どうか、あなたの物語が見つかりますように。
※Library of ruina及びLobotomyCorporationのネタバレを含みます。ご注意ください。
ハジメ、及びフィリップ達がライセン大迷宮を攻略している間の事。
ここ『ハイリヒ王国』の王宮の中には、この世界に召喚された神の遣い……元いハジメ達のクラスの生徒達に用意された開放された食堂兼サロンが備えられている。
更に生徒には一人一人専属の従者を設けており、頼めば何だってするだろう。何せ『神の遣い』と言われる者達なのだから。
そして、生徒達一人一人には従者以外にも個室を与えられている。
そこを利用する者は基本、戦闘の悲惨さや恐怖に耐え切れなくなり引き篭る様な生徒くらいなのだが……逆にそういう生徒が出た場合従者だって寄ってこない。従者達も自分の発言が原因で神の遣いを自殺させたとなれば国から総出で家族から末裔に至るまで滅ぼされるに違いないのだから。
そんな為、結局孤独や寂しさに耐え切れなくなり引き篭る生徒は出なかった。寧ろこの食堂やサロンで暇を潰す生徒が多いのだ。
そんな中、召喚された中の生徒は戦いに向いていないものもいる。そんな生徒を擁護したのは畑山愛子だった。
自分自身も非戦闘職なのもそうだが、ハジメとフィリップ……元いアキラが奈落に落ちて死亡した事を知ったのは自分自身の天職によって食料問題を解決する為に遠征した後の帰りである。
南雲ハジメ、相馬アキラ。二人共畑山愛子から良い生徒に見えていたからこそ―――この報告には目を疑ったしこの目で見て声を聞くまで信じないつもりだった。
しかし王宮で沈み込む戦えなくなった生徒達を見て、これは本当であり事実なのだと改めて理解した後に王宮達の生徒を擁護することに決めた。
そうして、畑山愛子はとてつもない仕事のスケジュールをこなす代わりに彼らが自分から立ち上がれるようになるまで面倒を見る事に決め今日も仕事に勤しむ為、この王宮にはいない。
「なぁ聞いたか?天之河達、オルクス大迷宮七十層に到達したんだってよ」
「流石は勇者パーティー様って感じだよな、俺達凡人達とは違ってよ」
「ついこの間六十六階層の攻略に入ったばかりだろ?速すぎるって……」
そう呟く、居残り組ははぁと溜息を付きながら今の現状に対して憂鬱な気持ち、前を向きたい気持ち、そして―――圧倒的な力を持つ者達に対しての羨望。
しかし立ち上がらない。一度折れた翼は簡単に治らない様に、そう易々と立ち上がれるのなら立ち上がりたい。
しかしあの時の、二人も失った絶望を再度見つめることになるなんて死ぬ程御免でもあり、更にそれが自分になると考えれば余計にであろう。
そんな中、女子達の方向からも表面上は明るく気取ってる話し声が聞こえてくるが……それも無理をしているとよく分かる。
しかしながら、そんな声を聞いた付近にいた従者が一つの言葉を呟いた。
「……雫様とて、1人の女性であることは変わりないのですが」
その言葉を聞いて、まるで自分達に対して言っている様に聞こえてしまうのは無理はない。
眉毛をぴくっと上げて、低く唸る様に従者に対してぶつけたのは―――居残り組の男子の一人である玉井淳史であった。
「……なんだよ。なんか文句でもあんのか?」
「いえ、文句などありません……申し訳ありませんでした」
今のは忘れてください、そう言わんばかりに言葉を返す従者に対して淳史は怒りを薄ら顕にしながら立ち上がった。
「誰も謝れなんて言ってねぇだろ!馬鹿にしてんのか!?八重樫さんだってそう変わらないって、つまり……変わってない俺達には戦ってなくて情けないですねってそう言いたいんだろ!さうならそうとはっきり言えよ!はぐらかしやがって!」
「お、おい淳史……そこら辺にしとけって」
「メイドさん達に当たってどうすんだよ」
癇癪を起こしながら、友人の相川昇と仁村明人に灘められる淳史は立ったまま拳を握りしめていた。
力があればこんな思いしたのか、いいやしない。結局あの悲惨さを見かけた時点で人はいつか折れる。
「うるせぇよ……俺は、俺はただ……くそっ!」ドンッ!
