ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。


※Library of ruina及びproject moonゲーム作品の著しいネタバレを含みます。ご容赦ください。





Ep.21 受け取ってくださぁ~い!

 

 

 

ハルツィナ樹海の記憶の世界から、駆け出し続けて暫く。

僕はリチャードに追いつき始めた。というよりリチャードが諦め始めている。

実際何時間走ったのか僕には分からなかった。だが、リチャードが諦めるくらいには走っていたという事になる。

リチャードは、ねじれになった自分自身の虎の肉体を存分に活かして駆け巡っているが……翼の生えた僕から逃げ出すなんてそんな事は出来なかった。

 

 

「まだ逃げますか?」

『うるさい、うるさい!』

 

 

そう言って、ブレーキをかけるように地面で滑りながら僕に対して虎の爪で引き裂かんと攻撃してくるリチャード。

だが両翼の盾によってその攻撃は防がれる。

 

 

『ぐ………!』

 

「〝茜示剣〟!」ザンッ!

 

『ぐぁぁぁっ!』

 

 

極炎と烙印を宿した蜜蝋の剣を振り抜き、リチャードの肉体は切り裂かれていく。

しかしまるで新しく芽生える植物の様にその体は再生していく。

厄介な能力だが、攻撃し続けていけば勝機はあるはずだ。

 

 

『来ぬ人を 松帆の浦の 夕凪に……決字百首〝来人焼〟』

 

「〝流炎剣〟!」

 

 

虎の爪の連撃と、流水と灼炎の剣戟がぶつかり合う。

しかし植物が炎に勝てる道理はなく、勢いの強い水は弱い草木を薙ぎ倒していく。

つまり今の折れたリチャードでは、打ち勝つことは出来ずに一気に押し切った後に連撃を打ち込んだ。

 

 

『がぁぁぁあ!!!!!』

 

 

体から血が溢れるリチャードを横目に、僕は蜜蝋の剣を突き付けながら詠唱を始める。

何故か、この世界では全くと言っていいほどライセン大峡谷の影響を受けない。自由に魔法を展開し放つ事が出来る。

 

 

 

「煌めくこの炎と共に、我が身を焦がす激情よ、どうかその剣を離す事なく突き進め、〝煌燃剣(グリッツェケル・シュヴェアート)〟!」

 

 

『世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る…決字百首〝世中山奥〟』

 

 

更に振り抜かれる爪と牙の猛攻を受け止め、今度はギラギラと燃え出す蜜蝋の剣によって一気に肉体に炎の炎上と烙印の炎がリチャードの体を燃やし尽くす。

 

 

『ぐぅうっっっっ!』

「まだ、やるかい?」

『まだ……まだ、ぐっ……』

 

 

少しずつ後ずさりしていくリチャードを見つめながら、僕は剣を収める。

リチャードはその隙に、一瞬で距離を詰めて攻撃してきた。防ぐことはせず鉤爪の連続の切断が僕の鎧を攻撃してくる……

 

 

「そうやって汚い手でも使って勝つのか、亜人は」

『黙れ……』

「何処が虎だ。お前の今の姿が分かるか?汚い手を使って獲物を狩る、醜く哀れな虎の姿が!」

『黙れ……!』

「そんなものだから―――お前は誰にも心を開かなかったのだ!」

 

 

 

『黙れぇえええええええええッッッッ!』

 

 

 

リチャードの怒りが、この攻撃越しからあらゆる連撃から伝わってくる。

最早虎というには堕ちた獣の連撃は僕の鎧を貫くことは出来ず、衝撃だけが伝わってきた。

しかしそれでも僕は全く倒れない。

 

 

『お前に、お前に!多くの人から認められ多くの人から信じられてるお前に!何が分かるんだ!私の!』

「……」

『私はっ、私は……』

 

 

そう言いながら、猛攻が止まった。

リチャードはその身体を揺らしながら、自分の頭を手で抑えた。

 

 

『どうして、誰も私を見てくれないんだ……私はっ、認められる為に何処までも努力は惜しまなかった!それなのに、私を見たのは私にスキルが発現し、そしてギル様の部隊に入った時にやっと多くの人が私を見た!

