自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~ 作:gp真白
1. 新たな辞職計画:信用失墜
カイトはギルドマスター室で頭を抱えていた。マジックソーターの失敗から学んだことは一つ。**「部下がいると、俺の行動は全て成功に転換される」**ということ。
「ならば、次は**『失敗は不可避』な状況を作ってやろう。それも、ギルドマスターとしての『悪評』**が確実に立つ形でだ」
カイトは、受付に貼り出された一つの依頼書に目をつけた。
依頼: 【緊急】最難関ダンジョン『冥府の囁き』深層の調査と安全確保
このダンジョンは、過去にSランクパーティーですら撤退を余儀なくされた、通称「死亡率90%」の魔境。
「よし、これだ。この依頼を、先日のマジックソーターの**『ランダム育成システム』で大成功したと勘違いしている、最も経験の浅い初心者パーティーに強制的に割り当てる。そして、当然失敗。ギルドマスターは『無謀な育成で若者を死地に送った無責任な指導者**』として糾弾される!」
完璧な計画だ。カイトはほくそ笑んだ。
2. ストップマジック(欠陥品)の準備
カイトは、作戦の成功率(=自分の評判が落ちる確率)を上げるため、もう一つの欠陥魔道具を準備した。
『ストップマジック(緊急用・プロトタイプ)』:本来の用途は「周囲の魔力の発動を一時的に封じる」こと。しかし、欠陥のため**「魔力を封じる効果が不安定で、使用者本人にも致命的なダメージを与える」**危険物だった。
「初心者パーティーが危なくなったら、**『自作自演』でこの装置を起動させる。これで魔力暴発。俺は自爆テロリストとして辞められる。もしくは、魔力封印に失敗し、魔物にやられて『殉職』**だ。どっちに転んでも辞職は達成!」
カイトは、これからダンジョンに向かう初心者パーティー**『クローバーの芽』**の三人を遠目に確認すると、バルドに指示を出した。
「バルド。彼らには、この依頼が**『極秘の試験』であることを伝え、直行させろ。周囲には『マスターの特別指導』**として宣伝するんだ」
「はっ!さすがマスター!若者には最初から最難関で鍛える、スパルタ教育ですね!」バルドは熱い涙を流して敬礼し、パーティーを送り出した。
3. 魔境での自作自演と、最悪の副作用
カイトは隠密性の高い魔道具を使い、**『クローバーの芽』**パーティーから距離を置いて、彼らがダンジョンの深層に辿り着くのを待った。
数時間後。パーティーは最深部の一歩手前で、最凶の魔物**『重装鎧のミノタウロス』**に遭遇した。ミノタウロスは巨大な斧を振り上げ、必殺の一撃を繰り出そうとする。
「今だ!」
カイトは隠れていた岩陰から飛び出し、**「魔力が不安定になるから絶対に近寄るな」**と言われていたストップマジックの起動スイッチを叩いた。
カチッ!
(カイトの心の声:これで暴発!俺は吹っ飛んで、無能な指導者として汚名を着せられる!もしくは殉職!)
しかし、魔道具は暴発しなかった。代わりに、全く予期せぬ現象が起こった。
ブゥン……(静かな作動音)
ストップマジックは、カイト以外の全ての魔力に対して、**『発動を封じる』のではなく、『発動直前に魔力を吸収・中和し、経験値に変換してパーティーに送る』**という、新たな欠陥機能を発動させたのだ。
ミノタウロスの斧は、カイトの魔道具が生み出した**『魔力ゼロ地帯』によって、魔物自身の攻撃魔力を吸い取られてしまい、ただの重い鉄塊**と化してしまった。
ガシャン!
必殺の一撃は空振りに終わる。ミノタウロスは戸惑うように静止し、攻撃を繰り出す魔力が枯渇した状態になった。
その直後、初心者パーティーの頭上に**「経験値獲得!」**の文字が光り輝いた。
「レベルアップ!」「レベルアップ!」
カイトは目を疑った。
「え? なんだ、これ? 暴発しないどころか、魔物が……餌になってる!?」
4. 伝説の指導者へ
**『クローバーの芽』パーティーは、急にミノタウロスが「やる気のない置物」**になったのを見て、パニックから一転、歓喜した。
「すごい!ミノタウロスが動かないぞ!」
「これは…師から授かった**『無血の経験値獲得法』**に違いない!」
彼らは、ただ動かないミノタウロスを剣と魔法で叩きまくり、撃破。魔道具の効果は持続し、ミノタウロスだけでなく、深層の魔物全てが**「攻撃魔力が中和された、経験値だけのサンドバッグ」**と化した。
結果: 『クローバーの芽』は、一切の被害なく深層の調査を完了し、最速で帰還。初心者が最難関ダンジョンを攻略するという、前代未聞の快挙を達成した。
カイトは、**「なぜか無事」**にギルドマスター室に戻る羽目になった。
「マスター!やはりあなたは**『世界で最も経験値効率の良い指導者』です!」
「『敵の魔力だけを中和し、初心者でも安全に経験値を積ませる』という、この神の育成法**は、伝説となるでしょう!」
エリシアとバルドは、カイトの**「悪評計画」が、逆に「最高の育成システム」**として世界に広まることを確信し、熱狂していた。
カイトは、自分の手元でくすぶっている『ストップマジック』を見て、悟った。
「俺の欠陥魔道具は、俺がいる時だけは暴発しない……そして、俺が辞めたいと願って起動すると、世界を救う英知に変換される……なんて呪いだ!」
カイトの辞めるための戦いは、またしても大成功という最悪の結果に終わったのだった。