ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。



第2章 草叢の高虎編
Ep.11 大地を踏み締めて


 

 

純白を、洞窟内が照らし出す。

そこに二人の男と二人の女が現れた。

一人は、『オルクス大迷宮』に落とされた錬成師を天職とするこの世界最強の存在一人目、南雲ハジメ。

またの名を僕をボコボコに殴った友人。

そしてもう一人は、『オルクス大迷宮』で僕をボコボコに殴る事になった友人を助けた、相馬アキラことフィリップ。つまり僕だ。

女性陣一人目は『オルクス大迷宮』五十層で閉じ込められていた吸血鬼のお姫様、そしてハジメ君曰く『エロ吸血鬼』……ユエさん。

二人目は、僕が創り出した悪魔。そして『昨日の約束』の後継者となる髑髏の仮面とモノクルを付けた灰色の三つ編みの女性ファタール。

そんな四人組が、『オルクス大迷宮』を乗り越え魔法陣で転送された場所は……また洞窟だった。

 

 

「なんでやねん」

「ん……道を隠すなら洞窟の中」

「ああ、更なるブラフって事だね」

「そういう事」

 

 

ユエさんの説明に僕が分かりやすく説明し、ハジメ君が納得したところでさらに移動する。ところで、ずっと思っていたことがある。それはこの地上に出る前からずっと、ずっと考えてたし悩んでいた事なんだけど……

 

 

「ファタールもお喋りしてみるといいよ」

「……そういう訳には」

 

 

ファタールは申し訳なさそうに、それだけ残して僕の後ろに付いてくる。

昨日の約束―――プルートが残した置き土産によって完成したファタールは、その名前には似つかわしくない程存在感が薄い。しかし、実際に視認してみるとインパクトがとても大きいのに。

しかし実際、僕より身長は高い。大体170cm。

僕が確か166.25だったので約4センチも差がある。

たかが4センチと思うがこれが結構大きく違う。

まぁ分かる人にしか分からないと思うけど……

後はまぁ、別にこんな感じにさせる訳ではなかったがスーツ越しでも分かるくらいには胸が大きい。女性らしさを強調するには、少々悩んだ。ヒップのサイズを大きくするとヌオーヴォ生地が緩くなって服が落ちてしまうかもしれなくて、ヌオーヴォ生地の服はできるだけ破損させたくないのもあり……

腰らへんを細くすると少し心配になるので、最終的に胸を大きくする事で手を打つことが出来たのだがそれがハジメ君が僕が巨乳好きだと勝手に勘違いされることになった。

結構悔しいし、それはオルクス大迷宮でオスカーの隠れ家にいた頃の話であるからこそこの後『スティグマ』をぶち抜かれる事にもなるので雪辱を感じている。

ハジメ君はおの一番に修復してあげるね、と言ってくれたが本当は「その責任は取るから!何だって言ってよ!」と言ってきた時にユエさんの眼光が僕を貫いてきて凄く大変だった。

責任を取る、何でも言って……ハジメ君はおそらく天然だけど女性としてはこの発言、あんまり軽はずみに言って欲しくないんだろうなぁと思った。

 

そうして僕達が前進していくと、他の通路が見えてきてハジメ君が先導して先へ進んでいく。

すると光が、先に見えた。

ハジメ君がその光を追い求めるように駆け出すと、ユエさんも同じように駆け出すので僕も駆け出した。

そして見えた光景は―――

 

 

 

大きな傷痕の様な、峡谷。

ここはプルートが言っていた『ライセン大迷宮』の近く、恐らくだが『ライセン大峡谷』だった。

しかもその峡谷の谷底、頭上から太陽の光が燦々と降り注いで風が土の匂いを運んでくるほど。

しかし、僕達は改めて……オルクス大迷宮からこの地上へと舞い戻ってきたことに改めてお互いに顔を見い合わせた。

そしてハジメ君はユエ君と地上に出れた事を喜び、つい僕も一緒になってファタールに喜びを分かち合った。

 

 

「やった、やったよ皆!ファタールも喜んで!」

「いえ、そういう訳には―――」

「気にしない!」ガッ

「え」

 

 

そうして暫く喜び抱きしめ合った後に、周りを見渡してやっぱり静かなのを思い出し、気分が落ち着いた。

そして今、

 

 

「……あ、えー……んん、いやなんか、申し訳ないです」

「いえ……問題はありません」

 

 

