どうか、あなたの物語が見つかりますように。
オルクス大迷宮深部に落ちた僕達は、受難を乗り越えて何とか生き延びる事に成功した。
だからと言って、この先も生き残るとは限らない。僕も限界があるしハジメ君もその通りだ。
まずはオルクス大迷宮の壁をくりぬいて作ったこの空間を広くし、確認したい事検証したい事を探った。
まず新しいスキルが増えていたこと。
一旦ステータスを確認しよう。
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相馬 アキラ 17歳 男 レベル:10
天職:魔剣士/蜜蝋の翼
筋力:120
体力:100
耐性:100
敏捷:110
魔力:150
魔耐:150
技能:剣術[+夜明之剣]・属性強化[+烙印付与]・治癒[+火炎再生]・耐久[翼之盾]・言語理解
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こんな形になっていた。
まず、剣術に追加されていた『夜明之剣』はまさしくサルヴァドールさんの剣術だった。
サルヴァドールさんは、歳の衰えから一撃離脱の攻撃を好むようになった。体力を上手くコントロールして、相手の隙を突いて一気に攻撃を打ち込む。
隙が出来るまでは僕達に飛んでくる攻撃から守ったり庇ったりと元ツヴァイ協会の実力を示してくれる。
そんな中、僕の夜明之剣は攻防に優れたスキルだった。
剣が発熱している間、僕の身体能力は大きく上昇する。
そして何より、この能力は『朝日が出て沈むまで』続く。
ただし夜更けになると『月が出て沈むまで』は効果が代わり、剣が冷却して主に速度と防御力が上がる。
攻防を使いこなす、サルヴァドールさんの剣技をしっかり引き継いでいた。
これに関してはハジメ君になんて説明するか迷ったが「剣の派生スキルなんだよ」と伝えて納得させた。騙している感じがして申し訳ないけど……
次に、属性強化に追加された『烙印付与』。
これはスティグマ工房とは別で、烙印という属性を付与する。魔法耐性や状態異常無効を貫通することが分かった。
この烙印には相手を徐々に発火させ、何度も攻撃していけば相手の体を灼く様に爆発する事で大ダメージを狙えるというのはハジメ君の談だ。
治癒の『火炎再生』は、僕が炎系統の魔法を使っていると勝手に体が再生していく事だ。これは物凄い速度で回復していくから、緊急時は自分事燃やす事を躊躇う必要がない。
耐久の『翼之盾』に関しては、これは後で話そう。
そして一番の問題となっているのは『蜜蝋の翼』という、天職の隣にある項目だ。
これはあの翼と剣の事であり、条件を達成すると自動的に発現するようになった。
ただ、具体的なトリガーは書いていなかった為研究した結果とても興味深い事が分かった。
①発動条件は魔力残量と生命力が著しく減った時に、それらを全て回復させてあの姿に変更
②一部の行動が許可され、翼による加速や攻撃に常時炎魔法が付与された状態に変更し翼を盾のように使用することができる。(烙印の力が強ければ防御力が向上する効果があるけど、これは翼之盾はこれのお陰かもしれない)
③推定、自分が死亡するか完全に抵抗を止めた際にこの力は強制的に解除される可能性がある。
この三つを二人で考察した。
ハジメ君はこれを『エゴ』と呼ぶ事にし、この『エゴ』は僕の新たな戦力として加わった。
そうして、ある程度の研究が終わった後に僕はハジメ君にスティグマ工房の武器を改めて見せることにした。
彼は「凄い!魔法を付与しないで相手に火傷を与えれて、とても硬くてこんなに熱い剣は見たことないよ!」と大興奮していた。彼が言うには『アーティファクト』という部類の物に入る可能性が高いということだ。
