どうか、あなたの物語が見つかりますように。
そして、新たな一つの章を終え次の頁へ進めますように。
リチャードを背負いながら、オズワルドの肉体を消失した事をキッカケに僕達はハジメ君達の元へと到着した。
そこには完全に胸の心臓部分を大きな杭に貫かれ、倒れていたミレディ・ライセンのゴーレムだった。
「倒したの?」
「うん……アキラの方は?」
「……倒したよ」
「そっか」
ハジメ君の淡白な回答が飛んできたが、その答え方とは裏腹にハジメ君の拳は握り締められていた。おそらく……僕が胸に抱えている、上半身のみで目を瞑った
そんな中、ミレディ・ライセンのゴーレムは僕達の方に目を合わせてきた。先程まで浮かび上がっていなかった目の光に対して僕はスティグマを手に伸ばした。
「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」
その声にハジメ君も驚き、すぐさま腰の〝ドンナー〟と〝シュラーク〟を取り出しながら突きつけるも慌ててミレディは訂正した。
「ちょっと、大丈夫だってぇ~。試練はクリア!君たちの勝ち!核の欠片に残った力で少しだけ話す時間をとっただけだよぉ~、もう数分も持たないからさぁ」
ミレディ・ライセンはそのまま倒れた姿のまま会話を続ける。実際僕が見ている目の光は点滅を繰り返していて、今すぐにでも光を失ってしまいそうな形だった。
「それで……僕達に対して何か感謝の言葉とか与えられるべきかなと思うけどね」
ハジメ君の鋭くも痛い言葉に、何となく苦笑いめいた声を出しながらミレディ・ゴーレムは肩を竦めた。実際、精神操作されていたのは本当なのである。
「まずは、ありがとう。私を解放してくれてさ……それと、これは別で話したい……というより忠告だね。その強さ的に、多分オスカー君の所出身に見えるけど……もしもアイツらと戦うつもりなら、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……何を叶えるか分からないけど、きっと君の願いの為に必要だから」
途切れ途切れになってゆく言葉を上手く紡ぎながらだが、ミレディ・ライセンの強い感情が含まれていた。実際意地汚い(絶対に否定させないけど)ミレディの性格とイカれたオズワルドのぶつかり合いは相当に酷かったに違いない。
「全部……か。なら他の迷宮の場所を教えてくれないかな。失伝していて、殆ど分かってないんだ」
「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所が分からなくなるくらい……時間経ってたのかぁ……場所はね……」
僕が手帳を取り出し、メモをしている間にミレディ・ライセンの声が力を失い始める。どこか感傷的な響きがある声には、ユエさんやシアさん女性組が神妙な表情をする。長い時をを使命に費やしてきた彼女はゴーレムに魂を宿して生き永らえた気持ちは計り知れない。
「―――以上だよ。頑張ってね」
「……随分としおらしいね。看板で喋ってたあのうざったらしい喋り方はなんだったの?」
「あはは、ごめんね~。でもさ……残響楽団も、あのクソ神も……本当に、嫌なやつで、さ……私大嫌いだし、私こんな目に遭うし本当に、もう嫌になっちゃうくらい……」
「クソ神……」
ハジメ君の、本当にそいつと戦う気があるか分からないような声音で語る言葉に対して喝を入れるようにミレディ・ライセンは伝えてきた。
「君達に助言しておくけどね……残響楽団と戦うなら……あのクソ神とも戦うよ。必ず……君達は、神殺しを為す」
「肝に命じておきます」
そして、僕の方が会話に参加するとミレディ・ライセンは僕を見て驚いた表情(目が険しく動いていた)を浮かべていたが……すぐに落ち着きを取り戻した。
「ふふ……君が、あいつ倒してくれたんだ。名前は、なんて言うの……?」
「相馬アキラです。そして……本当の名前はフィリップ。
僕は別の世界線で、残響楽団の一員だったものです」
その言葉を聞いた瞬間、ミレディ・ライセンは驚いた表情を浮かべたが……怒りで僕を殴り殺す事などせずにただ、悲しい表情を孕んだ瞳で僕を見てきた。
「そっか、君は……その罪に向き合う為に、この世界に来たみたいなものなんだ……」
「それは、分かりませんけどね」
「大丈夫。怒ってないから……だから、絶対にアイツらと戦っても、折れないでね……君が折れたら、きっとどんな人だって折れてしまうから」
「……折れませんよ。倒れるだけなら何度だって立ち上がれますから」
その声を聞いたミレディ・ライセンに、安堵の表情を浮かべながら青白い光が天から降り注がれた。
まるで魂は元のあるべき場所に戻る様に戻っていくように、彼女のゴーレムの体からキラキラと煌めく光が溢れ出ていく。
その様子を見たユエさんが、永い時を生きてきた者としてのねぎらいをミレディ・ライセンに施しながら……最終的には満足したかのような表情(目の光の点滅が穏やかになっていた)を浮かべて喋り出した。