まるで、スキルやギル様の部隊に入っているという評価しか見てくれていないように!』

「……」

『私は……悔しい!私は頑張っているのに、他の人ばかりが見られている事が何より悔しい!

どうしてだ、どうして……どうして皆は私を見てくれないんだ……』

 

 

彼女の怒りの正体は、自分を見つめる者がいなかったからだった。

彼女は例え、馬鹿にされようと罵られようとどうでも良かった。

ただ、親からは認められる事もなく。

ただの未来には兵士になる子供としか思われず。

そうして育てられた彼女が、親から愛される事のなかった彼女が兵士となり。

その様な人間が人の命令を聞き、亜人の国の為に戦えるかと言われれば……怪しいだろう。

それは自分をそんな風に育て上げた親を守らなければならないという事なのだから。

そうしてどんな部隊からもたらい回しにされ、最後にやってきたのがギルの部隊だった。

もちろんギルの部隊には馴染めなかった。結局は愛を知らぬが故に愛を求める獣が、ただ自分を見てもらいたい、自分を認めて欲しいと考える兵士を受け入れるはずもなく。

結局は一人となり、ギルは彼女を育て矯正する役を買った。

 

 

 

「ギルから認めてもらえているのに、まだ足りないというのか?」

『認められてなどいない!結局は……私を哀れに思って助けていただけだ!』

「それはお前がそう思っているだけだ。ギルは、あなたの事をしっかりと認めていましたよ」

『嘘だ!』

「嘘をつく必要があるかぁ!」

「っ……」

 

 

怒りの声を放ちながら、リチャードに対して近付いていく。

 

 

「お前は、結局自分よがりの醜い獣だ。何が認められたいだ、何が見られたいだ!

お前はその為に何処までやり尽くした!お前はその為に何処まで折れそうになった自分を奮い立たせた!

それを体で経験したのか!そこまでの行動をお前はやったか!

やらなかった奴が、何をあいつらが悪いと言うようにグチグチと項垂れている!

お前は、お前が馬鹿にしていたような奴ら以下なんだ。

お前自身はそれを認めたくなくて、自分を認めない見てくれないそんな奴らが悪いとお前はそう()()()()()()()()()()!」

『ち、ちが―――』

「何が違う?言ってみろ。一言一句全部返してやる」

『………………』

 

 

リチャードは、遂に黙り込んでしまった。

何処までも愚かで、そして―――堕ちた獣だ。

 

 

「何も言わない、という事は認めるという事か?」

『…………あ、ああああっ…………』グッ

「ただ嘆くしかないのか?良心は痛まなかったか?お前はギルの思いの尽くを裏切ってきたのに?」

『やめろ、やめろっ、やめてくれ……!』

 

「お前は絶対に認められない。人を認めない、人を見ないお前が誰かに認められたい、見てもらいたいと思う事がバカバカしい。

自分が認めたくない、見たくない現実と言葉を否定し……

自分が認める、見ていたい理想と言葉だけを受け入れる。

お前の何処が認められるのか教えて貰いたいな!」

 

 

 

『嫌、嫌だ、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!』

 

 

 

そうして、リチャードは頭を抑えながら体の木叢がより深く生え出ていく。

成程これがねじれの能力……というより彼女の性質。

自分に強い感情が加われば、木叢が自分を覆っていく。

しかし、顔は出そうと思えば出せる。自分が見ていたい光景を見れるように。

ただ自分の体の周りを……木叢が覆い尽くすだけで。

おそらく彼女の今の在り方がそれに影響されているのだろう。

“都合のいい現実だけを受け止め、都合の悪いものだけ見たくないと覆い隠し、獣としての体で守る”……都合のいい様な獣である。

 

