TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない!   作:如月SQ

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責任取ってよ、君のせいだから

「ヌメェン……ヌメェエエン……」

 

「サナサナ……」

 

 やれやれ、ヌメルゴンも漸く落ち着いてきたか。

 ヌルヌルとした粘液に包まれている頭を、優しく撫でた。

 

 村に戻って治療を終えて、元気になった皆と改めて再会を果たす事になった俺は、皆に進化している事を大層驚かれながらも、特に問題なく受け入れられていた。

 そしてそのお礼、という訳じゃないが、ショウちゃんをしっかり守った御褒美に、褒め褒めタイムを開催する事になった。

 褒め褒めタイムとは、俺が個人的に設けている時間で、頑張った皆を目一杯俺が褒めてあげる時間の事だ。

 なんせ厳しいだけじゃ辛いだけだからな……たまには甘やかさないとな。

 

 ……まぁ、何よりも誰よりも、俺自身が頑張った皆を甘やかしたいだけなんだが。

 なんせ、皆俺の弟や妹みたいなもんだからな……どうしても可愛くて仕方ない。

 普段なら鍛える必要性があるからそりゃあ厳しくするけど、そうじゃないならもう、ドロドロに甘やかしてやりたい。

 レントラーがコリンクだった時はよく無邪気に甘えてきたから、可愛くて仕方なかったなぁ……。

 可愛がり過ぎた反動か、レントラーになったらとんと甘えてこなくなっていったけど……。

 

 だからさっきは久々に無邪気に甘えてきて本当に嬉しかった。

 もう、堪らなくなって目一杯甘えさせてやって……まぁ、流石に無理が祟ったみたいだが。

 まぁでも後で改めて褒め褒めタイムを開催するとしよう。

 ちょっと寝惚けてたっぽかったしな。

 

 ……さて、ヌメルゴンが落ち着いたのは良いんだけど……ずっと密着してたからか全身ヌルヌルだ。

 まあ、ヌメルゴンと触れ合ったらこうなるのは当たり前だしいつもの事だから気にしな――。

 

「…………サナ……?」

 

――いや、今の俺はサーナイトじゃん。

 不意に見下ろした体はヌルヌルで、すらりと伸びた手には粘液が纏わりつく、更にはスカートみたいな部分が濡れたせいで素足に張り付いて、くっきり脚のラインが見えている……。

 サーナイトらしい、どこか女性的な体で全身ヌルヌルなのはちょっと……良くない、か?

 ……それにこれ、ちょっと、恥ずかしいな……?

 

 チラ、と既に褒め褒めタイムを終えた皆を見れば、何処と無く気まずそうに目を反らしていて、ショウちゃんも此方をじっと見つめていた。

 う……なんだか今更恥ずかしくなってな……。

 なんとなく、あまり意味がないとわかっていても腕で体を隠す。

 そして、ショウちゃんの責めるような視線から逃れる為に……誤魔化すように笑みを返した。

 

「サナッ」

 

 そうするとショウちゃんはなんだか俯いてしまった。

 あ、あれ……?

 怒らせちゃった……かな?

 

 うーん、今このヌルヌルのまま褒め褒めタイムに移行したら迷惑だろうし……一回水浴びでもした後、寝る時にでも目一杯褒めて撫でてあげよう。

 ……年端もいかない少女と同衾する事について……?

 もっと小さい頃に大泣きされた時にずっと一緒に寝る事を約束させられたので、ショウちゃんが嫌がらない限りは続けていく所存です。

 

 さて、いつも一緒の二人だけの時間、今日はショウちゃんに滅茶苦茶心配かけちゃったし本人も頑張ったし……いっぱい褒め褒めしてあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、思ってたのに……。

 どうしてこうなった!?

