自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~   作:gp真白

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最終話:平和への到達と、世界に刻まれた「無気力の伝説」

 

ギルドマスター就任から二か月。カイトの「辞めたい」という切実な願いは、もはや遠い記憶になりつつあった。彼の自暴自棄な行動はすべて「天才の采配」となり、ギルドは王都で最も信頼される組織になった。職員も冒険者も、カイトが**「静かに椅子に座り、ただ窓の外を見つめている」ことを、「世界全体の調和を測る儀式」**だと信じていた。

 

カイトは悟った。

「俺が何をしても、この世界は俺を有能だと勘違いする。俺の存在自体が、このギルドの『チート能力』になってしまったんだ」

 

もはや、辞職は不可能だった。カイトの首が飛ぶことは、世界から希望の光が消えると同義だと、全員が信じている。

最後の抵抗、そして諦め

 

カイトは、諦めて「定時帰宅」だけでも確保しようと、最後の抵抗を試みた。

カイト: 「バルド、エリシア。今日から俺は、**『午後三時にはギルドを離れる』**ことにする」

 

(→**本心:**定時まで耐えられない。せめて早退したい)

 

バルド: (敬虔な表情で)「おお…! ついに、**『世界の真実』を深く学ぶための『孤独な研鑽の時間』**を設けられるのですね!」

エリシア: 「マスターのその決断が、どれほど孤独なものであるか、私には想像もできません…」

 

カイトの「早退」は、「人間界の喧騒を離れ、宇宙の法則や古代の知恵を探求する」という、偉大なる賢者の日課として受け止められた。

 

結果、午後三時になると、職員たちはカイトの邪魔をせぬよう、静かに一列に並んで深々とお辞儀をし、彼を「孤独な研究の場」へと送り出すのが日課となった。カイトは毎日、感傷的なBGMのような職員の視線に見送られながら、自宅へ帰り、前世の記憶を頼りに作った**「異世界版インスタントラーメン」**をすすり、テレビ代わりの魔法具でひたすら古い映像を見る、という平和な日々を手に入れた。

 

平和への到達と、増幅する伝説

カイトが早退し、**「何もしない時間」**が増えるほど、ギルドは自動的に成長した。

 

• 午後三時以降の決断:全て職員に委ねられた結果、職員の自律性が極限まで高まり、ギルドの組織力は完成された。

• カイトの自宅:職員が**「マスターの研鑽の場」**と誤認したため、誰もカイトのプライベートに立ち入らない。カイトの平和な隠居生活は完全に保証された。

 

数年後――。

ブレイブ・ハート・ギルドは、王都を飛び越え、大陸全土に影響力を持つ**『伝説のギルド』となった。その頂点に立つのは、「神の采配を持つ無欲の賢者」**、カイト・アレン。

 

彼はもう、辞表を書くことも、定時帰宅を願うこともなくなった。なぜなら、彼の生活は、**「最高の名誉と、誰も邪魔しない完璧なプライベート」**という、転生当初の目標を遥かに超えた「究極の平和」を実現していたからだ。

ある日、カイトは午後三時にギルドを出る際、バルド副マスターから一つの報告を受けた。

 

バルド: 「マスター。魔王軍残党の討伐が完了し、世界に真の平和が訪れました。これも全て、マスターの無言の指導と、緻密な戦略のおかげです!」

 

カイト: 「ああ、そうか…よかったな…」

 

(→**本心:**これで面倒な魔物討伐の依頼が減る。最高だ)

 

バルド: 「そこで、職員一同、マスターに感謝の記念碑を建立させていただきました。よろしいでしょうか?」

 

カイト: 「ああ、好きにしろ…」

 

カイトの「好きにしろ」という言葉は、職員の最後の決断を承認する「無私なる最後の聖断」となった。

 

数日後、王都の広場には、巨大な記念碑が建てられた。そこには、窓の外を見つめながら、ダルそうに椅子に座るカイトの姿が、精巧なレリーフで刻まれている。

そして、碑文にはこう刻まれていた。

 

『ここに眠る(座る)、賢人カイト・アレン。彼は、その深遠なる無気力をもって、我々に真の自律と平和の道を示した。彼の「辞めたい」という呟きこそ、世界に対する最大の愛であった。』

 

カイトは、その碑文を見て、初めて心から笑った。

 

「…まあ、平和になったし、給料も最高だし、誰も俺を邪魔しないし、もういいか」

 

カイトは、今日も午後三時ちょうどにギルドを出て、自宅の椅子に座り、異世界版インスタントラーメンをすすりながら、前世の番組の古い映像を眺める。

異世界一無気力で、欠陥品に愛され、**「辞めること」を最終目標としたギルドマスターは、望まぬまま「世界の救世主」**となり、二度と辞められない最高に平和で楽な人生を手に入れたのだった。

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