ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうかあなたの物語が見つかりますように。



※Library of ruina、Limbus Companyのネタバレがあります。ご注意ください。





Ep.5 血鬼

 

 

ついにこの日がやってきた。

お互いに準備を整え、完全にバイタルから調子まで健康状態(魔物を食った僕達が健康と言えるかはさておき)になった僕達は遂に爪熊討伐作戦に躍り出る。

まず僕は『天歩』と『空力』を使用して目立つように動き、ある程度の攻防を繰り返し情報を得た後に体力と魔力を調整しエゴ発現。高火力を叩き込むメインアタッカーの役を買って出る。

ハジメ君は、油断した際に隙を付いてドンナーや新しく作りあげた『閃光手榴弾』で目眩しから錬成による足止めを行う事でサブアタッカーとジャマーをこなす。

お互いに納得のいく作戦を考案し、僕は隠れ家(迷宮のあの空間内をそう呼ぶ事にした)を抜け出して移動。ハジメ君は錬成で迷宮の床をくり抜いて床を進むことにした。これ以上壁に穴を開けると崩落の危険性もあるし、戦闘音は横より下によく響く為床の方がいいという事だ。

そうして、『空力』で足場を作りながら『縮地』で駆け出す事数十分。

 

 

遂にヤツを見つけた。

 

 

「見つけた!」

 

 

『グゥォォォォォッ!』

 

 

 

爪熊は、流石にタフだった。スディグマ工房の烙印の火傷を身体に受けてなお巨体を保っており、あの時融解させた鉤爪は新しく生え変わっていた。

しかし二回も同じ過ちを繰り返す訳にもいかない。パメラさん、パメリさん、そしてオスカーさんの時の様な結末を繰り返さない為にも。

因縁には決着をつけ、前を進むしかない!

 

 

 

「我が双方の剣よ、祈り願う我の声に賜り、灼炎と流水の如くこの剣に力を灯すがいい、〝流炎剣〟!」

 

 

そして、スディグマ工房の直剣とナハトに付与された灼熱と流水から放たれる斬撃に両腕でガードする爪熊を確認し下がる。

そして、爪熊も攻撃された事と前回の致命的な攻撃をしてくれた相手が僕だと分かるとすぐさま敵意を向けて、腕を振るモーションと共に風の斬撃が飛んでくるような音が聞こえ、横に避けると何とか回避する事が出来た。

すぐに姿勢を整えて空力を使い足場で爪熊の体躯を乗り越えながら同時詠唱を始める。

 

 

「雷速よ、全てを貫く霹靂の一撃を我の剣に絶たせよ。

流水よ、全てを流し落とす滝撃の如く我の剣に止水を。

〝流剣〟〝雷剣〟!」ザンッ!

 

 

『グゥォォォォォォ!!?』

 

 

 

爪熊の血が舞い散り、水魔法と雷魔法の共鳴攻撃により爪熊の肉体を焼き払いながら攻撃していく。

しかしすぐに縮地で攻撃後に距離をとる。爪熊の動きやスキルを全て把握した訳じゃないのが問題点だ。

そんな時、前側から爪熊が腕を振るったモーションが見えたのですぐに横に回避しようと動いた。

しかし、爪熊は避けようとしたタイミングで僕が逃げた方向にもう片方の腕を振り風の斬撃が肩と足を斬りつける。

 

 

「うぐっ……!?」

 

 

『ゴァァァァッ!』ダァッ!

 

 

「!」ザッ!

 

 

すぐに空力で片足程度からの跳躍し、距離をとる。しかし爪熊はこの機会を逃さずに僕に突進してきた。

僕は血が流れる足を止血せずに、ナハトに『纏雷』を纏わせる。そして思い切り力を込めながら……投げ飛ばす!

 

 

『グウォッ!?』ザシュゥッ!