すっ、とスーツを直していくファタールさんとちょっと小っ恥ずかしくなってメガネを直した僕をハジメ君とユエさんはニヤニヤした顔で見てきた。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ張り倒してやろうかと感じたけど一旦落ち着いて、ハジメ君は目的地である『ミレディ大峡谷』から樹海側の方に向かっていく為に、魔力で動く二輪駆動のバイク『シュタイフ』に乗っていく。

僕に関しては、ファタールさんをおんぶして駆け出す。

僕もバイクを作ろうと思ったが、流石に免許を持ってない自分が運転するのもどうかと思って徒歩にした。

走っている間に何匹か魔物に遭遇し、軽く倒して食べてみたがあんまりだった。

ミレディ大峡谷は大迷宮よりかは敵が強くないみたいだ。いや、僕達がおかしいだけかもしれないけど。

そうして暫く歩いた時に、ハジメ君が走らせていたシュタイフが少し減速した。地面を見てみると、ハジメ君が何か違和感に気が付いたのだろう。

前側に異常があるのか、僕が前を改めて見直すとウサギの耳を揺らしながら謎の双頭ティラノザウルスが追い掛けながらこっちに来ていた。何か言葉を言い放ちながら迫ってきている。

 

 

「ハジメ君、こっちに向かってきてるけど」

「なんだか嫌な予感がするなぁ……」

「ん……仕留める?」

「いや、助けに行くよ。まぁ面倒臭そうならちょっとお断りか、な!」

 

 

そう言い、ハジメ君は黒色のコートを揺らしながら義手をカシャと鳴らしながらホルスターから『ドンナー』と『シュラーク』を抜き上げて2連続の電磁加速された弾丸が加速したまま双頭ティラノザウルスの眉間をぶち抜いた。

そして、息も切れ切れな感じのウサギの耳を生やした少女は……随分と布みたいな服からはち切れそうな乳を揺らしながらハジメ君の方まで走ってきた。

 

 

「みづけだぁ!!やっとみづけましだよぉ〜!!だずげてぐだざ〜い!!」

 

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ハジメ君に助けを乞うようにずざっと地面に「へぶっ!」と言いながら転んだ。

なんだろう、この子。とにかく怪しい雰囲気がぷんぷんしていた。

しかし、一番驚いたのは……双頭ティラノザウルスは、片方の頭を撃ち抜かれているのにも関わらずしぶとく生き残って、こちらに怒りと殺意を向けながら睨み付けてくる事だけど。

 

 

『ゴァァァァァッ!』

 

 

「ひ、ひぃいいいい!だ、だじゅげでぐだしゃい!だべられぢゃいまずぅ〜!!!」ガバッ!

「頭一つ吹き飛ばしても死なないなんてタフだなぁ」

「む、無視ざれだぁ!?そ、そちらの方ぁ!」

「いや、僕じゃなくてハジメ君に助けてもらってください。今手が離せないので」

「ぇえええええええええええええ」

 

 

涙でぐしゃぐしゃだったウサギの耳の女性は、困惑してぽかーんと口を開けながら「お、おかしいなぁ見たもの間違えたかなぁ」と独り言を呟いていた。

やっと見つけた、という発言が引っかかり、仕方なくハジメ君がバイクから降りると同時にため息を付きながらドンナーを構える。

そして、叫び散らかす残りの双頭ティラノザウルスの眉間をまたぶち抜いた。

はぁとため息を付きながらホルスターにしまったドンナーを収めて、改めてバイクに乗る。

 

 

「じゃ、行こっか」

「そうですね」

「ん……行く」

 

「す、凄い……ダイヘドアが一撃で……ってあれ、あの、あのーん?私忘れられてますぅ?あのー!?」

 

 

しかし、ダイヘドアという双頭ティラノザウルスが倒された事に見とれていたのか普通に支度を始める僕達に対して自分が忘れられているかのような扱いを受けてすぐに我を戻したのかずいずいと迫りながらハジメ君に話しかけてる。

 

「えっと、何かな?」

「あ、や、やっと聞いてくれたしたぁ!あの、私の家族を助けてくださいっ!」

「ごめん、それどころじゃなくて」

「えぇ!?こ、こんな美少女のお願い、二度も断りましたね!酷いですよぉ傷付きましたぁ!だから私の家族を助けてください!」

「……ウザウサギ」

 

ユエさんのため息の着きながらの発言に「ひ、ひどいですぅ……でもここで折れたら未来がぁ……」という発言に、流石に耐え切れなくなって僕が質問した。

 

