ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか   作:救護騎士団オラリオ支部

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醒めた夢、醒めない悪夢

 ガネーシャ・ファミリアの管理する拘置所。

 

 悪事をなしたとはいえ神を粗雑に扱わないように調度品などで整えられた空間にディオニュソスは軟禁されていた。

 

 豪奢ではない。

 

 だが不自由もない。

 

 簡素な寝台。

 整えられた机。

 香まで焚かれている。

 

 普通の犯罪者なら到底与えられない待遇だ。

 

 だがディオニュソスは神であるがゆえにこの待遇なのだ。

 

「よぉ、ディオニュソス。 酔いは醒めたか?」

 

 ディオニュソスはゆっくりと顔を上げた。

 

 拘置所の扉が開き、そこへ立っていた神物を見て、小さく目を細める。

 

「やぁ、ロキ。 おかげさまですっかり酔いも醒めてしまったよ。 おかげで最悪の気分だ」

 

「そら結構」

 

 ロキは鼻を鳴らしながら室内へ入る。

 

 いつもの軽薄そうな笑みは薄い。

 

 そしてロキの背後、一緒に入って来た神物を見て顔をしかめる。

 

「なんだ、君も来ていたのか。 ヘルメス」

 

「あぁ、どうやら変わっていないかったようで何よりだよ。 ディオニュソス」

 

 飄々とした笑み。

 

 だがその瞳は笑っていなかった。

 

 ヘルメスは帽子を軽く押さえながら室内へ入り、壁際へ寄りかかる。

 

「それで、私の送還の予定でも決まったのかな?」

 

 ディオニュソスが肩を竦めながら問う。

 

 その口調は軽い。

 

 まるで他人事のように。

 

 だがロキは冷めた視線を向けた。

 

「…フィルヴィスたんに感謝するんやな。 あの子が自分に危害を加えないならって知ってること全部話してくれたわ」

 

 ディオニュソスの表情が僅かに止まった。

 

「……そうか」

 

 小さく零れた声。

 

 だが次の瞬間…

 

「くそがぁぁぁぁあ!」

 

 轟音。

 

 ディオニュソスの拳が机へ叩きつけられた。

 

「何なんだあの小娘は! あの澄まし顔の蒼髪のエルフめ!」

 

「お、おぉ……」

 

 ロキが若干引いた。

 

 これがコイツの本性か。

 

 今まで飄々とした仮面で覆い隠されていた激情。

 

 それが蒼髪のエルフ一人によって粉々に叩き割られている。

 

「フィルヴィスまで誑かした売女めっ! あの小娘さえいなければロキともども冒険者を一網打尽にできたものをっ!」

 

 拘置所の空気が凍った。

 

「……おい」

 

 ロキの声が低くなる。

 

 ヘルメスも壁際で目を細めた。

 

 ディオニュソスは気付かない。

 

 いや、気付いていても止まれないのか。

 

「何だあれは!?

 敵を助ける!?

 怪物を救う!?

 理屈も倫理も全部無視して救済だけを押し付けてくる!!」

 

 ディオニュソスは吠える。

 

「何より気に入らないのが! 奴がヘスティアの眷属と言う所だ! あの忌々しい女神めっ!!」

 

 だが吠えたところでこれは所詮、負け犬の犬の遠吠えにすぎない。

 

 全ての計画はフィルヴィスにより暴かれた。

 

 穢れた精霊も。

 人造迷宮クノッソスの全容も。

 そしてディオニュソスが長年積み上げてきた破滅も。

 

「そら残念やったなぁ。 タナトスなら捕縛済みやしデメテルの眷属達もペニアも全員救出済み。 あとは穢れた精霊を倒せばお前の計画は全部御破綻や」

 

 そう、もうほぼ終わっているのだ。

 

 フィルヴィスを通して人造迷宮クノッソスの詳細なマップや罠の情報を手に入れたフィン達は何の苦も無く人造迷宮クノッソスで闇派閥を殲滅。

 

 そこに捕らわれていたデメテル・ファミリアの眷属やペニアの救出を済ませている。

 

