TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない! 作:如月SQ
毎度執筆の励みになっております。
さぁ、二人とも性癖はぶち壊れ、無事に結ばれたので……そろそろ最後の本題に入りますね。
お楽しみいただければ幸いです。
俺は……ただその戦いを眺めていた。
突然本性を表したウォロさん……ウォロとのバトル。
何処か覚えのあるポケモンを繰り出すウォロに対して、たった一匹、レントラーだけで立ち向かうショウちゃん。
的確で素早い指示に、時に一瞬の逡巡もなく従い、時に自分の解釈で動く……。
完璧なコンビネーションだった。
思わず嫉妬してしまうくらいに。
しかしまさか、ウォロが黒幕だったとは……前世でのポケモン知識が仇になるとは思わなかった。
更にはまさか、俺を除け者にされるとはもっと思わなかった……ショウちゃん、あんな奴の事気にしないで俺も混ざってボッコボコにしようぜと何度思った事か。
けれど、覚悟を決めた様子のショウちゃんにそれ以上無粋な事は言えなかった。
ただ、応援としてちょっと……ほ、ほっぺにキスしたくらいで……。
……随分やる気を出してくれたみたいで、良かった
いやあれはやる気を出したってレベルじゃないか。
ウォロが俺を借り受ける、だなんて言い出した瞬間のショウちゃんの反応は、端から見てて恐ろしいものがあった。
鬼気迫るというか、端的に言えばぶちギレていた。
負けるとも思ってはないけど、ウォロに貸し出すくらいで何をそんなに怒っているのか……なんて、ちょっと日寄った思考をしていたけど……。
……うん、正直言うと、トキめいてしまった。
俺を片時も渡したくないと、心底思っている事が伝わってきて……俺を守る為に戦う覚悟を決めたのがわかって。
どうしようもなく、その想いが嬉しいと思ってしまった。
俺のほうが圧倒的に強くて、俺が戦えば簡単に全てをひっくり返せるとしても、俺自身は守って貰う必要なんかないと思っていても……頼もしい背中に、胸がキュンキュンしてしまう、
ショウちゃんに好きだと何度も囁かれて、キスもされて、ふ、深いのもされて……。
今も、ほっぺにキスして応援して守られるなんて、まるでヒロインみたいな立場に甘んじて……。
そんな自分に嫌悪を感じていない現状が。
ただただショウちゃんの勝利を願って見守っている今が。
ショウちゃんを守り続けると誓った筈の自分と、グチャグチャに混ざっていく。
俺は、ショウちゃんが、好きだ……。
……ダメなのに。
人とポケモンは結ばれちゃいけないのに。
俺の理性は今すぐウォロを叩きのめせと叫んでいる。
そうして全てを台無しにしてでも、ショウちゃんを危険から守って、元の関係に戻るべきだと。
でも、俺の心は……ショウちゃんを信じて見守りたいと叫んでいた。
ショウちゃんの格好良い姿を、目に焼き付けたい、って。
自然と胸の前で手を組んで……ガワだけになってしまったペンダントを握りしめて……戦いぶりを眺め続けていた。
そして……レントラー、俺の可愛い弟分一匹で、ウォロの手持ちの全てを薙ぎ倒す姿を見届けた。
……凄い、と正直に思った。
ショウちゃんも、レントラーも……。
昔はあんなにちっちゃくて弱かったのに、その背中は逞しく、頼もしい。
気付けば視界が滲んでいて、慌てて拭った。
その勇姿を刻み込みたくて……恐らく、これで終わりだろうから。
けど、それは早計だったらしい。
まさかの七匹目、シンオウの伝説のポケモン三体目のギラティナが突如として現れた。
そこで俺は今度こそ俺が出るつもりだった。
以前伝説のポケモンと、ディアルガと俺抜きで相対した時に皆がやられてしまったように、またショウちゃんを危険に晒す訳にはいかなかったから。
けれど……ギラティナを睨み付けて一歩踏み出そうとした俺を止めたのは、ショウちゃんだった。
「サナッ!」
卑怯な手を使いやがって、ぶっ飛ばしてやる!
「待って!」
ショウちゃんは、俺を遮るように手を横に伸ばした。
「サナッ!?」
なっ……!?
相手はまがりなりにも伝説のポケモン……大丈夫、なのか……?
「大丈夫、皆を……私達を信じて」
「…………」
心配だ……心配で仕方ない。
だけど……。
「君をついでになんて欲しがってるウォロさんには、絶対に渡さない。絶対に、勝つ。……約束だよっ!」
キュンッ
そ、そこまで言われちゃぁなぁ……。
「……サナ……サナッ」
……わかった、信じてる、頑張れっ!
「うんっ! 私の格好いいところ、しっかり見てて!」
そう言って笑うショウちゃんのキリッとした笑顔に、胸が高鳴った。
どくん、どくんと五月蝿いくらいに。
ああ……ダメだ……。
想いが、溢れる……満ちて、充ちて、溢れ出てしまう。
好き、好き……!
