漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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15:遺書

 

 

 

(ふぅ、とりあえずまぁギャグパートで使えそうな絵は撮れたかな?)

 

 

内心そんなことを考えながら、軽く息を吐き出す。

 

さっきまでバチクソにキレてたのは本当なのだが、吹き出しや効果音などの描写が多く成れば“描かれている”というのは理解できるもの。折角主人公を360度すべての角度から監視して物語の動向を追っているのだ、コレぐらい対応できなくちゃストーカー紛いのことする理由が無くなっちゃうからね。

 

作者を呪い殺すのはいつでもできるんだけど、読者様へのアピールは常にできるわけではない。ということでげんこつ……、は流石に巫女のイメージには合わないとおもったので3人に素敵なデコピンをプレゼントさせて頂きました。

 

ほら、おでこから白い煙を出してぶっ倒れてる3人がいるでしょう? 無論ギャグに納まるよう一時的な痛みのみ、跡にも残らないようにしたので安心安全。

 

私のことを祟り神とか言った悪は滅びたのです。

 

 

(というか過去の記録見る限り本物の祟り神はもっとヤバいというか、被害の桁が違うというか、人と比べるのがちょっとアレというか……。いや婆ちゃんなら似たようなこと出来そうだけど。)

 

 

ま、いい感じに演出が出来たということにしておこう。

 

普通に読んでいればただのギャグパートに見えるはずだが、よくよく考えれば霊力のバフが入っている樹里ちゃんやみかんちゃんにもダメージが入っている。どこまで描写されるかは解らないが、考察勢の皆様から大注目を得られる塩梅になっているはず。

 

いずれ来るだろう私の正体バレシーンに向けて良い伏線を張れたんじゃない?

 

 

(そもそも、彼女たちが昨日から今日まで何をしているのかは既に把握済み。見た感じちょっと説明とかが長引いていましたからね。こういうシーンを入れて息継ぎをするのは大事なんですよ。そこが解ってる良い作者は褒めてやりましょう。……あ、でも貴様への殺意は一切薄れてないからな? コロス♡)

 

 

おそらく届かないであろうつぶやきを心の中にしまいながら、それまでの不機嫌を無理矢理飲み込む。

 

さっきまで私がブチ切れていたせいで、この教室の空気が冷え込んでいたのは私も把握していた。でもちょっと怒りが収まらなくて、ね? ただもう生贄を三人も頂いた手前、ここで機嫌を直さなければ契約不履行になってしまうからさ。別に祟り神ではないけど、その辺りはしっかりしてるんですよ? 私は。

 

そんなどうでもいいことを考えていると、やはり私の様子を伺っていたのでしょう。クラスの雰囲気が少しずつ元に戻り、いつも通りの日常が帰ってきます。生贄の方々はまだ復帰できなさそうですが、まぁ朝の会までには元に戻るはず。

 

私も日常に戻りたいところですが、よく話す隣の松原さんもおでことお口から白いのを出していることですし……。茶でも飲みながら“今後”に付いて考えを巡らせることにしましょうか。

 

 

(みかんちゃんを使った介入は、予定通りとはいかないものの成功に終わった。となると次は……、敵の反応。)

 

 

描写するとすれば、その辺だろう。

 

怪異をあの場に生み出したのはメタ的な視点から言うと作者だが、この世界では何かしらの犯人がいることになる。それが人なのか、それとも怪異より上の妖怪なのか。情報が全然ないため解らないのが現状なのだが……。

 

 

 

 

(……うん、やろうと思ったらこの段階で殲滅できるんだよね、多分。)

 

 

 

 

一応私も戦えはするが、まだ半人前な上に初心者。

 

この戦闘メインな世界でボスを相手取るとなると、ちょっと不安が出てくるのは確かだが……。ウチには暴力の化身ともいえる婆ちゃんと、理不尽の権化ともいえる爺ちゃんがいる。婆ちゃんが殴り込みに行くだけで終わるだろ、ってのはあの人の実力を知ってる人なら誰でも理解してくれるとは思うのだが……、実は爺ちゃんが本気出すだけでも、この世界のストーリーを一瞬にして崩壊させてしまえるだけの力を持っているのだ。