 残るは――穢れた精霊のみ。

 

「終わりだよ、ディオニュソス」

 

 ヘルメスが静かに告げる。

 

 その声には軽薄さがなかった。

 

「君の描いた破滅は、もう誰にも届かない」

 

 ディオニュソスは黙っていた。

 

 机へ落とした視線。

 握り締められた拳。

 

 そして――

 

「……あぁ、なら私が期待するのは残された精霊たちが君たちの眷属を一人でも多く道づれにすることだけだ」

 

 あまりにも冷たい声音だった。

 

 そこに情はない。

 

 悔恨も。

 罪悪感も。

 

 ただ、自分の描いた破滅が少しでも多くを呑み込むことを願う、昏い愉悦だけ。

 

 ロキの眉間に青筋が浮かぶ。

 

「……ほんま救いようのないクズやな」

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

 ディオニュソスは薄く笑った。

 

「その望みも叶わん」

 

「…なんだと?」

 

 ロキはニヤリと口角を吊り上げる。

 

「ミネたんが()()4()()()()()()()()()

 

 ディオニュソスの眉が僅かに歪む。

 

「……4体、だと?」

 

 ディオニュソスの声から、初めて余裕が消えた。

 

 ロキはその反応に満足げに笑う。

 

「せや。 そして残りの3体はウチらが倒す。 3体なら十分な準備さえできれば被害なんて出されへん」

 

「馬鹿な……」

 

 ディオニュソスが呻く。

 

 もはやディオニュソスが望む狂乱は起こり得ないのだと理解してしまった。

 

「…は、はは、全て、終わってしまったのか」

 

 項垂れるディオニュソス。

 

 先ほどまで拘置所を満たしていた激情は、もうない。

 

 あるのはただ――空虚。

 

 自らが積み上げた破滅が、完全に崩れ去った現実だけだった。

 

「……は、はは」

 

 乾いた笑いが漏れる。

 

「滑稽だな……。 何年もかけて積み上げたというのに、たった一人の小娘に全部ひっくり返されるとは……」

 

 その笑みは自嘲に満ちていた。

 

 ロキは腕を組みながら鼻を鳴らす。

 

「自業自得や」

 

「そうだな」

 

 否定はしなかった。

 

 ディオニュソスはゆっくりと背もたれへ体を預け、天井を見上げる。

 

 香の煙が揺れていた。

 

 静かで。

 穏やかで。

 

 まるで、この部屋だけは何事もないかのような空気。

 

「まぁ、少しは哀れんだるわ。 ほれ飲めや」

 

 ロキが差し出したのは酒瓶だった。

 

 ディオニュソスは一瞬だけ目を見開いた。

 

「……君が、酒を?」

 

「勘違いすんなや。 ただの哀れみや」

 

 ぶっきらぼうに言いながら、ロキは酒瓶を机へ置く。

 

 コトリ、と小さな音が響いた。

 

 ディオニュソスはしばらくその瓶を見つめていたが、やがて小さく笑った。

 

「…ふっ、私の酒は知っているだろう。 生半可なものなら笑ってやる」

 

 ロキの口角がニヤリと吊り上がる。

 

「安心せぇ。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()や」

 

 ディオニュソスは眉を僅かに上げた。

 

「ほぅ?」

 

 興味を惹かれたように酒瓶へ手を伸ばす。

 

「…銘を聞かせてもらおうか」

 

 ロキはニヤニヤとした笑みを浮かべた。

 

()()()()()()()・改や」

 

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「神様、ただいま戻りました」

 

 ダンジョンでの遠征を終えベル達は竈火の館へと戻って来た。

 

 ベル。

 ダフネ。

 カサンドラ。

 春姫。

 アイシャ。

 

 誰一人欠けることなく帰還した一行を見て、ヘスティアはぱぁっと顔を輝かせる。

 

「ベル君っ!」

 

 勢いよく飛び出したヘスティアを、ベルは慌てて受け止めた。

 

「わっ!?」

 

