ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。


※Library of ruinaの著しいネタバレを含みます。ご注意ください。







Ep.9 思いを吐露く

 

 

 

極光が、僕の視界を貫いてくる。

ゆっくりと何かに目が眩んでいる事を頭が認識して、僕は朧気ながらも意識を覚ます。

視界がぼやけていて、メガネを外されていることを理解した。周囲に手をやると、柔らかい感触がした。

……何かは深く調べるのはやめるとして、僕はすぐに自分のメガネが『気配感知』でそこにあるのを理解した。

メガネを手に取り、僕は体を起こして視界を取り戻した。

 

 

そこは、吹き抜けたテラスの様な場所だった。

爽やかな風が天幕と僕の髪を揺らしながら吹いていく。

周りには太い柱が立てられていて、ヒュドラがいたあの場所を思い出させる。

そんな場所に、大きなベットが一つ置いてあった。そこの上に僕とハジメ君とユエさんが……うん?なんでユエさんも寝てるんだ?

という事は、今のもしかして……いや、隣にはハジメ君がいるし…………

これ以上の模索はやめて、僕は一足先に外に出た。その後「起きろぉぉぉぉぉ寝坊助ぇええええええ!!!!」と叫ぶとハジメ君が何とか起きたような表情が見えたので、問題ない。

 

 

閑話休題。

 

 

「ユエから聞いたよ。ここは反逆者の住処なんだって」

「やっぱりか……」

「一人で調べてみたけど、開かない部屋もあった……」

「そっか、ありがとうユエ」

「助かるよ」

「ん……」

 

 

ハジメ君がユエさんの頭を撫でている姿は微笑ましいものだったが、一旦僕は別の事を確認する。二人は改めて部屋を見て回るそうだ。

何故ユエさんがここの場所を知っているのかと言われたら、彼女は僕が倒れ、更にその後ハジメ君も倒れてしまったのでこのオスカーの根城でベットにぶち込んでくれたそうだ。特にハジメ君は献身的に見てくれたとか……羨ましい限りであると言っておこう。

僕は僕として見るものがある。それは、『昨日の約束』ことプルートに契約書によって力をもらった時に頭の中に流れ込んできた記憶。

何よりも、オルクス大迷宮にいる『オスカー』……楔事務所のあの人ではなく、この世界のオスカーさんという人が不在の時に、この住処に魔法陣を作っていたそうだ。

そこに隠しておいたものがある、そう言い残された。

僕はそれを確認する為に、ハジメ君とは別行動というよりこの階を調べる為に周囲を手探りに伝っていく。

すると、何処か魔力に違和感がある場所を見つけてゆっくりとその場所に向かい、最終的には壁にぶつかる。その壁に手を当てながら、ゆっくりと僕の魔力を流すと……まるで現実のように巧妙に隠された扉が出てきた。

僕はそれを開いて、中に入っていく。

そこには一つの服を着た骸が置いてあった。

しかし、その服は見た事があった。プルートが着ていたヌオーヴォ生地だった。

 

 

「これがどうしてここに……」

 

 

そう、ヌオーヴォ生地に触れる。

そんな時に骸が、まるで命を貰ったかのように動いた。

 

 

「!」

 

