TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない! 作:如月SQ
一先ずここまでで更新は終わりにしたいと思います。
という事で、今作最後のお話です。
ちな自分はまだZAにわかなのでふんわりとしかかいてません。
ミアレシティを騒がせる、とある噂があった。
この辺りでは見ない珍しいポケモン。
異常な行動、常識外れな言動。
その辺りがよくSNSでは話題に取り上げやすく、また噂になりやすいだろう。
『俺、あんなポケモン見たことねぇよ』
『色違いのポケモンとか初めて見た』
『似たポケモンは知ってるけど、なーんか微妙に違うんだよね……リージョンフォームなのかな? 見たことないけど』
『デカイクマのポケモンがいた』
『人魂浮かべた魚のポケモンなんていたかなぁ……?』
『知ってる知ってる! いっつもポケモンと一緒にいるよね!』
『顔隠しててあんまりよくわかんないんだよな……正直結構怪しいっつーか』
『データ集めお願いしたのに、スマホロトム持ってないからとか言われて断られたんですよ! あれ程の実力者の協力が得られないなんて……!』
『カフェで自分のポケモンとあーんしあってたよ。顔? お面してるからあんまりよく見えなかったかなー』
『あー、見た見た。可愛いやり取りしてるから、目の保養と思ってずっと見てると、その近くに立ってる別のポケモンから滅茶苦茶睨まれるんだよな……こえーのなんのって』
そして……『ポケモンバトル』に重きを置いているこの世界において、最も重要な要素。
『それと、滅茶苦茶に強い』
強い事。
『バトル挑んだ事あるけど、何も出来ずに一蹴された』
『わざが速すぎて、気付けばあっという間に負けた』
『耐久自慢のうちのエースが一撃で落とされた時、何が起きたかわからなかったわ』
『なんでとくしゅタイプの筈なのに近接で押し負けるんだよ!』
『あのポケモンは素晴らしい! たゆまぬ鍛練のあとが垣間見えます! そしてあの凄まじいパワー! まさにパワー! つまりジャスティス!』
それら全てを兼ね備えた謎の人物が、ミアレの噂になるのは、至極当然の流れであった。
顔を隠しているから容姿等はわからないものの、ポケモンと仲睦まじい様子を見せているからか、ミアレの人々からそこまで警戒はされていなかった。
だが、『ZAロワイヤル』の参加者は違う。
勝ちを重ねる事を渇望している彼等にとって、強いポケモンとトレーナーはそれだけで目の上のたんこぶ。
もしも彼の人物が参加者であれば、もしくは参加者となれば、面倒な事になるのは目に見えている。
故に、そんな事態が起きるのも至極当然であった。
トレーナー潰し? ▼
トレーナー狩り?
「そっ。強いトレーナーに勝てないからって徒党を組んで潰そう、みたいなのがあってね。滅多に起こらない……というか普通は起きないんだけど……とある噂になったトレーナーを相手にやった人達がいるみたいでね」
ここはミアレの宿泊施設の一つ、ホテルZのロビー。
二人の男女がお茶とお菓子を楽しみながら談笑していた。
話題は昨今ミアレを騒がせている噂のトレーナーと、それを狙った卑劣な行為についてだった。
噂を口にする少女の前に座る青年は、不愉快げに顔を歪めた。
ヒドイね ▼
ズルイね
「うん、そう思う。一人じゃ勝てないからって、ねぇ……。しかも十人くらいで襲撃したらしいんだよ。更に不意打ちで、トレーナーを直接狙ってもいたとか……数が増えて気が大きくなったのか知らないけど、トレーナーの風上にも置けない奴等だよね!」
あまりの所業に思わず言葉に詰まる。
ここミアレのワイルドゾーンでは、野生のポケモンにトレーナーが狙われるのはそう珍しい事ではない。
ポケモン一匹一匹の一挙手一投足に注目し、適切に動かなければいつ骸を晒してもおかしくはないのだから。
けれど、それを意図的にトレーナーがポケモンバトルで行うのは、まったく違う話だ。
青年は少女に言う、そんなトレーナー許せない、と。
もしもバトルする事になったら容赦はしない、と。
「あはは、ヤル気満々じゃん。でもでも大丈夫なんだよねぇこれが」
義憤にかられてか、拳を握り締めて憤慨する青年に、少女は顔を綻ばせた。
真っ直ぐで気持ちが良い。
ただ、今回は空回りだ。
大丈夫? ▼
どういう事?