 

 目の前でスゥスゥと寝息を立てるショウちゃんを抱き締めながら、俺は内心でそう叫ばざるを得なかった。

 

 いや、確かに褒め褒めタイムは恙無く終えた。

 というか、俺自身も疲労していたのか途中から意識朦朧になってしまって……ショウちゃんの頭を撫でてくれる手つきが心地好くてつい浅く眠って強制終了してしまったのだ。

 まぁ、二人でスキンシップしてるうちに寝落ちしちゃうってのは珍しい事じゃないんだけど……今回はその後が不味かった。

 何がまずかったのかよくわからないけど……ショウちゃんが眠ってる俺に……。

 

 ……キス、してきたんだ。

 

 かあっと頬が熱くなる。

 ショウちゃんの唇から目が離せない。

 否応なしに意識してしまう……。

 

「サ、サナッ」

 

 ブンブン、と首を横に振る。

 良くない、良くない良くないぞ……。

 俺にとってショウちゃんは、そういう存在じゃないんだ。

 

 俺にとってショウちゃんは……命の恩人で、最愛のパートナーで……妹のような存在なんだ。

 俺が守り続けなければいけない、尊い存在なんだ。

 何よりも俺はポケモンで、中身は兎も角、ガワは♀。

 異種族の同性でなんて、そんな業の深い事を……。

 

 じっと、安らかに寝息をたてるショウちゃんを見つめる。

 ショウちゃんには、普通の、健全な恋愛をして貰いたかった。

 平和な現代でいずれ旅に出て……そこで素敵な出会いをするんだろうと思っていた。

 そうなったら相手の見極めは俺がするつもりでいて。

 そんな未来予想図を立てていたのだけど……ヒスイの地に飛ばされて……基本排他的な人々とそんな雰囲気になる事もなく……。

 というか、元の時代に戻るのであればそんな関係になってはいけない訳で。

 正直そういう、恋愛的な事は頭から抜けていたんだ。

 

 ……キス、だけならまだ親愛と取れなくもない。

 親愛のキスってのはあるし……頬や額、瞼なんかにするもんだが。

 ショウちゃんのそれは、マウストゥーマウス……しかも頬を赤く染めながらので……明らかに俺を意識している様子で……。

 ……思えば全身ヌルヌルになってた時もあの視線に熱が込められていたような気がしてきた。

 

 そこでハッとなる。

 俺は今サーナイト、かなり人間に形が近い、女性的なポケモンだ。

 そんな俺が目の前でヌルヌルになってるのを見て、ショウちゃんの中で何かが目覚めてしまったのかもしれない。

 うーむ……それは悪い事をしてしまったか。

 サーナイトに性癖破壊されたトレーナーいそう、なんて前世で笑ってたものだけど、自分が当事者になってトレーナーの性癖を捻れさせてしまうとは……。

 

 とはいえ、だ。

 まだ俺の寝込みを襲ってキスするくらいなら、まだ軽傷だろう。

 恐らくは気の迷い……疲労もあって判断力が落ちてる可能性もある。

 一先ずは様子見で良いだろう。

 

「……サナ」

 

 ショウちゃんには、幸せになって貰わないといけないからな。

 俺達は対等な相棒だけど、それより先に人とポケモンであり、主従関係でもある。

 俺がショウちゃんと結ばれるには……ちょっと、障害が多い。

 

 ぎゅうと優しく抱き締めれば、ショウちゃんは僅かに笑みを浮かべてくれる……なんていじらしいのか……。

 微笑みながら、改めてその顔をしっかりと覗き込む。

 整った可愛らしい顔立ち。

 目を開ければくりくりとしてパッチリとしたお目めがあるだろうし、仄かに朱色に染まった頬はもちもちとして柔らかい。

 髪は黒く艶があって、桃色の唇は柔らかかった。

 

「サ、ナ……」

 

 柔らか、かった……うぐぐ、思い出しちゃった……。

 収まってきていた熱がぶり返してきた。

 うぅ……これ、暫く忘れられないなぁ……。

 

 誤魔化すようにショウちゃんを抱き締める。

 ……温かくて、柔らかい。

 いつも抱き締めてくれていたショウちゃんを、今は抱き締めて腕の中に抱えているのが、少し不思議な感覚だった。

 進化して大きくなって、正直戸惑いはあったけど……庇護対象より小さいよりは良いし、抱き締められるってのも、悪くないと思えた。

 ずっと渋っていた進化だったけど、それだけで少しは救われる気分だった。

 

「サナ……」

 

