TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない! 作:如月SQ
いつも助かってます。
本編は終わりましたが、それはそれとして、ちょっとしたおまけのお話。
ヒスイに残されたサーナイト達のお話。
ショウちゃんが次元の裂け目に飲み込まれて消えて、いつの間にか俺達が立つ場所もシンオウ神殿に変わっていて。
気付けばあの創造神の皮を被った邪神も、クソトカゲどもも姿はなかった。
……やりやがったな、というのが素直なところだ。
邪神の奴、最後の最後でショウちゃんを泣かせやがった。
あの裂け目を通れる生物は二つだけだった。
俺や皆がどれだけ入り込もうとしても、1ミリたりとも進めなかった。
過去に飛ばされた数と同じ数しか戻れない?
確かにそれは納得出来る、尤もらしい理由だったが……ならそもそもどうして飛ばされたんだって話だ。
その気になればきっと、どうにでも出来たんだろう。
……クソが。
邪神の考えはわからん、というかどうでも良い、理解出来ん。
理解したくもない……気持ち悪い目線向けてきやがって。
シンオウ神殿で、俺達は呆然と佇んでいた。
今の出来事が夢のように感じる。
……夢なら、どれだけ良かったか。
現実は変わらない。
目の前にはショウちゃんが着ていたギンガ団の服と、鞄がソックリそのまま残されていて、ショウちゃんだけがそこにいなかった。
ショウちゃん、だけが……。
俺達は、ショウちゃんを永遠に失ったんだ。
…………クソッ……。
『主とは……』
ヌメルゴンの声が、静寂の中で響く。
既に泣きそうな声色で、振り返ればきっと、涙を浮かべている事だろう。
『主とは、もう会えないの……?』
絞り出すように呟かれた言葉に反応したのは、イダイトウだった。
『……会えん、だろうな……』
『ボク、長生きするよ……! 主、未来に行ったんでしょ? だったら……!』
『普通に生きられる程度の年月で、マスターのいた時代に辿り着けるのであれば、サーナイト殿はああも自分を殺して送り出す事も無かろう。……百……いや数百年は先といった所か?』
『すうひゃく……』
……イダイトウの予想は多分正しい。
俺も詳細は知らんが、ここヒスイが相当昔である事はわかる。
なんせまともな機械類がないんだからな……どれだけの時間が経てば科学はあそこまで進化するんだ?
これまで過ごしてきて、この世界の危険性はよく理解している。
一歩間違えれば、自然が、ポケモンが、いつでも牙を剥く時代……子を育てるのにここまで適していない時代もないだろう。
だから俺は、ショウちゃんを送り出した。
元の平和な時代で、生きられるようにと。
……本当に平和かぁ……?
ゲーム本編だと毎回結構な世界の危機が起きてたような……。
にわかだから詳しくはないが、なんか世界を滅ぼすみたいな話を聞いた事があるような……。
……ま、 まぁ、そういう問題はゲームの主人公に任せておけば良い。
ショウちゃんも主人公だったけれど、そのお話は終わったんだ。
元の時代に戻って、平和に暮らしました……とさ。
それで良いんだ。
それで、ハッピーエンドなんだ。
……だから。
『姐さん……大丈夫ですかい?』
止まってくれよ……俺の涙……。
そっと添えられた羽毛に、止めどなく流れる涙が吸い込まれていく。
それが申し訳なくて、ぐしぐしと乱暴に涙を拭って、頭を振った。
『ッ……。すまん。本当は喜ぶべきなんだが……』
『仕方ありゃあせんよ。姐さんと主さんは互いに愛し合っておられやした……。それでも、主さんとやや子の幸せを願って身を引いた姐さんを、あっしは誇りに思いやす』
ジュナイパーの言葉に、少しだけ救われた気分になる。
……選択肢として、ショウちゃんをあそこから引きずり出してここで生き続けるというのも確かにあった。
というか、ヒスイに残るしか選択肢がない皆からすれば、そのほうが良かったのかもしれない。
そう頭に過ってしまったから、皆には責められるかもしれないと思っていた。
『お姉ちゃん、大丈夫……? ギュッてする……?』
『無理はせぬように。最早儂らは野生と同じ。我が身を第一に考えねばならん』
『色々な事が起きすぎやした……取り敢えず今は少し休みやしょう』
『マスターが残していっちゃったきのみでも食べよ? サーナイト、辛そう』
『皆の意見に賛成だ。まずは一度落ち着こう、姉さん』
でも皆は、そんな気配を微塵も見せなかった。
むしろ此方を気遣ってくれた。