『―――同士よ、もしくは私を打ち倒した者に残す。

これは私の分身体だ。この世界に残留できるように創り上げたが、私にとっては世界ほどに大きな魔法陣と様々な力と契約して創り上げた特別なものだ。

しかし、私が死んだ場合はこの骸は私ではない魂を取り込む仕様になっている。

その魂は、特別なものだ。無から創り上げる事が出来る。

しかしその魂はきっと世界から忌み嫌われるだろう。

悪魔の魂を創り上げるのは、相当な高難易度の魔法だ。私も成功したことがない。

しかし、もしも私を打ち倒した君か同士なら作れる事を期待している。

私は、薄々勘づいていたのだ。あのお方が我々の約束を叶えるはずがないという事を。

その為に、私か団員に何かあれば……私はアルガリア様にきっと手を切られてしまう。

それは、怖いのだ……アルガリア様を裏切った私が、こんな事を言える筋合いはないのかもしれないが……

全てを失い、不条理に晒された私に光をくれたのはあのお方とアルガリア様だけだった……今は、アルガリア様の事をなんとか思い出しながら理性を保っている。

どうか、君達に幸あらん事を祈っている。

我々はとうに狂ってしまった。いや、元より狂っていたのかもしれない。

しかしそれも全て、我々の抱える思いや過去に立ち向かえなかったが故の、狂いだ。

あれは間違いだった、と言い訳はしない。

だが、その様な事があったと認めて欲しい……赦されない事は分かってはいるが。

そして、もしも―――フィリップという人物を見かけたら、伝えておくように。

『君の席は何者かが埋めた、そいつは君に恨みを抱いている。どうか気を付けてくれ』と。

私は、このまま悪魔に墜ちるとしよう……次に戻ってこれるのはいつか分からないからな。

だから、この悪魔を―――私の力の継承者を、よろしく頼む 』

 

 

そう言って、骸は動かなくなる。メッセージ機能が無くなったというか。

この骸をどうすればいいんだろうと頭を悩ませるが、これは僕の所の話だ。ハジメ君を巻き込む訳にはいかないと感じ―――プルートの意志を尊重することにした。

プルートは私の力の継承者と言っていた。つまり、プルートの契約の力や魔法はこれに引き継がれる。

プルートは相当に幼稚な契約をしてくる人で、契約書に本当に小さく重要な事が書かれてたりする。そんな酷い契約をする人だった。

ならば、その罪を繰り返さぬ様にどうすれば良いか?

そう、作り替える。もっと良い人に。

プルートさんの紳士的な性格はそのまま引き継ぎ、契約者として私情を持ち込まない様な人。

契約の執行から処理までを完璧にこなし、その契約の執行が妨害されようものなら手荒な手段になっても必ず遂行されるように相手を締める。

確か、協会で言う『ウーフィ協会』を彷彿とさせながら魔力を流していく。魂なんて作れるのだろうか?と思うが。

しかし、魂を作るというよりかはその魂の在り方を作るような感覚だった。魂と魂の型は揃ってるけど、どんな色でどんな自我を持つのか。

性別は……どうしようか、別に何も気にする事はないが男だと本当にプルートさんを彷彿とさせて仕方ないかもしれないので、女性にさせることに決めた。

そうして、ゆっくりと決めていく。遅くとも自分の魔力と自分の判断が赴くままに創り出す。

そうして完成したのは、髑髏の仮面を被った悪魔の女性だった。

悪魔の尾を生やし、ヌオーヴォ生地の服からはある程度女性と判別出来るように作り込まれた女性の肉体がよく分かる。

……決して、意図があってそうした訳ではない事を弁明しておこう。胸が大きい人が好きという訳じゃない、決して。

そして、髪は灰色になった。

それと……プルートさんから預かったモノクルを付け加えて、彼女は完成した。

僕は彼女を、ファタールと呼ぶことに決めた。

あまり名前として付けるのは酷いかもしれないが、これくらい強烈な名前なら多分変に近付く人もいないはずだ。

 

 

「起きて、ファタール」

「…………はい、起きました」スッ

 

 

さして、ファタールはゆっくりと目を覚まして立ち上がる。こらそこ、仮面で目が開いてるなんて分からないなんて言わない。

しかし一番安堵したのは、大体思い浮かべた通りの女性が出来上がった。

灰被りの長い髪は三つ編みに結ばれ、華奢な肉体とヌオーヴォ生地がサイズを合わせてくれたお陰で、女性らしさがよく分かるようになっていた。

モノクルから見つめられる瞳は、感情こそ多く篭っていない。しかし……そこには遠くを見透かすような強い視線がある。

契約に随所し、契約執行の為に例え自分の手を血に染めようとも。

約束は、必ず守る。そして騙すことも欺くこともない。

約束とは人と人を繋げ、束ねるものであると。

そしてそれに経済的関係的な物を含める契約は、人生の長い依頼のようなもの。

それを執行する為の、由緒正しき魔法と共に。

魔法使い/契約者を天職に持つ2代目のプルート……『ファタール』がこの世に生まれた。

 