「だって、そいつら全員返り討ちにあっちゃったから。それも、たった一匹のポケモン相手に」
眼を見開く青年へと少女はニヤリとした笑みを浮かべる。
そこにある驚愕と……強い期待を感じ取って。
強いトレーナーが強いポケモンがいれば戦ってみたい、そう思うのはポケモントレーナーとして至極当然の考え。
そして青年がその欲求を強く抱いている事を、少女は知っていた。
「ふふふっ……気になって仕方ないって顔してる。気になるよね? バトルしてみたくて堪んないんでしょ? それじゃあ、会いにいこっか!」
首を傾げる青年へと、少女は不敵な笑みを浮かべて笑った。
「実はその人、うちに泊まってるんだよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あー、んむっ……うん、美味しい」
時刻は夜、とある建物の屋上の淵に腰掛けて、ガレットを頬張る少女の姿があった。
隣には人型のポケモン、サーナイトの色違いが同じように腰掛けていた。
「サナ」
「ん? サーナイトも食べたい? はい、どうぞ」
躊躇いなく食べかけのガレットを差し出す。
まだ口をつけてないのが沢山あると言うのに。
「……サナ」
サーナイトはそれに気付きつつも仄かに頬を染めて、目を瞑り、口を開いた。
少女……ショウはそんなサーナイトに劣情を感じながらも、その口に食べかけのガレットを放り込んだのだった。
互いにダメージを与え合いながらイチャイチャし続ける様子を、少し離れた所からサーナイトと何処か似た人型のポケモン……エルレイドが腕を組んで眺めていた。
その瞳は爛々と輝き、一瞬たりとも見逃さないようにと目を見開いている。
「……うん、良い景色。良い街だねここは……排他的でもないしね!」
「サナッ!」
そんなエルレイドの様子に気付いた様子もなく、仲睦まじく並んで座る二人は暫し互いにミアレガレットを食べさせ合っていた。
時折過去を懐かしむ様子も見せつつ、身を寄せ合い、赤い光に包まれた街と、喧騒を眺めていた。
「…………サナ?」
そんな中、最初に気付いたのはサーナイトだった。
視線を下に向け、何かを見付けたようにじっと見つめ出す。
「ん? どうかした?」
それに追随するようにショウは視線を眼下に向けて……そして納得したように頷いた。
「あー……こないだ徒党を組んで襲ってきた人達だね。また懲りずに誰かを襲ってるんだ……サーナイトに一度ボコボコにされただけじゃ足りないみたいだね」
「サナサナ」
見覚えのある十数人の人間が二人組の男女を追いかけている様子に、ショウとサーナイトは顔を合わせた。
「トレーナーを数の力で襲うなんて事、二度とさせないようにしたつもりだったけど……まったく、人っての今も昔も愚かなものだね……ま、これは私達の不手際って事で、行こっか、サーナイト」
「サナ」
二人は暫し見つめ合うと、どちらからともなく手を取り合い……そっと唇を重ねた。
軽く、触れるだけのキスを交わして、ショウとサーナイトはふわりと屋上から身を投げた。
ショウは左手を、サーナイトは右手を重ねて、落下していく。
辺りは赤い光に包まれていて、幻想的ですらあった。
ショウは右手を胸元に、サーナイトは左手を自分の左目の辺りに当てる。
そこにある、ショウとサーナイトの絆の象徴を確かめるように。
「今回は、手加減なしっ! 最初っから全力で行くよ、サーナイト!」
「サナッ!」
「メガシンカ!」
ミアレの夜空を、目映いメガシンカの光が埋め尽くした。
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「最っ悪! あの人ホテルにいなかったし、探しに行ったらいきなりトレーナー狩りに会うなんて!」
戦おう! ▼
どうしよう?
夜のミアレ、赤い光に囲まれながら二人の男女が走り続けていた。
二人を追うのは十数人の集団。
誰もが既にポケモンを繰り出していて、二人の男女を追い続けていた。
彼等はトレーナー狩り、またはトレーナー潰しと呼ばれる集団。
多勢に無勢、卑怯も何もお構い無し、強い目障りなトレーナーを潰す事を目的とした無法者達である。
立ち止まれば忽ち囲まれ、袋叩きにされる事だろう。
本来彼等の目当ては以前に戦った、ミアレの噂のトレーナーなのだが、一度返り討ちにあった事でその活動を暫し自粛していたのだ。
しかし今、その噂のトレーナーを探している男女を見付け、思いが再燃。
まずは景気付けとばかりに、目の前の男女を複数人でボコボコにしようと襲い掛かっていた。
このまま勢い付いて、元の目的のトレーナーも今度こそボコボコにしてやると意気込んで。
「っ……! 確かにこのままじゃ埒が明かないかっ……! 仕方ない、多分キッツイ戦いになるけど、いけるよね!?」
勿論! ▼
任せて!
追われていた男女は覚悟を決めた。
このまま体力を消耗した所を襲われるよりは、まだ今戦ったほうが勝算があると。
「どうせ徒党を組まなきゃまともに勝負も挑めない奴等なんだから、二人でならなんとでもなるよ! さあ、やるよ!」
二人はモンスターボールを構え、自分の相棒をそれぞれ繰り出そうとした。
その時だった。
キィイイイイイイインッ!