言葉にならない鬱憤を、置かれている台を拳の力の出る限り叩いて苛立ちを露わにする。
友人二人は、気持ちこそ分かるものの何も言えずにいた。今の音で何人かの生徒が淳史に視線を向け、淳史も怒りを少し抑えて座った。
「淳史様……ご気分を害されたのなら、先程の発言を謝罪します。申し訳ありませんでした……」
「いや、俺は……俺も悪かったから」
「ですが、皮肉を言うつもりで言ったのではありません。そこだけは……」
「……じゃあ、なんて言うつもりだったんだよ?」
そう言って、従者の方を見つめる淳史。
「私、ニアは雫様に付いている従者です。先程の不用意な発言で傷付いてしまった方は申し訳ありません……しかし、一人の従者として、一人間として……雫様も本来なら、時には誰かに甘え守られるべき存在であるのです」
「全然、想像つかないけど……」
女性陣からもそんなイメージは無い、と突き付けられるもニアはそれに対して言葉を返す。
「雫様にお世話をする私ではありますが、雫様は弱みを見せた事はありません。一人にして欲しいという事もなく、ただひたすらに努力し続けています。ですが完璧な人間などおりません。雫様も、少し前までは皆様の言う学校の生徒でしかなかったのです……今日ももし帰還なさっても、この王宮に帰って心安らぐ暇もなく訓練に勤しむのだと思います。しかし、皆様が雫様も含め……〝勇者達なら出来て当然〟だと思うのは、雫様達に過度な期待を与えてしまうのでは……そう思っただけなのです」
「ニアさん……」
予想以上の気遣いに、淳史は怒りを露わにして言葉を強くした事に対して申し訳なさを抱いた。
「雫さんも、変わらない……か」
「優花?どうしたの?」
「え、久しぶりに優花っちが喋った……?」
ニアの言葉と思いを聞き、何かを決意した様に喋り始めたのは一人の女子生徒―――そして、『相馬アキラ』に命を助けられた、園部優花だった。
トラウムソルジャーの猛攻によってバランスを崩し、背中から攻撃されて死ぬと直感していた彼女はまさしくその時に死を直感していた。
しかし、死ぬことはなかった。何故ならば相馬アキラ―――奈落に落ちた彼が助けてくれたのだ。
―――早く立って!怖かったら、僕に任せればいい!でも立ち向かうことだけは忘れないで!
「……うん、そうだよね。立ち向かわずにただ恐れて、逃げ出したままじゃ何も変わらない……香織ちゃん、坂上君、永山君達、檜山達も……天之河君だって、きっとあれから立場や思いが変わっても……心は変わってなくて、それなのに私は……彼の言葉が心だけに響く……」
そうブツブツと呟いている優花を心配する女子達。
そうして、ニアの方向を見て愛子は「ニアさん、愛子さんは何時頃帰ってきますか?」と声をかけてきた。
「愛子様、ですと……確か今日の夜には帰ってくるはずです。すぐに明日の朝には出立します。湖畔の街『ウル』に向かいますので、もし何か用事あるにしても二、三週間程は帰って来れないかと……」
「明日、明日か……今日中には決意を固めておかないといけないって事だよね……そうだよね」
「ちょ、ちょっと優花っち?人が変わったみたいに……」
「……うん、なんというか……ずっと彼が助けてくれるって思ってたのに、彼もきっと変わらなかったんだなって思ってさ。助けられてばかりなのに、助けてもらえる……皆そういう人だと思ってたけど、あの日から皆の心は変わってない……私が一番変わらないといけないって気付いたから。
私、明日の愛子ちゃんの遠征について行くよ。
そして―――アキラ君の為にも戦わなくちゃ」
たった一人、決意を燃やし立ち上がる園部優花の目には……激情を焚べて燃やすあのギラギラ炎を煌めかせる彼の姿が映っているのだから。
―――――――――――――――――――――――――
ライセン大迷宮の攻略から一週間。
僕達はこの可変し続ける大迷宮から、セーブエリアを作って軽く寝て、起きて見回りをしての繰り返しを行っていた。
今はギルの方に見回りを頼む番で、彼を起こしに行く所だった。
あれからリチャードさんは、まるで都合がいいかの様に目覚めなくなった。おそらく僕達が寝ている合間に起きている可能性だってあるし、普段から寝たフリをしているのかもしれないし、隙を伺って僕を殺そうとしているのかもしれない。
まぁ僕は殺しても1回だけなら生き返るけど。
「ギルさん、起きてください……見回りの時間です」
「む…………ああ、アキラか。すまんな」
