ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。





Ep.17 楽しく挑んでみましょ~

 

 

死屍累々。

その言葉が似合う程に、今の光景はとてつもないものとして周囲に広がっていた。

それは決して、ハジメ君や僕が作っている訳ではなく。

かと言ってユエさんやシアさん、ファタールやリチャードさんが作ったものでもなく。

この夜更けの『ライセン大峡谷』の大地に広がる魔物の死体は、どれも切り傷を与えられて殺されたものだった。

こんな芸当が出来るやつは2名ほどライセン大峡谷にいたが、あの男がこんな面白みもない効率的な殺しをするとは思えない。

つまり犯人は……

 

 

「ハジメ達か。待っていたぞ」

 

 

やはり、ギルだった。

ギルの方は、少し前に出来た傷くらいはあるもののあれから鍛錬の強みをしっかりと出していた。

その結果は魔物の死体の数でしっかりと証明されており、ハジメ君もこれに関しては驚いた表情で頭を搔いていた。

 

 

「取り敢えず、無事でよかったよ」

「ああ。アキラも無事に休めたようだな」

「うん。それに、リチャードさんもそれなりにホルアドの街に馴染めてたから安心して」

「おお!そうか、良かった……」

 

 

そう言って、リチャードさんを手招きしながら連れてこさせる。

そして出てきたのは、小っ恥ずかしそうに屈辱的な目線を僕に送ってくるリチャードさんだった。

しかし服は、まさかの現代風。どうしてこんな服があるのだろうと思っていたが、あるのならもうそういうものだと割り切った。

それに、ファタールも新しい服を身に付けていてとても可愛かったし……何着ても似合う人ってあんな感じなんだなぁと思った。

そんな中、ギルはリチャードさんの姿をまじまじと見ながら、ははっと軽く笑いながらこう言った。

 

 

「よく似合ってるじゃないか。ここから、人間の事を知っていけるといいな」

「っ……簡単に割り切れる訳ないだろ!」

「そうだな。割り切れない、だが何時かは考えねばならない。

そして……お前がこれからどういう風に生きていくのか。

この迷宮を乗り越えねば分からぬというものだぞ」

「え……」

 

 

そう言って、ギルは振り返って指で場所の方向を示す。

方向の先には、壁面側が凹んでおり先には少し光が見える。

ギルと共に、そちらの方まで歩くと……壁を直接削って作った見事な装飾の看板が建てられていた。それに反して―――

 

 

〝―――おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク迷宮へ♪〟

 

 

女の子らしい口調の、寧ろなんだかムカッ腹が立つタイプのセリフは斜線で消されていて、その代わりに……

 

 

〝あんらまぁ!おめでとうございますお客様ぁ〜!こちらライセン大迷宮改め、8時のサーカスの会場でございます!そして私、オーナーのオズワルドと申します!ここでは皆さんが笑顔になれるすんばらしいアトラクションをめいいっぱいご用意しております、是非ご堪能なさいませぇ〜!〟

 

 

代わりに、死ぬ程騒がしい文字とやかましさを兼ね備えた赤い文字が浮かび上がった。

この書き方、そして自身の所属する……いや設立した団体を声高らかに伝えてくるこの狂ったやり口。

〝解放者〟に向けた迷宮というものを一切合切無視した、空気も読まないような男。

 

 

「オズワルド……!」

「やはり、この男だったか。イタズラかと思ったが、アキラが言うのなら間違いないのだろう」

「ええ、8時のサーカス……間違いなくこいつです」

 

 

そう言いながら、看板を見つめる。特に何か仕掛けがある訳ではない。まるでおちょくる様に用意されたものをハジメ君とユエ、シアさんも見つめる。

 

 

「趣味悪い……」

「これが、虎人族の皆さんを……」

「ここはアキラ君を先頭に行こう。一番それがいいと思―――」

 

 

「待て!」

 

 

しかし、ハジメ君の意見を遮ったのはリチャードさんだった。

ワナワナと震えながら、彼女は零すように拳を握り締めながら言葉を吐き出した。

 

 

「私が、私が倒す!お前らは邪魔だ!」バッ!