「あの、えっと……一応僕から聞くけどさ。なんで僕達ここに来て助けてくれるって分かってたの?」

「え?」

「やっと見つけたって言ってたから、少し怪しいなぁと思ってて」

「は、話を聞いてくれるんですかぁ!?」

「いやそれはハジメ君によるかな」

「えぇえええええええ」ペターン

 

耳をしなしなと頭に付けながら、ガックリと絶望している(の割には余裕そうに見える)ウサギの耳が生えた女性を見てられなかったのか、ハジメ君が諸々の話を聞くことに。

本当に安心したのか、もうそれは元気を取り戻してハキハキと喋ってくれた。ハジメ君曰く「メンタルが化け物みたい」と言うくらいには。

 

「改めましてっ、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実はっ……!」

 

そうして彼女が語ってくれたのは、ほぼ兎人族の歴史だった。

兎人族は亜人族の一種族であり、その中でも隠密や聴覚能力に優れているののの、他の亜人の中でもフィジカルが低く亜人族の中でも格下と見られている様な存在だった。しかし、それ以外にも見た目がとても優れている為、少し遠くにはあるが帝国から奴隷にされ愛玩用の奴隷として商品にされているそうだ。

そんな中で、ハウリア族に一つの異常な女の子―――言わずとされたシアさんが生まれた。本来では有り得ないはずの青みがかった白色の髪の女の子、更に直接魔力を操れて固有魔法も覚えている。まるで魔物の様な子供が生まれたことにハウリア族は大変混沌を極めたらしい。しかし亜人族の中では仲間の団結力が高いとも言われる兎人族はシアさんを見捨てず、十六年間も愛情を込めて育ててきた。

しかし亜人族の国『フェアベルゲン』では魔物は相当に忌み嫌われており、魔物同然のシアさんの存在がバレれば間違いなくその場で処刑だ。

フェアベルゲンに捕まってたまるか、とハウリア族は北の山脈側に向かい、山の幸や高度が高い事を利用して身を潜ませる画策だったらしいが、それを許さなかったのが帝国の兵士達だった。フェアベルゲンを出る最中、帝国の兵士に見つかったそうだ。

帝国の兵士達に妻や娘が捕まるくらいなら、とハウリア族の男達は次々て抵抗していくが全員尽くが捕まり、最終的には六十人以上いた家族は四十人以下まで減ることになった。

更に、これ以上減らしてなるものかと南側に逃げたが帝国の兵士はしぶとく、ならこの『ミレディ大峡谷』に逃げ込んだ。ここは相当過酷な場所であり、魔力が練りにくい場所である都合上罪人の処刑場として使われているそうだ。そんな場所に逃げ込めば帝国の兵士達も追っては来れないと考えたが……

またまたさらに、帝国の兵士達はしぶとく撤退しなかった。

寧ろハウリア族がミレディ大峡谷の過酷な環境なんかに耐えれるかと一部隊を置いて待ち伏せしているそうだ。

それで、誰かの助けを待っていたのがシアさん……という事になるのだが。

 

 

「ごめん、受けられない」

 

 

ハジメ君は容赦なくぶった切った。

 

 

「え、ちょ、ちょっと待ってください!今の流れ的に『可哀想に、安心してくれ僕が助けるからキリッ』的な感じで、私もコロッといっちゃうところですよ!こんな美少女をここに置いてあっ待ってください逃げないでくださぁい!」ガシッ

 

 

ハジメ君がシュタイフに魔力を流して動こうとするが、シアさんがハジメ君のコートを掴んで離さない。

実際命の問題なのは分かっている、しかし明らかに見えた地雷を踏むような人間ではないのがハジメ君だ。

 

 

「ごめんね、シアさんを助けてあげたいのは山々なんだけど……僕達はやらないといけない事があるんだ。その為に時間は惜しんでられない」

「うっ、そ、それは……で、でも!」

「実際、僕が助けるにしても何処まで?もしかして家族を帝国兵から助けたら、今度は北の山脈まで連れていく……ってなると、僕としてはそんな時間までもが少ないって感じるかな」

「そんな……でも、守ってくれるって視えたのに……」

 

 

そういうシアさんに「見たとは?」と僕が返すと質問を返されるとは思っていなかったのかビックリしてあたふたで説明し始めた。

 

「え、は、はい!その、〝未来視〟といいまして。仮定した未来が見えるんです、もしこれを選択したらこうなって〜この先がこうなるんだ?的な……あと、命の危険とかが迫った時は勝手に見えたり……見えた未来が必ず来るって言う訳ではないんですけど……そ、それでも!私は役に立ちますよ!〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし……それに、私は見たんですよ!少し前に皆さんが私達を助けてくれる未来が!実際、今もこうして会えたのもその未来が見えたからでして……」

