ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか 作:救護騎士団オラリオ支部
明日の20連が残ってるけどどちらを引くか迷う。
石も50000あるから安心して5周年を迎えられそうです。
オラリオの街に入るには、ガネーシャ・ファミリアが設けた検問所を抜ける必要がある。
戦争遊戯、歓楽街陥落、女神誘拐――最近続いた騒動の影響で、街の出入りは以前にも増して厳重になっていた。
そのため、検問所の前には朝から晩まで長蛇の列ができている。
冒険者を目指すもの、商人、帰還するファミリア。様々な思惑を抱えた人々が、石畳の上で順番を待っていた。
「……相変わらずすごい列ですね」
ミネは前方に伸びる人の波を見渡し、静かに息を吐く。
「仕方ないわ。今のオラリオじゃ、これでも“落ち着いた”方よ」
隣でアストレアが穏やかに答える。
美しい髪を風に揺らしながらも、その表情には街を守る者としての覚悟が滲んでいた。
「というかこの長蛇の列の半分くらいはお前の影響で出来てそうなんだが、そこんとこどう思うよ」
ライラは腕を組み、斜め後ろからミネを睨むように見た。
「戦争遊戯でアポロン様、歓楽街でイシュタル様。挙句にヘスティア様誘拐でアレス様。この短期間でよくやったものね」
アリーゼもこれには呆れる他ない。
その全ての原因が相手側にあるとはいえ暴れすぎである。
一様、戦争遊戯以外の件はアストレア・ファミリアが表立ってくれたおかげで、ミネの名はそこまで広がらなかった。
だが、その“表”に立たされた結果――主にライラに、そのしわ寄せが集中している。
「で? なんでアタシが各方面から事情聴取まがいの質問攻めに遭わなきゃならねぇんだ?」
じっとりとした視線をミネに向け、ライラは低く唸る。
「イシュタル・ファミリア壊滅の件? アレス様絡みの一件? 全部“ライラに聞け”って話が回ってくる」
「……ご苦労をおかけしています」
「口だけで済むと思ってんなよ」
ライラの拳が、軽くミネの肩に当たる。
力は入っていない。だが不満は十分に込められていた。
「まぁ、ライラがいるから色々と丸く収まってる部分もあるけどね」
アリーゼがフォローするように言う。
実際、ライラは横の繋がりが強く、各方面に顔が利くため、こういった後始末を得意としている。
得意としているが――好んでやっているわけではない。
というかそのせいで激務続きである。
「得意と好きは別だからな?」
念を押すように言い、ライラは鼻を鳴らした。
「わかっています」
「どうだか」
短いやり取りに、アストレアが小さく苦笑する。
「でも、あなたがいてくれるからこそ、余計な衝突を避けられているのも事実よ、ライラ」
「……はいはい。アストレア様にそう言われたら文句言えねぇ」
ぶっきらぼうに返しつつも、完全には否定しないあたりが彼女らしい。
列は少しずつ前へ進み、検問所の門が視界に入る。
ガネーシャ・ファミリアの団員たちが、多くの人々を検問している。
その中に見知った顔があった。
「あれ、アーディ?検問なんて珍しいわね?」
「あ、待ってたんだよ。皆! 今日帰ってくるって聞いてたから」
手を振りながら近づいてきたのは、ガネーシャ・ファミリアのアーディ・ヴァルマだった。
いつものような軽装に身を包み、快活な笑顔を浮かべている。
「それでわざわざ検問に?」
アリーゼの問いに、アーディは肩をすくめて笑った。
「だって、どうせ通るでしょ? だったら私が担当した方が早いかなって」
「職権乱用じゃない?」
「融通、だよ。融通」
軽くウインクしてみせるアーディに、ライラが胡乱な目を向ける。
「あと、お礼も言いたかったしね」
アーディの視線がミネへとむけられる。
その言葉に、ミネはわずかに眉を上げた。
「お礼、ですか?」
「うん」
アーディは一歩近づき、声を少しだけ落とす。
「7年前、あの爆発から守ってくれてありがとうね」
その一言で、周囲の空気がわずかに変わった。
ライラがぴたりと口を閉じ、アリーゼも冗談めいた表情を引っ込める。
アストレアは何も言わず、ただ静かにミネを見つめていた。
「あの障壁、ミネが張ってくれたんだよね?あれが無かったら、多分私死んじゃってたと思うから」
7年前に信者を使った闇派閥による自爆攻撃。
アーディはそれに巻き込まれ、誰が張ったかわからない魔法障壁によって守られていた。