 

『もう、嫌だ、やめてくれ……』

「お前がその姿になったのも、お前がその力を欲しがったのもお前の傲慢なその思考が原因だ。

殺して、消してやらなければならない」チャキッ

『あ―――あ、あぁぁっ!嫌だ!やめて、やめてくれ……!』

 

 

リチャードは、より遠くへ逃げようと駆け出すがすぐに〝縮地〟で距離を詰めた僕の剣戟によって足を切り付けられ、横転する。

更に〝烙印〟が付与された体が燃え、後ろ足が再生しない。

 

 

 

『い、痛いっ……!』

「もう動けないな」

『ひっ……!』

 

 

前足で何とか動こうとするリチャードの前足を、一切容赦なく斬りつけて烙印が付与される。

これで前足もダメになった。

 

 

『どうしてっ、なんで……私だけが!』

「お前だけが?ここまで来てお前は、自分が悪くないと思っているのか?」

『っ……』

「全部、リチャード……お前が引き起こしたんだ。

お前の傲慢さと、その醜い認められたいという思いが!今のお前を作ったんだ!

死んで、猛省しろ」チャキッ

『あ……あぁ…………』

 

 

獣としての姿は、最早失われていた。

リチャードは力を放棄した。しかし彼女のこの世界は続いている……カルメンさん、あなたは何処までも鬱陶しいですね。

 

 

「……し、にたくない……」

「ダメだ。今、この場で始末する」

「た、助けて……」

「ダメだ」

「い、命だけは……どうか……」

 

 

 

「ダメだ」

 

 

 

そうして、彼女は涙を流しながら泣きじゃくり始めた。

僕は容赦なく剣を構える。間違いなく首を取る為に。誤差なく、差異なく絶対に首を抉り取る為に。

 

 

 

「……」

「あ、ぁぁっ……うっ、ぐ、っぁぁぁ……!」ポロポロ

「泣いた所で、現実は変わらないぞ」

 

 

容赦なく、僕は彼女に剣を振るう事実を伝える。

それでも彼女は、泣き止まない。

 

 

「〝煌燃剣〟」

 

 

ギラギラと炎が煌めく、蜜蝋の剣を構える。

 

 

「この激情と共に―――燃え上がれ」

 

 

そう呟きながら、僕はリチャードに向かって……灼炎の剣を突き刺した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あ、あぁぁぁっ………………ぁ…………?」

 

 

 

 

そうして、リチャードの身体は完全に燃え上がっていた。

焼け死ぬとリチャードが察してしまう程、その身体は炎に包まれていた。

だが、不思議と不快感はなかった。

まるで暖かい炎に包まれ、抱き締めれているような。

目の前にいる相馬アキラはリチャードを見つめながら、剣を収めた。

 

 

「気分は晴れましたか?」

「……な、ぜ……私は、生きて」

「あなたの傲慢さは大概です。最早そういう病気かと思う程には酷いですよ、あそこまで来て自分が生き残れると信じている人ですから」

 

 

リチャードに対して、アキラは罵倒する。

しかし事実。リチャードは反論できずに涙を瞳に溜めることしか出来なかった。しかしそんなリチャードに対して、アキラはしゃがみこんできた。

 

「けどですね。僕は、認められたかった時は多くありましたよ」

「……は?」

「僕には大切な恩師がいます。サルヴァドールさん、ユナさんです。

剣の才能がなくて、いつも後ろで二人の援護ばかりして、引け腰の僕を二人は助けてくれました」

「……」

 

自慢か?と少なくともリチャードは思った。

 