 

 

そういう彼女に対して、ハジメ君は少し考えた後にこう返した。

 

 

「それなら、その凄い固有魔法を持ってしてもバレたっていうのはおかしい気がするけど……それを使えばフェアベルゲンの人達にもバレなかったと思うよ」

「それは……未来は、頑張ったら帰ることが出来ます、だからこそ変えることが出来ると頑張っては見たんです……だけど、力のない私では皆を助けれる未来を見れなくて……」

 

 

……シアさんの〝未来視〟とは、おそらく想像を絶する能力なんだと思う。自分の身に何が起こるかを瞬間的に見せられているようなもので、その結果を前にしてシアさんの気持ちはどんな事になっていたのか。

僕は想像がつかない。それにその未来を変えるにしてもとてつもない苦労がある、1秒先の全てまでも見続けないといけない彼女としては相当なストレスだと思う。

それに、その能力が無限に使えればいいと思うが……きっと有限的にしか使えない。

彼女は限られた力の中で、最善の選択をしてきたのだろう。そうしてここにいるのも……きっと。

 

 

「ハジメ……連れていこう」

「ユエ?」

「樹海の案内に、もってこい」

「ハルツィナ樹海をか。確かにそうだね、大迷宮もあるんだし」

 

 

僕達はもちろん、ハルツィナ樹海側を目指している。しかし僕としては本来『ミレディ大迷宮』に行きたい気持ちもある。

ひかしミレディ大峡谷の何処かにあると言われても、今からこの場所を探すのはかなり大変だ。それに地図も持ち合わせていない僕達からすればこの先何処に何の場所と国と街があるのかは把握しておきたかった。

だからまずはハルツィナ樹海側から抜けて、街か何かに当たればラッキーという感じである。

それに、ミレディ大峡谷はさっき言った通り魔法の通りが悪い。僕としてはエゴで補えることは出来る。しかしユエさんはそうもいかない。魔力を極力縛られた場所で魔法を使うのは、何かあったらでは困るのだ。

そうして最終的にはお互いがハルツィナ樹海に向かうことを決めた。

 

 

「そ、それってつまり」

「樹海側に何かあればいいかな、程度の感じだけどね。帝国に行くのはきっと気が引けるし、あっち側の砂漠側に何も備えずに行くのは無理だし。それなら樹海側に行くのが合理的だからね」

「ま、またまたぁ〜もしかして私を助けてくれるって事で来てくれるですよね?ね?」

「……黙れ残念ウザウサギ」

「ひどいですぅ!?」

 

 

ユエさんの罵倒にひぃんと悲しみつつも、結局は連れていくことにしました。ちなみに三ケツという形で、完全に違法運転。

ハジメ君、そんなワルになったんだね……

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

そうして、僕達は遂にミレディ大峡谷の出口付近に到着した。

そして、そこに隠れているというハウリア族達の場所を確認し、『遠見』のスキルでハジメ君と共に確認していると、人影が見えた。

そこには、2体の番?のダイヘドアと呼ばれる双頭ティラノザウルスモドキがハウリア族を追いかけていた。

オレサマオマエマルカジリ、そう言わんばかりで追いかけてくるダイヘドアから逃げ惑う姿をハジメ君は「まぁ引き受けたからにはね……」とドンナーとシュラークを取り出して、見事な銃撃スキルでダイヘドアは頭を散らしながら倒れ込んだ。

 

 

「だ、ダイヘドアが一撃で……!? 」

「な、何が……お、おい!あれは!」

「シア!?シアが帰ってきたぞ!」

 

 

ゾロゾロと駆け出してくるハウリア族に対してハジメ君は最初喜びをしたものの、更に奥からやってくる無精髭の兎人族に一気に喜びを無くしてシアも「父様!」と言いながら三ケツの中でハジメ君の後ろにいるシアさんが凶器(巨乳)をハジメ君の背中に押し付けながらぴょんぴょん飛んでいた。

そして遂に、ユエさんの方が切れてハジメ君の袖を引っ張ると服を掴んだハジメ君が「家族と再会したって言ってたよね、ほら行ってこい!」とシアさんをミサイルの様に投げ飛ばして見事にこっちに来ていたハウリア族の方々にクリティカルヒット。ボウリングのピンみたいにハウリア族が吹っ飛んでいった。

そんな中、僕はやっとハウリア族の長らしき人を見つける事が出来てホッとしていた。

 

