どうか、あなたの物語が見つかりますように。
※Library of ruinaのネタバレを含みます。ご容赦ください。
「(なんだよ、これ……なんなんだよ、これは!)」
ウルの町を襲撃する数万の魔物の大群の遥か後方。
即席で作り上げた塹壕の中に、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年―――清水幸利がそこにいた。
目の前の惨劇に体を震わせながら言葉を失った様に、事実を認めたくないと口をパクパクしていた。ありえない光景、信じたくない現実に、内心で困惑と悪態を繰り返すしかなかった。
魔物の大群をけし掛けたのは、行方不明になっていた愛子の生徒である清水幸利だった。
ある存在との契約によって、こうして愛子がいるウルの町を自身の闇術師の力で洗脳した魔物で蹂躙するのが目的であった。
しかし、容易に捻り潰せると考えていた存在は全く予想しなかった存在達によって無傷、それどころか清水幸利にとって『なんでこんな事が起きているんだ』と言わんばかりの悲惨な地獄が繰り広げられていた。
それは、舞い降りた蜜蝋の翼と二つの剣を持った騎士だった。
天使のように降臨したその騎士は、蝋燭みたいな色をした翼が羽として離れると、まるで自由意志を持ったかのように六つが魔法を羽から展開しながら周囲を吹き飛ばし…
なら近接戦で、と思いきや。その騎士は近接戦で圧倒的に猛威を振るい、多くの魔物を粉微塵に引き裂いているのだ。
しかも何処に逃げても、高速でその騎士は飛行しながらビームのような剣を飛ばして周囲を爆散。魔物達は肉体を崩壊させながら次々と朽ち果てていく。
「(あんなの聞いてない!?聞いてないぞ!?ふざけるなよ!あいつら騙しやがった!)」
魔物達もこの騎士だけは近付いてはいけないと考え、遠くへと逃げていくが。
その騎士は、剣を薙ぎ払うだけで炎の斬撃を周囲に散らしながら魔物を焼き焦がした。
更にオマケに、謎の人物が最もヤバい事をしている。
それは黒色のコートを着たとあるものを持った男だった。
とあるものとは、清水幸利にとって見覚えのある『銃』を持っていたのだ。
その中でも、最も驚異的な威力を持つ『マシンガン』を、魔物に向けて全弾使い潰す勢いで放ち、魔物の肉体を爆発四散させていた。
「(クソッ!騎士は攻撃まで時間があるからとっとと黒いやつを狙え!)」
しかし、清水幸利の指令が魔物達に届くことはなかった。
黒服の男を狙う魔物達は戦鎚を持ったウサミミの女が、地面に戦鎚を打ち込んだ瞬間に魔物達が一斉に衝撃が地面に走り、吹き飛んだのだ。
しかも戦鎚の攻撃から謎の筒のようなものから爆撃……おそらくランチャーだろうと清水幸利は思っただろう。
簡単に身体が粉砕され、簡単に四肢がバラバラになって転がっていく姿を遠隔で操る魔物達の視界から確認している清水としては、吐き気を催してしまい、近くの地面に吐いてしまった。
あまりにも簡単に倒されていく魔物達に、困惑しか覚えない清水幸利だった。
全弾撃ち尽くしても、シアは、ハジメから配備され傍らに積み上げた弾頭を入れ替えて連射する。発射されたロケットは魔物達の頭上まで来ると手榴弾と同様に時間差で爆発し、眼下へ燃え盛る大量の炎を撒き散らした。
「(役に立たない奴らめ…今度は別の奴を狙う!)」
悪態をつきながら、次に狙うは黒い服を着た謎の人物。おそらく女だという事に清水幸利は勘づく。
