TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない! 作:如月SQ
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タイトルについてのアンケートお答えいただきありがとうございます!
そのままで良いが大多数なので、このままで行きたいと思います。
「フーッ……フーッ……」
や、やっちまった……。
ショウちゃんを殴っちゃった……。
何処か幸せな顔で気絶しているショウちゃんを見つめて、俺は自分でも驚く程に狼狽えていた。
いくらショウちゃんがいきなり俺に無体を働いたとはいえ、物理的に危害を加えるなんて、ポケモン失格ではないか、と強い自己嫌悪に襲われて……。
「サ……サナァッ……」
で、でもあんないきなり、熱烈なキスを……しかも、ふ、深いやつを……!
にゅるっ、て舌まで入ってきてっ……!
寝込みにキスするくらいならまだしも、こ、こんな時に……!
口の中に残る、ショウちゃんの舌の感触、お弁当でショウちゃんが食べてたオボンの実の仄かな香り、そして……不思議と甘く感じた、ショウちゃんの、唾液……。
「サナ……!」
頬が熱くなる。
感触が、舌に残る味が、ありありと脳裏によみがえってきて、思わず口を両手で押さえてしゃがみこんだ。
恥ずかしくて、恥ずかしくて……ショウちゃんの暴挙の原因になったかもしれない、スカートが捲れあがったはしたない格好を思い出して、更に羞恥心が刺激されて……。
うぅ……なんで、どうして……こんなの、いけないのに……!
どうして俺は……それを嬉しく思っちゃうのさ!?
顔が自然とニヤけちゃって、喉の奥から笑い声が漏れ出しそうで。
良くない……良くないんだよ……。
……でも、ダメ。
胸に触れた、ショウちゃんから伝わる思念が、情念が強すぎて……。
心の底から俺の事が好きだという気持ちが溢れ過ぎて、耐えられなかった。
真っ直ぐで、温かくて、ドロドロとした、強すぎる情念に引き摺られて……キスされた時、咄嗟に抵抗出来なかった。
口内を蹂躙する舌を、受け入れてしまった。
ショウちゃんの拙いキスに、身を任せそうになってしまった……。
最後に残った理性でどうにかショウちゃんを気絶させて誤魔化したけど……暴力でしか解決出来なかった自分に、改めて自己嫌悪だ……。
……それに、これは根本的な解決にはなってない。
あの様子だと、タガの外れたショウちゃんは、これからも容赦なく俺にああいう事をしようとしてくるだろう。
そしてそうなった時に抵抗出来るかどうか……自信が持てなかった。
……困っちゃう、なぁ……。
俺はただ一匹の、ショウちゃんに従うポケモンであれば、それで良いのに。
それで充分に幸せなのに……。
気を失っているショウちゃんの、幸せそうな寝顔を覗き込む。
桃色の唇が、息をする度にふるりと震えている。
……こんな可愛い子がついさっき、俺の口を蹂躙していたとは思えない、よなぁ……。
そっと頬に手を添えればハリのある柔らかな感触がして、撫でれば滑らかで。
ただ、ヒスイでの生活のせいかわずかな陰りが感じられて……少しだけ顔をしかめた。
でも、きっともう大丈夫。
これでパルキアの捕獲にも成功したのだから、異変は収まる。
そうしてディアルガとパルキア、時と空間を司る神様のような2匹のポケモンの力を使えば、元の時代に戻る事が出来る。
それで、めでたしめでたしだ。
「んにゅ……サー……ナイト……」
ショウちゃんの口から、寝言が漏れた。
ただ、名前を呼ばれただけ、その艶やかな唇から紡がれただけ。
……たったそれだけで、なんだか多幸感に包まれてしまう。
「サナァ……」
頬に添えたままの手から、指を唇へと伸ばした。
すごく、柔らかくて、けれど僅かにかさついていて……。
そんな不本意な感触を覚えた手を……そっと……口元に当てた。
チュ
……一時の気の迷いだよ。
ねぇ、ショウちゃん。
現代では……ヒスイの時代ですら、人とポケモンが結ばれてなんていないんだから。
ここでの過酷な生活で、ちょっとおかしくなってるだけだよ。
「……サナッ」
さ、帰ろうショウちゃん。
少し休んで、そうしたら後は……元の時代に戻ろう。
それでこの大冒険もおしまいだよ。
そっと、もう一度、唇に指を這わせた。
……夢の時間は、おしまい。
「グギャァ?」
ショウちゃんの寝顔を盗み見てんじゃねぇ出刃亀トカゲが!
