自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~   作:gp真白

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適当に作った箸休めの作品なので適当に評価してくれると嬉しいです。


プロローグ:絶望的な始まりと最悪の出世

 

 

カイト・アレンがこの世界に来て五年が過ぎた。

 

異世界転生、という響きは魅力的だが、現実は違った。彼はチート能力も特殊な魔法の才能も、前世で培った「剣術の心得」など一切持たない、ただの**「異世界に放り込まれた元サラリーマン(35歳)」**だった。

 

「ああ、今日も定時で帰りたい……」

 

彼が勤めるのは、王都の片隅にある「ブレイブ・ハート」冒険者ギルド。カイトの職務は受付職員。平和で、命の危険がなく、何より定時で終わる仕事。それが彼の異世界での最終目標だった。

しかし、ギルドの業務は非効率で、毎日残業の嵐。耐えかねたカイトは、前世の知識を駆使し始めた。

 

「この依頼書の分類は『ABC分析』で優先度を決めれば早い」

「この魔石の在庫管理は『ジャストインタイム』でやれば棚卸しがゼロになる」

 

彼の行動は、**「楽をするため」**の一点に尽きた。余計な作業を減らし、低血圧でも耐えられる平穏な生活を手に入れるためだ。

ところが、これが周囲には**「無駄を一切許さない、先を見据えた合理的な指導」**と映った。

 

ある日、長年の激務で心労が絶えなかった前ギルドマスターが、本当に倒れてしまった。緊急の幹部会議。カイトはこれでようやく元の平和な受付業務に戻れると安堵した。

 

その時、ギルドの筆頭職員である元Sランク冒険者のバルド・グラウが、岩のような拳で机を叩いた。

「このギルドを立て直したのは誰だ! 誰もが嫌がる在庫整理を一晩で終わらせたのは誰だ! 誰もできない仕事の効率化を成し遂げたのは!」

 

バルドの熱い視線がカイトに突き刺さる。カイトは慌てて目をそらした。

「そ、それは……俺はただ、面倒くさいから……」

「謙遜なさるな! カイト殿! あなたこそが、我々現場の無駄を全て削ぎ落とし、ギルドを最強へと導く真の指導者だ!」

 

そして、有無を言わさぬ満場一致で、カイトはブレイブ・ハート冒険者ギルドの第十代ギルドマスターに就任してしまった。

「は? 待ってくれ。俺、魔力ゼロ、力は一般人以下、知恵は前世のサラリーマン知識のみの、ズブの素人なんだが?」

 

カイトの心の叫びは、誰にも届かない。

ギルドマスター室の豪華な椅子に座らされ、カイトは青ざめた。窓の外では、屈強な冒険者たちが「カイトマスター万歳!」と声を上げている。

彼の平和で楽な生活は、絶望的に遠のいた。

 

「ああ、もうダメだ。こんな命懸けの仕事、絶対嫌だ……。**辞める。**そうだ、もうどうでもいい。最悪、ギルドの評判を落として、責任を取って辞めてやる!」

 

こうして、異世界一無気力で、欠陥品に愛され、**「辞めること」**を最終目標とするギルドマスターの、自暴自棄な日々が幕を開けたのだった。

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