 

これまで何回か『過去回想か何かで使われるかも』と思い読者様向けに虚空に喋ったりしたことがあるのだが、この町には巨大な結界が張られている。怪異や妖怪を大幅に弱体化、もしくは自然消滅させることで『そもそも発生させない』という機構を持つもの。

 

 

(つまり、先のタコの怪異や足の怪異が発生しているということは、爺ちゃんが張った結界に何かしらの不具合が出ていることになるんだけど……。)

 

 

この不具合、爺ちゃんはもう認知してる上に対抗策というか、デバック&アップデートの準備終わらせてるっぽいんですよね、はい。

 

えっとつまり……、このまま爺ちゃんが作業を続けちゃうと、大体来月の初旬。

 

時期的にゴールデンウイークが終わったあたりから怪異がもう出現しなくなるみたいなんですよ。しかも誰かが怪異を持ち込んだり結界の裏をかいてくることを見越して、出現した瞬間に超火力で怪異を焼き殺す機構が追加。更に町中の監視カメラと連動してその犯人を確実に見つけ出すプログラムまで組んじゃったみたい。

 

 

(爺ちゃんによると結界術とプログラミングが凄く似てるから、って勉強したら出来たって話だけど……。)

 

 

い、いや凄いんですよ? ほんとに。町を守る巫女としては誇らしいぐらいには凄いことなんです。これを日本全国に張り巡らせばこの世から怪異&妖怪が存在できなくなるぐらいには凄いシステムですし。

 

で、でもね?

 

こ、これが実現しちゃうとこの世界のお話が瞬時に崩壊するといいますか……。

 

『主人公が怪異を退治する』っていうこの漫画の基本方針、その中でとっても重要な『夜中に出現し人に悪さする怪異』が出現しなくなっちゃうんですよね。

 

た、確かにまだ見ぬ敵さんがもっとヤバい方法を持ってるかもしれないんですが、あの人の術式と結界術を見る限りそんなもの存在しないんじゃないかと思うぐらいにはヤバくて……。というかそもそも、そんな敵がいたら婆ちゃんが突貫して殺しに行くというか、私ですら出来る『隠密』使って背後からさくーって殺しちゃいそうというか……。

 

 

(なんかこう、“作者”の意図を感じる……!!!)

 

 

メタい目線、作劇の観点から見ると、何らかの理由によって連載できなくなった時に“すぐに畳めるようにする”ための用意みたいなものなんだろうけど……。

 

め、滅茶苦茶色々考えられて怖い!!!

 

急に作者が狂って『バトルもの路線から恋愛路線に戻します! だからもう怪異とか存在できないようにしてやります!』って考えてるかもしれないし、『怪異とか妖怪とかの受けが良くないから、これよりもっと強い敵を出せるように一掃します! んで一気にインフレを無量大数レベルで加速させます!』かもしれないし、もしかしたら本当に『読者アンケートが死んでるんでもう打ち切りです!』なのかもしれない。

 

い、いや最後がめっちゃ怖いッ! いやほんとにありそうで怖いんよ最後のが! だって『爺ちゃんが頑張ったので怪異は出なくなりました、主人公の樹里ちゃんは戦う必要が無くなったので部活をより頑張り、いとしの笹沼先輩と恋仲に成れました! めでたしめでたし! 作者先生の次回作にご期待ください……!』って成りそうで本当に怖いのよッ!

 

 

(ま、マジで最後のだったらどうしよっ! この世界からじゃ読者人気とかそういうのが全く解らないから心配しかないッ! というか今が『何話目』すら解んないからマジで指標がないッ! た、単行本出せるぐらいには話溜まってるの!? そもそもそこまでいけてない? 出せたとしても売り上げは!? 作品の知名度はッ!?)

