漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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11:暗躍

 

 

「さ、さくらっちって結構食べるんだね……。」

 

「実は巫女ってかなりの重労働ですので。」

 

 

そんなこんなで、やって来たのは駅前の小さなカフェ。

 

テーブル席に案内してもらい、今回のターゲットである『夏みかん』さんと一緒に軽食を楽しみに来た感じです。主人公ちゃんの親友枠の子ですね。

 

いくらここが漫画の世界だと言えど、この世界を生きる私達も前世の人間と一緒。食べなければ生きていくことは出来ません。更に今現在の私達は、なんと花の女子高生。何もしていなくても腹が減る時期ですし、運動していれば一日五食してもまだお腹が空く年齢です。

 

そんな私達が放課後という一番ハラペコな時間帯にカフェに来てしまえば……、超特大パフェを頼んでしまうのも仕方のないこと。カフェ自体が学生向けということもあってか、かなり安価で提供されたソレが私とみかんさんの前に鎮座しています。

 

 

「い、いや私もこれ頼んだ手前“小食”とは口が裂けても言えないけどさ……。」

 

「えぇまぁ、そうですね。はい。」

 

「いや食べすぎでしょソレ。」

 

 

若干引きながら、私の眼の前に並ぶソレを見つめる彼女。

 

超特大パフェは彼女も頼んでいるので、そこだけは一緒なのですが……。ピザトーストに、ナポリタン、ファミリーサイズの大皿サンドイッチに、ミニサラダが2つ。二人掛けのテーブル席ながら、私の皿で8割ぐらい占拠しちゃっているのが現状です。

 

 

「すいませんお待たせしました。こちら二つ目の超特大パフェです。先程お持ちしたのがストロベリーで、これがチョコレートになります。お間違いないでしょうか?」

 

「えぇ、大丈夫です。ありがとうございます。」

 

 

失礼、9割になりました。

 

 

「た、食べきれるの?」

 

「えぇ、まぁ。コレぐらいなら晩も入りますし。」

 

「は、はぇ……。巫女でミステリアスな感じがマシマシなさくらっちが大食いキャラだったとは。このギャップ、すっごいね。うん。胸に秘めとこ。」

 

「別に構いませんよ? 隠していることでも無いので。」

 

 

もしかしたら私が大喰らいなのを気にしているかもしれないと考えてくれたのでしょう、そういう彼女に気にしていないと言いながら、一応の弁明をしておきます。

 

私が持つ“異常”は目だけであり、胃などに問題は抱えていません。つまり昔からこんな大食漢だったわけじゃないんです。いくら今から彼女に『介入』すると言えど、私の立場はストーリー的にまだ隠して置いた方が色々と都合が良いのは確か。その分隠すことが多いので、そのすべてを開示できるわけではないのですが……。

 

 

(い、いやね? 巫女って結構重労働なんですよ、ほんとに。)

 

 

よく皆さんご想像される巫女ってのはお正月とかでお守りを売ってるバイトの巫女さんだとは思うんですが、私や婆ちゃんのような本職の巫女はあの人たちとは違って、かなりきついんです。

 

掃除などの普段の仕事は勿論のこと、祈祷とかそういうのを一晩中することもざらにあります。しかも今は来たるインフレに向けて婆ちゃんの人殺し修行がどんどん加速しているので、マジで食べないと死ぬような状況なんですよ。消費カロリーが莫大なので、詰め込まないとハンガーノックでお陀仏になるんです。

 

というか婆ちゃんから食えなくても口に詰め込まれるというか、無理矢理食べさせられるというか、胃の容量拡大させられてるというか……。

 

 

「下手な運動部よりも動いてるかもしれませんね。」

 

「そ、そんなに大変なんだ、巫女さんって。」

 

「祖父母からは跡取りとして見てもらってますから、仕方のないことかもしれないのですがね。……あ、そうそう。気は早いかも知れませんが、正月あたりに巫女のバイトを募集しますので、良かったら是非。」

 

「か、考えとく……。」

 

 

っと、少し巫女に付いて誤解させちゃったかもですね。

 

私のように霊力バトルと言いますか、この周辺地域の怪異や妖怪などの対処をしなければならない巫女は確かに重労働なんですが、バイトさんにそのような仕事を任せるわけにはいきません。しかもお願いするのは大晦日から三が日までの超短期間。バイト代も結構出ますし、巫女服もネット通販とかで買えるコスプレみたいなのじゃないしっかりとした奴なので気が向いたら応募してみてくださいね?

 

 

(まぁ、掴みとしてはこんなくらいか。)

 

 

食事の量から、巫女の話やバイトの話。高校生らしい話が二転三転する会話を熟しながら、脳内で『ここから』のことを考え始める。

 

私があまり接点のない彼女、友人ではあるが偶に話す程度でしかない彼女とカフェに来たのは『相談事』があると彼女に声をかけられたのがきっかけだ。本人はあまり学校内で話したくないと言う事だったので、おやつを食べるついでにこの喫茶店に足を運んだ形になる。

 

して、その『相談事』というのは……、怪異絡みの話。

 

彼女は完全なる一般人なため主人公である樹里ちゃんのように怪異を視認することは出来ないが、それでも憑りつかれれば肉体に何かしらの不調が出現する。あいつらは『見える』魂を好むが、見えなくても栄養源にはなるようで、病院に行ったけど効果が無くてずっと原因不明の体調不良が続いてる、とかは大体怪異の仕業ってわけだ。

 

おそらく彼女もそのような状況に陥っているのだろう。

 