当時、オラリオの奇跡として活動していたミネによってもたらされたものだと先日の戦争遊戯でアーディは悟ったのだ。
「だから、ありがとう。ミネがいてくれたから私を含めて沢山の人が助かったよ」
真正面から向けられた感謝の言葉に、ミネは一瞬だけ言葉を失った。
賞賛でも、評価でもない。
ただ「生きている理由」を告げるような、静かで重たい感情。
「……そう言われると、困りますね」
わずかに視線を伏せ、ミネは苦笑する。
「当時は、やるべきことをやっただけです」
「それが問題なんだって」
アーディは即座に返し、軽く肩を竦めた。
「知らないところで、勝手に人の人生変えておいて、当人は覚えてない。ヒーローの悪い癖だよ」
「ヒーローではありません」
「はいはい」
やり取りに、張り詰めていた空気がわずかに緩む。
だが――
「あ、それとベル君がちょっとやらかしてるから」
一瞬、空気が止まった。
「……は?」
ライラが思わず聞き返す。
アストレア・ファミリア一同の視線がアーディに向けられた。
「やらかしてる、って……どの程度だ?」
嫌な予感を隠そうともせず、ライラが眉をひそめる。
「うーん、説明が難しいんだけど」
アーディは指を顎に当て、少し考える素振りを見せた。
「街中で暴れたモンスターを庇うような真似をしちゃったみたいで…」
その場にいた全員が目を見合わせた。
「何やってるんだあの馬鹿弟子2号は」
ちなみに1号は言うまでもなくミネである。
リリルカはそこらへん分別わきまえてるので馬鹿弟子にはカウントされない。
「あとレベル4昇格だって」
「……は?」
今度こそ、完全に思考が止まった。
ミネだけでなく、アストレア、ライラ、アリーゼ――全員が一斉にアーディを見たまま固まっている。
「……今、なんて言った?」
低く、静かな声でライラが確認する。
「だから、ベル君。レベル4に昇格したって」
あっさりと言われたその一言が、重石のように場に落ちた。
『はぁぁぁぁぁ!?』
アストレア達の驚愕が検問所の空気を震わせた。
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「それじゃあベル・クラネルの新しい二つ名は『白兎の脚』で決定!」
盛り上がる神々の中でヘスティアはほっと一息つく。
眷属の二つ名を決める神会で瞬く間にレベル4へと到達したベルの話題は神々の中で最も興味を引く話題の一つだ。
どんな二つ名を付けられるか分かったもんじゃない。
一番の味方が居ないものの見事に乗り切れた。
無難にすんでよかったとヘスティアは胸をなでおろした。
しかし…、
「じゃあ、今日のメインディッシュだぁ~。ミネ・シルヴァリエの命名だ~」
「はぁぁぁぁぁぁあ!!!!?」
ヘスティアの絶叫が、神会の天井を震わせた。
「ちょっ、ちょっと待って!? 聞いてない! 聞いてないからね!? そもそもミネ君はギルドじゃレベル1扱いなんだから命名することはないだろう!?」
「何言ってるんだいヘスティア?」
陽気な神が杯を掲げる。
「戦争遊戯であれだけやらかした子に命名しないなんてありえない!」
「しかも、正体は“七年前の奇跡”の当事者」
次々と挙げられる言葉に、ヘスティアの顔色がみるみる悪くなる。
「待って待って待って!? 必要ない! 必要ないから!!」
「細かいことはいいじゃないか」
「話題にしない方がおかしい」
「というか、もう遅い」
軽口と笑いに満ちていた神会が、
好奇と期待、そして剥き出しの欲に染まっていく。
「奇跡を起こした無名の冒険者」
「七年前、正体不明の障壁」
「戦争遊戯での圧倒的な制圧力」
「……そして、未だ二つ名なし」
「推定レベル6なんだからつけない方がおかしい! ていうかあの子レベルいくつなんだよ!」
誰かが、楽しそうにそう言った。
ヘスティアは歯噛みする。
(……ああもう、嫌な予感しかしない……)
「じゃあ、候補を挙げようじゃないか!」
「血禍の徒手!」
「凶治癒師!」
「拳災!」
「それ完全にアウトだよね!?」
ヘスティアの全力の突っ込みが、神会に響き渡る。
「ちょっと!? どれも名前からして危険物指定じゃないか!!」
「何言ってるんだい、的確じゃないか」
「戦って、治して、また殴る。実に分かりやすい」
ヘスティアの制止も虚しく、神々の悪ノリは加速していく。
