漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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24:黒幕

 

 

「主様からよぉ、ちぃ~っとはやるって聞いてたんだが……。こりゃ拍子抜けだなぁ、オイ?」

 

「ッ!」

 

 

場所は変わり、市街地へ。

 

さくらが『怪異五人衆』から『怪異21人衆(死体16)』へと進化を遂げた謎の存在の対処に頭を悩ませていたころ。この世界の主人公である『塚本樹里』とその親友である『夏みかん』はこれまで相対したことのない強敵と戦闘を行っていた。

 

未だ初心者と言えど、二人の実力は確かなもの。樹里がその身に宿す霊刀と、みかんが保持するグローブは一級品の霊具なのだ。単なる怪異相手に苦戦することはあれど、必ず勝ちを拾えるだけの強さを有していた。しかし……。

 

 

「ぁ、がッ」

 

「み、みかんちゃんッ!」

 

「もう終わりかい? ……手袋の方はそこまででもないな。」

 

 

怪異の放った弓がみかんの腹部に直撃し、吹き飛ばされる彼女。

 

霊具の効果か貫通せず大きな外傷に繋がることはなかったが、そのダメージは深刻。擦り傷が絶え間なく全身を覆っており、疲労困憊な状況だ。さらに先ほどの衝撃を喰らってしまったせいで状況はより悪化、既にみかんは戦闘不能状態へと陥ってしまっていた。肩が上下し虚ろながらも目は開いているため意識は残っているようだったが、かなり危険な状態だ。

 

そしてみかんに向かって声を上げた樹里も、厳しい状況に追い込まれてしまっている。

 

 

(勝ち筋が、見えない……!)

 

 

みかんに比べればまだマシだが、霊刀を杖にし何とか立ち上がっているような状態。

 

そもそも、彼女たちの武器は『刀』と『素手』だ。

 

これまでは霊具や霊力がもたらす身体強化によりその弱点、近接攻撃しかできないというデメリットを気にかける必要はなかった。何せ相手が遠距離攻撃を放ってきたのならばそれを回避し、懐に潜り込めばいいだけなのだから。無論樹里もみかんも“同格”の相手が出て来た時に苦戦することは理解していたが、未だ彼女たちは独学でその力を扱っているのだ。普段の生活や日々のパトロールをしなければならない現状、新たな手段を手に入れることは難しかった。

 

しかし、そんな時に起きてしまったのが、『弓鳥』の出現である。

 

 

(怪異五人衆、刀さんも聞いたことのない存在って言ってたけど……。恐ろしく強いっ!)

 

 

完全な格上が、自分たちを一方的に攻撃できる遠距離武器を持っていればどうなるのか。

 

その惨状が、今の彼女たちの前に広がってしまっている。

 

距離を詰めようにも相手の方が素早く不可能、連携で何とか距離を詰められたとしても単純な力量差で吹き飛ばされてしまう。そこに無数の矢が飛んでくるのだ。最初は弾くことが出来ていたが、彼女たちは単なる人間。扱える体力にも霊力にも限りがある。

 

相手が彼女たちで遊んでいる、いやもっと言うならば見極めているような行動をしてくれているおかげか、最悪の状況には陥っていないが……。もう一撃喰らえば確実に気絶してしまうほどに追い込まれてしまっていた。

 

しかし彼女たちの手に打開策は存在せず、逃げる隙を生み出すことすらも不可能。完全な詰みの状況が出来上がろうとしている。そんな状況でも樹里は何か手段はないかと必死で思考を巡らせていたが、彼女が何か思いつくよりも先に、動き始めてしまう敵。

 

 

「確か人間には“火事場の馬鹿力”ってのがあるんだろ? それをみせて見ろ、よッ!」

 

(ッ! 来るッ!)

 

 

樹里たちからすれば初めて見る『喋る怪異』。

 

邂逅した当初は驚いたものだが……、今はそんな暇などない。

 

鳥の頭を持ち『弓鳥』を名乗るその存在が弦を引いた瞬間、生み出される霊力の矢たち。彼がそれを放った瞬間、幾重にも重なった鏃が樹里に向かって襲い掛かってきてしまう。ある程度使用者の意思をくみ取り動けるのだろう、単に直線を描くのではなく様々な角度から襲い掛かって来るソレを、刀を振るい撃ち落とすために動く。

 

霊刀も所有者の危機的状況を理解しているのだろう。いつもよりその口数を増やし、敵の攻撃が飛んでくる方角と位置を絶えず樹里に伝え続けるが……。

 

 

(う、腕が、あがら……ッ!)

