自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~ 作:gp真白
1. 究極の自滅計画:無能の公開
度重なる失敗に、カイトはとうとう精神的な限界を迎えた。書類を燃やす作戦すら「神の知恵」に変換された今、もはや「間接的な辞職」は不可能だと悟る。
「もういい。俺はギルドマスターの職務を放棄する。そして、俺自身が**『力も、知恵も、魔法も扱えない、ただの頼りの欠陥品』**であることを、物理的に証明してやる」
カイトは、ギルドの地下深くにある**『極秘訓練場』に目をつけた。そこは、高位冒険者が魔力と体力を限界まで鍛えるための「危険な重力操作装置」**が設置された部屋だ。
「この訓練場で、**『俺がギルドマスターとして最低限必要な身体能力も持っていない』ことを公開する。そして、『危険な訓練を放置した』**として責任を取って辞める!」
カイトは、職員たちに「これから**『次期世代の冒険者訓練システムの開発』のため、極秘の環境で自ら肉体の極限**を体験してくる」と宣言した。
エリシアとバルドは、目を潤ませた。
「マスター……ご自身を危険に晒してまで、次世代のために……なんと自己犠牲の精神!」
「我々が止められるわけがない!マスターは更なる高みを目指しているのだ!」
2. 超重力装置と、暴走する欠陥品
カイトは訓練場に設置されている**『超重力発生装置』を最大出力に設定した。この装置は、カイトが過去に「筋トレが面倒だから」という理由で、「歩くだけで鍛えられる魔道具」として開発したものだが、制御が難しく、すぐに「身体が潰れるほどの重力」**を発生させる欠陥品だった。
「よし、これで俺は這い蹲って、ギルドマスターとしての権威を失墜させる。最悪、動けなくなって引退だ!」
カイトは装置のレバーを引き、訓練場の魔力を起動させた。
グググ……!
次の瞬間、カイトの身体に通常の数十倍の重力がかかった。彼は予想通り、悲鳴を上げる間もなく、地面にぺたりと張り付いた。
「う、うぐぅ……辞めたい……辞めたい……」
彼は地面に顔を押し付け、情けない声を上げた。この光景を誰かが見れば、すぐにでもギルドマスターの地位から降ろされるだろう。
その時、カイトの腰に忍ばせていた**『魔力遮断ペンダント(欠陥品)』が、訓練場の魔力に反応してしまった。このペンダントは、「魔力を遮断する」はずが、実際は「外部の魔力を不規則に吸収し、特定の身体部位に集中させる」**欠陥品だった。
ボゥン!
ペンダントが吸い上げた重力装置の魔力は、カイトの**「手足の関節」と「喉」**に集中してしまった。
3. 究極の鍛錬と「謎の奇声」
集中した魔力により、カイトの手足の関節は不自然なほどに柔軟になり、喉の筋肉は極限まで締まり上がった。
その結果、カイトは数十倍の重力下にもかかわらず、地面に張り付いたまま、異常な体勢で体をくねらせ始めた。それは、まるで**「人間離れした柔軟性を持つ、謎の武術の型」**に見える。
そして、喉に魔力が集中したことで、カイトの情けない唸り声が、**「甲高い、だが力強い、奇妙な奇声」**に変換されてしまった。
「クッ、クェェェェ……オェェェッ!」(訳:辞めたい、助けてくれ)
その時、バルドとエリシアが、訓練状況を遠隔モニタリングするためのカメラを作動させた。
• バルド: 「な、なんという体勢だ……! 重力下で関節を極限まで外し、筋肉を**『魔力で再構成』している! これは……伝説の『無我の境地に至る鍛錬法』**!」
• エリシア: 「そして、あの**『甲高い奇声』! あれは、身体の全魔力を一点に集約し、『外界のノイズを完全に遮断』するための『魂の叫び』! マスターは『肉体の限界を超越』**しようとされている!」
訓練場から響くカイトの**「辞めたい!」「助けて!」という奇声(バルドたちにはそう聞こえない)は、「不屈の魂の咆哮」**として記録された。
4. 評価の極致と、辞職の完全封鎖
カイトは一時間後、重力装置がオーバーヒートで停止したことで、解放された。体中が痛むが、なぜか関節は異常なほど滑らかになっていた。
彼の姿を見たバルドは、感極まってひざまずいた。
「マスター……あなた様は、この一時間で数年分の修行を成し遂げた。この訓練法は、**『体術師の聖典』**としてギルドに刻まれます!」
「え? いや、俺はただ地面に張り付いてただけだが……」
「なんと謙虚な! 『無の境地』とは、己の偉業を語らぬこと! 我々は、マスターの自己犠牲の成果を、世界に広めます!」
カイトは、自分の**「情けない這い蹲り」が「伝説の武術の型」**として認定されたことに、力が抜けた。
そして、バルドはカイトに一つの書類を手渡した。
「マスターの**『肉体への貢献』に対し、王国より『ギルドマスター職は永久不変の称号とする』という辞令が下りました!これで、マスターは名実ともにギルドの心臓**です!」
「……永久不変だと?」
カイトの顔から、完全に表情が消えた。彼の「辞めるための戦い」は、ついに**「辞職の権利」**そのものを封じられるという、最悪の結末を迎えたのだった。
「ああ、もう……どうすれば……」
カイトは、もはや無気力すぎて、その場に崩れ落ちた。バルドたちは、それを見て静かに感嘆した。
「さすがだ……**『究極の鍛錬の後に、安らぎを求めず、瞑想に入る』**とは……」
カイトの「辞めたいのに辞められない」自暴自棄の異世界生活は、永久に続くことが確定した。