ハジメ君から借りたタウル鉱石のワイヤーで背中に縛り付けたリチャードさんを支えながら、ギルが起きた。
眠気はしっかりと取れたのか、目は見開いていて穏やかそうな表情を浮かべていた。
「アキラは寝れたか?」
「それなりって感じですね」
「そうか。隣にファタール嬢を連れているからか?」
「それは特に関係ないと思いますけど」
四日前、リチャードが起こした事件がきっかけで以前から少し距離があったファタールの距離が縮まった気がした。
四日前の怪我はもう治っているけれど、定期的に傷が開いてないか診てくれたり何かと話しかけてくれるようになった。まぁ、それはそれで僕が持つ話のネタが少なくて困るんだけど……
「いい人だ。魔人とは思えないな」
「魔人と言えるかは怪しいですが……」
「まぁ、魔人であっても亜人であっても我々の仲間であることには変わりないだろう?」
「そうですね」
「うむ……裏切らないだけいいじゃないか。リチャードのあの様な件はもう御免だからな」
苦笑いを浮かべながら、ギルはゆっくりと姿勢を直してから鞘に収めた直剣を杖のように使って溜息を着く。
「……決して、庇うつもりで言っている訳じゃないのだが。
リチャードはここまで酷い性格ではなかった」
「何かがきっかけで変わってきたという事ですか?」
「いや……今の様な状態になりそうな兆候はあった。確か、初めてその兆候が出たのが亜人族の長老の元に下る警備隊の参加試験に合格した時だった」
ギル曰く、長老率いる警備隊は相当の実力者でなければ入る事が出来ないそうだ。
相応の頭脳と強靭な肉体、任務に耐えれる精神力を何日も掛けて調べられる……まるで僕が中学生の時に経験した試験みたいだ。
中国で言う〝科挙〟を見事に成し遂げた彼女は、任務隊に入る事に成功した。
問題はその任務隊を物の数ヶ月で出ていく羽目になった事だが。
「それが何度か続き、リチャードは俺の元で育てる事になった」
「……その頃から今の状態が見え隠れしていたんですね」
「かもしれんな。しかし、俺も甘いものだ……」
「けどその甘さも、育てる上で必要なものなんですよね」
サルヴァドールさんや、ユナさんからよくしてもらった。
他にも自分とはあまり関わりのない部署の人達にも、優しさというものでお世話になったことがある。
何か目的があったような人もいれば、何も理由なんて要らない、ただ人を助けたいという一風変わった考えの人もいるくらいだけど……都市では優しさというものはあまり必要とされない。
しかしそれで助かる人はいる。そんな変わったものを、僕はよく受け取っていたと考えればその大きさは計り知れない。
都市に優しさがなかったからこそ、あの世界では生きていく為に人を殺す事も人を拷問する事も厭わない。
しかし今では、あまりそうは思わない。
話して分かり合えるのなら、話して分かり合いたい。
それが無理だと言うのなら別の道を模索してみたい。
そうやって可能性を追い求め、叶うキッカケになる事を手探りで掻き集める様になれる今の自分がとても生きている感覚がする。
「甘さは、大変だぞ」
「けど、甘さがなければ人は人足りえない。喜び、怒り、悲しみ、楽しみ……この一切合切を切り落としたものは……果たして人間と言えるのでしょうか」
「……俺達は亜人だ」
「亜人も人ですよ。人の姿をしている以上、人と同じ様なものです」
「ははっ、そうか。聖教会から忌み嫌われる我々を人か」
あのイシュタルって人がいた場所、そんな思想あったんだと初めて知る。
しかしこれで、また気を付ける要素が出来てしまった。ギルや改心……してくれるかはともかくリチャードとも一緒に行動するには何かしらの見た目の隠蔽効果のある物を持っておきたい所だ。
そうやって頭の中で考えていると、ギルがしんみりした顔で僕に視線を向けながらぽそりと呟いた。
「アキラ」
「はい」
「……リチャードを、頼んだぞ」
まるでそれは、親が子を託す様な言葉の重みを感じる。
「荷が重すぎますよ」
「しかし、頼めるのはお前だけなのだ」
「それにまるで、その言い方だと―――」
「その言い方だと?」
一抹の不安が過ぎる。
何故今このタイミングでそんな言葉を残すのか、そして何故今である必要があるのか。
それは、きっと……
話は変わるが、猫は死期を悟ると飼い主を心配させまいとひっそりと誰にも見つからない場所で眠りにつくそうだ。
猫は賢い。だからこそ人の感情を汲み取り、そしてそれを思って行動できる。