 

 

そういうリチャードに対して、ギルはため息を付きながら……剣を抜いて突き付けた。

 

 

「な……」

「残念だ。リチャード、お前はそこまで愚かで阿呆だったとはな」

「何が間違っていると言うのですか!私の能力で奴を倒す、それで全て収まるのですよ!」

 

 

「腑抜けた事を抜かすんじゃあないぞッッ!!!」

 

 

「っ……!?」

 

 

怒りを全面的に押し出しながら、ギルはリチャードさんに本意を突き付け始めた。その剣と共に斬りかかると同時に、だ。

最初は仲間割れか?と思ったが……ギルが何も考え無しにそんな事するとは思えず、すぐに見守る事にした。

 

 

「くっ!」ガキィンッ!

「お前は何の為に戦っている?何の為にオズワルドを倒す!言ってみろっ、リチャード!」

「私しか倒せない!私ならば倒せる筈なんだ!」

「阿呆が……戯言を抜かすなっ!」ガァンッ!

「うぐっ!?」

 

 

片手剣でリチャードさんが抜いた直剣を弾きながら、空いた手の拳がリチャードさんの腹にめり込んで迷宮内部に入っていく。

まるで迷宮と共に、自分の無力を思い知れと言わんばかりの形で、進んでいく。

 

 

「リチャード、お前は弱いっ!」ガァンッ!

「うぐっ!?」

「だからこそ、理解しろ。今の実力を―――お前と私で今何処まで離れているか。

そしてこの迷宮を攻略してみせろ…………すまない、騒がせたな」

「いえ、問題ないです」

 

 

ひと騒ぎあったが、ギルは騒がせた礼は出来ないが「出来れば現実を突き付けてやらねばな」と教えてくれる。

彼女の自尊心ととある感情を燻らせたまま戦わせるのは非常に危険と聞いた。

実際僕も危なっかしさを感じているし、まるで昔の自分を見ている気がする。

あんな破滅的に動こうとする所は鏡を見ている気分になる。だからこそ、ギルと僕は彼女を守る為に前衛へ。そしてハジメ君はその強さを後方でしっかり活かすために後衛に配置。

布陣が完成したので、早速大問題だらけの〝ライセン大迷宮〟……元い8時のサーカス会場攻略の為に進んでいった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ライセンの大迷宮は想像以上に厄介な場所である。

 

まず、魔法が上手く使えない。〝ライセン大峡谷〟に来た時魔剣士としてはあまり戦力に期待出来ないのはここが原因だった。魔法特化のユエさんや僕にとってはフルパワーを発揮できない場所になっている。

僕はまだ〝翔明の騎士〟がある為大きな支障はなく、元より接近戦を主にする職業な為迷宮で足を引っ張ることはなかった。

何より、ギルやリチャードさんもそうだがシアさんを含めて亜人組はろくに魔法を使わないのでほぼやってくる敵を殺していく。

やってくる敵は、大体化け物。魔物というよりオズワルドが作り上げた魔物がやってくる。

それも二つの首の槍を持つ一輪車を漕いで強襲してくる猿のピエロやライオンのような見た目をした怪物などが、まるで会場の盛り上げ役として迫ってくる。

そして、これを対応するのは最前線のリチャードさんなのだが……

 

 

「奥山に、紅葉踏み分け……鳴く鹿の!」ザァッ!

 

 

『ギ、ギギギ……』

 

 

決字百首(けつじひゃくしゅ)〝置声〟!」

 

 

リチャードさんは肉体強化によって肥大化する右腕や左腕の虎の鉤爪と、手に持った逆刃持ちの直剣を握って剣技を振るう。

何よりも、僕は理解した。リチャードさんの〝唄詠〟は百人一首から来ている事に。

なんでこの世界にそんなものが伝わってるんだ?とは思ったが、都市に花札があるんだし誰かが広めてもおかしくはないと思った。特に、やりそうな人は残響楽団に見受けられなかったが……

しかし、リチャードさんの実力は相当だった。

唄いながら相手の距離へ肉薄する彼女が繰り出す虎の爪の斬裂は、剣をジャグリングしながら投げてくるピエロ達を容易く引き裂きながら更に奥へ奥へと進んでいく。

一方僕とギルさんも戦闘を駆け出しながら罠の配置などを読み解きながら、ハジメ君と共に回避していく。

何よりこの迷宮、ハジメ君にも相性が悪いと理解した。

纏雷、空力などは魔力を外部に干渉して使用するらしくその影響が魔法以外のスキルにも出ていたのは初めてだった。

 

 

『ググ、ギギギ!』フォンッ!