 

 

更に、爪熊の顔の近くに謎の小さな石ころが転がると共に爪熊の右肩が撃ち抜かれた。ドパァンッ!という雷電の轟く様な一撃を浴びせたのは、床下から錬成で穴を開けたハジメ君だった。そして瞬間、閃光が走り爪熊の目は白い光に塗り潰されていく。

その間、僕はスディグマ工房の武器を構えながら想いにふける。

思い切り感情を、たぎらせる。

この爪熊を乗り越えるのはハジメ君でもあり僕自身でもある。ハジメ君は自分なりに乗り越えると言ってくれた。ならば僕は僕自身の為にこの爪熊を乗り越えよう。

今度こそ……今度こそ……

 

 

「この戦いに、決着を付けてやる……!」

 

 

その決意と共に、スディグマ工房の直剣は蝋の剣に塗り変わり左肩から蜜蝋の翼が生えた。

これが、エゴ発現。そして僕自身の想いの力。

改めて認識した後に爪熊は遂に視界を取り戻し、こちらに殺意の目線を向けてくる。

 

 

「僕の代わりに泣いてくれる人は、いないでしょう。

ならばこの悲しみと共に、立ち上がってみせますよ……そして乗り越えてみせる。

まずはお前からだ……!」ダァッ!

 

『グゥォォォォッ!』

 

 

爪熊と共に駆け出し、剛腕と蝋の剣がぶつかり合う。しかし爪熊の腕を軽く引き裂きながら灼熱が爪熊の体を灼き焦がす様に烙印が侵食していく。爪熊は苦悶の表情を浮かべながらよろめいて僕を睨みつける。しかしその程度で止まる訳がない、更に連続で剣戟を打ち込んでいく。

 

 

『グゥォォォォッ!』ザンッ!

 

「っ!」

 

 

翼の盾によって、風の斬撃が止められた。

圧倒的な風の斬撃はまるで蜜蝋の翼の羽ばたきを止められる事もなく、簡単に防いでくれる。

烙印は爪熊の肉体を侵食するように炎上させながら、チリチリと魂を焼き尽くさんと燃え上がる。

 

 

 

『グァァァッ!』ザンッ!ザンッ!

 

 

「……」

 

 

 

爪熊は一心不乱に僕に対して風の斬撃と爪の一撃を振り出すが翼之盾は揺るがない。

僕の思いと決意は、そんな攻撃では折れることがない。

爪熊に向かって歩き始めながら、僕は詠唱する。

 

 

「我が剣よ、この乞い願いし想いを、激情と知れ」

 

『グゥゥッ……!?』ザッ……

 

「この激情を以て、全てを燃やし尽くそう。

そして……夜明と共に消え去ろう」

 

 

『グゥガァァァァッ……!ガァッ!?』ドシュゥッ!

 

 

更に連続で雷撃が鳴り響き、ハジメ君のドンナーが僕の詠唱の補助をしてくれるように援護射撃と錬成で爪熊の足元が泥濘に変わる。

 

 

 

「〝燃滾撃(アインシュラーク・フルミナント)〟ッッ!!!!」

 

 

 

『ガァッ――――――!?』ボォッ……!!

 

 

 

 

灼熱の剣が、燃え盛る。

爪熊の心臓に一気に突き刺したスディグマ工房の直剣から烙印が共鳴し、全身が爆ぜてしまうように灼炎に包まれ……爪熊は死んだ。

遂に決着を付ける事が出来た、その思いで胸がいっぱいだった。

そんな中、近くの地面に穴が空いて一人の腕が伸びてきた。穴が拡大していくと共に、ハジメ君がゆっくりと顔を出してきた。

 

 

「大丈夫だった!?」

「はい。倒すことが出来ました」

「よかったぁ……」

 

 