 

 

あぁぁぁぁ!!!! マジで! マジで考え始めたら恐怖でしかないッ!

 

さ、最悪。打ち切りになっちゃって作者がこの世界のことを『考えなく』なっちゃったらその瞬間に世界が停止、もしくは崩壊しちゃうかもしれないしッ! あぁぁぁあああああ!!! 私は、色が見たいだけなのにッ! なんでこんなことまで不安に思わないといけないんだクソ野郎めッ! これも全部作者のせいだ! 死ねッ!!!!!

 

 

(あ~~~、やば。考え始めたらどんどん不安上がって来るんですけど。今のストーリー面白いんか? そもそも作画は大丈夫なのか? 松原さんの作画今日もちょっとなんかおかしかったし、この前のカフェでの食事は相変わらず不味そうで下手な感じだったし、そういう『絵が駄目』で読者様が離れたらどうしよう……!!!)

 

 

こ、こまるぅぅ!!!

 

え、どうしよ。もっと暗躍した方がいいのかな? 刺激的な感じにした方がいいのかな?

 

い、一応みかんちゃんの一件が終わったらこの後は作者。もとい裏に隠れているであろう黒幕に任せる気ではいたんだけど、第三勢力として顔出した方が良かったりするのかな。あ、いやでも勢力やキャラを増やし過ぎた場合、読者様に把握して頂く要素が増えすぎて離れる原因に成ったりも……!!!

 

ど、どうしようッ!

 

い、一応爺ちゃんには『お願いだからそのシステムの適応はご容赦ください……!』って泣き土下座したおかげで待ってもらえることにはなってるんだけど、いっそのこと起動してもらった方がいいのか!?

 

大幅な路線変更もとい、元の恋愛っぽい雰囲気にした方が読者様は付いて来てくれる? イヤでも一度替えたものを元に戻すのは、この娯楽に溢れた現代の戦場に置いて致命的……、い、いやそもそもこの『漫画』が配信されてる時代っていつ!? 令和だと思ってたけど、平成、いや昭和の可能性。もしかしたら私の知らない未来の可能性も!?

 

わ、解らない可能性が多すぎるッ! う、うごごごごご

 

 

「や、山本さん? 山本さんッ!!!」

 

「ァ? ……ぁあすいません松原さん、如何しました?」

 

「だ、大丈夫? なんかこの世のすべてに絶望したみたいな顔してたけど……。」

 

「そ、そんな顔してました?」

 

「うん、顔色も青通り越して白というか、緑っぽい灰色というか。」

 

 

それもう死体の顔色じゃないですか。

 

まぁ前世持ちなので一回死んでますからそう変な顔色じゃないかもですけど。

 

そ、それで。何か呼んでくださっていたみたいですが、何か……。あらほんとだ。入口の所で教頭先生がこっちを手招きしてますね。明らかに私を見てますし、自分を指差してみれば頷いています。

 

何かあったのでしょうか?

 

 

「っと、大変申し訳ありません。お待たせしました。して先生、何かありましたでしょうか?」

 

「ちょ、ちょっと今、校長先生に電話がかかって来てな? 山本の御婆様が大層お怒りになりながらかけてきて、お前に『今すぐ帰ってこい』と言ってるそうで……。」

 

「は???」

 

 

え、婆ちゃんブチ切れ?

 

なにが……。

 

 

(……申請なしでの霊具の作成、及び一般人への無断の贈与、本来巻き込んではいけないはずのみかんちゃんを戦わせたうえに、その記憶処理もしていない。)

 

 

あ~~~。

 

そういえばみかんちゃんに渡したグローブ。アレって使い方次第では戦車を一瞬でスクラップに出来るものなので……。自衛官が無断で一般市民に戦闘機プレゼントしたようなものか。

 

うん。

 

 

「すいません教頭先生、紙を一枚頂けないでしょうか? 遺書をしたためますので。」

 

「山本!?」

 

 

 

 






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