TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない!   作:如月SQ

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悲劇的な結末は許さない そう、オリ主ならね

「なっ……空が……!」

 

 純白の凍土のキングを鎮めた翌日、ご機嫌で迎えた次の日……。

 外に出た瞬間、驚きに目を見開いた。

 空が不気味に深紅に染まっていた。

 

 そして、私は村を追放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、悩んでいた。

 率直に言えば、行動を起こすかどうか……だ。

 村を追放された後、どうしたら良いかわからない状況でイチョウ商会のウォロさんに拾われて、コギトさんの住む隠れ里にお邪魔する事になって……そこで沢山話を聞いた。

 

 ……正直、あんまり理解出来た訳じゃない。

 色んな事を言われたけど、取り敢えずは三匹のポケモンに会って、それで『あかいくさり』っていうアイテムを作って、『シンオウさま』を鎮める……それによって異変は収まる……かもしれない、って言う話、らしい。

 私に関わる話なのか、どうにも実感が湧かなくて、ずっとラルトスの頭に顔を埋めて聞いていた。

 

 ……その場にいるみんなの、どこか痛ましげな表情が、少しだけ気になった。

 

 それを聞いて、ちょっと考えさせて欲しいと、答えを先送りする事にした。

 追放されたばかりでまだ混乱、動揺していたのもあるし、それに……行動を起こすかは、断定出来なかったから。

 

 何か言いたげな、けれど何も言えないでいるみんなに背を向けて、隠れ里のハズレで、腰を下ろした。

 そんな私をラルトスだけが、ただ側にいてくれた。

 

「ラル」

 

 隣に座って、身を寄せてくれる……その温もりが、今はありがたかった。

 

 ……追放された事に関して、実はそこまで怒りは湧かなかった。

 むしろ、追放された直後のラルトスのほうがよっぽど怒っていたと思う。

 黒曜の原野の木が、何本も犠牲になっていたから。

 

 私には、自分が余所者だっていう自覚はあったし、排他的な空気は感じていた。

 それでも頑張れば、ある程度は認められると思っていたし、その為に荒ぶるキング達を鎮めてきたし、色んなお願い事をこなしてきた……その自負はある。

 友好的にしてくれる人も増えたし、認められたな、って思う事もあった。

 個人的に仲良くなれたなって人もいっぱいいたし、この間みたいに心配してくれる人達だっていた。

 

 ……でも。

 

「やっぱり、私を守ってはくれなかった……」

 

 誰も、守ってはくれなかった。

 デンボク団長に追及されていた時、追放を言い渡された時、一緒にいたセキさんとカイさんは庇ってはくれた。

 ラベン博士もテル先輩もシマボシ隊長も……言葉や態度は違えど庇い、私の身を案じてくれた。

 それでも……守ってはくれなかった。

 ……わかってる。

 彼らにも立場があって、生きていく為には他者との穏便な関係が必要で……コトブキ村、ひいてはヒスイの地で生きるにはギンガ団の団長の決定に真っ向から逆らうなんて事は出来ない。

 だから、彼らが私を見捨てた事を、私は怒っていない。

 怒っては、いないけど……。

 

「……ただ、悲しい、かな……」

 

 うん、悲しい……失望と言い換えても良い。

 結局は、ヒスイクレベースを鎮める前に一人で考えていた事が的中した形になってしまった。

 ここ、ヒスイの地には……私を守ってくれる存在は――。

 

「ラッ」

 

――ラルトス達しかいない。

 

「ラルトス」

 

「ラルッ」

 

 ひょいと抱き上げて、抱き締める。

 その小さな体を強く抱き締めて、その匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

 慰めるように頭を撫でてくれるラルトスが、心底愛おしく感じる。

 やっぱり私のパートナーはラルトスだ……。

 このヒスイで、本当の意味で私の味方はラルトス達しかいない。

 

 けど……だからこそ、私はこんな所で立ち止まっていられない。

 このヒスイの地は、私にとって安住出来ない場所だって事が、今回の事でわかった。

 仮にまたコトブキ村に戻れたとしても、極論、何か気に食わない事があれば追放されかねない。

 

「……なら、やっぱり……元の時代に帰らないと」

 

 家も、家族も、友達もいる、あの時代に――。

 

「ラルッ!」

 

「ラルトスもそう思う?」

 

「ラルラルッ!」

 

 こくこくと勢いよく頷くラルトスが可愛くて、つい笑みを浮かべてしまう。

 ……うん、色んな事があったから少しブレてたけど……初志貫徹!

 この地の平和を守る為じゃない、元の時代に戻る為に行動しよう。

 その為の手掛かりは……やっぱり今起きてる異変しかない。

 

 ……うん、決めた、引き続き異変を対処しよう。

 それがヒスイの地に住まう人々の為になるかもしれないけど、別に彼等を恨んでる訳でも復讐したい訳でもない。

 帰る手掛かりを探す()()()()、ヒスイを救ってあげよう。

 ……そのくらいの傲慢、許されるよね?