安堵したハジメ君を横目に、爪熊の死体を見つめる。

遂に成し遂げ、乗り越える事が出来た。

僕自身達成感が凄く、今すぐにでも大の字で倒れてしまいそうな気がするが……それはまだ先だ。

僕としてはやる事が多い、今からこの先まで。

僕が調べる必要があるものも多いし……何より一番は。

この前に聞こえた『美しい声』。

カルメンさん、どうしてこの世界まで来てまで……

 

 

「……大丈夫?」

「うん、大丈夫。やる事を再認識したよ」

「そうなの?」

「うん。それに……風爪を倒したからどんどん先に進める気がするよ。まずは調理して食べよっか」

「そうだね……また痛いのは勘弁して欲しいけど」

「それはー……ちょっと諦めてもらうしかないかな」

 

 

 

痛みと苦しみは表裏一体。良薬口に苦しという事である。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

深層五十層目まで、飛んでしまった。

何よりもテンポよく、効率的な狩りが始まったと言うより……僕のせいである。

何がダメだっかと言われると、僕が爪熊の肉を上手く調理始めたからだと思う。

料理は本当にプロ並みに美味い訳じゃない。けど料理技術は覚えれるだけ覚えた。なのでそれなりに技術力は持ち合わせていた。

それが響いてしまったが故が、ハジメ君のグルメ欲というか食欲を刺激してしまった。

確かに生で食うのと、焼いて食べたりする料理と食べられそうな大迷宮に生えている植物を使った料理では前菜からメインまでのこだわりが違う。

僕自身料理は苦手じゃないし自分でも作れる時は多く作る人間だった。だからこそ……

 

 

「どうして僕はここまでさせてしまったんだろう……」

 

 

僕はこめかみに指を当てながら横目で、上々気分で『ドンナー』の弾丸を作りながら林檎のような果実のスティックを食べているハジメ君の姿を改めて見つつ鞄の中に入っている手記に記した今のハジメ君のステータスを確認する。

 

 

 

=====================================

 

南雲ハジメ 17歳 ? レベル:49

 

天職:錬成師

 

筋力:880

 

体力:970

 

耐性:860

 

敏捷:1040

 

魔力:760

 

魔耐:760

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解

 

====================================

 

 

 

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相馬 アキラ 17歳 男 レベル:51

 

天職:魔剣士/蜜蝋の翼

 

筋力:870

 

体力:920

 

耐性:870

 

敏捷:920

 

魔力:1200

 

魔耐:1200

 

技能:剣術[+夜明之剣]・属性強化[+烙印付与]・治癒[+火炎再生]・耐久[翼之盾]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解

 

 

 

===============================

 

 

 

一応、レベル差はあるもののお互いに強くなれている感じではある。

僕は魔剣士だから特に魔力の伸びがとても高い。勇者でも1000台は流石にキツそうな感じはある。

それに、まだ五十層を乗り越えている最中の僕達としては勇者が壁になっても普通にぶっ飛ばせるくらいには強くなっている。

何よりも、ハジメ君は左腕を失ったハンデを僕という左腕の代わりになる味方を持っているのが大きいのかもしれない。

彼……いや彼なのかはもはやさておき、曰く「本当に頼りにしているけど、流石に義手が欲しくなってくるかな」と笑みを浮かべていた。何とも言えない。

確かに腕がないなら義手を作ればいいじゃないとは言われそうだった。ユナさんもとある戦いで両腕を失ってから義体を使ってそこからフィクサー業を再開させている。例え修理代や月末のメンテナンスの手間があったとしてもその便利さはかけがえのないものらしい。

ただ……僕としては、『N社』の話を聞いている以上その義体関係に関してはいい思い出が無かった。

僕の記憶が正しければ、僕が『泣く子』として『残響楽団』に所属していた頃の記憶だ。図書館に攻め入るために戦力を整えている時に、エイリーンという頭を歯車の義体に変えた女性が『信者』を集めている時に『アルガリア』さんがエイリーンに言っていた言葉だ。

 

 

