自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~ 作:gp真白
1. 絶望的な地雷撤去の試み
前回の地雷設置作戦が、まさかの「冒険者の守護システム」として機能したことに、カイトは深く絶望していた。
「地雷が……悪人探知機に変わっただと? そんなバグ、聞いたことがない!」
カイトは、自分の悪評が立つどころか、無関係の冒険者の命を救ってしまった事実に、もはや笑うしかなかった。彼はすぐに地雷の撤去を試みた。
「このままでは、また俺の意図しない『善行』が積み重なる!早く、地雷を回収しなければ!」
しかし、カイトがダンジョンに潜入し、地雷の設置場所を探しても、地雷は見つからない。
『クローンボム』の新たな欠陥: 一度設置者が強い**「善意(今回は冒険者を守った事実)」と結びつくと、「設置者本人には見えなくなる」ように偽装を強化する。さらに、「周囲の悪意ある魔力(野盗や密売人の邪悪な思念)のみを感知するセンサーに変化する。
「ああ、もうダメだ……俺の地雷、完全に自律稼働する治安維持システムに変わっちまった……!」
2. 驚愕の報告と、広がる「カイトの罠」
カイトが地雷撤去を諦めて数日後、王都の治安維持機関から、ギルドに緊急の報告が届いた。
「ギルドマスター!カイト様!」バルドが興奮した面持ちで、王都警察の報告書を持ってきた。
「なんだ、騒々しい」カイトは既に無気力だ。
「報告によると、王都近郊の街道や、ブラックリストに載っている連中が頻繁に出入りする裏路地で、奇妙な現象が多発しているのです!」
• 野盗の報告: 街道で突然、地面が**「粘着性の罠」**に変わり、馬車ごと動けなくなった野盗団が警察に一網打尽にされた。
• 密売人の報告: エルフの密売人が、取引場所で足元に突然現れた**「見えない壁」**に阻まれ、身動きが取れず逮捕された。
• 盗賊の報告: ギルドの裏金庫を狙った盗賊が、金庫室の床で**「激しい魔力のノイズ」**に襲われ、魔力発動を封じられて無力化された。
これらの現象が起きた現場は、すべてカイトが**「地雷を設置して、冒険者に被害を与えようとした」場所や、「地雷の欠陥でワープしてしまった」**魔道具の影響下にある場所だった。
「地雷が、今度は**『悪人の足止め装置』**として、王都中に散らばってしまっただと……?」カイトは顔面蒼白になった。
• バルド: 「なんと!マスターは、**『冒険者の安全』を確保するだけでなく、王都全体の『治安維持』のために、自作の魔道具を『市民生活圏』**にも配置されていたのですね!」
• エリシア: 「マスターの行動は、全て深謀遠慮です!地雷を**『床の色に偽装』したのは、『善人には見えないが、悪人には(邪悪な心故に)魔力で感知できる』**ように設計されていたのです!」
4. 英雄の誕生と、最悪の栄誉
この**「カイトの隠密地雷作戦」により、王都の犯罪発生率は前年比で50%以上も減少した。治安維持機関は、この功績がギルドマスター・カイトの「神の采配」**によるものだと結論付けた。
そして、ついに最悪の事態が起こった。
王都の中心にあるギルド会館の大ホールで、**『治安維持功労者表彰式』**が開催されることになったのだ。
表彰状の文面(カイトが嫌悪感マックス):
ギルドマスター、カイト・アレン殿。
あなたの**「私財と英知を投じた隠密型治安維持システム」は、市民の安全に大きく貢献した。その「無償の奉仕と崇高な精神」**を称え、王国の至宝として永世に渡り顕彰する。
表彰台の上で、王国の騎士団長から金色の勲章をかけられたカイトは、心の中で叫んだ。
(カイトの心の声:俺は冒険者を殺そうとした!野盗の活動を助長させようとした!なのに、なんで俺が悪人どもを捕まえまくって、こんなところで『王国の至宝』なんて呼ばれてるんだ!)
満場の拍手喝采の中、カイトは無表情のまま、マイクの前に立った。
「あ、あの……」
(カイトの心の声:正直に言おう。俺が地雷を設置したのは、みんなに迷惑をかけて辞めるためだと!)
しかし、喉に集中した魔力の影響で、彼の声は**『カリスマ性と重厚感に満ちた、荘厳な響き』**に変換されてしまった。
「……私の、行ったことは……全て……天命に従ったまで……」
• 騎士団長: 「なんという高潔な精神!自らの功績を**『天命』**と断じ、傲りを微塵も感じさせない!」
• 市民: 「カイト様は、もはや**『生きる伝説』**だ!」
カイトは、ギルドを追放されるどころか、王国の中心で、王国の至宝として祭り上げられてしまった。
彼の**「辞めたい」という願いは、今や「世界平和を願う大いなる天命」**として、完全に封じ込められてしまったのだった。カイトの辞職への道は、さらに遠く、そして神聖なものへと変わってしまった。