ぶん、と顔を横に振って雑念を振り払う。
そうして改めて真っ直ぐ、ショウちゃん達の後ろ姿を見つめた。
「サナ……」
ショウちゃん……。
みんな……。
頑張って……!
ギラティナに立ち向かう皆の勇姿を、俺は目に焼き付け続けた。
「ビシャァアアン!?」
そして……ショウちゃん達は、見事にギラティナを打ち倒した。
ヌメルゴンの放ったりゅうのはどうが決め手だった。
抱き合いながら喜びあっているショウちゃんとヌメルゴンを眺めて、俺は目を細め、思いを馳せた。
ギラティナは強かった。
漸く倒したと思えばフォルムを変えて復活し、推定シャドーダイブに翻弄され……既に傷付いていたレントラーは勿論、タイプ不利だったイダイトウに、タイプの片方が通じないガチグマとジュナイパーまで倒されてしまっていた。
それでも、それでも諦めずに最後まで戦い抜いた……。
視界が涙で歪む。
胸が高鳴って仕方ない。
ヌメルゴンを受け入れいれてぬめぬめになってる姿が艶かしいと思ってしまう……。
興奮している自分がいた。
それを誤魔化すように、目を拭い、俺はショウちゃんとヌメルゴンに飛び込んだ。
ショウちゃんとヌメルゴンの健闘を称え、頑張りを認めて、全力で褒めた。
俺自身がぬめぬめになるのも気にせず、ただただ一心不乱に褒め続けた。
罷り間違っても、そういう事にならないように……。
そして、そんな時にウォロから声がかかった。
俺は自分でも驚く程に早く、ショウちゃんとヌメルゴンから離れ、ウォロから遮るように立つ事が出来た。
……内心で、ちょっと安堵の息を吐いた。
ショウちゃんの格好いい所を連続で摂取したせいで女々しくなっていた自覚があったから、ちゃんと立ちはだかる事が出来た事に安堵していた。
まぁ、その警戒も杞憂だった。
ウォロはあっさりと負けを認めてプレートを置いて去っていった。
まだ目的……アルセウスと出会う事自体は諦めてないようだったけど、少なくとももう、ショウちゃんを妨害するような事はないだろう。
ずっと都合よく利用されていた俺達だったけど……なんとなく、これだけはウォロが本当の事を話しているような気がした。
最後、ショウちゃんにアルセウスに共に会わないかと誘われた時、ウォロは、彼は本気で笑っていたような気がするから。
絆されたのか、はたまた呆れか……どちらにせよ、ウォロとの決着はついた。
手持ちは一匹減り、相手は二匹、実質三匹多い中で勝ちをもぎ取ったショウちゃん達が、とても誇らしかった。
やがてウォロが立ち去った後、俺達は顔を見合わせていた。
プレートと愛用していた笛が変化した奇妙な笛や、逃げたギラティナの行方等、気になる事は多かったけど……。
「…………サナ」
「うん、一度帰ろう!」
ショウちゃんの差し出した手を握り、俺達は帰路についた。
直ぐに険しい山道になるから、直ぐにこの手はほどかれてしまうのだけど……。
その短い時間でも触れ合ってるだけでドキドキする。
人の指と勝手が違うから、俗に言う恋人繋ぎが出来ないのをちょっとだけ残念に思いながら、俺達は手を繋いで……ゆっくりと神殿を後にするのだった。
背後で僅かに空間が歪んだ気がしたけど……気にしないでおく事にした。
そんな事よりも、ショウちゃんの隣にいる事を噛み締める事に必死だった。
帰り道に寄った温泉で、俺は自分の視線がよくショウちゃんに向いてしまっている事を自覚せざるをえなかったり
気付けばショウちゃんを目で追っていて……華奢な肩や腕、少し逞しくなった脚、白く滑らかな肌……を眺めてしまっていた。
良くない、良くないと思いつつも止められなかった。
少女の入浴を覗くとかさ……いやまぁ俺は今ポケモンだし、♀だし、問題ないとも言えるけど……。
それにしても綺麗……。
ハッ、いやダメダメ!
倫理的にアウト!
……とかそのへん言い出すと、もう充分にアウトな気もするけど……。
「んー……! やっぱり温泉は気持ち良いね、サーナイト!」
温まってピンクに染まった頬で笑うショウちゃん見たらどうでも良くなった。
「サナ」
頷いて、温泉を楽しもう……。
きっと、もう、入る機会はないだろうから。
それにしてもショウちゃんの赤く染まった肌は、えっちぃなぁ……。
後はコトブキ村に一度戻って、しっかり休むとしよう。
それで、それで……。
……一緒に、寝るのか……?
こんな、煩悩まみれの中で……。
良いのか……?
すり寄ってきたショウちゃんを撫でながら、俺は暫し思案にふける。
既に一線越えてる気がする今の現状で、俺はどうすれば良いのだろうか……?