 

「君はプルートという契約者と魔法使いの後を引き継いだ、二代目だ。

契約については理解しているね?」

「全ては、人の幸福と安寧の為に……」

「そう。契約は人を陥れ、騙すものじゃない。幸せと安心を齎す約束だ。

それを横入りし、一方的な契約を押し付ける者に慈悲はない。

プルートの過ちと罪を繰り返さぬ為に、ファタールが初代の様にならない事を祈ってる」

「仰せのままに」

 

 

一礼と共に、僕の後ろに引っ付くように回るファタールを見て少しため息をつく。

最終的には……ハジメ君に押し付ける形にはなるけど。

彼女はきっといい契約者になれる。その力と魔法を人の為世の為に使ってくれると信じて僕は部屋から出た。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

元の部屋に戻り、ハジメ君達が上がった階段に登り一つの部屋を見つけて入ると彼らを発見することが出来た。

そこには、同じく骸が居座っていた。しかしヌオーヴォ生地を付けている訳ではなく、ローブを付けていた。

 

 

 

「ハジメ君」

「うわっ!?な、なんだアキラ君……と、後ろの人誰!?」

「申し遅れました。プルート様に継いで、契約者として魔法使いの二代目となります、ファタールです。以後……お見知り置きを」

「は、はぁ……よろしくねファタールさん」

「是非に」

 

 

多くを語らない、淡々とした会話にやっぱり作り方間違えたかな……と思いつつも目の前の状況をハジメ君に話してもらうことにした。

 

 

「実は、この人が反逆者っていう神に反逆した者……らしいんだけど。実はこれは勝手にエヒトって神が付けただけで、本当はエヒトの神の力に抗う者だったんだ。

エヒトはまるで、ゲームみたいにこの世界の人達を遊びの様に駒にして戦争を起こしていたんだ。

だから、神のそんな思惑を許さない人達が結成したのが〝解放者〟……今の〝反逆者〟だよ」

「つまり、彼らは反逆者であっても反逆者ではないと」

「うん。反逆者って呼ばれるようになったのは、エヒトが人々を巧みに操って……解放者達を反逆者に仕立てあげた。

そして、守るべき人々が敵になった解放者達は数を減らしていって、目的が達成できないと悟った時にこの迷宮……七大迷宮を創り上げたんだ。

いつか必ず、この神の戯れの遊戯の戦争を終わらせる為に」

 

 

その話を聞いて、遂にエヒトが何をしようとしていたのかを知る。

プルートやオズワルド、他の人達はきっと思うがままに操られている。そして……

 

 

「それに、反逆者を反逆者に仕立てあげたのは……人々だけじゃない。その人々を代表するかの様に国中に動いていた人達がいる。それが……『残響楽団』」

「……!」

「神の為に救いの序章を奏でる者達、って名乗ってたみたいでさ、解放者を追い込んでたみたい……そういえば、さっき聞こえてきたプルートも、確か『残響楽団』の人の名前にあった気がする」

「…………」

 

 

遂に、説明しなければならないタイミングが来てしまった。

 

 

「ハジメ君」

「うん?」

「君に、説明しなければならない事が出来てしまった。僕の……

本当の正体について」

 

 

そう言って、僕は覚悟を決めた瞳でハジメ君を見つめ言い放った。

 

 

「僕は、元残響楽団の一人。

 

 

『泣く子』のフィリップだ」

 

 