「さて、時間みたいだね……君達のこれからが、自由な意志の下に、あらんことを」
オルクス大迷宮のオスカーと同じ言葉をハジメ君達と僕らに贈って、〝解放者〟の一人であるミレディ・ライセンは淡い光となって天へと消えた。
辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエさんとシアさんが天に目線を向けていた。
「さて、さっさと先に行こうか。ああそれと、しんみりしてる所断言するけどミレディの根性の悪さも素だと思うよ? あの意地の悪さは、演技ってレベルじゃないと思うし」
「ちょっと、ハジメさん!そんな死人にムチ打つようなことを!」
「……ハジメ、KYだったり?」
「ユエ……まぁ、空気は読まないよ。読めないじゃなくて、敢えて読まないだけ」
ハジメ君達が雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がつく。気を取り直して、その場所に向かっていく。上方の壁にある為、まだ発現している僕の翼で全員が向かいながらと、光る壁までハジメ君達を運んでいく。
僕はその光る壁の手前五メートル程の場所でピタリと動きを止めると、光る壁はまるで見計らったようなタイミングで発光を薄れさせていき、スッと壁のブロックだけが前に押し出され、僕がそれを避けて前を見つめると……奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いていた。
まるでオルクス大迷宮のあの奥までの扉の様だ。
そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処はの扉があり、そこには刻まれていた七つの紋様と同じものが描かれた壁が存在していた。僕達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。
そうして潜り抜けた先にいたのは……
「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」
小さなミレディ・ライセン……元いミレディ・ゴーレムがいた。
「「……」」
「ほれ見た事か」
言葉が出なくなったユエとシア。ハジメ君の方は予想がついていたようで、うげぇとした表情を浮かべていた。
ハジメ君がミレディが生きていると気付いたのは、ミレディ・ライセンが自らの意思をゴーレムの体に残して、挑戦者を選定する方法をとっているとすれば……一度の挑戦者が現れ撃破されたらそれっきりは相当な問題である。だからこそこんな結末がハジメ君の頭の中には「胡散臭いなぁ」という内容ばっかりだったのだろう。
黙り込んで顔を俯かせるユエさんとシアさんを僕は横目に、ミレディ・ゴーレムが非常に軽い感じで話しかけてきた。
「あれあれぇ?テンション低いよぉ~?もっと驚いてもいいんだよぉ~?あっ、それとも驚きすぎても言葉も出ないとか? じゃあドッキリ大成功ぉ~だね☆」
その言葉を境に、ユエさんとシアさんが質問を返しまくっている。いや本当に、ミレディ・ライセンとオズワルドの性格はあまり変わらないんじゃないかと感じてきた。言葉を伸ばすところとかウザイ口調とか特に。
そして、あまりにも二人を怒らせすぎたミレディ・ゴーレムが二人にしばき倒されそうになっている所をハジメ君が二人の前に立ち塞がる。
「……ハジメどいて、そいつ殺せない」
「退いて下さい。ハジメさん。そいつは殺ります。今、ここで!」
「そのネタをこのタイミングで聞くとは思わなかった。っていうかいい加減遊ぶのはやめてやる事やろっか」
ハジメ君の方は部屋全体を見つめて色々と探し物を見つける様な観察をしていたが、さっきの後世には若干呆れた表情でユエさんとシアさんに軽い注意をした。背後のミレディ・ゴーレムが「そうだ、そうだ、真面目にやれぇ!」とか言ってはやし立てた事がきっかけで顔面にアイアンクローをぶち込まれていた。
「このまま愉快なデザインになりたくないよね?嫌ならすぐに話進めてもらっていい?」
「ぎゃぁあ!!!言動が完全に悪役だと気づいて欲しいなぁ!!!」
「なるほど、愉快なデザインがお好みと」メシメキ
「アーッ!了解であります!直ぐに渡すのでありますっ!だからストォーップ!これ以上はホントに壊れちゃうからぁ!」
ジタバタともがくミレディ・ゴーレムはこれ以上ふざけると本気で壊されかねないと理解し、ようやく魔法陣を起動させ始めた。
魔法陣の中に入る僕達。今回は、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。オスカーの時の様な記憶を見ている最中に刷り込まれていく形ではないようだ。
ものの数秒で手に入れる工程はあっさりと僕達はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れた!