 

 

振り上げようとした刀、その真上をすり抜け樹里の胴体に直撃する霊力の矢。

 

ここまでの疲労が祟ってしまったのだろう、来る場所が解っていても防御が追い付かなければ何の意味もないのだ。その事実を体に無理矢理叩き込まれるように、地面を転がる樹里。

 

霊刀がその霊力を胴体に送り込み、防御力を底上げしてくれたおかげか貫通はしなかったが……。次はない。

 

共に戦うみかんは意識はあれど立ち上がることが出来ず、樹里も同じような状況。先程まで指示を出してくれていた霊刀も、先ほどの防御で霊力を使い切り眠りについてしまった。もう取れる手段はなく、ただこのまま訪れる死を受け入れるしか出来ない。

 

何もできないこの状況に歯を食いしばる樹里だったが……。

 

 

「はぁ、やめだやめだ。歯ごたえすらねぇ。殺し合いは嫌いじゃねぇが、レディですらないベビィを痛めつける趣味はねぇんだよ。さっさと帰ってマミィのミルクでも飲んでな。」

 

「な、なに、を。」

 

 

一瞬だけ耳の部位に指を与える動作をした『弓鳥』が、大きなため息と共にそんなことを言い始める。

 

 

「見逃してやるって言ってんだよ。時間も十二分に稼げたようだしな?」

 

「時間、って何、を!」

 

「ベビィにそこまで言う義理はねぇなァ? んじゃ、こんど会う時まではもう少しマトモに成長しておくこった。」

 

 

そう言い残した瞬間、その場から掻き消える怪異の姿。

 

2人とも生き残ることは出来たが、初めての敗戦。

 

彼女はただ、先ほどまで怪異が居た場所を見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視点は変わり、怪異五人衆の『弓鳥』へ。

 

彼は面白くなさそうな顔をしながらも、急ぎ自分たちの拠点へと戻ろうとしていた。

 

 

(想像以上に弱くて全く楽しめねェとは。拍子抜けだよなァ。……まぁ、役目は果たせたし、あっちの“任務”も無事終わったのなら別にいいんだが。)

 

 

彼が樹里たちを追い詰めていた直前に受け取ったのは、同僚からの通信。

 

術への造詣が深い『扇狐』からの『作戦成功』の報を受けたため、彼は撤退を選んだのだ。そもそもの話、彼が受けてた任務は樹里たちの足止めである。副目的として樹里及びみかんの観察、そして育成も受け持っていたが……。『山本さくら』の確保が出来たのならば、もう任務を続ける必要もない。

 

まだ戦闘の途中であれば大技を使用し相手にダメージを与えてからの撤退、という手段も取っただろうが、彼の想定よりも樹里たちが弱かったが為に、彼女たちはすでにボロボロ。何もせずともすぐに撤退出来る状況だったのだ。

 

 

(にしても、主様は何故あんな小娘を? まぁ価値がねぇとは言わねぇが、わざわざ気にかける様な強さは持ってねぇはずなんだが……。)

 

 

一瞬だけ疑問を抱く彼だったが、すぐに頭を振りその思考を吹き飛ばす。

 

『弓鳥』は怪異ではあるが、“造られた”存在である。自意識を持つことを許されているが、だからこそ製造者である主に付き従うことを求められている。彼に組み込まれた術式がそうさせたのか、それとも彼に生じた意識がそうさせたのかは解らなかったが……。ともかく主人への不信感をすぐに消しさり、自分には見えない何かがあるのだろうと考え直す彼。

 

そうこうしてる間に自分たちの拠点、『笹沼先輩』の邸宅に到着する彼だったが……。

 

 

(……雰囲気が、違う?)

 

 

一瞬だけ、疑問を抱く弓鳥。

 

ほんの少しだけ感じる異常、家そのものが何かに覆われているというべきか。形容しがたい何かが起きていると察する彼。急いでその優れた視力、そして持ちうる能力をすべて使用し家全体の状況を把握しようとする彼だったが……、調べれば調べるほどに、何も出てこない。

 

不気味に思い仲間に連絡を取ってみるが、特に問題はなし。先程の報告と同じように、出発時にいた地下室で待っているという報告が帰って来る。

 

 

(気のせい、か?)

