ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。


第1章 翔明の騎士編
Ep.1 ありふれた職業


 

 

一日が経った。

僕達は、早速魔人と対抗する為に座学と戦闘訓練を行う事になることに。

正直に言うと、戦闘訓練なんて一般の人間はした事がない。

しかし僕からすれば、戦闘訓練はフィクサーとしての依頼を解決する為に必要不可欠の自主練のようなものだ。

サルヴァドールさんから剣の使い方を習うと同時に、都市で生き残る術や観察眼、間合いの事を教えてもらったことを思い出す。

そんな思いにふけっている間に、僕らに銀色のプレートを渡される。渡してくれたのは、ここ『ハイリヒ王国』に仕える騎士団の中での団長『メルド・ロギンス』さん。フィクサーの事務所で言う『代表』、協会で言う『課長、部長』などの存在である。

つまり相当に実力を持ち合わせている。そんな騎士団長がこんな僕達のために時間を割いていいのかという話だが、光輝君達『勇者御一行』が半端な実力では国民に顔向け出来ないのだろう。心配かけてしまう事は、人々にとって一番不安と恐怖を増幅させてしまうから。

理にかなっているなと思いながら、メルド団長の話を真剣に聞き続ける。

 

「よし、全員に配り終わったから話を始めるぞ。このプレートは『ステータスプレート』と呼ばれるものだ。自分の能力値や能力を数値化して示してくれるものだ。ここではこれが身分証明書になる。これがあれば迷子になっても見せれば一発だから、絶対に失くすなよ?」

 

非常に分かりやすい説明と共に、距離を感じさせない親しみのある話し方で接してくれるメルド団長。さながら、僕の恩師のサルヴァドールさんを彷彿とさせる。

 

「プレートの表面に魔法陣が刻まれているのが見えるな?そこに、プレートを渡した時に一緒に付いてきたであろう針で指に傷をつけ、そこから流れる血を使って魔法陣に血を付けてくれ。そうしたら、そのステータスプレートがお前のものであると登録される。原理とか聞くなよ?俺もアーティファクトの原理はてんで分からん」

 

「(確かに、珍しそうなものですからね……分からないのも無理はないか)」

 

少し先にいる光輝君がアーティファクトについて聞いている

間に、僕自身はすぐにステータスプレートに登録を完了させた。

正直簡単に行えてしまい、呆気なく感じる。フィクサー協会は基本、成人してなれるものだった。そしてフィクサーになる為の試験を受け、合格して免許証を受け取ってそのまま事務所の下働きや協会の下っ端になるという形だった。

そしてここで、僕自身の魔力を知った。この世界では魔力を持つ人は基本的に魔力に色があり、僕のは……

 

 

「赤色だ」

 

スティグマ工房の武器____今僕が持っている鞄の中に入っている武器もそうだが、サルヴァドールさんはスティグマ工房の武器を愛用している。相手に強い火傷を与え、苦しんでいる間に見事な剣閃で一撃で仕留める姿は、流石元1級フィクサーという感じだった。

炎や熱、そんな多くと関係してきた僕だからこそ赤色の魔力なのかもしれない。

それはさておき、ステータス確認といこう。

 

「ステータスオープン」

 

 

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相馬 アキラ 17歳 男 レベル:1

 

天職:魔剣士

 

筋力:60

 

体力:50

 

耐性:40

 

敏捷:60

 

魔力:80

 

魔耐:80

 

技能:剣術・属性強化・治癒・耐久・言語理解

 

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なんというか、とてもスタンダートと言うべきな形だった。

剣も出来て、魔法も使えて、一人で治癒出来て、一人でタンク役も張れる。

チグハグな感じがとても目立っているが、どれかを極めるのではなく全体的にバランスのいい形で鍛えていけばいいと再認識する。

それに、このステータスなら一先ずは鍛えていけば問題ないだろう。数値がどれくらいの基準を指すのかなんて分からないけど、僕としてはやる事をやっていくだけだから。

そんな中、我らが勇者御一行の顔である光輝君のステータスが判明した。何と彼は、勇者だった。

勇者は、日本で有名なゲームなどでも度々出てくるとても強い存在であることを理解している。

そんな特別な天職に選ばれた彼のステータスは、確かに僕達とは一線を画すステータス値だった。

 