僕も、この工房の武器についてはよく分からない。サルヴァドールさんもユナさんも愛用しているけどどうしてこれを愛用するのかは教えてくれなかった。
ハジメ君は、生き残る為にまず『錬成』を鍛えるという事で錬成を使って迷宮の壁をくり抜きながら鉱石を探し、遂に彼が目的にしていた強い鉱石を多く手に入れることが出来た。
迷宮はある程度の錬成で干渉出来る範囲があるらしく、その中でも地上や上に向けた階に移動するような通路を作る事は不可能でも横に進んだりある程度下に行けるように融通が効くようになった。
そして、ハジメ君の試行錯誤の中僕と協力し鉱石に『烙印』を付与する事で溶かし、再錬成して好きな形に組み上げるという荒業をやってのけた。
これに関しては、18回程試行し遂に完成した時にお互い無邪気にはしゃぎ合った。ちょっと小っ恥ずかしい気がしたけど、直ぐにハジメ君が目標にしていた『武器』の制作に入った。
そして完成したのが『銃』。
拳銃タイプ、六連式シリンダーのリボルバー……名称を『ドンナー』という事にした。(ハジメ君のセンスに圧倒されたけど、僕も言うてかもしれない……)
そして、ハジメ君は僕が持つスティグマ工房の武器を錬成での試行錯誤によって同じ様な特性を持った武器を作ってくれた。
その名も『ナハト』。意味はドイツ語で夜という事だ……相変わらずハジメ君のネーミングセンスは僕と似たり寄ったりという形だ。
「これが僕の武器?」
「うん。フィリップ君は多分二刀流が似合うと思うんだ、その為にもう一本はそのスティグマ工房って所の直剣より刀身を短くしていて、何よりそのスティグマ工房と同じ様な効果が乗ってるんだ!
これを使えば、烙印が付与された剣技にも幅が広がるし魔法を実質二つ付与できるから!」
「確かに、そう言われると二刀流は理にかなってるんですね」
「翼之盾を上手く使えば二つの剣と翼で防御出来るし、やっぱりその力は便利だよ!」
そう真っ向から言われてしまい、少し照れくさくなりながら改めてナハトを見てみる。
黒色の刀身はなんだか夜をイメージさせているようで、とても綺麗な光沢をしていてとても鋭く感じた。
彼が言うには、タウル鉱石というものを使って作ったそうだ。
かなり硬く錬成で変形させるのも高難易度だそうで、ハジメ君が使う『ドンナー』も相当苦労して作っているのは知っている。
彼に感謝しながら、改めて今まで避けていた問題に対してめをむけることにしよう。
今まで、僕達人間は狩りをして生きてきた。
いや、正確には地球の人間は昔の頃原始人として他の動物を狩ってそれを食べて生き永らえてきた。
そんな中僕達に迫るのは食料問題。
実の所、飲み物の問題は何とかなる。
僕の鞄もあの時に一緒に持ってきていており、紅茶の葉を持ってきているので濁った水は……飲めなくはない。
お腹は壊すかもしれないが。
そんな中、遂に食料の問題に対して終止符を打つ為に僕達はこの拠点から出て遂に訓練の成果を試す時が来た。
近くを探索すると、蹴りウサギに倒されていた二尾狼とは別の個体の二尾狼を発見する。
彼が今回の、僕達のターゲットになった。
「暗黒よ、太陽を隠し奴の視界を覆い尽くせ、〝闇剣〟」
『ウォォゥッ!?』
僕が初手に飛び出すと共に、ナハトとスティグマ工房の直剣を構えて一気に詰め寄る。二尾狼はこちらに気付いて尾から雷撃を打ち出してこようおしていたが、暗黒の剣がまるで檻のように二尾狼の視界を覆い尽くすように取り囲む。この魔法はダメージなんてものは無いが、簡単には壊せない暗黒の剣の檻で相手を閉じこめることが出来る。
その間に……
「ハジメ君!」
「いっけぇっ!」ドパァンッ!
