国領に、何ですか? 続きをどうぞ」

 

 その声は、静かで、穏やかで。

 だが一切の温度を感じさせない。

 

「……っ!?」

 

 アレスがはっとして振り返る。

 

 そこに立っていたのは、

 

 蒼髪のエルフであった。

 

 アレスもその顔には見覚えがあった。

 

 先日行われたヘスティアとアポロンの戦争遊戯。

 

 アポロンの眷属を一方的に蹂躙していた蒼髪のエルフ。

 

 つまりヘスティアの眷属の一人だ。

 

 この場に居る理由など考えるまでもない。

 

 有無を言わさずそのエルフは拳を構え…。

 

「救護!!」

 

 アレスをはるか上空へと殴り飛ばした。

 

----------------------------------

 

 事の顛末を語っておこう。

 

 アレスはミネによって叩きのめされた後、オラリオに捕虜として捕まることになった。

 

 ラキアの王子ということもありマリウスも一緒に捕まったが、こちらは常識的な人間だったためミネの制裁を免れ無傷のままオラリオの捕虜となった。

 

 ヘスティアはベルとアイズに無事救助されオラリオに戻っている。

 

 ラキア王国はアレスとマリウスの返還を要求したが一つの条件をのむことを条件に二人は解放されることとなる。

 

 それはマリウスの戴冠。

 

 常識的なマリウスを王に据えることでアレスの暴走を少しでも抑えるのがオラリオの狙いだった。

 

「で、何でアタシ達がラキアに出向くんですかね、アストレア様」

 

 若干どころではなく不機嫌そうに、ライラは腕を組んだまま言った。

 

 場所は《星屑の庭》の応接室。

 ラキア王国との交渉団編成を告げられた直後である。

 

「ラキアとオラリオ、双方が“中立”と認める神が必要だったのよ」

 

 穏やかな声で、アストレアはそう答える。

 

「戦争の後始末、王位の戴冠、捕虜返還。

 力があり中立の私が最適、という判断ね」

 

「……まぁ、そうでしょうね」

 

 ライラは肩をすくめた。

 

 今回の任務は、単なる外交ではない。

 ラキア王国の新体制を軌道に乗せるための“監視”に近い役割でもあった。

 

 その補佐として選ばれたのが――

 

 アリーゼ。

 ライラ。

 ノイン。

 リャーナ。

 セルティ。

 

 そして。

 

「…………」

 

 今回もやらかした蒼髪のエルフ。

 

「……なんでミネも来るんですかね」

 

 ライラの視線が、遠慮なくミネを刺した。

 

「一応、原因の一端ではあるからね」

 

 アストレアは苦笑する。

 

「それに――」

 

 視線を、意図的にミネへ向ける。

 

「アレスが一番大人しくなるのは、誰がそばにいる時かしら?」

 

「…………」

 

 ミネは、無言で目を逸らした。

 

 だがその沈黙こそが、何よりの答えだった。

 

「……まぁ、あのアレス様が暴走しそうになったら」

 

 ライラは深く息を吐く。

 

「コイツが鉄拳制裁するのが、一番確実か」

 

 ミネの拳が、わずかに鳴る。

 

「容赦はしません」

 

 ぼそりとした一言。

 それを聞いたアリーゼが、乾いた笑みを浮かべた。

 

「ラキアの未来は、意外と明るいかもしれないわね」

 

「王が常識人で、アレス様が大人しくなれば万々歳か…」

 

 イシュタルという大きな闇は消えた。

 ラキアの暴走も、一時的とはいえ抑え込まれた。

 

 だが――

 

 都市に巣食う歯車は、決して止まらない。

 

 新たな均衡。

 新たな火種。

 そして、新たな因縁。

 

 それらが水面下で静かに形を成しつつあることを、ライラは本能的に感じていた。




まぁ、ヘスティア様が誘拐とか救護案件なわけで。
ベル達はミネより情報が早かったので先行してヘスティア様を確保。
魔法の索敵範囲外だったためミネはベル達とは合流できず捜索中に見つけたアレスを確保。
アストレア・ファミリアはラキアとの調停のため戦力の半分をオラリオに残しミネと共に出向。
ミネが不在のため異端児編はほぼ原作通り進むため丸々カットになります。

このSSのフレイヤ様は…

  • 普通のフレイヤ様
  • アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様
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