その一言と共に、ハジメ君の表情が変わる。

きっと彼は失望しただろう。表情は、顔を俯かせてしまったせいで分からない。

 

 

「相馬アキラは、あくまでも地球の時の名前だ。

僕はトータスでも地球でもない、別の世界からやって来たんだ。

それは―――都市。この世界とは似ても似つかわしくない世界で生まれた、『フィクサー』という仕事をやってただけの人だよ」

「都市……」

「僕はそこで、『夜明事務所』という事務所に所属していたんだ。あまり目立たなかったけど、それでも頑張って仕事をしていた。二人の恩師……サルヴァドールさんとユナさんという偉大な先輩二人に教えられながら。

そんな時に、僕達にツヴァイ協会から依頼が届いたんだ。

それは―――『図書館』という場所の調査。

そこでツヴァイ協会のメンバーが失踪したから、元ツヴァイ協会所属のサルヴァドールさんに依頼が舞い込んだんだ。

そして僕達は、図書館に向かった……そこで。

僕は二人を失った」

 

 

そう、あの日あの時。僕は二人の言いつけを守って逃げた。

 

 

「二人はこの図書館が定められてる危険度を超えていると感じて、兄弟事務所の楔事務所に応援を呼ぶ様に言って僕を逃がしてくれた。

そして、逃げる事が出来た。すぐに楔事務所に応援を呼んで……二人を救う為に、足を引っ張らない事を決めて一緒に図書館に攻め込んだ。

それで、僕は楔事務所の三人を失った」

 

 

次々と倒れていく仲間を、僕は見ることしか出来ずに逃げ出した。

 

 

「僕はまた逃げた。今度は別と人に助けを呼ぶ為に、必死で逃げた。

そして……気付いた。結局僕は『何とかなるはず』『時期が熟してない』『今じゃ勝てない』と言い訳を繰り返して……多くの人を犠牲にしてきたことを。

僕は自分で立ち向かうつもりか、他人を犠牲にして生き残ってしまうような人間だった。

どうしてこんなことになったなんて分かりきっていた。

僕が弱いからだ。

才能がなくて、何処まで努力しても実らない。

僕は僕自身の利己的な自分勝手に多くの人と恩師を失った。

そして僕は……一度覚悟を決めて立ち上がった。

あの翼を広げて」

 

 

一度は、エゴを使って立ち向かった。

しかしそれでも勝てなくて、僕は楔事務所の人から受けとってきた転送装置で飛ばされた。

 

 

「けど、勝てなかった。そんな時に転送装置で―――楔事務所が追いかけていた『ねじれ』という存在、8時のサーカスの拠点に飛んだんだ。

そこで出会ったのが、『残響楽団』の一人。オズワルドだった」

「残響楽団……!」

「僕は、オズワルドに対して剣を向けた。

また逃げてしまった自分に対しての怒りを、ヘラヘラと笑うオズワルドにぶつけるつもりだった。

けど、オズワルドは軽快に笑って僕に……サルヴァドールさんとユナさんの幻覚を見せてきた。

二人が言わないような言葉に、僕は耳を塞いだ。

僕が身の丈に合わないような人間であることも、一人で逃げ出した事も。

全てを見透かしたように伝えてくる二人の言葉に耐えられなかった……そこから、僕は『ねじれ』になった。

自分が覚悟を決めても、失ってしまい手からこぼすのであれば……もう何もしなくていいと。

目を閉じて、耳を塞いで口を縫った。

もう何も聞きたくも、見たくも、喋りたくなかったから。

そうして僕は『泣く子』になって、人々を虐殺した。

ただ怒りと悲しみの為に、多くの人を殺して……図書館に向かった。

結局、何処まで成長しても僕は負けた。死んだ……

そして、地球という場所で生まれ変わった」

 

 

ハジメ君の瞳が見開くように開いた。

 

 