クラボっぽい辛いきのみの果汁食らえ!
「グギャァッ!」
……これですぐに現代に戻れれば、簡単に諦めもついたのに……。
俺達はまだ、二の足を踏むことになっていた。
ディアルガとパルキアによれば、なんだか変な干渉があって、正しく時空移動が出来ない可能性がある、との事。
俺とショウちゃんは横に並んで、そんな言い訳染みた言葉を並べる二体の伝説ポケモンに対して冷めた目線を送っていた。
じゃあどうすれば良いのか、と聞いてもなんともハッキリしない。
二匹の間でも意見が分かれているのか、そもそも良く分かっていないのか……。
何の役にも立たない二匹のトカゲを眺めて、俺達は大きくため息を吐いた。
「グギュゥ……」
「ガギャァ……」
何不満そうに唸ってんだ。
何か役に立ってから言え。
「……仕方ないね。取り敢えず手掛かりもないし……ポケモン図鑑の調査でも続けよっか」
「サナ」
そう言って苦笑するショウちゃんに頷いて、一先ず妥協の目的を決めようとした時だった。
「お話は聞かせていただきました! ジブンにちょっとした考えがあります!」
イチョウ商会のウォロさんが現れた。
「ウォロさん!」
基本的にヒスイの人には淡白というか、一線引くようになったショウちゃんだったが、ウォロさんだけは別枠のようだった。
まぁ、何せ追放された時に明確に助けの手を差し伸べてくれたのウォロさんだけだからな。
結果的に丸く収まったし、彼等がショウちゃんに対して何もしなかった、気をかけなかったという訳じゃないが、そこにはやっぱりショウちゃんの中で明確な『区切り』があるようだった。
最近じゃ手持ちにしか見せないくらいの爛漫な笑顔を見せて、ウォロさんに対応を始めていた。
ウォロさんと言えば、だ。
そもそもここヒスイの地に住む人々には、時折見覚えのある人物が何人かいる。
デンボクのジジイとかシマボシ隊長とか、前世でプレイしたポケモン本編のゲームの記憶が刺激された覚がある。
そんな中で、ウォロさんの存在は一番驚いた記憶がある。
なんせ、どう見てもポケットモンスターダイヤモンド・パールのラスボス、『チャンピオンシロナ』にそっくりだったからだ。
恐らくはご先祖様なのだろう。
「ここ、ヒスイ地方には伝説と呼べる言い伝えがシンオウ様関連以外でもいくつも残っています! 調査をするならば、そんな歴史や伝承を調べなければいけないと思いませんか?」
それにこのヒスイの地に降りたった当初から、彼はずっと友好的で、薬なんかもよくわけてくれていた。
「でしたらジブンにお任せを! これでも商人の端くれ、必要な情報を必ずやお教えしましょう! 如何でしょうか?」
そんな彼の言うことなのだし、そもそもの当ても殆どない。
ならその通りに行動するのも悪くはないかもしれない。
俺とショウちゃんは互いに視線を交わして、頷きあった。
特に異論はない。
「じゃあ、お願いします!」
「承りました! さて、では……」
人好きのする笑みを浮かべたウォロさんはそう言って人差し指を立てた。
自信満々な様子に、どんな提案がくるのかと身構えていたら……。
「隠れ里に話を聞きに行きましょう!」
そんな他人任せな言葉に、思わず俺は前につんのめりそうになった。
説明すんの、お前じゃねぇのかよ!