「けど、そんな僕の気持ちは―――死ぬ程惨めでした。

どうしてここまで助けられていて、僕は二人に恩を返せないんだろうと。

僕はどうしてここまで弱いのか。そう悩む程には……昔の僕はとても弱かった。

寧ろ、僕は人を守る為なら命を懸けれると愚考するくらいには馬鹿でした」

「……」

「そして、僕は見事にその愚考のせいで五人の仲間を失いました」

「は……?」

「人の為に命を捨てれる、そう思っていた僕は見事にその不条理と現実を突き付けられました。

何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

結局そう思えるだけは簡単だった。思うだけで行動に移せなかった。

だから、僕は五人の仲間を失った。

何故ここまでにも僕は、愚かなのか。

それは結局逃げてばかりだから……自分が守られて、弱いから。

弱さと逃げ腰を言い訳にして現実から目を背けたから」

「……」

 

 

リチャードは何も言わない。ただ、アキラの言葉を受け止めるばかりだった。

 

 

「だからこそ、立ち上がった」

「立ち、上がった……?」

「僕の為に、もう泣いてくれる人はいない。僕の為に悲しんでくれる人は、僕が殺した。

なら僕には……もう泣いてる暇も悲しんでる暇もなかった。

立って、立ち向かわなければならなかったから。

だからこそこの翼がある。五人が僕を生き残らせてくれたから、今の僕があるから。

リチャード、君はどうする?」

「どう……する」

「君は最低だ。よくこの世界で生きていられたなってくらいのクズだ」

「…………」グスン

「だが君の執念は本物だ。寧ろよくここまで生き残れてるくらいには。

君は今世の中の不条理を体験したと思う。死ぬ程追い込まれて変わらない現実を突き付けられた。

今生きる希望なんてないと思う。それなら君はどうする?僕を殺して、生きるか。それともくたばるかその他か」

 

 

リチャードは押し黙る。しかし、考えてはいた。

 

 

「私は……今でも、誰かに見ていて欲しいし認めてもらいたい気持ちがある」

「まぁ、反省してなさそうだし」

「そんな私を、何故助けるんだ」

 

 

リチャードの、唯一の疑問。それはここまで追い込んで、追い詰めて、問い詰めた後に手を差し伸べてくる今の姿である。

この世に生かしちゃいけない、不必要な存在であるのなら殺せばいい。だが自分は生きていて、何故か心はスッキリとしていた。

 

 

「君に同情出来ない訳じゃないんだ。君は親にも周りにも期待されなかったからこそ、その様に歪んでしまった」

「……」

「だからこそ、そんな事は繰り返してはいけない。不必要な存在はあまり存在しないんだ。だからこそ……

僕は君の様な存在でも、助けてと言われたら助けるよ」

「……!あの時のをか!?」

「ダメだって言ったけど途中でやっぱり変えるつもりではあったから。

命が助からないと思ったら基本抗うのに、君は抗わなかった。それは、君も悪いと思っている証拠だ。殺されても仕方ないと思ってる」

「それは……」

 

 

リチャードのあの思いは本物でもあるし、逆に自分の身を守る為の詭弁だったのかもしれない。

だが彼女の、認められるまで努力し続ける姿と他人に何と言われようとも折れない心は本物だった。

偽物でも、詭弁でも嘘でもない。本物の強さだ。

 

 

 

「アキラ……お前は何者なんだ?」

「僕は、相馬アキラであり―――フィリップだ。

僕は、前世の記憶がある。そして昔、別の世界で残響楽団だった」

「!」

「だからこそ、僕はその罪を償う為に君を絶対に助けるしオズワルドは必ず僕が倒さなくてはならない。

君が憎いと思ったのなら、僕を殺せばいい」

「……憎い、か。最早その感情すら……枯れ果てているのだがな」

 

 

リチャードは拳を握り締めながら、立ち上がる。

 

 

「私は……私自身の傲慢さを乗り越えられるだろうか」

「そこは傲慢さを出さないと」

「……なら、乗り越える他ないのだろうな」

「そうだね。さぁ、飛び上がろう……例えそれが君の罪の先だとしても」

「助けてくれるのか……?」

「君が助けを呼ぶのなら」

 