それが、その優しさが嬉しくて、温かくて……苦しかった。
『……うん』
レントラーが咥えて差し出してきたオレンのみを両手で抱えて、静かに頷いた。
口に運べばしゃくりと相変わらず硬い食感と、甘くはない不思議な味わいが口内に広がる。
じんわりと体が僅かに癒されているのを感じて、少しだけ表情を綻ばせた。
チラ、と皆に視線を向ければ、それぞれ思い思いにきのみを口にしている。
ヌメルゴンに至っては、いつの間にか俺を後ろから抱き締めていた。
まったく、相変わらずの甘えたがり……だけどそれが今は有難い。
そのヌメヌメとした体に身を任せて、もう一口オレンのみを頬張った時だった。
「……やはり、どうやら間に合わなかったようですね」
人間の声が響いた。
ここヒスイでは比較的聞き慣れた声……。
「おっと、何も致しませんので落ち着いて貰えますかね?」
黒幕の一人だった、ウォロがそこに立っていた。
「実はジブンは、純粋な人ではないのですよ」
ウォロは突然そう語った。
古代シンオウ人だというウォロはなんでも、寿命が桁違いに長いのだとか。
それこそ長寿なポケモンと同じくらいは生きる、と。
「千年は生きると言われておりますね。生きてみない事にはわかりませんが」
そう言って苦笑するウォロに、話の続きを促す。
それがどうしたって話だ。
自分はショウちゃんにいずれ会えるっていう自慢か?
それならここで息の根を止めて……。
「出来れば話は最後まで聞いて欲しいのですが……?」
……仕方ないなぁ。
「……ふぅ、やれやれ。それでですね、ジブンから提案したいのは単純な事。ショウさんの生きている時代まで、連れて行きましょうかというお話です」
……ハァ?
それに、何の意味がある?
……もしかしたらドラゴンであるヌメルゴンや、タイプにゴーストを持ってるイダイトウなんかはそこまで生きるかもしれんが、俺達は流石に無理だろう。
俺達の死体でもショウちゃんに見せ付けようってか?
……やっぱここで殺すか……?
「どうか、最後まで! せめて最後まで聞いて欲しいのですが!?」
…………仕方ないなぁ……。
「ふぅ……よっぽど余裕がないようで……おっと、余計な事はもう口にしません。まぁ、そのままでしたら恐らくは貴女の寿命は尽きる事でしょう。そこらの人間よりは長生きするポケモンと言えど、永遠ではありませんから。ですが、強大な力を持つ貴女が、強大なエスパータイプである貴女ならば、その力でその問題を解決出来る筈です」
……エスパー、なら?
「自らの肉体を眠らせるのです。漲るパワーによって肉体の時を停滞させる……ワタクシのルカリオでも数年は大丈夫のようでしたから、貴女ならばきっと、数百年だろうとその身を保護し眠り続けられる事でしょう」
っ……!!!
突然、視界が開けたような、明るくなったような気分だった。
降ってわいた可能性、再びショウちゃんに会えるかもしれない、その希望に心が沸き立つ。
それは……可能、な気がする。
俺の中に満ちるサイコパワーは、自分で言うのもアレだけどかなり強い。
更にディアルガと戦った時、何度か時を停滞させられた感覚を覚えているから、精度は更に高められる筈だ。
……希望が見えてきた。
また、ショウちゃんの元に行ける、希望、が……。
『あ……』
けれど、それは俺、だけだ。
俺は思わず皆のほうを振り向いて……そこに皆の笑顔があった事に目を見開いた。
優しい笑みだった。
全てわかっているかのような……そんな笑み。
驚いて言葉も出せない俺に、皆は微笑みを浮かべて俺に歩み寄ってきた。
そっと身を寄せて、皆は、言葉もなく伝えてくる。
いいよ、と。
『……行きなよ、姉さん』
両手を彷徨わせる俺に対して、口火を切ったのはレントラーだった。
柔らかく笑って、足元に転がっていたものを咥えて、差し出してくる。
……それは、ここに、この時代に唯一存在する、現代のモンスターボールだった。
少し古ぼけた、ショウちゃんが初めて俺を捕獲したボール。
たった一つだけ残された、俺とショウちゃんの繋がりだ。
手のひらに落とされたそれを、俺は見つめる。
『らるとす』と手書きでかかれた文字に、ショウちゃんへの想いがぶり返して、思わず視界が滲む。
ぐ、と堪えるけれど……一度希望を持ってしまえば……もう駄目だった。
「そのボールの中で眠りについて頂ければ、後は自分がショウさんの時代まで運び、見つけ出してみせましょう」
皆に囲まれながら、身を寄せられながら、その温かさに、降って湧いた希望に、様々な感情が入り乱れてグチャグチャ。