 

==============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

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かなり高い。全100オールという、見たともこともないステータスを見せられた。ただ、100か80の差がどれほど大きいかはまだまだ分からないのが幸いだ。不安に押し潰されなくて済んだ……とは傲慢すぎるか。

しかしながら、彼が人を導くような性格から勇者なのではとは思っていた。曇りなき正義感とやり遂げる意思は強そうに見えている。責任感があるかと言われれば、少し怪しいが。

 

 

「流石は勇者様だな。普通スキルは2、3個でステータスも100はいかねぇハズなんだが」

「いや〜、あははは……」

 

 

肩を掴まれて満面の笑み(規格外に対して笑みを浮かべているように見えるが、単純にしっかり強くなれよ的な意味が入ってるのかもしれない)を浮かべるメルド団長を横目に、僕はハジメ君の方を見てみることにした。

ただ、恐らく彼は自分から見せないだろうから上手く移動したタイミングで見計らう事にした。そんな彼に対して、一人というか複数人の影が迫っていた。

ハジメ君に対して、おちゃらけているというか小馬鹿にして見下している表情を浮かべているのは、『檜山大介』だ。

こういう人間は、都市の中でも少なくなかった。人を見下して、そして罵倒しなければ生きていけない人だっていた。

もちろん彼はそんな事をするのは大抵、自分より力が劣っている人だ。そんなが少し恵まれただけで苛立つのだろう、こうやって絡んでくる辺り、嫌な人の縁も持ってきてしまうのも嫌な所だろう。

 

 

「おいおい、南雲。お前もしかして、非戦闘系か?」

「そうなる…かな」

「南雲よぉ、それで本当に戦える訳かよ〜」

「やってみないと分からないと思うけど……」

「じゃあほら、お前ステータスプレート見せてみろよ」

 

 

中々に嫌な性格をしている。しかし、この彼の行動のお陰でハジメ君のステータスを確認できる。一種の願いでもあるが彼のステータスが低くとも軽蔑することはないと思う。

それに、僕自身今はスキルや数値に恵まれているだけで成長なんて以ての外かもしれない。それが有り得てしまうのが、こんな世界なのだし。

そして、まるで見せびらかすようにハジメ君のステータスが開示された。

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:10

 

体力:10

 

耐性:10

 

敏捷:10

 

魔力:10

 

魔耐:10

 

技能:錬成・言語理解

 

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「だっはっはっは!お前低過ぎるだろ!」

 

 

錬成、という名前に頭の中で疑問文がでてきた。

錬成というものが自分ではよく分からないが、ステータスの低さはおそらく錬成という能力に特化しているのだろう。

個人的な見解になってしまうが、ステータスとスキルは噛み合わない。例えば、僕は魔剣士としての素質が多くあるとして、実際には関連したスキルが二つしかない。しかし、それ以外は魔剣士を実質的に支える大切なスキルが二つ。

それなのにも関わらず、耐久を持つ僕は耐久が40。

正直予想はしていたが……ステータスはスキルに引っ張られるのもではないという事だ。個人の、その肉体の才能的なものが数値化されているだけ。

ステータスの高さよりも、一番重要視されるのはスキルの多さ、今後スキルを覚えるかどうかだ。

ステータスの高さをスキルで補えるのなら、それはもうスキルこそが第二のステータスなのだから。

……まるで自分に言い聞かせるように言っていたが、本来ならこれをハジメ君に言ってあげたい気持ちはある。

しかし、それは難しい。一度、僕自身も彼と話しかけたことがある。だが……

 

 

『えっと、相馬君だっけ。実は今私が南雲君と話してて』

 

 

シンプルに周りに断られた。

やはり僕では相応しくないという事らしい。

でもまぁ納得はした。彼は大きな人の縁があるんだ、彼がこれから強く成長してもおかしくはない。

 

 

「こらー!クラスメイトをバカにするなんて先生許しませんよ!」

 

 

ぷりぷりと怒りながら、小さな体躯で生徒を叱りつける愛子先生に毒素が抜けさせられたのか檜山君達はハジメ君にステータスプレートを返していく。

愛子先生……流石の指導力です。(見ててとても可愛いけど)

