TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない!   作:如月SQ

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サーナイトの形態名についてアンケート設置しましたので、良ければそちらでご意見くださいませ。
さて、二人の子供のキルリアにフォーカスをあてたお話。
キルリアは一体どのような子なのか……お楽しみくだされば幸いです。


キルリアの独白

 この世界に蔓延る不思議な生物、ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 私はそんなポケモンとして生を受けた。

 産まれて初めて目にしたのは、ポケモンではない人と呼ばれる生命体のメスの幼体で、私はそれが自分の親であると感覚でわかった。

 初めて目にする事になったお母さんの表情は、ひどいものだった。

 涙でグチャグチャで、鼻水まで垂れて、ひどく悲しそうだった。

 伝わってくる感情も、悲しみを越えて絶望のドン底といった様子だった。

 けれど私を見た瞬間、その感情を振り切るように首を振って、無理矢理な笑顔を浮かべた。

 

「産まれてきてくれて、ありがとう……」

 

 そう呟いたお母さんは私を優しく抱擁してくれた。

 その時私はわからなかった。

 何故自分が悲しんでいるのに私に笑顔を浮かべてくれたのか。

 何故あれだけ苦しんでいたのに、私を慈しんでくれたのか。

 何故絶望しているのに、希望を、愛をくれたのか。

 

「私が、あなたのお母さんだよ……」

 

 力無く笑う、まだまだ少女と言うべき個体の、振り絞るような言葉に、私は……。

 

「ラルゥ……」

 

 この人を守らなければいけないと、強く思った。

 温かな腕の中で、産まれたばかりで何もわからない中、それだけを思った事を、今でも覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時が経ち、私はすくすくと育って、気付けば姿が変わっていた。

 ラルトス、と呼ばれる姿から、キルリア、と呼ばれる姿へと。

 鏡で見たその姿に自分の姿ながらとても可愛いと感じた。

 お母さんも可愛いと褒めてくれたので、私はこの姿が大好きになった。

 なんでも私達ラルトス族はもう一段階姿が変わるらしいのだけど……このままがいいなぁと朧気に思っていた。

 

 進化した時、私達は旅をしていた。

 なんでもこの世界は人間達がポケモンを使役し、互いに競い合わせる『ポケモンバトル』なるものが中心となっているようで、鍛練の一環としてか少年少女が旅をする事が一般的らしい。

 そんな旅をする少年少女への目的、わかりやすい試練として『ポケモンジム』、というものがある。

 一つの地方に基本的に八つ設定されるその施設は、基本的に一つのタイプのエキスパートが担当している。

 それらは本来、タイプ相性等を加味して、様々なポケモンやわざを活用し攻略して貰う事を狙っているのだと思う。

 思うのだけど……どうやら私は、普通のポケモンに比べて頗る強力だったらしい。

 

 カントー地方という土地を旅して、苦戦したジムは一つもなかった。

 私一人で淡々と勝ち抜く事が出来た。

 それは勿論、お母さんの指示が的確で素早くて、私の苦手なタイプが存在しなくて、相手方のジムリーダーが手心を加えている形跡もあって、様々な要素の噛み合いによって起きた事だとわかっていた。

 けれど、『ポケモンバトル』というものを私が嘗めるようになるには十分だった。

 現に私の体は何度か更なる進化をしようとしていて、それを嫌って何度も拒否をしていたにも拘わらず、苦戦という苦戦を経験しなかった事は、『その気になれば私は更に変化を残しているのだから』という心の余裕にも繋がり、表に出すことは無くとも慢心し続けていた。

 

 お母さんだって私以外に手持ちを増やす事もなく、私だけいれば良いといつも可愛がってくれていた。

 惜しみ無い愛をいつも注いでくれるお母さんが大好きで……だからこそその増長は肥大化していった。

 そしてその慢心は……最後のジムをクリアした直後の出会いで、全て打ち砕かれる事となる。

 