黒い服の男の方は拳銃を持っていたが、この女は何も持っていないから近接型だと読んだ。そして群れでなせば簡単に殺せると思った清水は魔物に対して黒い服の女に対して攻撃を仕掛ける。
しかし残念ながらそれは、悪魔だった。
骨の殻を被った、女。
地面から生えた肋骨の様な骨がガッチリと魔物を掴み、手刀で魔物の肉体を貫いて心臓を抉り抜く。
その姿はまるで、本当に悪魔の様な……本当にこんなのが仲間にいていいのかと考えてしまうほど。
ならばと遠距離から突撃させる飛行する魔物ならばと考えたが、唐突に展開された青色の魔法陣によって飛行する魔物は地面にその肉体を叩き付けられた。
視界を共有していた清水幸利の方でも、いきなり視界が地面の方に向けられている結果に首を傾げてしまった。
「ふむ……飛行型は仕留めておいた方がいいですね。
『伽藍堂』」
黒服の悪魔がゆっくりと腕を上げると、彼女の腕の動きに合わせて彼女の背後の地面から数多のが滑らかに動きながら鼓動している機械?のような何かが現れた。
その機械のようなものを見た清水幸利はすぐにそれを破壊する様に魔物達に告げると魔物達は黒服の悪魔に集まっていく。
そして、魔物達の意図を読み取った黒服の悪魔はゆっくりと指を鳴らすと共に、影響する。
「ただ、貪り喚き、その
カタカタカタ、と震えながらゆっくりとその機械から骨が排出する。しかも、それは背骨が紐のようにうねりながら先端に手がついたようなものだった。
魔物を見つけた瞬間、その手は魔物の脊髄まで一瞬が移動して、その魔物から脊髄を引きちぎった。
すぐに信号が途絶えたことで驚きを隠せない清水幸利が他の魔物からその光景を見つけたので、何も間違いじゃない。
しかも恐ろしいのは、引き摺り下ろされた脊髄を骨の機械の様なものまで引っ張っていく姿だ。
あまりにも容赦のなさと凄惨な光景に、さっき吐き出せるものを吐き出したというのに胃酸まで零しそうになってしまう清水幸利はそっちの光景を見るのをやめた。
「(ふざけやがって!今度はそこの女だ……!)」
あの悪魔の女が無理なのなら、今度は虎を狩ってやろうと考える清水幸利。そう、戦場に駆け回るのは何も白い騎士だけではなかった……金色の虎耳の少女もその内の一人だった。
何よりも、さっきの二人とは違ってこの少女は殲滅力が低い。だからこそ『弱い』と思ったのか清水幸利は先に『こいつからやれ!』と魔物の兵を仕掛ける。
魔物達の動きが乱れ、自分に向かっている事に勘付いたのかゆっくりと魔物達を種族固有の『鉤爪』で引き裂きながら戦場を駆け出す少女は、遂に詠唱を解禁した。
「ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川、
唐紅に 水くくるとは……
瞬間、虎耳の少女の動きは消え去った。
それはミレディ・ライセンにより授けられた世界の理の一つに干渉する〝重力操作〟の魔法だった。
今、黒い服の男で魔法を放つ金髪赤眼の少女よりかは魔法が使えないように見えたのかもしれない。しかし彼女は、使っていた。
重力魔法で自身をあらゆる方向に重くする事でその方向に『落ちている』のだ。
もし物が重力の据により縛られるとどうなるか。大地に立っていればそれはもう地面の奥底まで叩きつけられるだろう。
しかし立っていなければ?寧ろ重力の方向が逆な場合は?