「これが二つ目の神代魔法かぁ。重力関係だと思ってたら本当に重力だった」
「そうだよぉ〜、ミレディちゃんの魔法は重力魔法☆
上手く使ってねぇ〜って言いたいところだけど、君とウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないねぇ!」
「やかましいなぁ」
「まぁ君達はともかく、金髪ちゃんとそこの君達は全員適性ばっちりだね。修練すれば充分使いこなせるよ〜」
意外にも、僕達はミレディ・ライセンの重力魔法に全員適性があった。まぁ僕は生成魔法を上手く扱いこなせてないので、足りない部分があったが……リチャードにも適性があるとは。
そして、そのタイミングでリチャードも目覚めて僕の背中の所でもぞっと動いた。
すぐに彼女を降ろすと、彼女は僕が両腕で抱える介抱した彼を明け渡す。これは本来彼女が眠らせるものだ。
しかし、リチャードはミレディ・ライセンの前に立つと共にゆっくりとギルの遺体を降ろした。
「……ミレディ・ライセン。どうかこの傲慢な獣から一つだけお願いがあるのだ」
その声は、強い信念と願いが込められていた。
「……君は亜人だね。まさかここまでやってこれるのはそこのウサギちゃんに続き君もとは」
「そうだな、いや……ギル様も、やってきたのだ。この方も試練を乗り越えた一人なのだ……私が不甲斐ないばかりに、私を庇ってくださった」
「……そっか」
「だからこそ……ギル様をこの大迷宮を攻略したことを、後世まで伝えてくれないか。そして、ギル様をこの迷宮で眠らせて欲しい。きっとそれを望むだろうからな……」
リチャードのその言葉には、恩師が最後まで輝いていた場所での墓場を与えてあげたいという傲慢じみた願いと……自分の罪を認め、そして目を逸らさずに見つめていくことを決意した表情であった。
ミレディ・ゴーレムも「分かったよ」と言ってギルの遺体をしっかりと受け取った。
「それじゃあ、出来るだけ君達には託しておくよ……一応私も、迷惑をかけたからさ」
ミレディ・ゴーレムは、ごそごそと懐を探ると二つの指輪を取り出し、それをハジメ君と僕に向かって放り投げた。しっかりと力を込めて受け取って、紋様を見てみると……ライセンの指輪は楕円形の紋様を浮かべていた。
あの石版に描かれていた紋様と変わっていない。しっかりと確認した後に〝宝物庫〟に預けた。
そして、更に虚空に大量の鉱石類を出現させる。おそらく〝宝物庫〟を持っていたのか、そこから保管していた鉱石類を取り出してハジメ君に手渡していく。やけに素直に取り出したところを見ると……ミレディはエヒトと残響楽団達に対してハジメ君が戦うことを確信しているようであるし、このくらいの協力は惜しまないのかもしれない。
ハジメ君がそれらを受け取り、少し頭を搔いてから「それじゃあ帰ろっか」とユエさんとシアさんの方を見てそう言った。僕達も帰る準備をしながら、リチャードはミレディが抱えたギルを見ながら一つ、一礼と共に敬礼した。
僕も、改めてギルに対して一礼と敬礼を施した。それが彼に対する一番の殉職の詫びでもあったから。
「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノで、しかも私自身変なキワモノに操られるし……まぁいいや。それじゃあ君達を外に出すよぉ。戻ってきちゃダメだからねぇ〜?」
そういいながらミレディ・ゴーレムは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。
「「「「「?」」」」」
「……はぁ」
一瞬、何してんだ?という表情をするハジメ君達と僕とリチャード。まるでファタールは分かっていたような表情だが、その耳にガコン!という嫌ほど聞いてきたあの音が再び聞こえた。
「「「「「!?」」」」」
そう、トラップの作動音だった。
その音が響いた瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面からではなく斜め方向から水鉄砲の如く噴出する水は瞬く間に部屋の中を激流で満たされた。
同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。
「もしかしてこれ!?」
ハジメ君が額に青筋を浮かばせながらミレディを見つめると……その表情はニヤニヤとしたものだった。
この部屋は白く、そして大量の水に真ん中に開いた穴は完全に便器を彷彿とさせた。
「本当はこれ、ミレディちゃんがあのイカれピエロにやるつもりだったけど〜、まぁ追体験って事でお試しさせてね☆」
そう言ってウインクするミレディ・ゴーレム。ユエさんも流石に怒りのあまり、今ある魔力で風魔法を使おうと手を伸ばす。
「〝来…〟」
「させなぁい!」ドォンッ!