「おかえりっ! 皆も無事でよかったぁ……!」

 

 ぎゅう、と抱きつく女神。

 

 ベルは少し照れながらも笑みを浮かべた。

 

「はい。 帰ってきました」

 

「皆さん、ご無事で何よりです」

 

 ヘスティアと共に帰還を待っていたミネも笑みを浮かべる。

 

「お疲れでしょう? 湯あみの準備もできています。 あ、それともお食事が先でしょうか?」

 

 ミネの言葉に、ベル達は揃って目を瞬かせた。

 

「……へ?」

 

 思わず間の抜けた声を漏らしたのはベルだった。

 

 ダンジョンから帰還した直後。

 汗と土埃にまみれ、全員疲労困憊。

 

 そんな彼らへ向けられたのは――

 

 あまりにも穏やかで。

 優しく。

 家庭的な言葉。

 

「お、おぉ……なんだろうねぇ……」

 

 ダフネが若干引き気味に呟いた。

 

「帰って来たら美人が風呂と飯を用意して待ってるとか……」

 

 アイシャが遠い目をする。

 

「理想の嫁か?」

 

「アイシャさん、直球すぎます……」

 

 春姫が困ったように笑った。

 

 一方でカサンドラはぼんやりとミネを見つめている。

 

「……なんだか、すごく落ち着きますね」

 

「?」

 

 首を傾げるミネ。

 

「いえ……こう……“帰ってきた場所”って感じがして……」

 

 カサンドラの呟きに、場の空気が少し柔らかくなる。

 

 ヘスティアも腕を組みながらうんうん頷いた。

 

「でも!」

 

 ヘスティアがビシィッ! とミネを指差した。

 

「それよりもっと大事なことがあるんじゃあないかい? ミネ君!」

 

「…ふふっ、そうでしたね」

 

「そうだとも!」

 

 ヘスティアは腰へ手を当て、ふんす! と鼻息を荒くした。

 

「大事なこと、ですか?」

 

 ヘスティアは胸を張りながら高らかに叫ぶ。

 

「ボク達に新しい家族が増えた!」

 

 場の空気が止まった。

 

「…………え?」

 

 ベルが目を瞬かせる。

 

 ダフネとカサンドラ、アイシャや春姫もぽかんとしていた。

 

 一方でミネだけは、どこか困ったように微笑んでいる。

 

「ほら、出て来て下さい。 皆さんに紹介しますね」

 

 竈火の館の玄関が開き黒い髪の少女が姿を現す。

 

「先日、ヘスティア様の新しい眷属となった…」

 

「フィルヴィス・シャリアだ。 迷惑をかけることとなるが、そういうことになった」

 

 救われた妖精ははじめの一歩を踏み出した。




オラリオメリー・改
ディオニュソスの工房をソーマに調査させ一部ノウハウを吸収したソーマによって生み出された悪名高きオラリオメリーの改良版。
効果はオラリオメリーから変わらないが神すら酩酊させることが出来る。
ディオニュソスに渡されたのはディオニュソス特化型に更に改良された物。
これによりディオニュソスは善神として醒めない夢を見続けることとなる。

ニーズホッグ含め穢れた精霊は7体なので4体くらいミネが処理しちゃっていいかの精神で穢れた精霊はナレ死。
ディオニュソス・ファミリアが取り込まれていないため穢れた精霊側はまったく準備が出来ておらず時間的余裕もあるため残りは被害もなくロキ・ファミリアが処理するでしょう。

ベル君達は普通に帰還。
ファミリアのメンバーは違うが遠征のメンバーは原作通り。
アストレア・ファミリアとミネがジャガ丸くんを普通に倒したのでジュラが魅入られることが無く発生フラグが叩きおられていたのでモス・ヒュージに遭遇はしたがそれ以外のアクシデントは無かった。

このSSが完結したら

  • アリス編を書け
  • 過去編を書け
  • フレイヤ様に拾われたミネ編を書け
  • イズナ編を書け
  • ツルギ編を書け
  • いつまでかかっても良いから全部書け
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