その方向まで瞬時に落ちていくだろう。
しかも、その重力の方向へと加速しながら…落ちていく。
つまり虎耳の少女の速度は加速しながら敵を殺していた。
だが重力によって加速した肉体のコントロールは非常に難しい。その為に虎耳の少女は鉤爪を二つ使っていた。
なんとその鉤爪にも重力魔法を仕掛けていた。どちらも極度に重くするタイプの魔法だ。
威力の底上げと、加速する為の重力魔法の操作用として彼女は三つの部位に重力魔法を使用していたのだ。
「遅いぞ…遅い、遅い!」
虎耳の少女がそう叫びながら、鉤爪で血肉を引き裂きながら魔物の方向へと加速していく。
重力魔法というのは何とも恐ろしいが、非常にコントロールが難しい魔法だ。誤った使い方をすれば自分自身が死ぬ可能性もなくはない。
それを扱いこなしている姿を見るに、虎耳の少女の才能なのかはたまた別のものなのか……
そうして魔物の数が目に見えて減り始め、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃。
黒い服の男の陣営のメンバーが1人倒れた。
「ティオさんが倒れました。回収しときますね」
「頼みました」
そして特に動揺することもなく、白い蜜蝋の騎士は何事も無かったように黒髪の竜人をいとも簡単に戦場から助けてみせた。
もちろん、その間に魔物も接近し襲いかかりはした。だがあの騎士が操る小型の羽から放たれる魔法剣の威力がすざましすぎるのだ。
たった数発放っただけで、周囲の敵を薙ぎ払いながら簡単に大量の敵を仕留める事が出来る。
あれが例え魔法であれなんであれ、清水幸利にとって苛立ちを増やすだけだった。何故なら、この白い蜜蝋の騎士こそ黒い服の男と同等かそれ以上の魔物の討伐数を誇る。
既に、その数は一万を抜け八千までと言ったところか。最初の大群を思えば、壊滅状態と言っていいほどの被害のはずだ。しかし、魔物達は依然、群れのリーダーが健在な限り命知らずの特攻を仕掛けている。
動きが単調過ぎるが故に、リーダーが細かな指示を出さないと上手く動いていないのだ。
だが清水幸利にとってそんな事は遥かにどうでも良かった。この厄介な奴らを軒並みぶち殺してしまえば、後は畑山愛子を殺す。街も蹂躙して戦力を確保する為にアイツらと交渉する!それだけですべて終わる筈であるが……
「(なんなんだよこいつらは!普通こんな大量の魔物に襲われても兵器でいられんのがおかしい!)」
魔物のリーダーに的確な指示を出せる程、清水幸利の知能は高くなかった。要するに『宝の持ち腐れ』だった。
魔物をも支配する能力は確かに強力である。その闇術師を他のものに活かせる筈だった。
だが致命的に、知能が足りていない。
自身が主人公でなければならないという強迫観念と、
自身が最強であるという信心と慢心。
それら全てがこの能力の強さを、崩していた。
「(いや、待て……あいつの銃を見てみろ!)」
黒い服の男の使用していたマシンガンは、煙を上げながら銃身が赤熱化していた。ゲームで見た事ある知識だ!と清水幸利は思っただろう。
更に、隣にいる金髪の女に話しかけている様子を見るにあのマシンガンを撃つのに時間が必要なのは確か。
あの白い騎士も飛行をやめている。更に少しづつだが奴らの動きが鈍くなっていると来た。
チャンス、またとないチャンスであると清水幸利は理解した。だからこそ今の兵士達を投下できるだけ黒い服の人物共にぶつけることに決めた。
一方では……
「ユエ、魔力残量は?」
「……ん、残り魔晶石二個分くらい。
重力魔法の消費が予想以上。要練習かも」
「一人で二万くらい蹴散らしたのなら上々過ぎるよ。後は僕に任せて……一人で4万以上倒してる人がいるんだし?」
