自暴自棄のギルドマスターは今日も辞められない ~欠陥魔道具に愛されし無能が、なぜか偉大な英傑と勘違いされる件~ 作:gp真白
1. 究極の無為作戦
相次ぐ「辞めるための行動」が「世界を救う功績」に変換されてきたカイトは、ついに一つの真理に到達した。
「そうだ。何もしなければいいんだ!」
カイトが行動すると、欠陥魔道具と周囲の勘違いが作用し、必ず成功する。ならば、一切の行動を停止すれば、必ずどこかに綻びが生じるはずだ。ギルドマスターが職務を放棄すれば、組織は混乱し、崩壊する。
「よし。これからは、究極の無為を貫く。仕事も、判断も、サインも、全て拒否!何もするな!」
カイトはギルドマスター室の豪華な椅子に深く座り込み、天井を見上げた。
「俺は、**この椅子から一歩も動かない。これで必ずギルドは機能不全に陥り、俺は『職務怠慢』**で追放される!」
2. 「何もしない」宣言と職員の誤解
カイトは、会議に集まった職員たちに、静かに宣言した。
「これより、私は一切の業務、判断、指示を行わない。書類のサインも、緊急時の対応も、全てお前たち自身で解決しろ。私に頼るな。私は……何もしない」
カイトは言葉に力を込めた。これで職員たちがパニックに陥り、ギルドが混乱することを期待した。
• バルド: 「な、なんと……! これは、究極の信託だ!」
• エリシア: 「マスターは、これまでの**『完璧な業務システム』と『優秀な人材育成』により、ギルドが『マスターの判断なしに自律運行できる』**レベルに達したと確信されたのですね!」
• 職員一同: 「マスターは、我々に**『最終的な判断権』と『絶対の信頼』**を託してくださった!この期待に応えなければ!」
カイトの「何もしない」という態度は、職員たちに**「マスターは既にギルドの仕組みを完成させ、私たちに最終権限を委譲した。私たちはマスターの意志を継ぐ者だ」**という、究極の責任感を植え付けてしまった。
3. 無為の裏で自動解決する問題
カイトが「何もしない」を始めて一週間。
【問題1:重要な契約書のサイン】
カイトはサインを拒否。職員たちは慌てたが、すぐに思い出した。
職員の声: 「そうだ!**『神聖契約印・カイトモデル』がある!マスターは『無駄な手間を省き、自動認証しろ』と暗に示されたのだ!」
→ 結果: 契約書に自動で神聖契約印が押され、「カイトの命がけの保証」**として契約の信頼性がさらに向上。問題解決。
【問題2:緊急の魔物討伐依頼の判断】
判断を拒否されたバルドは困惑したが、カイトが過去に設置した**『マジックソーター(ランダム育成システム)』を思い出した。
バルドの判断: 「マスターは、『この難題にこそ、ランダムな組み合わせで未知の可能性を見出せ』**と教えられた!」
→ 結果: 普段組まないベテランと新人がランダムで編成され、予期せぬ戦術が生まれ、討伐成功。問題解決。
【問題3:職員間のトラブル】
職員同士の意見対立が発生。カイトに判断を仰ぐも、カイトは目を閉じて動かない。
職員の解釈: 「マスターは**『自分で考えろ』と無言の圧力をかけている!そうだ、『予言の紙吹雪』**に答えがあるはずだ!」
→ 結果: 職員たちは「予言の紙吹雪(燃やし損ねた発注書類)」を参考に議論し、過去の経験と知恵が結びつき、最適な解決策を導き出した。問題解決。
カイトが何もしないことで、これまで彼が**「辞めるために作った」欠陥システムや魔道具が「自律的に連携」し始め、ギルドは「マスター不在でも完璧に回る、究極の自動運営組織」**へと変貌してしまった。
4. 悟りの英雄と、永遠の無為
一か月が経過し、ギルドの運営効率は人類史上最高を記録した。カイトは一歩も動いていない。
エリシアが、光り輝く笑顔でカイトに報告した。
「マスター! あなたが**『何もしない』ことで、私たちは究極の悟りを得ました! これこそ、『無為自然の理』! あなたは『動かぬことで世界を動かす』、真の哲人ギルドマスター**です!」
バルドも感極まりながら、カイトの前に膝をついた。
「我々は、マスターの**『静寂の指導』に従い続けます! マスターの『何もしない』という行為は、『常に最適解を指し示す羅針盤』**なのです!」
カイトは、完全に抜け殻になっていた。彼は、**「辞めたい」という強い動機で行動を停止した結果、「この世で最も動く必要のない、絶対的な英雄」**になってしまったのだ。
「ああ……もう……何も……できない……」
カイトは、もはや辞めることすら諦め、ただ静かに豪華な椅子に身を沈めた。
「ご覧なさい!マスターは、『無の境地』に到達した! これこそ、ギルドの永遠の平和を約束する姿だ!」
こうして、カイトの**「辞めたい」という願いは、「動かぬことでギルドを永遠に守る」という永遠の責任**へと昇華され、彼の自暴自棄の異世界生活は、**究極の平穏(辞められないという名の地獄)**の中で、永遠に続くのだった。