燃焼石という鉱石を使用した、火薬式の『ドンナー』が火を吹くと共に暗黒の剣の檻に閉じ込められた二尾狼の肩を抉りながら鮮血が舞い散った。
その隙をしっかりと埋めていくように、僕も攻めに行く。
「光よ、どうか敵に仄めかな温度の刃にて包み込め、〝
『ウォォッ―――!?』ザシュゥッ!
見事な二振りの剣の一撃で、二尾狼の頭は切り飛ばされて地面に転がる。この死体は、しっかりと有効活用させてもらおう。
二人がかりで二尾狼を基地まで運び、スティグマ工房の直剣で串刺しにした後にナハトで上手く切り刻んだ。
炎魔術で肉自体は焼けたので正直とても恐怖しながら準備を終えることが出来た。
流石に見た目的にも美味しそうには見えるのだが、非常に恐怖が勝つ。
「ハジメ君、君がもし苦しみ出したらその『神水』だっけ。それを使ってすぐに体を回復して欲しい。僕は『火炎再生』があるからまだ何とかなる」
「う、うん」
「じゃあ……いただきます」
そして、お互いに焼けた二尾狼の肉を喰らう。
獣の生臭さは簡単には取れず、少し食べた時にウッと来たがそのまま獣肉特有の旨みが口の中に広がっていく。
満足そうにハジメ君も食べていて、何も問題ないと思いすぐに食べ終わった。
そんな時だった。
「が、ぅ、ぁぁぁぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!!???」
ハジメ君の絶叫が聞こえた。
すぐに振り返ると、体がまるで崩れ落ちんと言わんばかりに変化していた。
そんな彼はすぐに、『神水』を口の中に入れながら肉体を回復させていくが崩壊が簡単に止まることがない。
更に、ここで僕自身の体に問題が現れ始めた。
全身に激痛が走り、体全ての皮膚を引き剥がされるような感覚が走った。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い!!そう体の中で思いながら炎魔法を使って肉体を再生させていく。
しかしそれでも痛みは止まらない。だが……!
「ぐ、ぅぁぁぁぁ゛ぁ゛……!!!!!」
これしきの痛みで、生きる事を諦めたくない。
僕が殺してきた人達はこれ以上に熱く灼き尽くす炎で死んでいったんだ。
僕がこんな所で苦しんだって彼らの代わりにならない。
耐えろ。耐え抜いて、生きろ。
そう頭の中で言い聞かせながら、まるで狂ったようにお互いがその場で悶え苦しむ声が空間内でこだました。
そうして…………
「…………ぅ……」
「ハジメ、君……生きてる、かい」
「生きてる……よ、全身、ボロボロになりかけたけど……」
僕達は体の崩壊を乗り越える事が出来た。
ハジメ君の方を見ると、最早別人になっていた。
いや肉体の形が歪に変わったとか、もはや怪物のそれという訳ではなく。
髪色が白くなっていた。日本人というものに特有の黒色の髪は完全に色を失っていて、もはや日本人というにはかけ離れている。まだ、顔立ちはハジメ君のものであると理解できる。
そして何より、一番最も異質な点というのは。
彼は、彼ではなくなっていた。
具体的に言うのが難しく、こう彼は彼ではなく……
彼女……?といえばいいのだろうか。
「あの、ハジメ君……本当に辛いことを言う事になるんだけど」
「え?うん」
「一旦、鏡か何かで君の姿を確認した方がいいよ。あ、確かステータスプレートを見ればいいんじゃないかな」
「なるほど」
そう言って、ハジメ君がステータスプレートを確認し始めたので僕も見させてもらう事にした。
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南雲ハジメ 17歳 ? レベル:8
天職:錬成師
筋力:100
体力:300
耐性:100
敏捷:200
魔力:300
魔耐:300
技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解
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性別の項目が、ハテナになった。
僕も首を傾げたしハジメ君も首を傾げた。
なんというか、なんというか……凄くおかしいのは分かっているのだが……