 

そして曲がり角を曲がると共に、ぬっと顔を出してくる他のピエロの魔物こ奇襲攻撃さえも。

 

「次!難波潟、短かき蘆の、節の間も……!」ダァッ!

 

 

『ギガ、グググ……!?』

 

 

「決字百首、〝難波潟〟!」

 

 

綺麗な左足から円月の軌道を描きながら、後ろに下がりながら刃を蹴り破り、一気に距離を詰めて二本の鉤爪でピエロ達を引き裂いた。

彼女の能力〝唄詠〟の評価を上げておかなくてはならない。

しかしそれでもボロは出る物、ハジメ君も後ろからやってくるピエロの増援などに苦戦はするものの銃撃や〝豪脚〟などで台頭していた。

リチャードさんは前側しか意識していないからか、その皺寄せはゆっくりとこちらに来ていた。

戦闘時は前しか見ずに状況を一方的に考える……これは手記に書いておこう。

 

 

「本当にこの道であってるんですよね!」

「いいから黙って!」

「(全く……)」

 

 

 

 

階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っているこのライセン大迷宮。

一階から伸びる階段が三階の通路に、別の道に行けば唯の壁。かと言って唯の壁だと自己解釈していると隠し扉に続く本来の道に行けず一歩詰まり。

 

 

「三人は大丈夫ですか?」

「まぁ、迷宮だから迷いそうになるのは仕方ないんだけどね」

「……ん、迷ったらハジメが見つけてくれる」

「今惚気けてる場合ですかぁユエさん!?」ドガァンッ!

 

 

ユエさんが戦鎚を振り回してピエロを破壊しながら楽しそうだなぁと思いながら、最前衛の方向に意識を向けた瞬間だった。

 

 

ガコンッと音が響くと共に、前を見るとリチャードさんの足が床のブロックの一つを踏み抜いていた。すぐに警戒態勢を敷いた瞬間、刃が触れて弾くような音を響かせ左右の壁の隙間から振動しつつ高速回転する丸鋸の巨大な刃が飛び出してくる。この刃にパフォーマンスなんてそんなものは存在せず、ただただ殺してやるという意志を感じた。

 

 

 

「回避ぃいいいいい!」

 

 

 

前側のリチャードさんが咄嗟にそう叫び、僕達は後ろに倒れ込みながら凶悪な刃を回避していく。ギルさんも僕も、ファタールも無事で、ハジメ君達も何とか回避完了。

殺意と悪意増し増しの丸鋸の刃が通り過ぎ、何事もなかったように再び壁の中に消えていく。第二陣を警戒していたが〝遠見〟の派生的なやり方でズームした壁を見ても何かが揺れ動く事はなくこの罠はこの起動だけで終わった。

 

 

「リチャードさん、次は気を付けて」

「うるさい!黙って付いてくればいいんですよ!」

「リチャード……お前、仲間に危険を売らせておいてその発言は無いだろう。今ので誰か死ねば迷宮攻略の支障が出る、判断ミスだ」

「っ……」スッ

 

 

それ以上、リチャードさんは何かを言うことはなかった。

ただ悔しそうに歯噛みしながら前に進んでいく。

 

 

リチャードさん完全に不意打ちを喰らったのは、恐らくこう言った事自体初めてなのもあるだろう。ハウリア族は主に隠密や周囲の探知能力が育っていて罠にも気付けたりするとして

リチャードさんは近接攻撃の為の加速や縮地を肉体的に再現する様な形で動くタイプ。リーダーに向いていないのは間違いなく彼女も理解していたはずだ。それなのに、自分が先導して動くと言い彼女はとにかく前に出る。