 最後のジム、トキワジムをクリアして、鼻高々だった私は、その後の御褒美の時間を待ち遠しく思っていた。

 今日はポロックかな、ポフィンかな、なんて思い描いて。

 ジムを出た私達を待ち受けていたのは、人間の大人のオスだった。

 どこか親しげな様子で話し掛けてくるオスに警戒するけれど、お母さんはふらりとそのオスへと歩み寄っていった。

 なんで、と思う間もなく、お母さんはそのオスから何かを受け取っていた。

 それがポケモンを捕獲し、人と共にある為の道具、モンスターボールだと気付いた時には、カチッという音とともに既に開いていた。

 

 瞬間、現れた存在に、私は目を奪われた。

 圧倒された、と言っても良い。

 宙に浮き、身を丸めて眠る姿はあどけなく、その色は話に聞いたサーナイトの色とは違う、私に似た色。

 そして、身体のあちこちに刻まれた古傷……パチリと開いた瞳は右目だけで、左目は隠れたまま此方を見た。

 そのあまりの完成された美しさに、私は言葉を失っていた。

 

 美しさを損なう筈の傷ですら、その存在を引き立たせる為の飾りでしかない。

 何よりも、伝わってくる……お母さんから感じる、深い、深い愛。

 愛しさ、切なさ、悲しみ、怒り……そして、歓喜に包まれて、お母さんはそれに抱き着いた。

 わんわんと、私が産まれた時よりも激しく、声をあげて泣いていた。

 お母さんを抱き止めたソレは柔らかい笑みを浮かべてその頭を撫でて……その瞳からも光るものを流していた。

 

 その光景が、凄く、私にとってとても……――

 

「…………キルッ!」

 

――苛立たしかった。

 

 お母さんから離れろと、そう叫んで飛び出した。

 私のお母さんだと、私よりも愛を貰うなんて許さないと、自分勝手な思いでソレに向かって駆け出していた。

 

 ……この時の私は、まったくもって、度しがたい馬鹿だった。

 

「……サナ?」

 

 私を視認したソレは可愛らしく小首を傾げた。

 

 ……この時私は本気で飛び掛かっていた。

 本気の速度で、ぶっ飛ばすつもりで。

 けれどソレはしっかりと私を見つめて、悩む様子すら見せていた。

 そして何か思い当たる節があったのか、パァッと表情を明るくさせて、可愛いなとか頭に過りながらも拳を思い切り振りかぶって突き出して――

 

――気付いたら私は、ソレの腕の中で抱き締められていた。

 

「サナサナ」

 

「??????」

 

 何が起きたのか、すぐに理解出来なかった。

 私に頬擦りをするソレが、私に何をしたのか……まったくわからなかった。

 ただ、渾身の力で繰り出した拳が優しく受け止められた事だけが私にのし掛かっていた。

 

「サナァ……」

 

 思わず抜け出そうと力を込めるもびくともせず、私はただそのままされるがままでいるしかなかった。

 ……温かくて柔らかくて、いい匂いがした。

 綺麗な顔がすぐ側にあって、お母さんから感じる感情も温かい、明るいものばかりで……。

 

 いやいや、ダメダメ、絆されない!

 ソレは私のお母さんを奪おうとしてるんだから、許しちゃいけない!

 そんな風に自分に言い聞かせていたのだけど、私達のやり取りを微笑ましそうに眺めていたお母さんの言葉で一瞬で霧散するのだった。

 

「ふふふっ……ママに抱っこして貰えて良かったね、キルリア」

 

「……リァ?」

 

「……トォ?」

 

 ……ママ?

 

 お母さんは、人間の少女。

 ソレはサーナイト、見る限りポケモンの♀。

 

 今、ママって言った?

 じゃあお母さんはお母さんじゃないの?