まぁ一旦。僕からしても正直ハジメ君がいくら変わろうともハジメ君なのは理解している。
一旦彼……彼と言っていいのかは分からないがハジメ君に今の姿を確認してもらう為、〝光剣〟と〝水剣〟の魔法で光と水の力で鏡のようにハジメ君の姿が改めて映し出される。
彼は、紛れもなくハジメ君であった。
だが見た目はハジメ君の顔付きをしていて、彼が着ていた装備を着ているのにほんの少しだけ膨らみが出来ていた。
少し体も細くなった(元から細かった気がしているが)、華奢な肉体になっている。体には赤色の線が浮かび上がっているが、これは僕も同じだ。
後、声も少し違う。いい歳の少年の様な声音は少しだけ高くなって、柔らかく感じる少女っぽさを感じた。
しかしハジメ君はその姿に対して、最初こそ困惑したものの諦めた様子で「魔物を食った代償か……」と悪態を付いていた。
しかし僕の方はと言うと。
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相馬 アキラ 17歳 男 レベル:12
天職:魔剣士/蜜蝋の翼
筋力:220
体力:220
耐性:220
敏捷:240
魔力:300
魔耐:300
技能:剣術[+夜明之剣]・属性強化[+烙印付与]・治癒[+火炎再生]・耐久[翼之盾]・魔力操作・纏雷・胃酸強化・言語理解
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新たなスキルと強くなったステータスぐらいしか変わりはなかった。
その後にハジメ君に僕の見た目を確認してもらったが、以前と変わった点は額にひび割れる様に赤色の線が浮かび上がっている事くらいだ。
恐らく魔物を取り込んだ影響だろうと結論付けて、僕達はお互いにまた生き残った事を祝福しあった。
問題としては、この先強くなるなら魔物を食わなければならない事とハジメ君の今の容姿を戻った時にどう伝えるべきかという点だった。
頭を悩ませ、彼とまた新たな武装の会話をして、そしてまた二尾狼を捕まえて食って最終的に出した結論は『今はどうでもいいや』という事になった。周りからの見た目など正直どうでも良かったから。
ここで分かった事は、同じ魔物を食べてもステータスは強化されない事と纏雷の強みくらいか。
そしてここで、ハジメ君の使うドンナーがグレードアップ。『纏雷』を銃身に流し込み、電磁加速させた弾丸を放つという驚異的な威力に様変わり。前回の『燃焼石』による火薬系も悪くはなかったが電磁加速であれば避けられにくい点や威力向上にも関わっている為、ロマンと強さという点をハジメ君はしっかり採用した。
僕はと言うと、ハジメ君の為に服を編んでいる。
ハジメ君の装備は未だにあの防御力が少なさそうな衣服であるので、子供の頃から凡才であるならば多才であれという僕の信条を元に僕の母親から教えてもらった編み物を早速ここで活用している。
ハジメ君はかっこいい服にして欲しいときっと言うので、二尾狼の素材を使ったロングコートを作る事にした。それと、獣の皮は鞣してリボルバーのホルスターにして欲しいとも。
注文が多かったが、ハジメ君の分かりやすい説明とかなり上手だったデザイン案により時間を掛けて完成した。その為に何十匹かの二尾狼が倒されたがこれも自然の摂理というものだと受け入れる。ごめんね。
「完成したよ」
「凄い!本当に出来たんだ!」バサッ
コートをたなびかせながら、子供のように(全然僕らは子供だけど)はしゃぐハジメ君の姿を見つめながら手を尽くした甲斐があったと安堵する。
こういう才能は、基本的に不必要だと思われるかもしれない。けどこうして、彼の装備進捗の為に活用出来たのなら御の字だ。
それにハジメ君が生き残る確率を作れば、僕もその分お互いに連携しやすくなるし、ハジメ君の機転も効きやすくなる。戦略的にも精神的にもお互いのメリットが大きい。
そして、コートを作ってる合間に僕達はあの時の蹴りウサギを倒す事に成功し、有難くいただいた事で新たなスキルと強さを手に入れた。
ハジメ君と僕の今の成果がこれだ。
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南雲ハジメ 17歳 ? レベル:12
天職:錬成師
筋力:200
