TS転生ラルトス♀はサーナイトになりたくない! 作:如月SQ
☆10評価いただきました!重ねてありがとうごさいます!
この先もラルトスくんちゃん改めサーナイトくんちゃんをお願いします。
ほんへ。
ついでに匿名解除しました。
「ラルラル……」
よくやったな、レントラー……よく、ショウちゃんを守りきってくれた。
力尽きて倒れそうになるレントラーを抱き留めて、ボロボロの頬を優しく撫でた。
声を出す力すら残っていない様子のレントラーが、そこまで力を振り絞って耐えきったレントラーが、誇らしかった。
「ラ、ラルトスゥ……!」
ショウちゃんの、震えた声が響く。
そうだよな、怖かったよな……。
レントラーも、辛かったよな、痛かったよな……。
他の皆も、本当によく頑張ってくれた……おかげで、どうにか間に合った。
「グギュ……」
目の前のクソトカゲは、技の反動か体を強張らせている。
なら、やるべき事をやってしまおう。
死力を尽くしてくれた愛すべき弟分を優しく横たえさせて、手に握り締めていた、千切りとったペンダントをショウちゃんの方へと放り投げた。
俺の、俺達の約束と誓い。
進化しないという変わらない筈の意志、その象徴のペンダント。
それを捨ててしまう事を情けなく思うし、ショウちゃんに申し訳ないと思う。
それでも。
そんな俺の矜持なんて、ショウちゃんを守れない現実の前じゃ、塵みたいなもんだ。
ちっぽけな俺の自尊心が皆を傷付けたなら、こんな、くだらない変わらない意志を持ち続ける気はない!
ペンダントに加工されていた
小さな器に無理矢理押し込まれていた力が、蓄積された経験が、俺の身体を作り替えるべく身体中に充ちていく。
それをずっと俺は忌避し、踏み留まっていたけれど……今は違う。
溢れるエネルギーに、その身を任せた。
「ラァアアアア……!」
俺の体が光を放ち始める。
この旅で幾度も見た、進化の光。
俺には縁遠いものだと、何処か他人事で見ていた光に今、自分が包まれていった。
力が、溢れる……漲る……!
身体中が熱く、けれど心地好い……。
自分の体が変わっていくのがわかる。
視界が開けて……いや、どんどん高くなっていく。
手足が伸びていくのがわかる、不思議な感覚だった。
そして、視界の高さがショウちゃんの中程に来た所で、変化が緩やかになる。
視界の端を覆うように伸びていく、髪のような部分が見えて、キルリアになりかけている事を理解する。
……正直に言えば、ここで妥協しても良かった。
キルリアならまだ、まだマシだ。
かわいらしいが、まだ許容出来る。
高くなった視界、伸びた手足、ラルトスの時と比べれば、雲泥の差だろう。
だけど。
「……ァアアアアアア!」
ここで妥協して、また同じような事が起きたらどうする?
またショウちゃんを泣かせるのか?
皆を危険に晒すのか?
同じような事を何度も繰り返すなんてそんなの、恥以外の何物でもない。
今出来る全力を、荒ぶるエネルギーに身を任せろ!
さあみさらせ、一世一代の晴れ舞台!
ポケモン生でたった一度!
経験したポケモンなんざそうそういないだろう、二段階進化だ!
一度変化の止まりかけた体が、更に大きくなっていく。
視界は更に高く、手足はすらりと伸びて、腰から伸びた部位がスカートのように広がって……。
顔を上げ、目を開き、目の前に立ちはだかるハガネのトカゲを見上げた。
さっきまで、首が痛くなる程に見上げなければならなかったのが嘘のように、少しだけ見上げる形で視線が交わった。
此方を見て警戒している様子のクソトカゲに、不敵な笑みを返した瞬間、俺から発されていた光が収まっていった。
「…………サナ……」
進化、完了。
両手を軽く広げて体を見下ろせば、すらりとした細い体と、スカートのように広がった部位が改めて視界に入った。
……遂に、なっちまった。
そういう思いが僅かにあったが、それを振り払うように、ショウちゃんに振り返った。
今はただ、進化した今の俺を、彼女に見て貰いたかった。
どういう顔をしているのか、確認したかった。
僅かな不安が鎌首をもたげたけれど……結果的にそれはただの杞憂でしかなかった。
感極まったように瞳を潤ませて、いつもと変わらない全幅の信頼を寄せてくれる瞳で、俺を少し見上げて見つめるショウちゃんは、華やかな笑みを浮かべてくれていた。
「おかえり、ラルトス……いや、サーナイト!」
それに俺は、心底安心した。
ショウちゃんは、どんな俺でも受け止めてくれる……受け入れてくれる。
やっぱりショウちゃんは、さいきょうのトレーナーで、最高のパートナーだ!
「サナ!」
ただいま!
「うっ……」
どさり
ディアルガに向き直った時には、ショウちゃんは胸を押さえて膝から崩れ落ちていた。
相当に気を張って疲れていたんだろう……ゆっくり休んでてくれ。
後の事は、このクソトカゲは……俺が片付ける。
「ギュゥウウ……」
ディアルガが唸る。
崖から落ちる前はその存在感に圧倒されて、ショウちゃんを庇うのが精一杯……ラルトスのままだったら、もしかしたら負けていたかもしれない。
「サナァ……」
けど今は負ける気がしねえ、欠片も、微塵も!
一歩踏み出せば怯えたように一歩下がる、情けない伝説のポケモンに、笑みを浮かべた。
よくよく見れば、その体は傷だらけ……皆が頑張ってくれた証拠だ。
美味しい所を持っていくようで悪いが……後で皆めいっぱい愛でてやるとしよう。
だからまずは、目の前のこのクソトカゲを、ボッコボコのズッタズタのギッタンギッタンにしてやるからな?
