TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない!   作:如月SQ

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やはりオリ主はウケ……ハッキリわかんだね。

さぁ、最終決戦に入りましょう……果たして、どのような結末を迎えるのか、お楽しみに。


君といられない時間は苦しいよ

「ヌメ、ヌメヌメ」

 

 俺達のタマゴを見て、最も友好的な反応を示したのは、ヌメルゴンだった。

 図体はデカくとも、中身はまだまだ幼いヌメルゴンは、自分より明確に幼く誕生するだろう存在に興味津々だった。

 とはいえぬめぬめにするのも嫌らしく、近くに顔を寄せはするものの、あまり触れる事はなかった。

 ……この子が生まれたらきっと、猫可愛がりするのだろうなと、確信が出来た。

 

 一方で、最も反応が予想外だったのはレントラーだった。

 タマゴを抱えてショウちゃんと向き合い、タマゴを紹介したのだが、口をポカンと開き目を見開いて固まってしまった。

 ジュナイパーやガチグマがつついても反応せず、イダイトウのたいあたりで漸く気を取り直したようだった。

 それでも何処か上の空である事は否めず、差し出したタマゴもおずおずと鼻先でつつくくらいで、それ以降は遠巻きに見つめているだけだった。

 

「サナ……」

 

 レントラーにはこの子の良い兄貴分としてお世話に協力して貰いたかったけど……。

 ……まぁ、生まれたらまた違う反応を見せるかもしれない。

 その時に考えればいいか。

 

 一先ずの皆との顔合わせを終え、タマゴを抱えたままショウちゃんの隣に並ぶ。

 そうして皆と対面したショウちゃんは、姿勢を整えて口を開いた。

 

「みんな、ポケモン図鑑がもうすぐ完成する。そうしたらアルセウスに会いに行こうと思う。もしかしたら、そこで元の時代に帰して貰えるかもしれない……!」

 

 ぐっ、と拳を握り締めて、ショウちゃんは続ける。

 

「今までいっぱい大変な事があったし、辛かったし苦しかったけど……きっともうあと一息! この子の為にも頑張ろう、皆!」

 

「ヌメェ!」

 

「グマァ」

 

「ジュナ!」

 

「ダァイ」

 

「…………ガゥ」

 

 ……そうだな。

 ヒスイの地で育てるのも、そう悪くはないけれど……どうせなら安全な場所の確保が簡単な現代のほうが安心だ。

 この子の為にも……何よりもショウちゃんの為にも、早く現代に戻してあげないと、な。

 

「サナ!」

 

 俺も改めて、気合いを入れ直すのだった。

 

 ちなみに、ヒスイの事はどうでも良いと言いつつ、一度は請け負ったのだからとショウちゃんは図鑑を完成させる事を決めていた。

 生来の優しさからくるものでもあるその意見に、反対する奴はいなかった。

 

 まぁ、あのクソトカゲ二匹が元の時代に戻すのを不安がっていて、ギラティナは確保しつつ、出来れば創造神に、アルセウスにも伺いをたてたい、というあまりにも後ろ向きな意見を言い始めた故の采配でもあったが……。

 本当に情けないな、シンオウの伝説ポケモンは……。

 ディアルガに至っては俺と戦う時、時間を少し弄ってやがったからな。

 そこまでしても俺にボコボコにされたんだから、まったく情けない……。

 

 故に、あまりこいつらには期待していない。

 創造神アルセウスに期待だな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺達は、ポケモン図鑑完成の為に、最後の旅に出た。

 まだ見付けていないポケモンを、噂を元に。

 トルネロス、ボルトロス、ランドロスなんかの、お前らダイパ出身じゃねぇだろ、ってポケモンから、ラブトロスとかいう俺が知らないポケモンなんかとも出会い……。

 

「ビシャーンッ!」

 

 あの時逃げ出していたギラティナも見つけた。

 取り敢えずボコボコにして捕まえたが、ディアルガ、パルキアと顔を合わせた時、互いに納得した様子を見せていた。

 同じシンオウの伝説として、何か通じあうものでもあったのだろう。

 ショウちゃんのほっぺをもちもちしながら、そんな光景を眺めていた。

 

 因みに、ウォロには会っていない。

 イチョウ商会にもコギトさんの所にも姿を見せていないらしく、コギトさんからは『放っておけ』との言葉を貰った。

 

「ギラティナを探すって言ってたから、先に捕まえたせいでずっと探し続けているのかも……」

 

 と、ショウちゃんは不安がっていたが、まぁそうなっていたとしても自業自得だと思って貰うだけだろう。

 ウォロはそれだけの事をしたし、俺は別に許してはいない。

 だが、ショウちゃんがずっと気にしているのは不本意なので、一度会いに来てほしいのが本音ではあるが……。

 まあ仕方ない事だ。

 

 取り敢えず、これで図鑑は完成した。

 村の人達からのお願いも、危急のものはこなした。

 思い残しは、ない。

 