ミアレでバトルをするなら、聞くことの多い音が、上空から響いた。
メガシンカした時特有の、甲高い音。
そして、彼等の上空が昼と見間違える程に突如として明るくなった。
なんだ、と思う間も無く……空から落ちてきた何かが地面に落ち、その瞬間弾けた。
パキィイイインッ
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
砕け、溢れる光、そして響き渡る重い打撃音。
光が収まりそこにいたのは、白い狐のようなお面をした人物と、漆黒のドレスを纏うような姿になった、色違いのメガサーナイト、そして、既に倒れ付しているトレーナー狩り達のポケモンの姿だった。
「「「「……え?」」」」
トレーナー狩り達の呆けた声が響く。
目を擦り、先程までいた自分のパートナーがいた地点とそこから離れた倒れ付している姿を交互に見て、じわじわと現実を認識していく。
奴だ、と。
そして、もう、既に、決着はついたのだと。
『…………こんなくだらない事はやめなさい。今この場で逃げるなら見逃してあげる。まだ、戦うつもりなら……』
瞬間感じる、威圧感。
逃げていた男女、タウニーとキョウヤは、自分達に向けられていないにも関わらず、その迫力に身震いした。
今まで感じた事もない、異質な雰囲気。
顔をすっぽりと隠し、体の露出も殆どない、長い黒髪である事くらいしかわからないが……ただ者ではなさそうであった。
そして、そんな人物の威嚇を、徒党を組んでルール無用で襲撃するような人物達が耐えられる筈もなく……彼等は自分達のポケモンを抱え、あるいはボールに戻し、背中を向けて一心不乱に逃げていくのだった。
そして、タウニーとキョウヤはモンスターボールを構えたたまだった。
助けられた形にはなったが、彼の人物の目的がわからない限り窮地を脱したとは言いきれない。
故の警戒だったが……それは杞憂だった。
『大丈夫だった?』
胸元に触れながら、お面をした人物はタウニーとキョウヤへと振り向いた。
先程の威圧感は鳴りを潜め、いっそ朗らかにすら感じる態度だった。
白い狐のお面をしている事で声はくぐもっていてよく聞こえないが、長い黒髪も相まって女性のように感じる。
「あ、ありがとうございます……!」
タウニーは戸惑いながらもペコリと頭を下げた。
それに合わせてキョウヤも頭を下げる。
助けられたのは確かで、友好的な態度を見せる相手を疑い続ける程、二人はスレている訳ではなかった。
『彼等もこれで懲りると良いけど……君達も災難だったね。夜道には気を付けてね。それじゃあ私はこれで』
そう言って此方から視線を外す狐面の人物。
すぐそばに立つメガサーナイトと手を繋ぎ、その場を去ろうと踵を返そうとした。
待って! ▼
そこを思わず呼び止めたのは、キョウヤだった。
ピクッと動きを止めたその人物は、狐のお面をキョウヤへと向けた。
キョウヤは少しだけ躊躇った後、手に持つボールを目の前の人物へと突き出した。
それは、無言のバトルの誘いだった。
隣に立つタウニーが呆気に取られたように、ポカンと口を開けてキョウヤを見つめていたが、キョウヤが気にする事はなかった。
『ふふ……』
真っ直ぐ、真剣な表情で見つめるキョウヤに、お面の人物は小さく笑い声を漏らした。
『いいよ、バトルしよう。ただ、私はZAロワイヤルってのには参加していないから、あんまり戦っても意味はないよ?』
構わない ▼
大丈夫
忠告に対して頷いて理解を示しつつ、キョウヤは軽い自己紹介を行う。
とはいえ、ほとんど名前だけであるが。
『そう……わかってるなら良いよ。あ、そうだ、君の名前は? ……ふんふん、キョウヤ君ね』
お面の向こう、彼の人物の顔はまったく見えない。
何を考えているのか、どんな人物なのか、察する事は難しかった。
それでも、一つだけわかる事がある。
『私は、ショウ。しがないポケモントレーナーだよ。宜しくね』
狐面の人物、ショウは、お面の向こうで笑顔なのだと。
ショウとキョウヤは、互いにモンスターボールを持って向かい合う。
きっと、互いに笑いながら。
そしてどちらからともなく、モンスターボールが繰り出された。
『「行けっ!」』
二人の声は自然と重なり……隣に立つメガサーナイトが、楽しげに微笑みを浮かべた。
SIDE MISSON EX・A
ヒスイの息吹
終
誤字報告ありがとうございます!
サーナイト♀のメガシンカ形態の亜種、名前は
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メガサーナイトA
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メガサーナイトX
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メガサーナイトZ
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メガサーナイトヒスイの姿
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ショウサーナイト