しかし、今度は新たな問題にハジメ君が直面していた。

会話が他の人の声で聞こえなかったが、自分のステータスプレートを見せている愛子先生がショックを受けたような表情で固まるハジメ君の肩を揺さぶっていた。

大方、ステータスは低かったけどスキルに恵まれていたのかもしれない。見るタイミングはなかったが、今度機会があったら見せてもらおうかな。

そんなこんなで、お互いのステータスと持っている能力の把握が終わった後に座学から戦闘訓練が始まった。

正直座学については、この鞄と一緒に入れていた小さなメモ帳に重要な事を書き写しておいた。再三聞き直したりもした(流石に座学の授業後ではあるけど)。

そして、戦闘訓練についてだが……

正直いい声を当てられた。何せ、筋はいいと言われたし動きは良かったとも。ただし、剣は普通であると。

少し悲しくなったが、逆を言えば『サルヴァドール』さんの戦略や戦術がこの世界でも評価されている事だ。

改めて僕の恩師に感謝を伝えながら、また訓練に勤しむ様に思考を訓練に持っていった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

あれから二週間経ち、僕は着々と戦闘訓練で力を伸ばしている。

何か不安な事があるかと言われれば……強いて言うなら、スキルはやはり手に入れにくいことか。

鍛錬を積めば、その形がゆっくりと出来上がりスキルになるとも言われている。つまり地道でコツコツというのがこの世界での鍛錬方法だ、何処も変わらないのだろう。

 

 

 

===============================

 

相馬 アキラ 17歳 男 レベル:5

 

天職:魔剣士

 

筋力:70

 

体力:60

 

耐性:60

 

敏捷:70

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:剣術・属性強化・治癒・耐久・言語理解

 

===============================

 

 

これが今の僕のステータスだ。

ただ、勇者の方は全ステータス200台に到達したらしい。本当に規格外というか、流石だなって思う。

魔法の方は、火属性の魔法の適性が高いそうで。僕が今使っているこの剣に魔法を付与して、相手に斬りかかるのが一番楽だ。

実際に、強さは保証された。スキルもそうだが全体に一人で戦える強さを貰えただけでもありがたい。

剣術で敵の攻撃を捌きながら、属性強化でトドメを狙う。相手が格上なら治癒や耐久で上手く持ちこたえながら、光輝君の様な強い敵でも戦える味方を連れてきてもいい。

やはり凡庸、という感じではある。だが別に、英雄を目指している訳じゃない。僕は僕なりにやっていけばいい。

ただ、一人で素振りや走り込みから魔法の練習をしていると喧騒の声が聞こえてきた。

 

 

「お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 

そんな声が聞こえ、すぐに駆け出していた。

さっきまでの練習や走り込みは何とやら、疲れなど物知らずに僕は声の元まで走っていった。

そこに見えたのは、檜山君が南雲君の腹を殴っているという光景だった。

確かに、ここ最近檜山君達の態度が大きくなっているとは思っていた。若いフィクサーが力を付けると犯罪や横暴的になるとは言うが、正しくそれだった。

 

 

「何やってるんだ!」ダッ

 

 

いつの間にか、自分は立場も弁えずに声を荒らげて檜山君の前へ立ち塞がっていた。

彼の顔を見れば、いい気分だったのか舌打ちしたそうな表情で僕を睨み付けてくる。とはいえ、彼も僕のことをあまり知らない筈だ。

 

 

「お前……邪魔すんなよ。もしかして喧嘩してるって思ってんのか?俺達はな、南雲に稽古を付けてやってんだよ」

「稽古にしては酷く呻いてるように見える。本当に稽古なら、ここまでしない」

「うっせぇなぁ。おい南雲、俺達は稽古してるんだよな?こいつに言ってやれよ」

 

 

腹を抑えているハジメ君がゆっくり「ぼ、僕は大丈夫だから」と言っていた。しかし彼の表情は苦しさと痛みが混じっている。本当に稽古なら、こんな表情はしない。

何せ、本気で稽古するのならそもそもメルド団長はメルド団長の関係者に頼み込めばいい話だ。何も技術もない檜山君達では何も言ってもただの言い訳になる。

 

 

「それなら、メルド団長に頼めばいい。もしくは八重樫さんに頼ればいいだろう。彼女は剣術道場の関係者なんだし、そこを頼れば」

「うっせぇな!そんなもんこいつが頼っていい人じゃねぇだろ!」

「っ……なんて酷い言い方だ!八重樫さんはハジメ君の知り合いじゃないか!」

 