彼女について詳しいわけではないのだが、常に笑顔を浮かべる彼女の顔がどこか『張り付いたもの』に見える時点で、少し無理をしているのが見て取れる。病院はダメだし、休んでもダメ、ならばもうオカルト方面。『占い』が出来る私なら何かしらの解決策を知らないかと、声をかけてくれたのだろうが……。

 

 

(まぁ、その『怪異』。正確に言うと『怪異と同じ事象を起こす式神』は私が仕向けたんですけどね。)

 

 

はい、私が犯人です。

 

あ、いや。勘違いしないでくださいね? 怪異みたいに『ちょっとずつ魂を吸い取っていく』ようなマジでヤバい奴じゃなくて、単に『怪異が憑りついた時と同じ体調に陥る』式神を張り付けてただけなので。剥がせばすぐに元通りになるので問題はありません。

 

して、なんでこんなことをしたのか、という話なのですが……。

 

 

(彼女、『夏みかん』は明らかに作者が“レギュラーキャラ”として描いてるキャラクター。あっちからすれば既に何かしらの設定を用意しているのかもしれないが……、もう待てない、)

 

 

主人公や笹沼先輩と比べれば少し劣るが、良く書き込まれた顔。純粋なこの世界の人間には認知できないが、非常に整った顔をしているのが彼女だ。

 

高校で私の隣の席に座る松原さんことまつっちは完全なモブで作画の安定しない方ではあるのだが……。今、眼前にいる彼女は少なくとも“作画ブレ”以上のものを見受けることが出来ない。これはつまり彼女がある程度主人公と共に描写する用意があることであり、ストーリー上何かしらの役割を与えられていることを意味している。

 

もしかしたら樹里ちゃんみたいに、心臓に霊的な何かを飼っているのかもしれないが……。

 

 

(前も言ったけどさ、作者。お前はお話の展開が遅いんだよバカ。樹里ちゃんだけの日常回どれだけ入れるつもりなんだよドアホ。んな速度じゃ読者様が離れてしまうだろうが愚か者。)

 

 

はい、というわけで彼女に力を与えてお話に介入しようって寸法です。

 

ただ急に霊的なアイテムを渡して『これで戦いたまえ』とか言っても信じてくれないし、受け入れてもくれないので『こういう場』を演出したわけですねぇ。

 

 

「それで、話は変わるんだけどさ……。実はちょっと、相談したいことがあって。」

 

「お聞きしましょう。」

 

 

彼女と話しながらものの数分で机の上のものを片付け、食後の茶を頂きながらその話を聞く。

 

まぁこちらの想定していた通り動いてくれたようで、藁をもすがる思いで私に相談してくれたようだ。前世の視点を持つ私からすれば『体調不良に困っているから巫女に相談する』などいつの時代かと疑問でしかないが……、まぁこの世界って漫画だし。細かい所を気にしてはいけないのだろう。

 

そんなことを考えながら彼女の言葉に頷きながら、行動開始。彼女の視界の外、机の下で軽く手を振り、その背に張り付けていた式神を解除しておく。

 

 

「……それで、ずっと体が重くて。しんどくて。お医者さんにも見てもらったんだけど、あんまり上手く行かなくてね。そしてらお婆ちゃんが『往霊大社の神主様か巫女様に相談してみぃ』っていうもんだからね? もしかしたら、って思って。」

 

「あぁ、なるほど。それはそれは、とても良い御婆様をお持ちになったようで。……もう、大丈夫ですよ。」

 

 

彼女の両手へと手を伸ばし、しっかりと握りめながら笑みを浮かべる。

 

 

「私の言う通りにして下されば、すぐに良くなります。ただその対価として、少々お願いしたいことがありまして……。」

 

 

懐に隠してあった式神を起動し、周囲への認識阻害を。そして同時に握った両手から彼女の魂へと霊力を送り、一時的に脳震盪のような状態へ落とし込むことで意識を朦朧とさせる。その証として、しっかりと開かれながらも瞳から色が抜け、真っ白なモノに。

 

さ、私の『色』のために。頑張ってくださいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みかんさん、みかんさん。」

 

「……ぇ、……ぅわぁ!? え、え。あ、私、眠ってた!?」

 

「えぇ、それはもうぐっすりと。お疲れだったようですね。」

 

「う、うわぁ。ほんとごめんさくらっち。私から誘ったのに寝ちゃって……! マジでごめん! お詫びとして今日のお勘定私が持つね!」

 

「い、いやいや。流石にそれはちょっと。1:9ですよ? 自分の分は自分で払いますから、お構いなく。……それで、『何か相談事がある』とのことでしたが。」

 

「え? 『そんなの言ったっけ?』 と、とにかく今日はごめんね! 今度また誘うから! ほら次は樹里とかまつっちとかも呼んでさ!」

 

「そうですか? なら楽しみにしておりますね。」

 

 

何でもない言葉を交わしながら、沈み始めた夕日と共に帰り支度を始める。どうやら問題なく定着したようで、少し霊力を使って『視ても』何も問題はない。後日問題になるかも知れないが、まぁその時はその時だ。既に私の動き方は決めてあるし、主人公が根本的な悪に与しない限りは特に問題はない。

 

あぁそうだ。もしかしたらこのシーンもどこかで“使われる”かもしれないし、ちゃんと“セリフ”にしておいた方がいいだろう。

 

 

「そう言えばみかんさん、その『手袋』。お似合いですね?」

 

「え、そう!? 実は“昔から”のお気に入りでさー!」

 

 






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