ショウちゃんの頭に頬擦りしながら、答えの出ない問いを悩み続けたのだった。
そして……夜。
俺は、ショウちゃんの情念に負けた。
完膚なきまでの敗北だった。
こんなに胸の突起が弱い事を初めて知った……。
こんなにショウちゃんの想いが強かった事を突き付けられた。
こんなに……快楽に弱いなんて、溺れてしまうなんて、ショウちゃんという存在を刻み込まれるなんて……思いもよらなかった。
倦怠感と、体の芯に残る熱と、快楽の残り火に体が震える。
散々もたらされる快楽に喘ぎ続けたせいか、体が動かない。
……それでも、幸せだった。
好きという情念を直接、幾度も幾度も送り込まれて、感化してしまったという事は否定出来ない。
でも、そもそも俺は……ショウちゃんが好きだったから……。
その『好き』がショウちゃんの抱える『好き』と同質だったかは定かじゃ……いや、もうどうでも良いか。
俺達は、互いの愛を確かめあって……体を重ねた。
ポケモンだから、人だから、主従関係だからと一線引いていた俺を、ショウちゃんは自分のペースに引きずり込んで、ドロドロにとかしつくしてしまった……。
ショウちゃんの想いに、俺は負けた。
俺の心を、丸裸にされてしまった。
俺は……ショウちゃんが好き。
もう、誤魔化す事は出来ない。
好きで、好きで好きで好きで好きで好きで仕方ない。
ショウちゃんに救われたあの日から、俺の命はショウちゃんのものだった。
そしてこれからは、俺の心もショウちゃんのものになる。
全てを委ねられる、最愛の主の元で……俺は、ずっと直ぐそばで生きる……。
そう思うと、お腹の奥が、ひどく疼いた。
でも……今日は流石に疲れた。
すぅすぅと安らかに寝息をたてるショウちゃんにキスを落として、俺もゆっくりと目を閉じた。
「……サナァ…………」
俺は……幸せだ……。
生きてて、良かった……。
諦めないで……生き続けて……良かった……。
そうして翌朝、腕の中にはタマゴがあった。
仄かな温もりを感じる、ポケモンのタマゴ。
瞬いて、目を見開いて、出所を探して……そこまで考えた所で直感が囁いた。
≪俺とショウちゃんのタマゴじゃない?≫
と。
「サナサナ」
いやいやまさか、人とポケモンだよ?
「サナッ」
おまけに女の子と♀だよ?
昨夜確かに俺達は愛を確かめあって体を重ねたけど、子供が出来る筈が……。
……触れているタマゴに、溢れんばかりの愛おしさを感じる。
それを自覚してしまえばもう、ダメだった。
「……サナァ…………」
これが、俺とショウちゃんの愛の結晶だと、本能が訴えかけてきていた。
それでも俄には信じられなくて、俺はタマゴをそっと抱きしめた。
人とポケモンで、女の子と♀で、体こそ重ねてしまったものの、そういう事は諦めていた。
でも現実にはタマゴが、俺の腕の中にある。
しかも、それを俺は、自分とショウちゃんのタマゴだと認識している。
理由は定かじゃない、どういう原理が働いたのかもわからない……奇跡が起きたとしか形容出来ない。
もしこれが夢じゃないなら、現実なら……これ程嬉しい事はない。
愛しさが爆発しそうだった。
「サナァ……♡」
俺と、ショウちゃんの……子供。
愛しくて、愛しくて仕方ない。
やがて、目を覚ましたショウちゃんは目を見開いて此方を見ていた。
そんなショウちゃんへと、俺は笑みを返した
「サナ♡」
ショウちゃんとの、子だよ……♡
ショウちゃんが唖然としていたのは少しの間だけだった。
驚愕こそすれど、ショウちゃんはタマゴが出来た事に疑問を抱いてはいないようだった。
直ぐに喜色満面の笑みを浮かべると、俺とタマゴを同時に撫でて、こう言った。
「えへへ……サーナイトとのタマゴかぁ……まさかサーナイトをちゃんと
「サナッ」
そうだね、子供が出来ちゃうのは予想外だった。
そりゃあ、子供出来たら嬉しいなっては、昨晩ずっと願ってはいたけど……本当に出来るなんて、ね。
「あったかい……うん……わかった。サーナイト、改めてこれからもよろしくね! トレーナーとして、
「サナ!」
俺も、ショウちゃんのポケモンとして頑張るよ!
まぁ、まずは現代に戻らないと、ね。
やり残した事を全部終わらせて、憂いなく現代に帰ろう!
きっと、もう後少しだから。
微笑みを浮かべながら、俺は愛の結晶を撫で続けていた。
……あれ、俺がお嫁さんなんだ!?
このサーナイト、昨晩『ウケ』で散々鳴かされていました。
誤字報告ありがとうございます!