だからこそ―――このギルの行動は、おそらく。
「僕でいいんですか?」
「なんだかんだ、一番気に掛けているだろう?」
「……まぁそうですけど」
「だからこそだ。そろそろ、監視を変わろう」
そう言って、ギルはリチャードをぶら下げながら見回りに行ってしまった。
別にすぐに帰ってくる、そんな筈なのに妙に胸騒ぎがしたが……
結局僕はその後、隣にファタールを添えて眠ってしまったのだった。
―――――――――――――――――――――――――――
僕らとハジメ君達が起床してから、ライセン大迷宮の攻略を再開した。
何より今回は、遂に攻略の目処が出てきた。前回にはなかった部屋のパターンを引き当てることが出来た。
迷宮自体が変形するこんな場所で、正解を引き当てる確率なんてどれ程なのかと頭が痛くなる話だが。
そして、何よりこの部屋は……あの事件が引き起こされる直前のゴーレム騎士の部屋だった。あの時破壊したゴーレムは消え失せており、代わりのゴーレム騎士が配置されていた。
「またここかぁ、起きないよね?」
「起きたら、また首筋をぶつだけだ」
「そうですね」
ゴーレム騎士の部屋に入り込み、部屋の中央まで接近出来たタイミングでゴーレム騎士達は次々と動き出し始めた。
「〝茜示剣〟」
僕が初陣を切り出し、魔力は乗っていないものの連続の剣戟をゴーレム騎士達に向けて放っていく。
前回と違う点は、僕とハジメ君を咎めるものがいない。詰まるところ僕達は誰にも止められない!
「ハジメ君!」
「分かった!」チャキッ
そして、ゴーレム騎士達をなぎ倒していくハジメ君と背中を合わせるようにドンナー&シュラークの連続射撃、ナハト&スティグマの連続剣撃が打ち込まれていく。
まるでワルツを踊っている感覚だった。お互いに最適確な動きを続けて、魅せる様に攻撃を仕掛けながら敵を蹴散らす姿は僕が地球の時にいた時に見た『アクション映画』の様な感覚だった。
しかし……
『―――!』
ゴーレム騎士達もタダでは通らせないと、まるで重力が反転したかの様に奥に行く度に他のゴーレム騎士達が床や壁を駆けて接近してきている!
「うわキモっ!」
「厄介だなぁ……!」
しかし、その心配も杞憂に終わる。
「どっせぇえええええい!」ドゴォッ!
シアさんが次々と、身体強化で加速した一撃をゴキブリの様に接近してくるゴーレム騎士達を蹴散らしていく。
あの時のビクビクしていた彼女は何処にもいなかった。今はもう一人の戦士である。
「ありがとう」
「ここは私に任せて先に行ってください、ですぅ!」
「そーれフラグなんだよねぇ!」ドパァンッ!
ハジメ君が苦笑いしながら、シアさんだけにカッコつけさせてたまるかと頬を引き攣らせながらドンナー&シュラークの連続射撃と〝豪脚〟でゴーレム騎士達を破壊していくが……やはり頭数は止まらない。どんどん出てくる。
「でも、中央は超えることが出来た!」
遂に僕達が扉を抜ける。少しだけ周囲を確認したが、通路は移動する気配を感じさせない。
しかし通路の中でもお構いなし、絶対に通してなるものかとゴーレム騎士達の攻撃が続く―――そのタイミングで、ギルが違和感に気が付いた。
「!リチャード、起きたのか!」
「げぇっ!えっと、もう一回眠らせられません?」
「今は無理だな……!」
このタイミングでリチャードが起きようとしていた。暴れる事は不安定で分からないが、おそらくキレている筈だ。
ハジメ君も青筋を立てながら、遂に秘密兵器公開と言わんばかりに取り出したのは……長方形型のロケット&ミサイルランチャー〝オルカン〟。
こういうものは都市になかったので、斬新かつ強力な発想であるのは確かだった。何より……
「全員、耳塞げ!ぶっ放つから!」ガコンッ
トリガーを引くと共に、大量に放たれたオルカンのミサイルが散らばっていきながら大量の爆撃をゴーレム騎士へと襲いかかった。
轟音と爆音が響き合い、ゴーレム騎士の肉体は直撃から受けたダメージが諸に出たのが壁、天井、床に現状を留められない程にただの残骸となった。これなら再生も難しいだろう。
「ウサミミがぁ〜!私のウサミミがぁ〜!」
しかし、爆音で耳が持っていかれた人物が一名。
本当に哀れというか、いやなんで耳を塞いでいなかったのかと呆れ笑いが出てくるシアさんの状態に対してハジメ君がツッコミを入れながら少しだけ空気が和んだ。
そうして、遂に通路は最大の難所を乗り越える。通路を完全に抜け切った先には―――巨大な空間が広がっていた!