さっきの刃で死人が出たかもしれないんだぞ、という言葉はまるで『それくらいで死ぬのなら私の仲間にはいらない』と言った形で無視するような結果になってしまった。

実際それを指し示すような沈黙を答えに出したので、ギルはため息を吐きながら前を進むリチャードさんにそれ以上の追求はせず進んでいく。

 

 

「トラップに巻き込んで済まなかった、今度は感知できた瞬間にすぐに知らせるようにする」

「でもまぁ、あれくらいなら問題ないかな。何回も来るってなったら困るけど」

「……ん、私は大丈夫だけど残念ウサギと残念タイガーは大変だと思う」

「酷いですよユエさぁん!」

 

 

シアとユエの喧嘩を横目に、迷宮の周囲に目を配らせながら周りを見渡す。すると光った文字で何やら嫌な予感と共に何か書かれていた。

 

 

 

〝もしかして首から下までバイバイしちゃった?ぷーくすくす、それくらいで体とお別れしてると先へ進めないよおぉ〜?〟

 

〝あれまぁっ!お客様は生き残られましたかぁ!いえ、アトラクションに満足してお帰りになりましたかねぇ〜8時のサーカスの会場ではこの様なスリル満点のギリギリ丸鋸マジックの他にも私改造のライセン大迷宮のトラップをふんだんに再利用した種目がお待ちしておりますっ!〟

 

 

 

「……ひとつ分かったのは、ミレディ・ライセンはオズワルド関係なしに人類の敵って感じがするよね」

「それ言われると……返しづらいなぁ」

「間違っていないのがタチが悪いですぅ……」

 

 

そうして、まずは五層目を抜け出していったのだった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

僕達はトラップを回避しながら、魔物との激戦に明け暮れていく。

何より酷いのは、簡単にぽんぽん出てくるサーカス団員達は皮肉にもこのサーカスを盛り上げる為の役をこなしていた。

ウサミミのシアさんの耳が揺れ動きながら、罠やサーカス団員の位置を把握しても捌ききれない程には。

前から出てこないだけではない。左右からも出てくる。これに関しては別にリチャードさんが悪いと言う訳はないが、その可能性が出てくる程にはサーカス団員の表れ方は様々だった。

 

 

「うぅ、隠密と周囲の探知に自信があるのに……」

「残念ウサギさん、そういうこと言うと、大抵、直後に何か―――」

 

 

その瞬間、ゴウンと音と共に立ち止まったリチャードさんが〝やらかした!〟という表情を浮かばせながらまた罠を踏み抜いた事を教えてくれる。

ほら見た事か!」

 

 

「わ、私のせいじゃないっ!」

「……大馬鹿者が」

 

 

リチャードさんが言い訳するように怒りを剥き出しにしながら、周りにぶつける彼女に対し愚痴を零すように呟いたギルの声は嫌な音と共に、僕達が登っていた筈の階段から段差が消してしまう。傾斜の酷い階段だったのだが、階段は見事に奥に収められ滑り台の様になっていて、最後のゴール地点にはここに勢いよく飛び込んでこいと言わんばかりの棘穴が見える。〝遠見〟で中身は確かめたので、おそらく突き刺されば命はないというものだ。

 

 

「皆様、失礼します。〝骨操作〟」

 

 

段差が引っ込んで転倒しかけた僕達を助けてくれたのは、ファタールだった。体全体から骨を操作して罠という罠を死ぬ程避けながら、僕の手を取ってくれていたので滑り落ちることはなかった。

そして何とか全員がこのトラップを回避できたと思ったのが束の間、更にカチッという音が響く。

顔を青ざめながら、こちらに振り向くリチャード。

ギルはもう何も言わなくなったが、その瞬間全員が奈落に落ちていくあの時のように深淵の闇に落ちようとしていた。

 

 

「うぉぉおおおっ!!!!!」

 

 

落ちる速度は加速していきながら、〝天歩〟で軽く跳躍するが魔力が霧散する。ここでもか、と悪態を付きながらこんなタイミングで切る事になるなんてと思いながら……僕は深呼吸して一気に強い決意を抱く。

 

 