 次の外出で、俺達は再びテンガン山の頂、シンオウ神殿に向かう。

 ウォロさんの言葉が確かなら、そこで俺達はアルセウスに出会うのだろう。

 ……ゲーム的に考えても、ほぼ間違いないだろう。

 そうしたらアルセウスに頼み、現代に戻して貰う……それが叶わなくとも、ディアルガ、パルキア、ギラティナの力を使えば元の時代に帰る事も不可能ではない筈だ。

 一抹の不安は残るが、どちらにせよ……。

 

 これが、コトブキ村で過ごす最後の日になる筈だ。

 

 その旨をある程度お世話になった人達に伝える、挨拶回りを行った。

 誰もが別れを惜しみ、そして喜んでくれた……ように思う。

 嫌な事もいっぱいあったが、このヒスイの地上での旅は……なんだかんだと、ショウちゃんは楽しんでくれたと思いたい。

 

「本当に、本当にありがとうございました……! 貴女のおかげでポケモン図鑑は……! ずっと、忘れません、貴女の事!」

 

「博士ったら泣きすぎだよ……。ショウ! お疲れ様! どうか元気でな!」

 

「……そうか。ならば、これにて君を調査隊の任から外す。今までご苦労だった。……最後の任務を告げる! 故郷に戻り、幸せに暮らせ! ……君の未来に、幸多からんことを……心より願っているよ」

 

 【故郷に帰ろう!】って感じか……?

 

 ……見た目の無愛想さに比べて、相変わらず粋な人だ。

 最後にショウちゃんは深く深く頭を下げて、その場を後にした。

 その瞳が僅かに光っていたような気がしたけれど、見ないふりをしておいた。

 

 これで、挨拶回りはおしまい……帰ってきた家は布団だけが敷かれていて、一時期は色んな物が置かれていた部屋は、既に片付けを終えてがらんとしていた。

 僅かな物寂しさを感じつつも、後は寝るしかやる事はない。

 一足先に布団に入り、ショウちゃんを手招きした。

 

「うへへ、サーナイトー……」

 

 ……同衾はするけど、今日はえっちなのはダメ。

 いやらしい手つきで俺を撫でるショウちゃんをたしなめながら、背中に腕を回した。

 抱き締めて密着させて、背中をポンポンと叩く。

 明日はどうなるかわからないのだから、しっかり体を休めないといけない。

 

「……えぇ……? ちょっとだけなら……」

 

「サナァ……」

 

 さいみんじゅつ(物理)の出番かな……?

 

「……大人しく寝ます」

 

「サナッ」

 

 賢明な判断です。

 口を尖らせるショウちゃんに苦笑しながらも、俺はショウちゃんをぎゅうと抱き締めた。

 温かくて柔らかい。

 まだまだ小さな、俺の最愛の主。

 

 じっ、とその顔を見つめていると、にこりと笑みをつくった顔が突然俺に向かって一息に近付いた。

 

チュッ

 

 そして小さなリップ音を響かせて、一瞬だけ唇が重なる。

 軽い、触れるだけのキス……。

 いつも貪られているから、むしろ新鮮だった。

 

「んふふ……おやすみ、サーナイト」

 

 悪戯っぽい笑みを見せて、ショウちゃんは目を瞑り、俺の胸に顔を埋めた。

 そんな、最後まで振り回されっぱなしな事実に苦笑しつつ、俺はショウちゃんの頭を抱き抱えた。

 優しく、愛おしさを込めて、ゆっくりと撫でる。

 最後の朝を、穏やかに迎えられるように……。

 

「……サナ」

 

 そう願って、俺もゆっくりと目を閉じた。

 ショウちゃんが帰れるようにと、心から願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンオウ神殿でショウちゃんが笛を吹くと、目の前には異様な光景が広がる事になった。

 虚空へと続いていく、光輝く階段。

 その光景を目の当たりにしたショウちゃんは、思わず息を飲んだようだった。

 あまりにも常識外の光景に、緊張からか手に汗が滲みだす。

 

「……サナ」

 

 大丈夫、俺がいる。

 ぎゅ、と握っていた手を少し強く握れば、階段に釘付けだった視線が此方を向いた。

 そして、強張っていた表情は少しずつ和らいでいき、視線が交わった時には元の強い意思を感じる瞳を取り戻していた。

 

「……うんっ、行こう!」

 

 その声に応じて、俺達は階段に足をかけた。

 一歩一歩、一つ一つ、踏み締めて。

 ショウちゃんと手を繋ぎながら、並んで進み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、空の色がおかしくなった、異様な空間に辿り着く。

 足元は円形で、まるで魔法陣のようなへんな模様が刻まれている。

 そこには何もなく、ただ円形の足場が広がっているだけ。

 キョロキョロと辺りを見回して、何かないかと目を凝らして、歩いてきた階段に向き直った、その瞬間だった。

 

ズンッ

 

 とてつもない重圧が、背後から発生したのを感じた。

 さっきまで間違いなく何も無かったのに、有り得ない程に異質な存在感が、突如現れた。

 ショウちゃんに手を伸ばして庇いながら振り向いたそこには……一目でわかる程に圧倒的な存在がいた。

 

「これが……アル……セウス……」

 

「サナ……」

 

 白い体、金の装飾、どうやってその体を支えているのかわからない程に細い四肢に、何処か既視感のある頭部……。

 

 創造神アルセウスが、そこにはいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ふざけるな! なんでAがVの色違い個体がメスなんだよ!」

 

ガッ!