 

 

そして、リチャードはアキラを見ながら少しだけはにかむように笑うと共に―――誰かの声が聞こえた気がした。

僕が振り返ると、黒髪の白衣姿の男が後ろ側にいた。

前には立たず、僕達に対して目立つ事もなく。

ただ一つ、その男は言い残した。

 

 

「ありがとう。恐怖に直面し者よ。

そしてどうか彼女(カルメン)を止めてくれ」

 

 

しかし僕は、その答えに対して。

 

 

「ならもう少し、お喋りする気くらい起こしてくれませんかね―――」

 

 

そう返し、男は苦笑しながら……一つの紙を僕に手渡して消えていき。世界は元に戻った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

世界が戻り、僕達が戻ってきた。

 

 

 

「な、なんですってぇ〜!?」

「はぁっ!」

「おほんほん!まさかあれから目を覚ますとは!」

 

 

 

リチャードが、元に戻ってきたのを境に。

ねじれていた彼女の姿は元に戻っていて、もうとっくに鉤爪を展開していた。

ミレディ・ライセンの肩の上に乗ったオズワルドが驚愕の表情を浮かべながら、ギルの攻撃を避けていた。

相変わらず抜かりのない奴だ。

 

 

 

「しかぁし!私も負けていられませんのでぇ……おいでなさい、“うさぎさん”!」

 

 

ズンッ―――という音と共に、更にミレディ・ライセンと同等の大きさを誇る巨大な筋肉の膨張したピエロが現れた。

ミレディ・ライセンが自分に立ち向かう用のロボットでも開発していたという事だろうか?

すると、ミレディ・ライセンのを避けながら一人の影が僕の所まで下がってきた。

 

 

 

「アキラ!また何処か行ってたの!?」ザッ

「ハジメ君!」

 

 

 

ハジメ君はしっかりとオズワルドと戦っていて、向こうではユエさんとシアさんがミレディ・ライセンと戦っていた。

シアさんの方は苦しい様に見える……だがユエさんのサポートが上手く噛み合っていて抑えれている様子だった。

 

 

「ごめん、リチャードを助けに行ってた!」

「何とかなったの?」

「何とか!」

「じゃあ、反撃するよ!」

「もちろん!」ザァッ!

 

 

すぐに僕とハジメ君が飛び出し、ハジメ君はミレディ・ライセンに。

僕はオズワルドの操る“うさぎさん”へと向かっていく。確かに巨大だが、今の僕には両翼の盾と蜜蝋の剣から撃ち込まれる烙印と極炎がある。

 

 

「フィリップさぁ〜ん!何故戻ってきているんですかねぇ!」

「〝煌燃剣〟!」ザンッ!

「おぉっとぉ!」

 

 

極炎がオズワルドの操るゴーレムに対して体を融解させながら、更に灼炎の烙印が爆発して更に肉体を破壊していく。

 

 

「おぉっ!凄い爆発ですねぇ!」

「〝茜示剣〟!」

 

 

〝宝物庫〟から取り出されたニクスとスティグマの二刀流から一気に剣戟から撃ち込まれ、オズワルドの乗るゴーレムの肉体が簡単に切り飛ばされる。

 

 

 

「そんなぁ!私の団員が!」

 

 

 

しかしオズワルドにとって、もう一つ盲目だったのは―――

 

 

 

「遂に隙を見つけたなぁあ!!!」

「な―――ごはぁっ!?」

 

 

 

ギルの鉤爪と直剣の剣戟が背後から打ち込まれ、オズワルドの肉体から鮮血が舞い散った。

僕に対して目を掛けすぎた、更にミレディ・ライセンの事も気にしているというのなら背後が疎かになっていてもおかしくなかった。だからこそギルはその隙を見逃さなかった。

 

 

 

「アキラ!行くぞっ!」

「ええ!」

 