「!?」
ユエさんが〝来翔〟の魔法を使おうとした瞬間、ミレディ・ゴーレムが右手を突き出して、同時に途轍もない負荷が僕達に襲いかかった。上から巨大な何かに押さえつけられるように激流へと沈められる。重力魔法で上から数倍の重力を掛けられたのだろう……これをオズワルドにやろうとしたのなら、本当にひどい仕打ちである。
「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」フリフリ
「ごぽっ……くそっ、僕達汚れ物でしたっけか!いつか絶対破壊してやる!」
「ケホッ、許さない……」
「殺ってやるですぅ!ふがっ!?」
「これも全部オズワルドのせいということで」
「異論ない」
「はぁ……」
僕達はそう捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていった。穴に落ちる寸前、ハジメ君だけは仕返しとばかりに何かを投げたようだが……結局投げ込まれたものの真実は知れず、しかして僕達は流されていったのだった。
「ふぅ~濃い連中だったねぇ~。それにしてもオーちゃんと同じ錬成師、か。ふふ、何だか運命を感じるねぇ……それに、フィリップ君だったっけ。彼も〝あの人〟と同じ様にとても強い信念を感じたよ……願わくば彼らに幸せがあるように祈っておこうかな。
……さて、死体を操る趣味は無いけど……本当に念の為、ちょっとだけ失礼するね、〝最も偉大なる死〟を迎えた戦士さん」
そう言いながら、ギルの体を小さなゴーレムに明け渡した瞬間にコロンと何かが転がる音が響いた。
「へっ!? これって、まさかッ―――」カッ
情けない声が大迷宮に響いたというそうだが、その真実は誰も知らない……
一方僕らは、汚物の如く流されたハジメ君達と共に激流で満たされた地下トンネルのような管を猛スピードで流されていた。ひたすら水中を進む。呼吸は出来ないし、壁に激突して意識を失うような下手だけは打たないように必死に体をコントロールしながら。
しかしそんな時にハジメ君と僕とリチャードの視界が自分達を追い越していく幾つもの影を捉える。それは、魚だった。どうやら流された場所が他の川や湖とも繋がっている地下水脈だった。しかし魚としての優位性を見せつけてくるかのように魚達は僕達を追い越していった。
そして……その内の一匹が、いつの間にか必死に息を止めているシアとリチャードの顔のすぐ横を並走ならぬ並泳していた。何となくその魚に視線を向けるシアとリチャード。
目があった。
魚ではあるが人間の顔、それもおっさん顔の目と。シアとリチャードの目があった魚は人面魚だったのだ。どこかふてぶてしさと無気力さを感じさせるそのおっさん顔の人面魚。
驚愕に大きく目を見開くシアとリチャード。お互いに目を合わせて現実が確認したがお互いの苦しさはあったので現実であった。思わず息を吐きそうになって慌てながらお互い両手で口元を抑えた。しかし、驚愕のあまり視線を逸らすことができない。シアとリチャードはおっさん魚は見つめ合ったまま激流の中を進んでいく。
永遠に続くかと思われたシアとリチャードとおっさん魚の時間は、唐突に終わりを迎えた。シアとリチャードの頭の中に声が響いたからだ。
―――何見てんだよ。
舌打ち付きで。今度こそシアとリチャードには耐えられなかった。水中でブフォォッ!と盛大に息を吐き出してしまった。
後に残されたのは、白目を向いて力なく流されるウサミミ少女と、ぐるぐる目でただゆらゆら流されるトラミミ少女であった。
――――――――――――――――――――――――
僕達がしっかりと意識を取り戻したのは、水面から顔を出したタイミングだった。
「ゲホッ、ガハッ……はぁ……っ、酷い目にあった。あいつ何時か絶対に破壊してやる。ユエ、アキラ君、シア。無事?」
「ケホッケホッ……ん、大丈夫」
「な、何とか……」ビチャア…
何とか水面に上がりながら、悪態を付きながらユエさんとシアさん、そして僕の安否を確認するハジメ。しかし、返ってきたのはユエと僕の返答だけだった。
「シア?おい、シア!何処行ったんですかあのバカウサギ!」
「シア……どこ?」
「シアさん!?ファタール!」
「はい」
「シアさんと……あれ、リチャードは!?」