それでも、俺はウォロに振り返った。
一つだけ、聞きたくて。
『どうして、そこまで……』
俺の言葉を理解してか知らずか、ウォロはいつもの表情で、商人らしい表情で、笑みを浮かべた。
「商人は、信用が第一ですからね。一度約束した事です、反古にはしませんとも。言ったでしょう? ショウさんが勝てば、ワタクシが出来る限り、望みを叶えると」
ピン、と人差し指を立てて、いつものように。
「それに聞こえた気がしたのですよ、ショウさんの、『引き離さないで』という声が、ね」
『主! お姉ちゃんと幸せに! でもボクもまだ主との再会諦めてないよ! 頑張って長生きするから! いっぱいいっぱい頑張るから! ……だから……だからもしまた会えたら……お姉ちゃんと一緒にいっぱい、頭撫でてね!』
ヌメルゴンはそう言って、ポロポロと涙を流しながら、ショウちゃんのタイツを抱えた。
『儂はもしかすれば会えるかもしれぬの……その時が来るのをゆるりと待つとしよう。もし会えぬとしても、儂らの想いは同じ……どうか健やかに生き、幸せになってくだされ。それだけを願い続けております』
イダイトウは重々しく告げて、足袋と草鞋を魂の炎で包み込んで浮かばせた。
『マスターが元気ならそれで良いよ。サーナイトが側にいれば幸せだろうし、万全でしょ? それ以上何か求める事はないよ。だからサーナイト、マスターを宜しくね? 無事にマスターと再会出来るように祈っておくね』
ガチグマは朗らかに、ショウちゃんの服を手に取った。
『あっしも同じでさぁ。お二人の先行きが明るいものになる事だけを願っております。あっしらの事はそう気にせんでくだせぇ。元より有り得ぬ出会いでしかなかっただけの事……お二方と過ごした日々は幸せでやした……』
ジュナイパーはニヒルに笑って、ショウちゃんの頭巾を肩にかけた。
『姉さん、トレーナーに宜しく。今の姉さんは見てられないよ……姉さんの隣にいるのはトレーナーが一番相応しい。……こっちの事は俺達に任せてくれ。俺は俺に出来る事を最後までやりきる……これは、俺が必ず守り抜く。だから……』
足元に転がる不思議な形のふえ、『てんかいのふえ』を足先でつついて、レントラーは言葉を続ける。
『これをまた、取りに来てくれ。そして、褒めて。それだけで俺はずっと、いつまでも頑張れるよ』
レントラーはニコリと、無邪気な笑みを浮かべてマフラーに包まれた『てんかいのふえ』を咥えた。
そんな頼もしい皆の姿を最後に、俺は眠りについた。
長い、長い眠りに。
ショウちゃんに会う為に。
『……ありがとう! 大好きだよ、皆! ずっと、ずっと……いつまでも……大好きだよ……』
意識が途切れるその瞬間まで、皆は笑顔だった。
「……そっか、ありがとう、サーナイト。みんなの最後の声を伝えてくれて……」
「サナッ」
「……みんなに、会いに行こうか」
「サ…………」
「本当は、怖かったんだ。シンオウを旅して、みんながいないシンオウでかつての面影を感じるのが怖くて……でも、もしも待ってる子がいるなら……ちょっと甘え過ぎてたかも」
「サナサナ」
「仕方ない、かなぁ? でも、もう覚悟が決まったよ。改めてヒスイを……シンオウを旅して、みんなに会いに行こう」
「キルゥッ!」
「キルリアも賛成してくれる? ふふ、ありがと。良い子だね」
「サナァッ」
「うん……行こう。……いや、帰ろう、シンオウ地方に」
それはそうと、このサーナイトのメガシンカの名前、『メガサーナイトZ』だったんですよ。
公式で『メガルカリオZ』お出しされるとは思いませんでした。
ワンチャン本当に『メガサーナイトZ』が有り得るのでこの名前使えなくなっちゃった……。
どうしよう……。
誤字報告ありがとうございます!
サーナイト♀のメガシンカ形態の亜種、名前は
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メガサーナイトA
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メガサーナイトX
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メガサーナイトZ
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メガサーナイトヒスイの姿
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ショウサーナイト