「ん、確かに」
メツェライを〝宝物庫〟に収めながら、黒い服の男―――
南雲ハジメはユエの状況報告を受けながらホルスターからドンナーとシュラークを抜く。
そしてそのタイミングで、羽が翼に戻ると共に重力魔法の浮遊から降りてきたアキラとファタールも帰還した。
「アキラ、お疲れ様」
「これで減ってくれるといいんだけどね……」
「大丈夫だよ!あのドラグーンシステムの攻撃が本当に凄い頼もしかったし、実際3〜4万以上倒してると思うよ!」
「予想以上に多かったのが凄い点かな……シアさん、ファタール……敵の位置とか分かる?」
「大体の位置は掴めてるかも」
「はい。操られていたティオさんみたいのと〜へっぴり腰な魔物ですよね?」
「へっぴり……まぁ、うん。多分ティオもどきの魔物が洗脳されている群れのリーダーだと思うから、それだけ殺れば他は逃げると思うよ」
「なるほど!私の方も残弾が危ういですし、そろそろ近接戦に切り替えますね!ファタールさんは?」
「魔力がちょっと心許ないかな。加速は控えめにして、本調子で体力を使う」
「……何ていうか、逞しくなったなぁと思う」
「本当だよね。さて……そろそろ三人を動かそうと思うよ」
「お願いするよ」
ハジメの言葉を受け、「ハジメさんに褒められました……!」にぱぁっと嬉しそうにシアに対して苦笑いしつつもどこか優しげな微笑み返すハジメの様子を見ながら、アキラも本調子の如く魔法剣を飛ばしながら、メガネについた砂と灰を拭きながら掛け直す。
そしてもう一度、今度は自我の力で飛行する。
しかし今回は羽をドラグーンシステムと呼ばれる、無意識に飛ばして攻撃するような方法ではない。羽を射撃装置の様に並べながら周囲の魔物に対してロックオンを仕掛ける。
そして、羽から魔力を伝わせ魔法陣を展開すると羽の先から圧縮、凝縮された魔力の剣が刀身を高速で細く伸ばしたものが装填される。
「〝
「〝瞬光〟!」ドパァンッ!
そして、放たれる剣。
リーダー格と思われる魔物、凡そ100体と他の魔物数万体に向けて、何処へ逃げても逃がさないと言うが如くアキラの各方向の射撃攻撃。魔物の固有魔法で逃げ切ろうとも、そこからハジメの的確な射撃によって即行で殺されていく。
「(な、何ぃいっ!?なんだよあれなんだよあれぇっ!!)」
何より、さっきのマシンガンの攻撃が終わったと思い込んでいた清水幸利にとってこの攻撃は本当に予想外だった。
更に驚きだったのは、ガトリングの射撃の反動とかで動けないと思っていたハジメはすぐに動いた事だった。
大地を疾走しながらドンナーとシュラークを的確に連射し、群れの隙間に微かに見えるリーダー格の魔物を捉え、その頭部を撃ち抜いていく。
逃げようとしても、もう遅く。
簡単に伸ばされた刀身がビームのように突き抜けて、魔物達の肉体を貫いていった。
そして、そのハジメの影を突き抜けるが如く赤色の閃光が抜け切った。
それは三つの赤い閃光、いや―――剣士だった。
赤色の東洋剣を抜き瞬時に距離を詰め、逃げ惑う魔物達の首や致命部分を切り裂きながら、高速で更に、もっともっとと敵を切り裂いていく。
「〝閃撃〟」キンッ!
『ギャァッ―――』
「続くぞ」ザッ
「了解」ダッ!
『グォオッ―――!?』
魔物の情けない叫びと共に繰り出された二連撃は、静かにその命を看取った。
更にブルタール型の魔物のリーダー個体は、瞬時に突っ込んでくる赤色の二つの影に、四肢をいとも簡単に切り飛ばされ首が近くに転がっていってしまった。
凄惨な光景が周囲に広がる中、血肉は綺麗にズレて元あるべき場所に還っていく。そして魔物達の末路はまだ終わっていなかった。
「〝極剣〟!」ザンッ!
「はっ!」ザシュゥッ――!