「い、いたたぁ……ハジメさん!ひどすぎますよぉ〜!」

「僕の背中で跳ねるから標準ブレかけたんですから文句言わないでください」

「う、うぅ」

「これはどうも、まさかシアを助けてくださる御方がいるとは思いませんでした。私ハウリア族の長、カム・ハウリアと申します。私の娘シアを助けて下さりありがとうございます……」

 

 

と頭を下げてくれるカムさんにハジメ君は「どういたしまして」と返しながら、シアさんからも聞いた諸々の説明を聞くことになった。

 

 

「それで、シアを助けてくださって有難いのですが我々ではどうご恩を返せば…… 」

「それなら、是非ハルツィナ樹海の案内をして欲しい。もちろんその間に僕達があなたの安全は守りますが、ハルツィナ樹海につくまでです。それ以上は安全を保証できません」

「い、いえ!寧ろそれで安全が手に入るのなら、快く引き受けましょう!これ以上、長としても……仲間を失う訳にはいかないのです」

 

そう呟くカムさんの顔は、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべていた。

ハルツィナ樹海の先にあるフェアベルゲンから追われ、更に帝国兵からも狙われる。その中で失った同胞も少なくない……この様な食うか食われるかの世界である事は理解している。

しかしそれで割り切れるかとは言えば別だ。きっと、自分の無力さと逃げることしか出来ない事に僕のように悔しくて仕方ない気持ちが沢山だと思う。

 

 

「あの、すいません」

「あなたは……」

「僕は、アキラと申します。ハジメ君と共に旅をする仲間でして……今回のハルツィナ樹海の探索、もちろんですが逃げられては困ります」

「に、逃げるなんてそんな!」

「しかし途中で約束を放り棄てる可能性は捨てきれませんよね?」

「う……確かに、我々では逃げ出してしまう可能性も少なくありません……どの様にすれば、信頼してもらえるのでしょうか?」

 

 

そう言ったカムさんの発言に、僕はおぶっていたファタールを降ろした。

ここから先はファタールの独断場だ。

 

 

「私、アキラ様の従者のファタールと申します。以後お見知り置きを」

「は、はぁ……よろしくお願いします」

「まずあなた方の安全を保証し、ハルツィナ樹海の案内をするに当たって……約束を放棄する可能性を考慮して、私の力で『契約』をさせていただきます」

「け、契約?」

 

 

はい、と生返事でファタールは虚空から黒色の紙の契約書を取り出す。

 

 

「ここに、あなたの名前を記す欄があります。まずは契約内容をよく読んでください。

契約内容を確認すれば、それに了承した上で契約を執行します」スッ

「なる、ほど……」

 

 

これが「本来」の昨日の約束の契約の使い方だと思う。

カムさんに突き出した契約は三つ。

 

①ハジメ達一同を、ハルツィナ樹海の案内を行う。場所の制限はなく、粗方調べ終われば契約は終了する。

 

②代わりとして、ハルツィナ樹海の探索が終わるまでハウリア族の命の安全を守り、誰一人欠かせる事はないと契約する。

 

③この契約に違反した場合、また契約後に両方の承諾なく契約を破棄した場合『スキル』と『魔力』を剥奪する。悪質な場合は『生命力』の剥奪を行う。

 

 

この三つだ。

厳しいとは思うが、僕達はこれで初めて大きな集団の種族と関わる。亜人の事は詳しく分からないのでこれくらいの厳しさがいいだろう。

 

 

「わ、分かりました!カム・ハウリアはこの契約を認めます!」スッ

「ではこのような契約内容としてこれから行動して参りますので、どうかご遵守なさるように」

「は、はい!」

 

 

そうしてファタールは特に見返す事もなく僕の後ろに回って待機を再開する。

 

 

「ファタール」

「はい」

「満点だった。次からもあんな感じでよろしくね」

「承りました」

 

 

ファタールさんは仮面越しのいい声で返事をしてくれたので、早速僕達はカムさんの先導によって『ミレディ大峡谷』を脱出していく。

大峡谷には出る為の階段があり、人工的にこの階段を作って昇り降りした誰かの痕跡があると伺える。

そして、僕達がこの階段を登り歩き本当の意味で地上に出た先で待っていたのは―――

 

 

 

帝国の兵士達、三十人程が待ち合わせていた姿だった。

 

 

 

 







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フィリップ君のヒロイン、誰にするか?

  • 八重樫雫
  • 園部優花
  • その他原作組女子
  • 都市の女性組
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