「サナッ!」
覚悟しやがれ!
「グギュァアアアアアアアア!」
鋼色の光線、俺を一度は瀕死に追いやった技が、更に力を高めて放たれようとしていた。
チャージは一瞬、違和感を覚える程にエネルギーの収束の早いそれに、俺は目を細めた。
……関係ねぇ。
何か小細工しているようだが……!
ズォオオオオオ!
「サナァッ!!!」
ズドォンッ!
全部、ぶち抜いてやる!
「…………グァ……?」
炎を宿した拳でラスターカノンを殴り、消し飛ばした、ただそれだけだったが、クソトカゲはどうやら呆けてしまったようで、口を開けたまま首を傾げていた。
そんな隙だらけなトカゲに、一足跳びで近接、手を開いて、振りかぶった。
「サァナァ……?」
呆けてて良いのかよ……?
「グァッ!?」
それを認識したクソトカゲが何かしようとしたが、遅い、遅すぎる!
さあ、食らいやがれ、これは、俺達の……みんなの痛みと苦しみだ!
「サナッ!」
ドゴォッ!
これは、ガチグマとジュナイパーの分!
0距離で放ったはどうだんが、ディアルガの体を宙に打ち上げる。
「ギャッ……!?」
「サナサナサナサナァッ!」
ドドドドドドドドッ!
お次にこいつは、イダイトウとヌメルゴンの分だ!
拳に炎と冷気をそれぞれ纏って跳びあがり、左右から何度も殴り続ける。
「ギュギュギュギュッ……!? グギュアッ!」
それでも流石は伝説のポケモンか、打ちのめされて続けている中で、口に収束した光線が、一瞬の隙をついて俺へと放たれる。
だが、俺は既にそこにはいない。
残っているのは影だけ……俺自身は既に、その背後でクルリと体を回転させて、脚を振り下ろしていた。
「サァアアア……ナッ!」
ドガンッ!
そんでこいつは、レントラーの分だ!
「グギャァッ!」
かげうちからのかかと落としが炸裂し、ディアルガは地面に叩き落とされた。
四肢を放り投げ、無様に倒れる姿に伝説の威厳はなかったが、油断はしねぇ。
両の手を合わせ、全力の気合いを込めていく。
バチッバチバチッ!
「サナ!」
こいつは、俺自身の分!
凄まじいエネルギーの込められたきあいだまが、無様なトカゲに炸裂した。
「ギャァアッ!」
ズドォンッ!
トカゲの体は地面に更にめり込み、周囲に蜘蛛の巣状にヒビが広がっていく。
悲鳴のような咆哮をあげ、苦しそうにもがく姿は、もう伝説の威厳なんてものは感じられなかった。
目の前に降り立ち、体を震わせている哀れなトカゲを見下ろして……俺は強く、拳を握り締めた。
「サナ、サナ……!」
そして最後に……ショウちゃんの分だぁあああ!
本気の、全力の、全身全霊のラッシュを、食らいやがれ!
「サナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナッ! サナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナサナッ!」
ズドドドドドドドドド!
「ギュゥァアアアアアアアアアア!!!」
「サナァッ!!!」
ラッシュを終えて、大きく息を吐き出し、目を細める。
視線の先、無様にぶっ飛んでいったハガネトカゲは、そのまま地面に倒れて動かなくなった。
達成感のままに、笑みを浮かべてショウちゃんのほうへと振り返った。
ショウちゃんはペタリと座り込んだまま、此方を半ば呆然と見上げていたけれど、俺と視線が交わるとその瞳を柔らかく細めた。
そして、親指を立てて、可憐な笑みを浮かべてくれた。
「最高! お疲れ様、サーナイト!」
「サァナッ!」
その笑みに、労りの言葉に俺も自然と笑みを浮かべ、同じように親指を立てるのだった。
「サーナイト……! レントラーが……!」
ディアルガをボコボコにして無事捕獲したのを見届けて、スッキリ爽快な気分だったが、新たな問題が浮上してきた。
目の前で、ショウちゃんに抱き抱えられたレントラーがピクリともしないのだ。
薬はもう無く、治療するには村まで戻らなければいけないが……この様子じゃそれまでにレントラーがもたないだろう。
限界まで体を酷使した結果……か。
ショウちゃんの顔に焦燥の色が浮かぶ。
確かにこのままじゃ、本当に危ない。
ならば、と指先に滴を生み出した。
いのちのしずく……体力回復効果のある技だが……。
「レントラー、レントラー……!」
ポタリと垂らした滴を、レントラーは飲み込んでくれなかった。
飲み込む力すら残っていない……滴はそのまま頬から抜けて、地面の染みになってしまう。
ショウちゃんは瞳を潤ませて、今にも泣きそうな顔でレントラーの名前を呼び続けているが、浅く呼吸を繰り返すだけで、反応は無い。
このままだと、本格的にまずいな。
「サナ……」
仕方ないな、どれ。
パク
自力で飲めないなら、無理矢理飲ますしかないわな。
いのちのしずくを口に含んで、レントラーの頬を両側から押さえて、と。
……本当に、こんなになるまでよく頑張った。
今、助けてやるからな。
くちうつしで。
「レントラー、しっかりし……サーナイト……? 何しようとして、ねえ、サーナイト? 何してるの? 顔近付けて、ちょっと待って? ねぇ、待ってって! あ、でも凄い色っぽ……いや、ダメダメダメ! あの! そういうの良くな――」
「サー」
はい、チューっと。
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」