「この試練に、決着を付けてやる……!」

 

 

最近、相当な危険な敵がいない為使わないエゴを発現させると共に蜜蝋の翼を大きく広げ全員を掴む。

とてつもないのは、これを魔力を一切使わずに自由に滑空から飛行までが行える。急激な方向転換も問題なく、ギリギリ発動できるくらいの〝天歩〟を使えば一気に上へ駆け上がれる。

一方ハジメ君の方は、義手が飛ばしたワイヤーフックを迷宮の壁に突き刺して何とか駆け上がっていたのを見たのでファタール、ギルとリチャード……あとシアさんを助けた。

 

 

「ずびばぜん〜!」

「いいですよ。罠踏んだ癖に謝らない奴がいるので」

「……チッ」

「ぐ………」

 

 

そうして何とか、横穴らしき場所にハジメ君と共に移動が完了する。エゴを任意で解除し、少しの疲労が体に迫ってきた。エゴは強制的に解除するのと任意的に解除するのとではかなり差が出てくる。強制的に解除は“心身を守る為のセーフティロック”的な形で、全く疲労は起きない。

しかし任意的な解除は力のオンオフの様なもの。いきなり流れていた力を勝手に解除すると無理に疲れたりするのだ。

ふぅ、と息を付きながら休憩の合間に〝遠見〟で奈落の底を見つめてみる。

そこには―――

 

 

 

『ギジャァ』

『ギジュルルルルッ』

『ジャゥァァァッ』

 

 

 

気持ち悪い蠢く音を立てながら、夥しい程の大量のムカデの魔物がその奈落の底に存在していた。

そこまで大きくない、体長10m程の魔物だが……奈落の底で出会ったかつてのサソリモドキのような気持ち悪さを感じさせる。

あれは血鬼の血が入ってるのもあったが、従来虫というものは大きくなったら大きくなったで生理的嫌悪感が出てくるもの。ハジメ君がワイヤーフックで落下を防がなければ、サソリの海に飛び込んでいたし僕が全員を連れて飛んでいなければ今頃ハサミから牙から尾の針から毒という毒を打ち込まれ食い破らているだろう。

 

 

「命だけは助かったって感じかな……」

「何が見えたのか?」

「下に毒を持ってそうなサソリがいたので」

「ほう、そりゃ困ったものだ……む?」

 

 

そう言って薄い笑みを浮かべるギルが何かを天井で見つけたのか、僕達がそちらの方向に視線を向ける。

するといつもの文字と共に、クソ長い赤色の文字もついでに見えてきた。

 

 

 

〝彼等に致死性の毒はありません〟

〝でも麻痺はします〟

〝存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!〟

 

 

〝おやおやぁ?もしかしてお気付きになりましたか?そうっ、私達は皆様の絶叫をお聞きするためにこの場所に劇毒を使うサソリを何匹も放逐したのですっ!ここで毒なんてないと思っていますかぁ?うぇえん、チッチッ。そこまで世界は甘くありません!こういう時こそ皆様の観察眼が試されるのですよ!しかし、生きて帰れなかったら意味無いですけどねぇ!〟

 

 

 

わざわざこの薄暗い空間で死ぬ程目立つ文字を見かけた時、他の人達はなんて言うのだろうか。

間違いなく僕はキレ散らかしながら、この文字をクタクタに切り刻んだに違いない。いや寧ろそうしなければならないと本能が伝えてくる。

ミレディ・ライセンも相当な存在だがオズワルドのこの陰湿さも中々である。スリルあるとは思うが死んでしまえば誰にも楽しませない……本気で楽しませる気があるのか。

いや、こんな奴を理解しようとする事自体が間違っている気がした。

 

 

「今度こそは失敗しないように気を付けてもらいたいですね」

「………………っ!」ギリィッ……

 

 

僕達は、この先も嫌なトラップがあるんだろうな……とウンザリしつつ、何時か諦めるであろうリチャードの方に期待を寄せながらこの通路の先を進むのであった。

 

 

 







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フィリップ君のヒロイン、誰にするか?

  • 八重樫雫
  • 園部優花
  • その他原作組女子
  • 都市の女性組
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