大きく広がる空間にはブロックのような足場が大量に動いており、どれも規則性を持っている訳ではない。しかしこのままだとゴーレム騎士達に追い付かれるのは確かだ。
「アキラ君、頼める?」
「分かった……」
ゴーレム騎士達が肉体を修復して、襲いかかってくるもののハジメ君の銃撃やユエ、シアさんの猛攻で何とか抑えている間に条件は完了する。
「今度こそ、この戦いに決着を付けてやる……!」
その声と共に、背中から双翼を生やしてハジメ君と共にブロックに向かって飛んでいく。
しかしブロックはそう簡単に乗らせてたまるかと僕達の前で動いた。おそらくライセンの悪いところが出ている。しかし……
「そうは問屋が卸さないんだよ、ねっ!」ドガァンッ!
そして、先にブロックの方へ先回りしていた僕が繰り放つ蹴りによってブロックは強制的に移動方向をハジメ君側に移動せざるを得ず、何とかブロックの上には乗ることが出来た。
しかし―――ゴーレム騎士達はそれだけでは終わらない。
「マジかぁ、最悪なんだけどねぇ!」
ドンナー&シュラークを構え、何と空中を浮遊するようにこっちに迫ってくるゴーレム騎士達。最早重力というものの鎖を解き放たんとこっちに迫ってきている。
僕らにも危険が迫ってくる。しかし簡単に終わらないのが僕達だ。
「ファタール」
「はっ」
そう言って、魔法陣を展開するファタールの魔法によってゴーレム達はまるで何かに阻まれた様にこちらに来れなくなった。更に、無理矢理加速した瞬間にゴムの様に反発して別方向に垂直で吹き飛んだ!
「反射」
次々とゴーレム騎士達が弾き飛ばされながら、そして―――遂にブロック自体が僕達に対して押し潰さんと迫ってきた!
「あれ何とか出来る!?」
「もちろんですとも」
そう言って反射の魔法で、結構ギリギリまで近付いてきたブロックはいとも容易く跳ね返され、他のブロックとぶつかって破壊された。
また一つ危機を乗り越えたや、と思っていた矢先。
何やら奥の方の場所に赤色に塗られた謎の巨大なゴーレムが立っていることに気が付いた。
僕達はそれぞれ、移動と魔法で上手い形に飛びその場所まで移動した。
そしてそこにいたのは―――全長推定20m超えの巨大なゴーレム騎士だった。
右腕は赤熱しているのか、赤く染まっており……更に左腕には鎖が巻かれていてモーニングスターが装着されていた。
そして何よりも……浮遊していたゴーレム騎士達はそれぞれ整列し敬礼する様に剣を胸の前に構えていた。
そして、まるでスピーカーから響くように大きな声が響いた。
「あんれまぁっ!ようやく来なさったのですねぇ、フィリップ君っ!」
そう、八時のサーカスのボス―――オズワルドだった。
「オズワルドォオオオオオオオ!!!!」
その声と共に、いの一番にギルがオズワルドに向けて身体強化された肉体と共に加速、切りかかろうとするも止まる。
その先に行けないように、辿り着けないと言わんばかりに。
「おおっと、危ないですねぇ〜」
「貴様の事は一度だって忘れた事は無い!我が同胞達を遊びの様に改造し、けしかけたお前を!俺は断じて許す気はない!」
「ああ、あの即興劇の事ですかねぇ〜!あれはお楽しみいただけましたかぁ?」
「ほざけ!」ガァンッ!
それ以上に攻撃を重ねようとしたが、巨大ゴーレム騎士の別の場所に飛び移って攻撃を回避するオズワルド。
「はてさて、皆様にはここまで来てもらった為サービスをしなくてはなりませんっ!」
「戯言を」
「そこのあなた様にもですよ!貴方は私をここまで追い掛け、かつての輝いていた劇場を見たいと言ってくださるのですからぁ〜!もちろんもちろん、えぇ!