「見ておりません」
周囲に呼びかけるが気配はない。ハジメ君と僕は、急いで水中に潜り目を凝らす。すると案の定、シアとリチャードが底の方に沈んでいくところだった。意識を失っているのもあるが、シアさんはハンマーが重くて沈んでるに違いない。リチャードは……腕と足の獣毛が水を吸収して沈んでいるのだろう。
ハジメ君、〝宝物庫〟から圧縮した超重量の鉱物を取り出すと、それを重り替わりにして一気に潜行しシアを引っ張り上げに行く。僕もファタールに頼んで鎧の誓約を外してもらい、エゴを無理くりに発現させて飛び込んでリチャードを救出した。
岸に上がり、仰向けにして寝かせたシアさんとリチャードは顔面蒼白で白目をむき呼吸と心臓が停止していた。よほど嫌なものでも見たのか、意識を失いながらも微妙に表情が引き攣っている……何を見たのかはさておきだ。
「ユエ、人工呼吸を!」
「……じん…何?」
「あ~、だから、気道を確保して…」
「???」
「ファタールさん、電撃の魔法使えますか?」
「使えません……」
「くっ……やる他ないか」
シアの容態を見て心肺蘇生を試みようとユエさんに指示を出すハジメ君だが、ユエさんは頭上にハテナマークを浮かべていた。この世界には心肺蘇生というものがないのかもしれない。ユエさんに魔法を使わせてもおそらくろくな魔法で起きないだろう。寧ろ悪化する可能性が出てきた。
いつから意識を失っていたのかわからない。一刻を争うことは確かだったので、ハジメ君はシアさんに、僕はリチャードに心肺蘇生を行う。
僕は一切の容赦なくリチャードの服を〝ナハト〟で引き裂き、無駄に水を吸った服をどかす。炎魔法で水を温めながら、万が一は〝纏雷〟で擬似的にAEDをやるつもりだ。
ここまでする理由は……分からない。だがリチャードは生きるべきだ。きっとギルにも思いを託されている。だからこそ恥や思いを抜きにしてしっかりと助けるべき命は助ける。
「(だから起きてくれ、リチャード……)」
何度目かの人工呼吸のあと、遂にシアさんとリチャードが身が水を吐き出した。水が気管を塞がないように顔を横に向けてやるハジメ君を参考にして僕もそうした。体勢的には完全に覆いかぶさっている状態だ。
「ゲホッゲホッ…………ハジメ、さん?」
「はいはい、ハジメさんですよ。まったくこんなことで死にかけてッん!?」
「リチャード、起きましたか?」
「え、ぁ……///」カァァァッ
むせながら横たわるシアさんに至近から呆れた表情を見せつつも、どこかホッとした様子を見せるハジメ君がそんなハジメさんを突如、ガバッと抱きつきそのままキスをし始めた。まさかの反応と、距離が違かったのかハジメ君は防げなかった。
「んっ!?んー!?」
「こ、このっ、不埒者がぁぁぁあ!決字百首〝嵐龍〟!」
「ちょっ、あぁぁあ!!!!!!???」ドゴォッ!
新たな仲間と共に、二つ目の大迷宮の攻略を成し遂げたハジメ君と僕達は、頬を引き攣らせながらもまぁ無事で生きて帰れたしいっか…とぶっとばされる僕はしみじみしながは普通に墜落したのだった。
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モリア・リチャード 16歳 女 レベル:29
天職:詩詠者/草叢の高虎
筋力:120
体力:120
耐性:110
敏捷:150
魔力:300
魔耐:300
技能:詩詠[+身体強化][+肉体強化][+全身強化][+斬裂強化][+加速高速][+首詩短縮]・重力魔法
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フィリップ君のヒロイン、誰にするか?
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八重樫雫
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園部優花
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その他原作組女子
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都市の女性組