 

 

そして、ギルと共に一気に攻める。

加速したギルとの連撃と共に、僕がその隙を埋め込むようにオズワルドへの連撃を行う。

亜人の身体能力と、僕のエゴの機動力とスキルで共に出来る〝豪脚〟と〝瞬光〟、〝金剛〟や〝天歩〟による攻撃と防御の合わせ技。

最早オズワルドは、自分自身の幻影を出して対抗は出来なくなっていた。

 

 

「ぐぅっ!さ、流石ですねぇフィリップ君!ですがまだまだ幻影は」

「〝茜示剣〟!」ゴォッ!

「げぇええ〜!?」

 

 

すぐに幻影を大量に飛ばしてくるが、僕の〝茜示剣〟はエゴ発現している間はかなりの範囲に炎を飛ばす。それが〝限界突破〟した肉体で放たれる剣圧が斬撃となって更に遠くまで届く。何処まで飛ばそうとも逃げようともこの攻撃は避けられない。

 

 

 

「しかし、私ばかり気にしていて良いのですかねぇ!」

「〝煌燃剣〟」

「ひぇえ〜!容赦がありません―――」

「おらぁぁぁっ!」

「ぐぉぉぉっ!?」メキャァッ!

 

 

僕の連撃に対して、回避を繰り返していたが横から飛んでくるギルの飛び膝蹴りが打ち込まれ回転しながら吹き飛ぶ。

ここまで来ればリチャードに何かをしても止まらないだろう。

そして、吹き飛んだオズワルドはどういう原理で起き上がっているか分からないが、むくりと起き上がった。

 

 

「おほっほっ……!いやぁ、フィリップ君!素晴らしいですねぇ!あなたもとても強くなり逞しくなりましたっ!」

「〝煌燃―――〟」

「だからこそ、今全部を持ってしてあなたを倒しますよぉ!!パ~ン!パパン!!」バァッ!

 

 

オズワルドが手を広げると共に、赤色に塗られたゴーレム騎士達が巨大なカラーボールとなって生まれ変わる。

そして、ゴーレム騎士達が持つ剣や盾も小さなカラーボールへと生まれ変わる。

嫌な予感が、汗となって僕の背中に伝う。

 

 

「皆様に、沢山のボールの雨をプレゼントしますよぉ!」

 

 

「オズワルドォッ!」

 

 

 

しかし、オズワルドの行動を振り切ることは出来ず盤面に大量のカラーボールが降り注いだ。

そのボールが一度地面に降り注いだ瞬間、破裂しゴーレム達の破片が音速で飛んでくる。何が笑いを起こすから分からないが、殺す気満々の攻撃であることは自分も理解した。

僕は〝両翼之盾〟を展開し、ファタールは〝反射〟の魔法をハジメ達に展開するが魔力が足りない様に見える。

しかし一番は―――リチャードに届かない!

僕は翼の盾を展開しながら、ボールを突き抜ける様に駆け出した。

 

 

「リチャードッッッ!避けろぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

腹から声を出しながら、リチャードに対して身を守れと叫ぶ。

しかしリチャードまで間に合わない。

手を伸ばしても――リチャードに届かない!

 

 

「―――!」

 

 

 

そして、僕が手を伸ばしている瞬間に加速した影が飛び出した。

 

 

僕はそのまま一瞬の隙を逃さず、リチャード達からオズワルドの方向までのカラーボールの爆撃を耐える為に前に立ち塞がる。

しかし、リチャードに覆い被さる影はリチャードの表情を深い絶望に染めた。

 

 

 

「―――ギル様っ!?」

 

 

 

そして、カラーボールの爆撃が広がると共にゴーレムの破片が全てを穿たんと襲いかかった。

 

 

 






フィリップ君のヒロイン、誰にするか?

  • 八重樫雫
  • 園部優花
  • その他原作組女子
  • 都市の女性組
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