 

「キルリアはね、私とサーナイトの子供なんだよ。だから私がお母さんで、サーナイトがママ。わかった?」

 

「????????????」

 

パキンッ

 

 わたしのなかで、なにかがこわれたおとがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「固まって動かなくなっちゃった」

 

「サナァ」

 

「でも可愛いね。私、二人がこうやって触れあえるのを、ずっと夢見てたんだ……良かったぁ」

 

「サナサナサナ」

 

「ふふ、キルリアばっかり愛でて、嫉妬しちゃいそう」

 

「トッ! サナサナサナァ」

 

『あははっ、ありがとう。えへへ、本当にサーナイトだ……やっと家族が揃った……嬉しい……本当に、幸せだね』

 

「サナァ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時受けたのは、あまりにも強い衝撃だった。

 私の今までが全て砕け散ったと言っても過言じゃない。

 

 あの後私は衝撃から立ち直れず、自分を包み込む温もりと、お母さんに勝るとも劣らない惜しみ無い慈しみと愛をソレ……ママから受けて、お母さんとママがイチャつく光景を見ながら、気付いたら眠っていた。

 目を覚ました時、目の前にはママの顔があって、それらが夢ではない事に気付いて……思わず再度飛び掛かっていた。

 

 その後の事は割愛するけれど、私の伸びていた鼻は叩き折られた事を記しておく。

 

 そして、全てが壊れた後に私に残っていたのは――

 

「サーナイトッ」

 

「サナッ」

 

「キルルゥ……」

 

――お母さんとママを尊く思う心だった。

 

 お母さんとママのこれまでを教えて貰ってからというもの、この二人の関係が、あまりに尊くうつるようになっていた。

 ただの日常で二人が同時にうつるだけで、感動して震えてしまう程に。

 なんて健気で尊く、美しく綺麗なんだろう……うっ、思わず涙が……。

 この二人のやり取りを見ているだけで、心が浄化されていくような気分だった。

 私を目一杯愛してくれる二人が、惜しみ無い愛を与えてくれる二人が、大好きな二人が幸せそうにイチャつく姿は……私にとって最高の光景だった。

 

 ……ただ、懸念がある。

 ママは今まで何度か死にかけたそうだ。

 私よりも圧倒的に強いママですら死にかける事があるのがこの世界なんだ。

 そもそもあれだけ互いに愛し合ってる二人が、少なくとも私が産まれてから再会するまで離れ離れになっていたのだから、ママですら抗えない何かが、この世界にはある。

 残酷な世界に……私は強い危機感を覚えた。

 

 だって、もし何かあった時、また二人が離れ離れになる可能性もあるって事でしょ?

 

 二人に何かあるかもしれないって事でしょ?

 

 この光景が見られなくなるかもしれないって事でしょ?

 

 そんな事は断じて許されない。

 

キインッ

 

 手のひらを宙にかざし、()()()()()()

 出来た裂け目に手を突っ込み……目当ての物を即座に引き抜いた。

 向こうから何かを喚くような声が聞こえたけれど、何も気にせず直ぐに裂け目を閉じた。

 

 私の手には、透き通った青緑色の石と、透明な球体の中に緑と赤が閉じ込められているような石、二つの石があった。

 今まで保留していた事を進めよう。

 私はまだまだ弱い。

 もっと力がいる。

 

 ママも、私が守る。

 

 お母さんもママも、私が纏めて守る。

 

 強い決意のもと、青緑の石を抱きしめて……私の体は光に包まれた。

 

 此方へ驚いた顔で駆け寄ってくる二人の姿が見えて……そんな光景すら尊いと笑みを溢した。

 

 二人の未来は、私が安全に切り開く。

 

 どんな困難も、私が全て斬って捨ててみせる。

 

 覚悟しろよ、神様気取りが。




またはショウサー過激派エルレイド爆誕

誤字報告ありがとうございます!

サーナイト♀のメガシンカ形態の亜種、名前は

  • メガサーナイトA
  • メガサーナイトX
  • メガサーナイトZ
  • メガサーナイトヒスイの姿
  • ショウサーナイト
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