「そこから、僕は君に出会った。

過去に多くの人を犠牲にして、殺してしまった僕が人と関わっていい筈がないと思った」

「ま、待って!……アキラ君と僕って、多分初対面だと思うんだけど」

「君の記憶からすればそうだろう、だけど僕は君を一方的に知っている。

君がかつて、不良の服を誤って汚してしまった子連れのおばあさんから怒号を上げながら金を毟り取ろうとしている不良に立ち向かった時の姿を見ていたんだ」

「え……」

 

 

あの時、僕はコンビニの中にいた。

子連れのおばあさんにお金をせびる彼らを見ていた。恐らく、子供が持っていたお菓子か何かで服を汚されたのだろう、ズボンに謎の汚れがついていた。

僕が関わっても、ろくな事が起きない。酷い形になったら警察を呼ぼうとコンビニの中から光景を見つめていた。

そんな時に、ハジメ君が飛び出してきた。

僕から見れば、何一つ関係ない人が急に不良に対して頭を地面に擦り付けてる……いわば土下座だった。

それを、ただの他人が為にしている君の姿を見て僕は咄嗟に警察を呼ぼうとしたけど……君に物怖じした不良は、それ以上何も要求せずに帰っていった。

僕は、本当に多分どうかしていたんだと思う。

その時、持っていた鞄や荷物をその場に置いて駆け出した。

そして足速に去っていくハジメ君を、追いかけようとした。

しかし僕はその時ろくに鍛えてもいなくて、結局追い付けることは出来なかったけど……

あの時の姿を見て、何かを思い出した気がしたんだ。

僕が心の底に燻っていた何かを、燃やすように。

 

 

「僕は、君に動かされたんだ。

無謀にも、相手に立ち向かうその勇気と……

無関係だからを貫かない君の姿に。

それはいつかに凍っていた僕自身の感情が、君のお陰で溶かされた気がしたんだ。

人と関わるのをやめていた僕に……君は改めて気付かせてくれた。

例え相手がどう思っていても、動かなければ何も変わらない事に。

僕はずっと、誰かから罰されるのを待っていたんだ。

結局、その罰を受けるために覚えてきた数々を使うことは無かったけど……

君を見た時に、僕は改めて自分の本当のやる事に気付いた。

僕が動かなければ、それは僕が犯した罪の贖罪にすらならない。

僕はただ処刑台に運ばれるのを待っていた囚人だった、あの時までは。

だけど、君の姿を見て……本気で贖罪の為に自分の全てを使い潰して罪を償う事を決めたんだ。

そしていつしかの君を憧れながら、僕は必死に努力を続けた。

どんな人にも優しくした、困っている人に何も求めずに手を差し伸べた。

そうして、そんな内に君が通う中学校を見つけて……君が僕達の通う高校に向かう事を知った時に。

僕は君に気付かせてくれた恩を返す為に、君をずっと助ける事を目的にしていた。

もしあの時君が動かなかったら、僕は淡々と警察を呼んで警察官に任せて……酷いことになっても眺めているだけだったかもしれない。

もしそんな事があれば、きっと僕はあのまま何も燻ぶらないまま自分の罪に対して裁かれるのを待ち続けて生きていた」

 

 

そして、君の行動全てが僕を灼く様に溢れ出した。

 

 

「僕が変われたのは、僕が立ち上がろうと動けたのは君のお陰なんだ。

例え君がそれを認めなくても、僕が勝手に改心して変われたと思ってくれていい。

そんな僕は、君を助け続けたい。

君はきっと多くの人を助けていく。これからもこの先も、君はその自分が努力して得た力で人を助け続ける。

そんな君を、殺されてはならない。

僕も人を助ける最中、君を見殺しにしたくない。

恩を返せなくなるような……あの悲劇を繰り返したくない。

だから、君を助け続けた」

「アキラ……君」

「烏滸がましいのは分かってる。それでも―――君を見て変われたことは事実なんだ。

だから僕は、君に怒号を放たれ殴られるのも構わない。

それくらい僕の罪は重い。赦されないとも思ってる。

だから僕は―――世界に贖罪しながら、君を助け続ける。

この先どんな苦難が待っていたとしても」

 