そんな中でヘスティアに救いの手が差し伸べられる。
「ねぇ」
一言。
それだけで、ざわめいていた神会が嘘のように静まり返った。
酒杯を傾けていた神々の手が止まり、
笑っていた口元が、わずかに引き攣る。
フレイヤが、ゆっくりと立ち上がっていた。
「……随分と、下品な名ばかりが並ぶのね」
柔らかな声。
だが、その奥に潜む冷たい響きが、場の空気を凍らせる。
「ミネは私の眷属達がとても世話になっているの。 まさかとは思うけど…、そんなおかしな二つ名を本気でつける気じゃないわよね?」*1
その一言で、神会の温度がはっきりと下がった。
笑っていた神々は互いに視線を交わし、
先ほどまでの軽口が冗談では済まなくなったことを悟る。
「……なんやフレイヤ? もしかして、あのミネとかいうエルフのこと知ってたんか?」
「えぇ、あの子はよく私の所で働いてくれているの。勿論、ヘスティア公認でね」*2
まるで自身の眷属のように語るフレイヤに他の神々も迂闊に口を開けない。
「いっそ私が名付けてあげましょうか?」*3
その一言で、完全に決まった。
神会に集う誰もが悟る。
――ああ、これはもう、覆らない、と。
だが、ヘスティアとしては――
正直に言えば、他の神々に好き放題な二つ名を付けられるよりは、
大分マシに思えた。
(……うん、フレイヤなら……
少なくとも“拳災”とか“血禍”とか言い出すことはない……はず……)
ミネとは結構な付き合いだから適当な名前を付けたりもしないしネーミングセンスだって悪くない。
「では、決まりね」
フレイヤは静かに杯を置き、
神会の中央へと歩み出る。
その一挙手一投足に、視線が集まる。
まるで舞台に立つ役者のように、
場の空気そのものを支配していた。
「ミネ・シルヴァリエ」
名を呼ばれただけで、
神会のざわめきが完全に消えた。
「彼女の根底にあるのは憧れ」
淡々とした声。
だが、その言葉には不思議な説得力があった。
「力は必要だから持っているだけ。
理想を追い求め続けた結果でしかない」
フレイヤの視線が、宙をなぞる。
「治し、守り、
それでも届かぬ時は――拳を振るう」
神々の何柱かが、無言で頷いた。
「蒼き輝きを目指して、未だ届かない理想を追い求め続ける」
その言葉に、ヘスティアは小さく息を呑む。
(……あれ?
なんか……すごく、ちゃんとしてない……?)
嫌な方向ではなく、
やたら格好いい方向に話が進んでいる。
「だから――」
フレイヤは微笑む。
「ミネ・シルヴァリエの二つ名は」
一瞬の静寂。
「未完の蒼」
その名が告げられた瞬間、
神会に集う神々の間に、短い沈黙が落ちた。
それはかつて――
ベル・クラネルが与えられた二つ名、
未完の少年の継承。
未だ完成せず、
それでも理想を追い、前へ進み続ける者に与えられる名。
フレイヤは何も語らない。
ただ微笑みだけを浮かべるだけだ。
それは、
“未完”を冠する者から、
次なる“未完”へ――。
女神なりの、
静かで粋な継承だった。
ここでミネに変な二つ名がついた場合、最悪ヘイズ、オッタルを始めフレイヤ、アストレア・ファミリアの親しい連中が暴動を起こすのでフレイヤ様は最高の判断を下した。
ミネを知る連中「アレを未完とか何考えてるんですかフレイヤ様!?」
フレイヤ「届くことのないものを追い続けるミネを未完と称するのに何も間違いは無いわ。けどそこがあの子のいいところでもあるのよね。だからこそ輝いているというか…」
アルちゃん化してても本質はフレイヤ様なので見てるところはきっちり見てる。
ミネ自身は話してないが誰かを追い求めてることは察してるフレイヤ様。
そしてそれが決して届くことのない理想であるとも感づいている。
地味に生き残ってるアーディですが当時のミネは街中を駆け回りながら回復と障壁をばらまいていたので運よく障壁を付与された結果、自爆した子供も含め軽傷で生還しました。
ミネとはリュー関連で知り合ってはいましたが助けた本人とは思ってもなかった模様。
因みにベル君と遭遇済みのため落とされかけてる。
このSSのフレイヤ様は…
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普通のフレイヤ様
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アルちゃん味がブレンドされたフレイヤ様