見せてあげますとも!」
まるでお客様がやってきた、と言わんばかりに舞いながら喜ぶオズワルドに対して歯噛みしながら怒りを抑え込むギル。
あの時の練習で耐性が出来ていたとはいえ、その怒りは簡単に抑え込めるものではなかった。
最早怒りの天元突破。抑えるのも最早無意味であると。
「そして……皆様ぁ!私から新たなメンバーの発表です!」
「何……?」
謎の新しいメンバーの宣言に対して、オズワルドはふふふと笑いながら腕を広げながらこう言った。
「新たなメンバー!ミレディ・ライセン!
そしてぇ、リチャードさん!」
「なん……だとぉ!?」
そう言いながら、オズワルドは新メンバー追加を喜ぶ様に隣にリチャードを荷物を置くように置いた。
そう言ってギルが振り返っていた時には、そこにいたはずのギルの姿はなかった。ものの一瞬で幻影を仕込んでいたようだ。
「っ、はぁっ!お前か!お前がオズワルドなんだな!?」
声を荒らげながら何故かタウル鉱石のワイヤーを振りほどいたリチャードが鉤爪を突き付けながらオズワルドに肉薄した。しかしオズワルドは何も憂う事なく、余裕で彼女の鉤爪の攻撃範囲まで近付く。
「くっ、来るな!お前の首は、今ここで跳ねて―――」
「それはそれとして。リチャードさん、貴女も新しいメンバーの一人ですからしっかりと私が教えてあげましょう!」
そう言いながら、リチャードの背後に回っていたオズワルドが彼女の肩を掴む。
「リチャードさん、貴女はとても認められたいのですよねぇ?」
「な……に?」
「何より、貴女を認めてくれる人はいない!貴女の力が憎くて憎くてしょうがない!
そんな貴女は誰にも認められませぇん!」
「黙れっ!」
そう吐き捨てながら、鉤爪を後ろに振るうがまた当たらない。
「しかし、認められないと言うのなら何に縋って生きていけばいいのか!分かりませんよねぇ、私も悲しくなってしまいます。うぇえん!」
「……」
「で、す、が!ご安心ください!私は団員達にチャンスを与えますっ!皆様が見たい世界を見せてあげることが出来るのですよっ!
お金持ちになれた自分、大切な人と結ばれた自分、最強になれた自分!どんなぁ自分でも私はそんな存在になれた貴女の世界を見せることが出来るのです!」
手を広げながらアッハッハ!と高笑いするオズワルドに対して、僕は魔法を飛ばす。
これ以上話せば問題になる、いや間違いなく―――何かが起こる!そう感じたからこそ、奴の喋っている合間に大量の魔法を展開し、攻撃していくが―――当たらなかった。
いや、当たったはずだった。しかしまるでこの世の何処にもいないかのように彼らの方から魔法が突き抜けた。
「な、っ……何処だ!?」
ギルも存在自体が本格的にリアルかのように感じていたのか、すぐに二人を見失っていた。
「ほーら、リチャード様……貴女様に見える世界!いかがですか?」
そして、後ろ側から聞こえてきた声に振り向く。
そこには―――リチャードが、笑みを浮かべながら立ち尽くしていた。
「は、はは!そうだろう、私は凄いんだ!誰からも認められる強さ!そして仲間を率いたんだ!ライセン大迷宮なんて失敗していない!全部お前達が悪い、ああ、ああ!そうだとも!謝り地面に這い蹲れ!私が一番であると認めてるお前が一番無様だな!相馬アキラ!」
そう言いながら、何処を見ているかの様に笑い涙を流し動き回るリチャード。
おそらく幻影を見せられているのは間違いなかった。しかし、止めることはもうできない。
ああなったリチャードは、最早言葉では呼び止められない。
「……なんだ?なんだ、お前は……」
しかし、空気が変わった。
「ああ、なんだ……心地よい……気分だ……そうだ、私は認められたかった……私を認めてくれるのか……?力を持つ者にしてくれるのか……?」
まるで誰かからの声に受け取るように、リチャードの姿がまるでケダモノの様に変わっていく。
「ああ、いつもそうだった―――世界は私を認めない、誰も彼もが私を忌み嫌うのだ。私こそが全てであり、私こそが一番であると言うのに……あなたの言う通りだ』
その声は、とても優しく暖かい。
『私が―――最強なんだ。一番だ、頂点なのだ。全て私に任せておけばいい……私は選ばれたんだ』
そうして、リチャードは―――ねじれた。
まるで醜く、辱めを受けた様に傷だらけで草木に飲まれた……虎のように。
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フィリップ君のヒロイン、誰にするか?
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八重樫雫
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園部優花
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その他原作組女子
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都市の女性組