体力:300
耐性:200
敏捷:400
魔力:350
魔耐:350
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解
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相馬 アキラ 17歳 男 レベル:14
天職:魔剣士/蜜蝋の翼
筋力:260
体力:260
耐性:260
敏捷:280
魔力:400
魔耐:400
技能:剣術[+夜明之剣]・属性強化[+烙印付与]・治癒[+火炎再生]・耐久[翼之盾]・魔力操作・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・胃酸強化・言語理解
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こんな形だ。蹴りウサギのスキルは空中に移動したり距離を一瞬で詰めれる強いスキルばかりだった。
こうして多くのスキルを手に入れることでお互いに強くなれるのは、とてもいいメリットだったしお互いの弱点を補う事が出来る。
まだ脱出の目処は立っていないが、脱出方法は一つだけ確認が取れている。
それは、この迷宮を降りて完全に攻略すること。
オルクス大迷宮は前人未到の65層以降攻略されていない。つまり僕達が初めての攻略者になる可能性がある(攻略していないエリアもあるけど)。
だが、攻略することが出来ればオルクス大迷宮を乗り越えた僕達に敵は少なくなる。
食らいつき、強く。
抗って、もがいて。
希望と運命に手を伸ばす事が出来る。
その事実だけで僕達の未来は明るかった。
「ハジメ君」
「うん」
「この先、きっと辛い事が多くなる。僕達は二人で一人だ……それを忘れちゃいけないと思う。
だからこそ、これからもよろしく」
「もちろんだよ。君と一緒なら、僕達は何処へでも行けると思う」
お互いに強い握手をし、希望溢れる未来のために。
そしてハジメ君の目的である『故郷に帰ること』を叶える為に。
僕はまだ、ここで倒れる訳にはいかない。必ず生きて、生きてやるんだ……!
そう決意しながら、僕はハジメ君の伸びてしまった髪を結ぶ為のゴムを作りながら今後の宿敵になるであろう―――爪熊討伐作戦に向けて作戦を練り始めたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――
一方、トータスのハイリヒ王国……その王宮内では神の遣いことハジメとフィリップを除いた生徒達は重苦しい空気の中各々の役目をこなしていた。
死に恐怖し、折れてしまったもの。
この悲劇を繰り返さない為に強くなるもの。
戦いではなく、別の観点から支えようと前に出るものまで。
その中で、八重樫雫は迷宮の死闘を乗り越え未だに眠ったままの親友の看病をしていた。
あれからショックを受けて眠ったままの香織の気持ちを悟る事は、難しい。
何より八重樫からすれば、フィリップ―――アキラがハジメを助けにする行為を大層驚いていたからだ。
あの事件の後に二人も勇者の仲間を失ったハイリヒ王国は箝口令を出し、勇者二人の存在は『いなかった』という事にされ、二人が落ちたのは『事故』として処理した。
「あなたが知ったら……またショックを受けるのでしょうね」
その言葉を口ずさみながら、必死に香織を見守る八重樫はアキラが自室に残していた手記を取り出す。
これは、八重樫本人がハジメの接点を探す為に彼の部屋を無理言って捜索した時に見つけたものだ。
ただしこれを開けるのは、香織が起きてからにすると決めていた。
この手記自体、とても長く使ってきたのかところどころがボロボロで手記のカバーは何回も変えている様に見える。
そして何よりこの手記は、とてつもない程に付箋が貼られている。付箋の方には『サルヴァドールさんの戦略・戦術』『都市の技術(覚えてる限り)』『効率的な戦闘の動き方』など様々なトピックが付けられた上で貼られている。
都市、サルヴァドール……八重樫にとっては全く知らない単語だらけだった。
そんな時、遂に香織が呻き声を上げながら目をゆっくりと見開いた。
「香織!?聞こえる!?香織!」グッ
「雫……ちゃん……?」