 

そうして、僕の話は終わった。

ファタールは何も言わずに僕の後ろに立っていた。きっと幻滅しているだろう、内心は。

 

 

「これが、僕の全てだ。

ただ……この世界で残響楽団として暴れたことはないと思う。記憶が無いし……忘れていたとしても、プルートが勧誘してきた意味が分からないし……彼は『僕の席は別の者に埋められている』って言っていたから。

……この後の僕の処遇は、好きに決めてくれていい」

 

 

そう言い残し、僕はナハトとディアモンドを置こうとした。

しかし……

 

 

 

「アキラ君」

 

 

 

本気で怒りの表情を見せる、ハジメ君の顔を見て僕は素直に腕を止める。

そうして、彼は僕に近付いて―――頬に痛い一撃を貰った。

殴られた。体がぐらついたが、すぐに足を止めて踏ん張った。

 

 

 

「なんで、なんでそんな事を言うんだ!

君が僕を助けてくれたのが例え善意や贖罪の為だとしても!

君が君自身の意志を犠牲にしていい理由にはならないよ!」ガッ

「うっ……!」

 

 

ハジメ君に胸倉を掴まれながら、彼に手酷い言葉をもらう。

 

 

「何も知らない親御さんが君の話を聞いて、しかもそれで君が死んだと聞いたらきっとずっと悲しむ!

だって、君はこの世界で何も悪い事をしていないのに……知らない罪をずっと一心に背負って自分の人生を壊してるんだ!

子供の人生の幸せを祈ってる二人からしたら、君のやっている事は裏切りだ!そんなのあんまりだよ!」

「け、ど……僕は罪を!」

「それなら!君が前世の罪を引っ張ってくるのなら、僕だって前世の罪を持ってくるよ!君が償うというのなら、僕だって自分の前世の罪を背負ってやる!」

「それは、君に関係ないだろ! 」

「それなら、フィリップじゃないアキラ君にも君の罪は関係ないだろ!」

 

 

「っ……!」

 

 

核心を突かれるように放たれた言葉に、何も言えなくなった。

 

 

「アキラ君の人生はアキラ君の物だ、今の君は相馬アキラなんだ!

フィリップでも、泣く子でも残響楽団の一員でもない!

君は相馬アキラだ!それなら、君の人生は罪を償う為の人生じゃない!」

「………………」

「だから……そんな酷いこと、言わないでよ……!

君だって自由に生きたいって思ってる!もっと色んな人と関わりたいし、自分も幸せになりたいし、好きになりたい人だっているさ!

それなのに君は、自分の思いを全部殺して、償いの為に生きていくって、言うのか!」ドゴォッ!

 

 

「がぁっ!」

 

 

尻餅をついて、吹き飛んだ。頬にズキズキと痛みが走る。

そして、ついに僕の怒りの線が切れる。

 

 

 

「僕だって!」ドゴォッ!

 

「うぐっ!?」

 

「生きたいさ、幸せになりたい!僕が幸せになれないのは過去の罪を償えてないからだ、償いさえ出来ずに死んだから!

けど!僕だって、幸せが欲しい!普通の人間としての……人生が欲しい!」

 

「それならっ……!それなら、今度は!

多くの人を救うしかない!」バキィッ!

 

「うごっ!?」

 

「今度こそその罪を繰り返さない為に、君が世界を救うんだ!

エヒトから!残響楽団から!世界の敵から!

世界を救わないといけないんだ!

君の時の様な悲劇をっ、産まない為にもっ!」バキィッ!