 

思わず激情のまま、彼を叱りつける。

自分らしくないのは分かっているし、ハジメ君に同情している節だってある。

だが、これはあんまりだ。とてもじゃないが食い下がる訳にはいかない。

 

 

「こいつと八重樫はそもそも知り合いじゃねぇよ!」

「だったらなんで毎回挨拶をするんだ!知り合いだから顔を合わせた時に挨拶するんだろ!知り合いじゃないというのなら、顔も合わせないし何も言わない!」

「っ、ごちゃごちゃうるせぇなぁ!

ここに焼撃を望む、〝 火球〟!」

 

 

魔法の詠唱が始まり、僕の目の前に火球が召喚される。

彼はもう完全に頭に血が上っていて周りが見えていない。やはり彼はハジメ君に何かコンプレックス的なものを持っている可能性がある。

だとしても、持っていたとしても。

人に当たっていい理由には、ならない!

 

 

「死ねぇっ!」

 

 

「!」

 

 

 

そして、僕の方に火球が飛んでくる。

ただこれを避けるのは簡単だ。ただ横に避けるだけでいい。高速で迫ってくると言っても、僕はこれ以上の速度で攻撃された事はある。

ただしこれをコントロールするなら別だ。魔法は詠唱後、本人の意思で操れる魔法もある。発射物系の魔法がそうだ。

僕が攻撃を避けたとして、ハジメ君に当たる可能性がある。さっきまで痛がっていた彼がいるのに、今魔法を喰らったらそれこそ死にかねない。

つまりここで、防ぐ!

 

 

 

「我が炎よ、この剣に宿え、〝 火剣〟!」

 

 

スティグマ工房の直剣を抜いて、すぐに魔力を込める。魔剣士のカテゴリは武器に魔力を流し込んで、剣を通じて魔法を発動する事が出来る。

そして魔法は物体で受け止めるか魔法同士で打ち消さない限り基本的に消えない。

僕がやるのは、後者!

火球の弾道を予測しながら、すぐに前に踏み込んで一息と共に火球を切り裂き、火球は消滅していった。

 

 

「なっ……!」

「まだやるのか!」

「うっせぇ!お前らまだまだ魔力は」

 

 

 

「何やってるの!?」ダッ

 

 

 

 

一触即発のタイミングで、聞き慣れた声が響いた。声の方向を向くと、それは治癒士の練習用の衣服を身につけた白崎さんだったのだから。

しかも後ろには、八重樫さんや光輝君も連れている。最早言い逃れは出来ない状況だろう。

安心して剣を納めると、檜山達もバツが悪そうに去っていった。

 

 

「ハジメ君、大丈夫かい?」スッ

 

「あ、ありがとう……えっと、アキラ君?」

 

「ああ。偶然見かけて、君を助けずにいられなかったんだ。あ、傷とかは白崎さんに直してもらった方がいいと思うよ。それじゃあ!」

 

 

そう言って、僕は駆け出していった。白崎さんに疑いの目を向けられたくないのもそうだが、光輝君になんて言われるかとやら色々な思いが心の中で掻き混ぜていたから。

しかし、本当の気持ちとは言うと。

彼を助ける事が出来た。それだけで良かったと安堵している。助けた事に何一つの悔いなんてない。

近い内に、『オルクス大迷宮』という迷宮に潜る事になる。こんな戦闘経験も少ない様な人達が、簡単に戦えるとは思えない。ましてや、いきなり強い力を貰って暴れ出す危険性も今日の時点で見え始めている。

そんな不安が心に積もるのを体感しながら、僕は本来の練習である走り込みと魔法の練習に勤しんでいった。

 

 




スティグマ工房の直剣

フィリップが都市のフィクサーであった頃から愛用してきた直剣。突き刺しにも対応しており、刀身が細い。
スティグマ工房という、炎と熱に対して強い力を発揮する装備を制作する工房によって作られた一級品。値段は相当なもの。
加熱されたスティグマ工房武器は、相手に消えないスティグマ工房の紋様を火傷として残すと言われている。
フィリップが地球の人間に生まれ変わった時に、この剣も家の中で眠っていたそうだ。



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