「ええ、そうよ。私よ。香織、体は動かせそう、寝てたから無理は出来ないと思うけど」
「う、うん。平気だけど……ちょっと気怠いくらい?」
「そう、なら良かった……五日も眠ってたから」
その言葉を聞き、「五日、そんなに私……迷宮に潜ってて、それで」と口ずさんだ時に何かに気付いたよう香織は八重樫の瞳を見つめながら真剣な声で聞き出した。
「南雲君と、南雲君と相馬君は!?相馬君、南雲君を助けに行って、それで!」
「っ…それは」
八重樫は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、そしてそれを見て「嘘だよ…ね?だって、南雲君を助けに行った相馬君が、一緒に、帰ってきてるんだよね?だって南雲君、助けてって私に行ったのに」と現実を受け止めきれないように口ずさむ香織に何も言えなくなった。
実際にも、香織は意外にも南雲ハジメの事と同じ程に相馬アキラの事を心配していた。あの場で南雲ハジメを助けに行こうとした彼に思うところはあった。
だからこそ、二人を同時に失ったショックは計り知れない。それはクラスメイトと香織の想い人を助けれられなかった八重樫も同じ気持ちだった。
そして、顔を暫く俯かせていた香織はゆっくりと悟ったように顔を上げて八重樫に視線を向けた。
「香織……」
「……雫ちゃん、南雲君と相馬君は、落ちちゃったんだよね?」
「そう、ね…」
「雫ちゃん、私は……信じたくない。南雲君が死んでる事も相馬君が死んでる事も」
「相馬君も?」
「だって、ハジメ君を助ける為に自分一人でベヒモスに突撃しに行くなんて絶対に出来ないよ!私も、行きたかった……けど、叶わなかったから」
「香織……」
「だから、私は信じてみる。二人が生きて迷宮で生きてる事。可能性はゼロじゃない、二人なら1パーセントも2パーセントもあるから。
それを確認するまでは、死ねない。だから、もっと強くなりたい!」
その決意ある一言に、八重樫は肩の力を落として微笑む。
やはりこの猪突猛進する香織こそ八重樫が見ていて安心する。
それに、個人的に気になっている事がある八重樫としても「なら、親友の私が力を貸してあげないとね」と一言前押しした。
香織は喜んで八重樫に抱きついていたが、一旦すぐに離して「それで」と一つ前置きを置く。
「実は、相馬君の部屋を調べたらこの手記が出てきたの」
「手記?というか、なんで雫ちゃんが相馬の部屋を?」
「ほら、今まで南雲君と関わりなかったじゃない。だからおかしいと思って彼の部屋を探した時に、この手記を見つけたの」
そう言って手記を見せる八重樫は遂に、その手記を開いた。
そこには……
『僕はフィリップ。これは、忘れてはいけない記憶だ。
僕が都市という世界で生きてきた唯一の記録をここに記す。もしこの手記を見た人がいたら、僕の事を探った人か僕を心配して見てくれた人だと思う。
これは緊急用で置いてきたものだ。本来の手記は僕の鞄の中にある。
ここに、僕が覚えている限りの都市としての技術や情報……そして。
『フィリップ』としての僕を語り継ぐ事にする』
香織と八重樫は、この時に知る事になる。
相馬アキラがこの世界の人間ではない事、都市という場所から来た事、そして過去に多くの人を犠牲にしてしまった事。
そして何より……
フィリップ―――元い相馬アキラは、南雲ハジメによって過去助けられており、その時の恩を返す為なら命を捨てる覚悟がある男だということに。
おや、なぐもはじめのようすが……▼
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ハジメの性別、どうする?
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男に戻す
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女に変える
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性別:ハジメになる
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なんてこったパンナコッタ