 

 

「がっ―――」

 

 

連続で顔を殴られ、遂に僕は大の字になって倒れた。

 

 

「はぁっ、はぁ……」

 

 

ハジメ君の頬には、涙が流れていた。

 

 

 

「……君の、言う通りだ」

 

 

認めるよ。そうだ、世界を救えばあんな悲劇は起きないし……起こさせる事なんてない。

 

 

「だけど……僕が、世界を救っていいのか…………?」

 

 

多くの人を殺し血に汚れた手で、世界の人々を助けても……いいのか……?

 

 

「僕が世界を救ったとして、本当にその世界は救われてる……本当にそうなのか……?」

 

 

「そんな事、どうだっていいだろ。

君は、君が思った様に世界を助けて救えばいいんだ。

間違ってたら僕がぶん殴る」

 

 

そう言われて、頬が赤い僕達は……

 

 

「…………くっ、はは」

「……な、何笑ってるんだ!」

「い、いや、今のアキラ君凄くなんか、顔が」

「殴ったのは君じゃないか!」

 

 

遂に笑ってしまった。笑い時でもないのに、お互い笑ってしまった。

なんで笑いが込み上げてきたのなんて分からない。頭がいかれてると言われてもその通りだとしか。

しかし何故だか、今は笑いたくなったんだ。

 

 

「あははははっ!!!」

「わ、笑うなって!」

 

 

けど、きっと思ったんだ。

僕達はただお互いの事を何も知らなかった。知らなかったから、ただの仲間だとしか思わなかった。

しかし僕達は戦いがなければただのクラスメイト。何も知らなかった……お互いに踏み込むことなんてなかったから。

 

 

「ハジメ君……」

 

 

僕から、話を切り出す。すごく頬が痛くて変な声しか出ない。

けど、こんな僕が幸せになってもいいのなら。

 

 

「僕と、友達になってくれないか……」

 

 

そう言って手を差し伸べる。

友達なんていなかった。作ろうとさえも思わなかった。僕は僕の罪の為に人間関係も作らず、ただ贖罪を待つただの人だった。

そんな僕を変えてくれた、君なら……

僕が間違っていれば死ぬ気で殴ってくれる君なら……

 

 

「断ると思う?」

 

 

そう言って、僕の手を取って抱き締めてくれた。

僕は初めてその時に全てが吹っ切れた様に……男泣きした。

まるで今までの罪の苦しみが零れ出すように、僕はハジメ君の肩を借りてわんわん泣いた。

みっともない、一人の子供が泣いている。

まるで泣く子のように。

しかし、今はもう違う。

泣いても慰めてくれるような、手を差し伸べてあやしてくれる人がいたんだ。

子供は泣いて、ひたすら泣いて……そしてきっと泣き止んだ後にまた立ち上がる。

僕のように。

そうして、僕は絶対に置いてけぼりにされているユエさんとファタールを置いて死ぬ程泣いてしまった……ハジメ君という友を傍らに。

 

 

 

全ての罪を流し落とすように、その日を泣く事で終わらせてしまった。

 

 

 

 




・ファタール

 本作メイン……ヒロイン?
奈落の底で用意された推定プルートの分身体。
魂を創る特別な『魔法』でゼロから魂を作り上げられた人工の存在とも言える。
非常に寡黙かつ、マスター(アキラ)が喋る様に促すまで特に動くこともない。
契約に関しての能力の使い手であり、そして『魔法』と呼ばれるトータスの魔法とは全く異質な特別な力を扱う。
多分デレる。

クーデレ……?+紳士+悪魔。

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ファタール ???歳 女 レベル:1

天職:契約者・魔法使い/『昨日の約束』   

筋力:600

体力:450

耐性:580

敏捷:220

魔力:580

魔耐:600

技能:契約[+宣誓][+剥奪][+違反]・『魔法』[+看破][+反射][+幻影][+剥奪][+転移]・骨格操作[+骨操作]・魔力吸収・鑑定・言語理解

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フィリップ君のヒロイン、誰にするか?

  • 八重樫雫
  • 園部優花
  • その他原作組女子
  • 都市の女性組
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