 

「ラル!」

 

「えへへ……ありがとう、ラルトス」

 

 さて……じゃあセキさんとカイさんに言いに行こう。

 私が帰る為の()()()()ヒスイを救ってあげます、って。

 

 そんな私の宣言に、セキさんは大笑いして、カイさんは悲しさと安堵が一緒くたになったような複雑な表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、私はヒスイの地を改めて駆け回った。

 シンジ湖、リッシ湖、エイチ湖……それぞれの試練をセキさんと共に駆け巡った。

 なんとも意地悪な三つの試練を突破して、三匹のポケモン達から受け取った素材が、霧の遺跡で『あかいくさり』へと姿を変えた。

 そうして様子を見ながら慎重にコトブキ村に戻ってみれば、デンボク団長……いや、デンボクさんを始め幾人かのギンガ団の姿が無く、呆気ない程に入り込む事が出来て……追放されたとは思えない程に温かく迎え入れられた。

 ラベン博士、テル先輩、そして、シマボシ隊長……。

 私の傲慢な覚悟を伝えれば、少しだけ悲しげに、けれどどこか誇らしげに笑って、私の事を肯定してくれた。

 

「貴女に何か言う資格はありませんから……」

 

「俺はショウの意志を尊重するよ」

 

「……そうだな、君は帰るべきだ」

 

 三人の私を想っての言葉に、胸が温かくなった。

 ……ありがとう、三人とも。

 行ってきます……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルラルッ!」

 

ドドドドドドドドドドドド!

 

 テンガン山の頂上、立ちはだかった鎧姿のデンボクさん。

 そんなデンボクさんとのポケモンバトルには、怒り心頭、といった様子のラルトスが、私が止める間も無く向かっていった。

 デンボクさんのポケモン達を薙ぎ倒し、最後の一匹へと、目にも留まらない速さでラッシュを繰り出した。

 

「ピィエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」

 

 めいそうで守りの力を高めていた筈のピクシーが、その体躯の半分もないラルトスに抗えず打ちのめされ続けている。

 その様子を、デンボクさんは信じられないものを見るような目で見ていた。

 

 デンボクさんの考えもわかる。

 私はよく、コトブキ村でラルトスを出して連れ歩いていた。

 見た目は可愛らしいし、野生にいるラルトスも危険度が高いほうではない。

 みんながポケモンに慣れる一歩になればいいなという思いからそうやっていたのだけど……その身に秘めた力にはあまり気付かれなかったらしい。

 デンボクさんもその一人のようで最初にラルトスが飛び出た時、その顔には怪訝さとラルトスを見下すような視線が見てとれた。

 ラルトスは小さくて可愛らしいし、一度も進化していないから、能力値はそう高くない。

 本来なら、ね。

 

「な、なんと……!」

 

 でも、私のラルトスは……。

 

「ラルトス! 力業!」

 

「ラルァッ!」

 

 最強なんだ!

 

「サイコキネシス!」

 

 かっこ拳!

 

スガァンッ!

 

「む、むぉおおおおおおおおおお!」

 

 視認出来る程強力なサイコパワーの込められた拳がピクシーをうちぬき、デンボクさんを巻き込んで吹っ飛んでいった。

 これで、決着! ってね!

 

「フンッ!」

 

「やったね、ラルトス!」

 

 満足そうに鼻息を鳴らすラルトスを、ぎゅうと抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は少し、浮かれ過ぎていたのかもしれない。

 上手く行き過ぎて、油断していたのかもしれない。

 ここは、ヒスイは、一瞬の油断が命取りになるって。

 

 鋼色のエネルギーが、私に真っ直ぐ向かってくる。

 ラスターカノン、ヌメルゴンも使える鋼の技だけど、それとは一線を画す速さと威力で……このまま直撃すれば私はひとたまりもないだろう。

 

 放ったのは、四肢を地につけた紺色の龍。

 時を司る伝説のポケモン、ディアルガ。

 

 出現した時の迫力に圧され、怯んだその瞬間に、放たれたラスターカノンを、私は反応する事が出来なかった。

 

 あ、これ、本当に、死――

 

――トッ

 

「え……」

 

 何かに押されて、横に倒れて、その絶死の状態から脱した私が見たのは、鋼色の光線に飲み込まれ吹き飛んでいく、ラルトスの姿だった。

 

「ラッ……」

 

 空中で、踏ん張る事も当然出来ずに吹き飛んでいったラルトスは、光線が収まる頃にはズタボロの姿にされていた。

 そして……落下を始めた、その先は……崖――

 

「いっ……」

 

 私は思わず駆け出そうと、体を起こして、手を伸ばした。

 

「て、撤退や! セキ! ショウを連れて一旦下がるぞ!」

 

「お、おう!」

 

――たす、け、たすけなきゃ、たすけなきゃ!

 

「おい、撤退だショウ、よせ! 行くぞ!」

 

 やだ、だめ、だって、ラルトスが、おちて!

 たすけなきゃ、たすけなきゃ、たすけなきゃ!

 やめて、ひっぱらないで、ラルトス、ラルトス――!

 

 手を伸ばしても、届かなくて、ラルトスが、ボロボロで、それで――!

 

――崖に、雲海に飲み込まれるように、その姿は見えなく、なった……。

 

「いやぁあああああああああああああ!!!」




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