そうして始まった、ヒスイの地のあちこちを駆けずり回る旅。
たまに他の皆を鍛えつつ、ショウちゃんに一切の手傷を負わせないように立ち回って、何匹かの伝説と呼ばれるポケモンの調査を続けた。
道中ではまだ捕まえていないポケモンも捕獲しつつ、図鑑を埋めていって……。
そうして、自然と手元に集まったのは……無数のプレート。
キングを鎮めた後や任務の後、様々な形で手に入れた各種タイプの力が込められた不思議なプレート。
最後にコギトさんにせいれいプレートを渡されて、残るはゴーストタイプのプレートだけになっていた。
ここまでくれば大体転生者である俺はわかってしまう。
ポケットモンスターダイヤモンドパールの伝説と言えば、ディアルガとパルキアに加えたもう一匹の伝説、ギラティナだ。
確かあまり言い伝えのないポケモンで、隠されているみたいなポジションで、タイプがドラゴンと、ゴースト……。
となると、後はギラティナをしばけばゴーストのプレートが手に入るのだろう。
そして、プレートと言えば、恐らくこのヒスイ地方の旅が舞台であるゲーム、レジェンズアルセウス……だったかな?
そのタイトルにもなっているアルセウスと、深く関わりのあるアイテムの筈だ。
あまり覚えていないのだけど、確かアルセウスに逆らった巨人、レジギガスの仲間が封じ込められたプレートであり、アルセウスの力の源にされてる……みたいな設定だったような……。
……いや、本当なら怖いな、生物を封じ込めて自らの力にするとか、まんま悪役じゃんか。
後は……劇場版で、プレートを人に貸し与えてて弱体化している描写とかあったような気もするし……全部揃えたらプレートを取り戻しに来るアルセウスと会う事が出来るのかもしれない。
シンオウ様、なんて崇められているだけで俺みたいな一般ポケモンに無様に負けるようなトカゲ二匹と同格っぽいギラティナは兎も角、アルセウスは真の意味での創造神。
もしかしたら、あいつらには出来なくても神様なら元の時代に返してくれる、かも……。
……レジェンズアルセウスは、どういうストーリーで終わったんだろうか……?
このまま突き進んで大丈夫なのだろうか……?
……むず痒いなぁ。
なんで俺は前世でちゃんとポケモンをプレイしなかったんだろうな……。
参考にした原作知識、前世での経験はいくつもあった。
だけと……この先の状況を正しく知れたかもしれない機会をみすみす見逃していたというのは、ちょっと後悔が残る。
知っていれば、もう少しちゃんとした立ち回りが出来たかもしれないのに……。
はぁ、と思わずため息を吐いた。
「……サーナイト……? ……どうしたの……?」
「ン……サナァ……」
俺の膝に頭を乗せて、目を細めているショウちゃんの頭を、優しく撫でた。
昼食を終えて、少し疲れが溜まっていた様子だったから、お昼寝の時間を設ける事にしたのだ。
俺の、膝枕で。
寝付くまでは脚に厭らしく手を這わせて、俺が我慢して震えてるのを眺めてたみたいだったけど、眠気には勝てなかったのか、段々とうつらうつらとし始めていた。
なんでもない、という意味を込めて首を横に振って、頭巾のはずした頭を優しく撫でた。
俺の予感が正しければきっと、もうすぐ最後の戦いが始まる。
ウォロさんもギラティナの名前は出していたし、俺の予想もそう間違ってはいないだろう。
ギラティナと……ひいては、もしかしたらアルセウスとの戦いも待ってるかもしれない。
「サナ……サーナ……」
「ん…………」
だから今はゆっくり休んで。
その小さな体をちゃんと癒して。
俺の膝一つ、いくらでも貸してあげるから……。
ちらりと視線を向けた先では、レントラーを始めとした皆が、周囲の警戒を続けている。
その背中は頼もしく、お陰で俺は安心してショウちゃんを甘やかす事が出来た。
ゆっくり、お眠り……俺の、最愛の……
きっともう一踏ん張りだから……。
そうしたらきっと……帰れるよ。
すぅすぅと安らかな寝息をたてる姿に、自然と微笑みが浮かぶ。
……潤いと滑らかさを喪いつつある髪に、改めて気持ちが引き締まっていった。
「ンッ……」
眠りながらも俺の脚をまさぐるのは……もう、諦めて気にしないでおこう。
ショウちゃんが目を覚ましたら、向かうとしよう。
三度、テンガン山の頂上……シンオウ神殿へと。
ここできっと……最後の決戦がある。
そして、シンオウ神殿で俺達は……信じられないものを目撃する事になった。
誤字報告ありがとうごさいます!