 ……ショウちゃん。

 きっと今の君の想いはちょっとした気の迷いだよ。

 目の前で起きた性癖が捻れる光景にビックリして、混乱してるだけ。

 君は元の時代に戻って、本来の予定の通りに旅をするんだ。

 ヒスイの地での冒険と似たような……流石にそこまで危険ではないだろうけど……波乱万丈な旅をして、色んな人と出会うだろう。

 そしてそんな中の一人と、普通に恋に落ちれば良い。

 平和な時代で、素敵な人と、普通に結ばれて、幸せになれば良い。

 

 同性のポケモンになんて、想いを向ける必要なんかないんだよ。

 そんな想いを込めて、優しく頭を撫でた。

 

 だから――

 

「サナァ……」

 

――あんまり、惑わせないで。

 

 貴女を守る為ならなんでもする。

 

 貴女のその身に傷一つつけさせない。

 

 貴女を守る、もう二度と危険には晒さない。

 

 約束するから――

 

「サナァッ……!」

 

――俺を、ただのポケモンでいさせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーナイト? なんかちょっと疲れてる?」

 

「サナ……トォ……」

 

 次の日、結局あまり寝付けず、目を擦っていた俺に、ショウちゃんは艶々としたお顔で首を傾げていた。

 急激な進化の負担や、正直死にかけた疲労なんかもあって、微妙に本調子ではないけれど……まあ、全然大丈夫だ。

 

「サナ」

 

 大丈夫、と身振りで示せば、ショウちゃんは納得したように頷いた。

 そして、その手に持ったボールを振りかぶった。

 

「そっか、じゃあ、出て来て、ディアルガ!」

 

 ショウちゃんが繰り出したのは、昨日死闘を繰り広げ、捕獲に成功した伝説のポケモン、ディアルガだった。

 

「グギュァ!」

 

 状況を理解しているのか、多少控え目に吠えたディアルガに対して、俺は腕を組んだ。

 少しでも強く、偉そうに見えるように威風堂々と……ん?

 そんな俺の腕に、ショウちゃんが腕を絡めてきた。

 思わず振りほどこうとするも、優しく振るっても放さない。

 しかも本人はご機嫌という、どうしようもなさ……。

 仕方なく、そのままでディアルガから事情聴取を始めるのだった。

 

「グギュ……?」

 

「……サナ」

 

 信頼など出来る筈もない関係性で、これからどうするかの予定を考えるうえでも、この対面は避けては通れなかった。

 ショウちゃんがくっついている事に、こいつから心配されるのは業腹だが。

 

「サナ!」

 

 ディアルガお前、時を司るんだろう?

 ショウちゃんを早く元の時代に戻してくれ。

 そのくらい、お茶の子さいさいってやつだろう?

 

「グギュゥウウ……」

 

 ところが、それだけではダメらしい。

 今起きている異変を解決しなければそもそも無理との事で。

 更に解決したとしても、成功率はそこまで高くない。

 出来ればもう一匹のパルキアも力を合わせたほうが良い、と。

 そんな、少し弱気な態度に鼻を鳴らした。

 伝説っていうならもう少し、威厳かなにかを示して貰いたい所だが……。

 

「サナッ」

 

「ギュゥウウッ……」

 

 殆ど役に立たなかったクソトカゲには荷が重いか。

 取り敢えず、役立たずには冷たい目線を向けておいた。

 

 さて、得た情報から、これからどうするか……だな。

 ま、決まってるけどな。

 

 俺の腕に抱き着いたまま、俺を見上げているショウちゃんに、笑みを返した。

 ショウちゃんはわかってる、と言いたげな様子で頷き、口を開く。

 

「行こう、サーナイト。冒険の再開だよ!」

 

「サーナッ!」

 

 間髪入れずに答えれば、ショウちゃんは花が咲いたかのように笑った。

 その頬を赤く染めて、幸せだと言う雰囲気を隠そうともしないで……。

 俺は、内心複雑に思いながらも、抱き着いたままのショウちゃんの体勢を変えてを抱き抱えてやってから、冒険の準備の為にその場を後にするのだった。

 

 後に残ったのは、放置されたままの伝説のポケモン、ディアルガだけだった。

 

「グギャッ!?」




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