『ギャォォォオォォッ!!?』
そう、この影は―――ハジメとアキラが最後まで温存していた切り札である〝死の境界〟のメンバー。
テンマ、ヴァレンティン、ユジンの3人。
最初こそ清水幸利がこの光景を見た時、三人で出来ること等たかが知れていると考えた。
しかしそれが愚考であったと悟るにはもう少しだけ時間が必要だった。
一瞬で、魔物のリーダー格が殺されていく。
しかも一呼吸する間もなく、瞬時に敵が討伐されながら的確に致命的な部分だけに攻撃を当てて魔物を殺しているのだ。
瞬発的な剣技の舞によって、宙を舞う無数のブルタールの首。
見た目華奢な青年と女性によって、簡単に大型の魔物は切り飛ばされていく。
もうここで終わっていいと、全てのエネルギーを出し尽くす様に前を突っ切るヴァレンティンとユジンの動きは、まさしくこれが〝外からやってきたもの〟という典型的な特異存在を表すが如く。
〝死の境界〟―――元い、シ協会のメンバーである彼彼女達が疲労していなければ本調子を発揮できるかがいとも簡単に理解出来る。
自分の数倍の肉体を持つブルタールも、オーガもゴブリンも獣もまるでお手玉とおはじきのように軽々と切り刻まれ、切り飛ばされる。しかもそれを目にも止まらぬ高速でだ。
何かのドッキリか、幻影だったらいいのに―――そう考える清水幸利は段々と恐怖が止まらなくなっていく。
だからこそ最終兵器を切り出す他なかった。
瞬間、右後方より新手が高速で接近する音をユジンが感知して剣をその方向に振り抜く。しかし、そこいたのは黒い体毛に四つの紅い宝玉のような眼を持った狼型の魔物だった。
狼型にしては、巨躯の肉体を使用してユジンではなくユジンの持つ武器に掴みかかり巨躯の肉体を使ってユジンごと押し潰そうと画策したのだ。
もちろんユジンにとってこれはなんら危険ではなかった、一呼吸さえあればすぐに肉体の筋肉と血液を掻き集めて思い切り推し変えせるほどのステータスも、実力も持ち合わせていた。
だがユジンの直感は『避けろ』と言っていた。その直感に従い横に避けることで―――黒い四つ目の狼の魔物の完璧なタイミングで顎門が後方から迫り来るのを防ぎ切り、ヴァレンティンは見事に後方から迫り来る四つ目の黒狼を切り裂いた。
「合わせろ」ザッ
「はい」チャキッ
先程の直感を信じたお陰で生きている事実と、鈍ってはいない自身の肉体の高揚感にユジンは久しぶりに何かが見えていた。
そう、それは……想い。
直感で回避したとはいえ、噛まれてしまえば自分でも危うい攻撃であった死を回避した事で……ここで死ぬ訳にはいかないという、強い思いが。
ユジン―――彼女に、その強い力が〝
それは赤色の、揺らめいていてまだ薄いかもしれない。
だがそれは圧倒的に強固で、空気を揺るがし圧迫する様な雰囲気を放っていた。
四つ目の黒狼も、この存在に対して生存本能が警告を上げていた。
〝こいつを殺さなくてはならない!〟と。
瞬時に距離を詰めながら、四つ目の黒狼は群れを成して襲ってくる。
しかしそこに、二本の剣が舞い降りてくる。
「〝閃撃〟ッ!」ズバァッ!
テンマだった。縮地と似たような技術で距離を詰め、一気に四つ目の黒狼の予測を超えて、肉体を切り裂いてきた。
一体崩された所でと四つ目の黒狼は一切の情念なくテンマらに突っ込んでいくが、ヴァレンティンが大太刀を構えながら一気に振り抜く。その勢いは極まれし剣の一つだった。
『グゥルァァァァァアアッ!』
雄叫びを上げながら、鉤爪と噛みつきによる怒涛の攻撃に対してテンマとヴァレンティン、ユジンは上手い距離で続けていく。
何よりも、四つ目の黒狼達はユジンを前に出させたくなかった。だからこそ、すぐにユジンが前に出れば攻撃を全集中させて殺す事を意識していた。
だが、それこそユジンの狙い目である事に気が付かない。
その瞬間、ユジンが剣を収めながら前に出て構える。
このタイミングしかこの女を狩れない、四つ目の黒狼はそれを理解した。
理解したからこそ―――油断した。
「―――死の境界」
『ガァァァァァッ……!?』
それは刹那の如く、訪れた。
あまりにも速く、遠く……一瞬で訪れる自身の死という感覚が伝わってくる。
もう切った、殺してしまった。殺されてしまった。その事実だけが死にゆく四つ目の黒狼達に分かる事だった。
ユジンが刀の鍔を鳴らしながら倒れ死にゆく魔物を見つめるように、自身が倒され死んでいく四つ目の黒狼達も殺せず生きているユジン達を見つめている。
だが何を言おうとも、無駄である。
既に斬ってしまったのだから。
「(う、嘘だろ……あの魔物もやられるなんて、ふざけるなっ、あんなのと戦ってられるか……!)」ダッ!