 

「サナッ!」

 

 俺の目の前で、俺の母のサーナイトが、人間に足蹴にされている。

 

「役立たずが! 折角生まれた色違い個体なのによぉ! ぬか喜びさせやがって!」

 

ドガッ!

 

ドスッ!

 

 人間からの心無い言葉にも暴力にも、母は耐えていた。

 ごめんなさい、ごめんなさいと口にして。

 

 俺がいた群れは野生と言える群れだったが、厳密にはとある人間の管理下にあった。

 その人間が持つ機械で何かを計られたラルトスは、そのまま人間が連れていく時もあったらしい。

 俺はその時、初めてその人間と出会い、笑みを浮かべた人間に機械で何かを計られ、そして……怒鳴られていた。

 ひどく恐ろしかった。

 生まれたばかりだった俺は、訳もわからず体を震わせていた。

 

 それでも、母に向けられた暴力は俺が原因だと理解して、人間に立ち向かった。

 あまりその時は言葉の意味が理解出来なくて、でもひどい事を言って理不尽に暴力を奮っている事だけはわかったから。

 だから、やめろ、とか母さんを苛めるなとか、そんな事を言って立ち向かった。

 

 そんな俺を止めたのが母であり、幾人もいた姉達だった。

 なんで、とその瞳を見た俺は愕然とした。

 いつもは親愛に満ちていた筈のその瞳から、溢れんばかり純粋な殺意が、俺に向けられていたから。

 

「あぁ!? 人間様に逆らってんじゃねぇぞこらぁ! しっかりおさえとけ!」

 

「「「キルッ」」」

 

 俺は幾度も、幾度も痛め付けられた。

 俺を押さえ込み続けた姉達と母親からは、微塵も……俺に対する情けのようなものは感じなかった。

 ただただ、目の前の人間の役に立ちたいという思いだけが溢れていた。

 

 歪で、歪んだ、その人間への愛欲。

 愛にのみ生きる、基準がその人間への想いになってしまう、あまりにも危ういポケモン。

 自分がボロボロになりながら、自分の子供をボロボロにされながら、それでも笑顔で愛想を振り撒く母であるサーナイトというポケモンが、気持ち悪くて……気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて仕方なかった。

 

「教育不足の罰だ、こいつは没収だ」

 

「サ、サナァッ!?」

 

「そんでこれはお前への罰だ! 生意気な奴が!」

 

 やがて俺の意識すら朦朧になってきた頃、そんなやり取りが微かな意識の中であった。

 そして……固く冷たい何かが、無理矢理左目に押し込まれていく感触を覚えた。

 少しずつ、少しずつ侵入していくそれに、左目が少しずつ潰されていくおぞましい感触……。

 それでも押さえ込まれている俺には、何をする事も出来なかった。

 

 やがて人間は満足したように俺から離れていった。

 左目からおびただしい出血をして、もがき苦しむ俺を見て、ニヤニヤしながら。

 そしてそれが、俺がその人間を見た最後になったと思う。

 

 その後俺を襲ったのは、母と姉達、妹、弟達による執拗な嫌がらせとイジメだった。

 俺は、絶望した。

 前世の記憶を取り戻して、より絶望した。

 あんな目にあってなお、母と姉達にとって俺は、主への寵愛を失った原因となった忌み子であり、いらない存在に成り下がってしまっていたから。

 

 心無い言葉と暴力を受けながら、俺は思う。

 こんな、愛に容易く狂う種族に転生してしまった事が、悲しい、と。

 サーナイトもキルリアも……大嫌いで仕方なかった。

 身勝手な人間も、大嫌いだった……その時は。

 このまま俺は、少しずつ全てを磨り減らして生きていくか、どこかでイジメ殺されるのだろうと、そう思っていた。

 

 だから、そんな地獄から助けてくれたショウちゃんの為に、俺は命をかけると決めたし、守り抜くと決めたんだ。

 俺は、その為にまだ生きている。

 生き続けた。

 

 その為に……今……俺は……?

 

 えっと……何、してたんだっけ……?

 

 確か、アルセウスと対面して……それで……。

 

「…………」

 

 声が、出ない。

 次いで、今まで俺が経験してきた光景が、一斉に頭に浮かんでは消えていく。

 体も動かないし、なんなんだ、これは……?

 ああ、これって……アレ、か……?

 

 もしかして……走馬……灯……?

 

「サーナイトッ!」

 

 ショウちゃんの、悲鳴じみた声が聞こえたような気がした。

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