 

 

自身の不具合か、それとも先ほどの戦闘が味気なかったがゆえに生じた不満感か。そのどちらかが“ありもしない疑問”を抱かせたのだろうと考えた彼は、その心に少しのしこりを残しながらも、家に入っていく。

 

慣れた手つきで扉を開け、一直線に地下室の扉まで。

 

霊力を通しカギを開けて中に入ってみれば、“いつも通り”の地下室へと繋がる階段。

 

何でもないようにそれを下り、自分たちの待機場所である地下室の扉を開けた瞬間……。

 

 

 

 

 

全身に襲い掛かる、強烈なプレッシャー。

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

まるで全身に星そのものが落ちて来たかのような感覚。

 

たまらずその場に跪いてしまう弓鳥だったが、眼は死んでいない。指一本でも動かせば即座に消滅してしまう、そう錯覚するほどの重圧に耐えながらもなんとか彼は顔を上げる。

 

彼の仲間である怪異五人衆にこれほどまでのプレッシャーを発せられる仲間はおらず、彼の主人も自分たちより強いといえどここまで無法ではない。先程感じた違和感から『敵対勢力に本拠地を攻め込まれた』という事実を理解した彼は、少しでも情報を得ようともがき始めたが……。

 

すぐに、後悔する。

 

 

 

「生意気、ですねぇ?」

 

 

 

顔を動かそうとした瞬間、彼に叩きつけられるより強力な重圧。先程までのプレッシャーが単なる小手調べだったことを魂で理解させられるほどの格のちがい。既に跪けるような状況ではなく、その全身が地面に叩きつけられてしまう。

 

しかし彼はまだあきらめていない。せめて視覚情報だけでも自身の主人に伝えようと視線を上へと向けるが……。

 

 

 

「あら、見られちゃいましたか。」

 

 

 

そこにいたのは、“本来”ここにいてはいけない人物。当初の計画ではここではない別の場所に輸送するはずだった、対象。顔を黒い布で隠しているが、声で理解してしまう。

 

この、巫女服の人間は……!

 

 

「っと、危ない危ない。“まだ”、早いですからねぇ?」

 

 

彼がその存在の名前を口にしようとした瞬間、背後から襲い掛かる衝撃。

 

その優れた瞳が自身の首へと差し込まれた『一枚の紙』を認識しようとするが……、それよりも先に、彼の意識が漂白されていってしまう。製造時に生じた意識はそのままに、彼が保有する記憶を完全に消し去り、新しく埋め直す行為。適性があるモノでも十数年の修練を必要とし、その一族の秘術とするようなものを、軽く扱ってしまう黒い巫女。

 

 

「まぁ、一度実践済みですからねぇ。」

 

 

薄れゆき再構築されていく彼の視界が最後に捉えたのは、自身の同僚たちである怪異五人衆が、眼前の巫女に自ら跪く光景。自分たちが仕える主はこの者ではないのに、それが正しいことになってしまっている。何とかしてこの状況から抜け出そうと足掻こうとする弓鳥だったが……。

 

そもそも、自分の主は“この眼の前にいる巫女様”だった。

 

抵抗し暴れようとしてしまった自身を恥じながら、頭を垂れる怪異。

 

 

「……よろしい。ではでは皆さん。私のためにも。頑張ってくださいねぇ?」

 

「「「「「はッ!!!」」」」」

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふ……」

 

 

(おわぁぁぁあああ!!! コレ! コレ完全に“視点”がこっち向いてるッ! 本誌に掲載される感じの奴! 既にやり始めてたからどうにもならなかったけど、さっきのシーン全部乗せられる奴! ああああああ!!! 絶対黒幕だと思われるじゃんか! 大事なキャラぶっ殺し過ぎちゃったから自業自得といえばそうなんだけど、読者様から絶対敵対勢力って思われるやつぅぅぅ!!! やだぁぁぁぁああ!!!!!!!)

 

 







な、なにとぞ。なにとぞ評価をお願いいたします……!!!







あ、次回はスレ回です。
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