自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~ 作:gp真白
1. 究極の悪行:冒険者への裏切り
ギルドマスター職の永久不変が確定したカイトは、完全に自暴自棄になっていた。もはや辞めるためには、**「英雄」という評価を捨て、「外道」**としてギルドから追放されるしかない。
「そうだ。もういい。英雄として死ぬくらいなら、冒険者の敵になってやる!」
カイトは、手持ちの欠陥魔道具の中でも特に危険なものを組み合わせ、**『偽装型魔力地雷・クローンボム』を開発した。これは、「床の色や質感に完全に偽装」できるが、「特定条件下の魔力を感知すると暴発する」**という、極めて不安定な代物だ。
「これを、多くの冒険者が利用する**『初心者向けダンジョン・モスリーフの森』に設置する。地雷が起動すれば、ギルドの裏切り行為として糾弾され、極刑か、少なくとも永久追放**は確実だ!」
カイトは深夜、誰にも見つからないようにダンジョンに潜入し、視覚的に判別不可能な地雷を主要な通路に次々と設置した。
2. 偽装地雷の起動条件
カイトの目論見通り、翌日、多くの冒険者パーティーがモスリーフの森に入った。カイトはギルド本部で、遠隔魔力探知装置を緊張して見つめていた。地雷の起動を待っているのだ。
(カイトの心の声:踏め!頼むから踏んでくれ!そしてギルドマスターの俺が仕掛けたことが露見して、俺の評判を地に落としてくれ!)
冒険者たちは地雷の上を平然と通過していく。地雷は全く反応しない。
「なぜだ? 完璧に床の色に偽装したはずなのに……」
カイトは自分の魔力地雷の欠陥を思い出した。
• 『クローンボム』の欠陥: 設置後、**「設置者の魔力パターンに近い生命体の通過」**を感知すると、魔力回路が安定化し、一時的に起動を停止してしまう。
「クソッ、俺が作ったせいで、冒険者の**『健全な魔力』には反応しないのか! 逆に言えば、俺に近い『非健全な魔力(=魔物の魔力)』**じゃないと起動しない……!」
3. 危機一髪の瞬間と、奇跡の足止め
その時、探知装置が、ダンジョン深部で高位の魔物**『大王ゴブリン』の一団が異常増殖し、地上に向かって集団で暴走**していることを示した。その速度は、冒険者たちが逃げ切るには速すぎる。
初心者パーティー**『クローバーの芽』**を含む数組が、大王ゴブリンの大群に追いつかれそうになっていた。
「しまった!地雷は冒険者には無害だが、魔物の魔力には反応する! しかも暴発するぞ!」
カイトは恐慌した。地雷が暴発すれば、無辜の冒険者も巻き添えになる。
「逃げろ!とにかく早く、魔物の魔力が地雷に触れる前に……!」
カイトの願いも虚しく、ゴブリンの先頭集団が、カイトが設置した地雷の区域に突入した。
ドォォン! ドォォン!
地雷が連鎖的に暴発した。しかし、カイトの予想に反し、爆発は**「真上」ではなく、ゴブリンの足元にだけ、「魔物の進行を妨害するような、粘着性のある魔力フィールド」**を生成した。
• 地雷の予期せぬ機能: 設置者が**「魔物からの被害を恐れる」という強い感情を持つと、不安定な回路が「魔物の足止め」という形で作用し、爆発の威力を「粘着性の足止め魔力」**に変換する。
地雷を踏んだゴブリンたちは、**「粘着性の床」**に足を取られ、次々と転倒。その間に、冒険者たちはダンジョンからの脱出に成功した。
4. 外道から、冒険者の守護者へ
ギルド本部に戻ってきた冒険者たちは、顔色を失いつつも興奮を隠せない様子だった。
バルドが彼らを迎え入れた。
「何があった!大王ゴブリンの異常増殖だと!?」
『クローバーの芽』のリーダーが叫んだ。
「バルドさん!私たちは終わったと思いました!しかし、ダンジョンの通路が急に**『粘着性の罠』**に変わり、ゴブリンたちの足止めになったんです!」
「あれは、地面と完全に同化していて、私たちには全く見えませんでした!魔物の魔力だけを感知して発動する、究極の防御システムです!」
• バルド: 「な、何だと……! まさか、これがマスターの**『防衛計画』**! **『ダンジョンの地雷化』**により、魔物の異常増殖に備えていたとは!」
• エリシア: 「マスターは、地雷を**『冒険者には無害で、魔物にのみ作用する』ように調整し、それを『床の色に偽装することで、魔物に警戒させない』という究極の策略を講じていたのです!まさに冒険者の守護者**!」
カイトは、「冒険者を罠にかける」という究極の悪行を企てたにもかかわらず、結果として**「数百人の冒険者の命を救った英傑」**として、再び崇められることになった。
カイトは、遠隔探知装置の爆発跡を見つめながら、虚ろな笑みを浮かべた。
「そうか。俺の**『外道になろうとする行動』すら、この世界では『冒険者を守る深謀遠慮』**に変換されるのか……」
地雷の部品代と設置費用は全てカイトの自腹で賄われたが、彼の評判は**「冒険者を守るために私財を投じる聖人」**として、もはや神話の領域に達していた。
ギルドマスターの**「辞めたい」**という願いは、今日もまた、世界を平和へと導く一因となるのだった。