しかし、すぐに清水幸利は最後の一頭……というより保険で残しておいた四つ目の黒狼の魔物の背に乗って逃亡していく。
その判断は間違っていないし、当然かもしれない。だがその様子は鋭い眼で確認していた南雲ハジメと相馬アキラによって見つかっていた。
「ハジメ」
「分かってる」ドパァンッ!
すぐにドンナーとシュラークを構え、一撃目で敵の視線を奪いながら二撃目で四つ目の黒狼の脚部を撃ち抜き地に倒れさせる。
しかも駆け出していた四つ目の黒狼から強制的に移動が遮られた反動で姿勢が崩れると共に、清水幸利は思い切り転がり落ちた。
ステータス自体は高い為、身体を強くぶつけつつもすぐに立ち直り、黒い四目狼に駆け寄って何かの悪態を喚きながら四つ目の黒狼の頭部を蹴りつけ始めた。
銃撃されたとは目にも思っていなかったようだ。
しかしその様子は見るからにヒステリックな様子で、動かないなら無理矢理動かすまでと手をかざして詠唱を始めようとした。
「〝白光之剣〟」ビシュンッ!
しかし、そうは問屋が卸さない。アキラの手によって二本の羽を飛ばして魔法剣を放ち、四つ目の黒狼の生命を終わらせた。その一部始終を食らった清水幸利は急いで逃亡しようとした。
しかし、もう遅かった。背後から魔力駆動二輪と前方から白い蜜蝋の騎士が降りてきた。その様子に追い込まれた清水は悪態をつくように叫び散らかす。
「何だよっ、何なんだよっ!?ありえないだろっ、本当なら、俺が勇者―――グペァッ!?」
そう言って飛沫を撒き散らす清水幸利を蹴飛ばしたのは南雲ハジメだった。軽く前方に吹き飛び、このままではアキラに当たってしまうと思った清水幸利は魔法を行使しようとした瞬間に、飛行してそのまま鎧姿のアキラにタックルされ、地面に強く頭を打ち込んで倒れ伏した。
「よし。終わりましたね」
「だね……さて、こいつを先生はどうするんだろう。下手な説得とから意味ないだろうし、操られてたりしたら都合がいいんだけど」
ハジメがそう呟きながら、義手からワイヤーを取り出して清水を縛り付ける。そういうと、魔力駆動二輪の引っ掛けられそうな場所に引っ掛けると、荒れ果てた大地の砂埃と魔物が撒き散らした血肉と共にゆるかやかな速度で引き摺られていくのだった。
技解説/各方位射撃(フルバースト)
〝白光之剣〟を使用した新たな攻撃方法。
蜜蝋の翼からパージされた羽を射撃装置として敵の方角にセッティングし、そこから魔法剣を生成。魔法剣を射出するとブレてしまう為、魔法剣を構築したその後刀身を伸縮させ、まるでレーザーの様に放出する事で魔物の弱点部位を正確に貫くor引き裂く。
正確に相手の弱点に攻撃をロックオンさせる技術や、ある程度の移動行動の予測、何処まで魔法剣を伸ばすのかまでの計算が必要なので非常に使用までが難しい。
しかし一度決まれば相手を追い込む事には変わりない。
元ネタは機動戦士ガンダムSEEDのストライクフリーダムから『ドラグーン・フルバースト』。
フィリップ君のヒロイン、誰にするか?
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八重樫雫
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園部優花
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その他原作組女子
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都市の女性組