『エイリーン。義体を植え付けた信徒を増やすのも悪くはないんだけど……N社の動きが活発化する前にある程度は線引きしておいた方がいいんじゃないかな』

『アルガリア様、そこまで翼の職員に対してご警戒なさるのはいささか……』

『それはそうなんだけどね、今君を失う訳にはいかないし……N社って結構分からない事が多いんだよね。経験缶詰とか、自殺販売機とか。

ただ、それよりも『釘と槌』の彼彼女らの同行も分かりにくいのが一番かな。

今はまだ小規模で『義体』の弾圧活動をしてるみたいだけど、その内会社の規模も大きいし何処かの『巣』でも襲うんじゃないかなぁ?』

『……それならば、確かに勢力を伸ばす可能性は否定し切れません』

『そう。だから信徒集めは場所を絞って、かつ出来るだけ信徒の適性がある人を連れてくればいいと思うな。エイリーンに任せてるこの仕事、ちゃんとやってくれるって俺は信じてるよ』

『お任せ下さい、アルガリア様』

 

 

『………………』

 

 

遠くから会話を聞いていたが、N社という存在は僕も詳しくは分かっていない。

しかし義体、と聞くとなんだか心がざわつく。やはり残響楽団の時の記憶が残っているからかもしれないが。

思う所はある。寧ろ生き残る為には腕を『機械』にしなくてはならない事だってある。

しかし、それを置き換えた時に『本当にそれは自分の腕だろうか』と不安感を募らせることはある。

……話が飛躍しすぎた。

 

 

「準備、出来たよ」

 

 

ハジメ君の声が聞こえ、僕は改めて意識を切替える。

今更そんな事を気にしたって仕方ない。僕は僕でやる事が多い。

これは彼の問題であり僕の思考の問題などではない。僕の問題は僕の問題なのだから。

そして、ハジメ君が準備を完全に終えた事を確認し僕達は五十層の最大の謎の場所に向かう。

そこは、高さ3mからなる装飾された荘厳さ溢れる両開きの扉。その両脇には対となるように一つ目の巨人の石像が壁に埋め込められるように佇んでいる。

明らかに、開けたら出てくる気配なのは間違いなかった。

しかし開けなければ前に進めない、その為に装備やステータスも更新した。

ならば突き進むのみと決意し、ハジメ君に頼んで錬成で扉を無理矢理こじ開けようとした瞬間。

轟音と共に、両脇に立つ一つ目の巨人が包まれた壁と纏っていた殻を突き破って僕達の前に立ち塞がった。

 

 

『ゴォォォッ!』

 

『ウォォォッ―――』ドシュゥッ!

 

 

ドパァンッ!という銃声と共に、右の一つ目の巨人の目玉が爆ぜた。左の一つ目の巨人は脳内で何が起こったか理解できていなかった。

この迷宮を進んでいく中で、ハジメ君はひとつ理解したことがあると言っていた。

―――魔物は僕達の邪魔をする。それは僕達が都合が悪いんだと思う。 僕達の様な存在を外に出したくないからだ。

けどこの場所で生き永らえる為に喰らい戦わなければならない状況を作ったのは僕達じゃない。僕らを突き落とした奴だ。だからこそ……僕達を突き落としたアイツに一切の慈悲は無いし、それを阻むのなら遠慮なく蹂躙するよ、と。

ハジメ君が壊れてしまった。いや、薄らとここに来てからその狂気性が出てきてしまったとも言うかもしれないが。

まだ良かったのは、魔王みたいな思考になっている訳じゃないのが救いだった。白崎さんに下手な言い訳は通用しないし、質問攻めされるのは間違いなかったし。

そんな思考を走らせていると、左の一つ目巨人は状況を理解したように動作すると一気に肉体の色が変わる。

ハジメ君は『ドンナー』による一撃で脳天に当てるが、まるで石ころが当たったかのように効いていない。

しかし、今度は僕の番であることを理解して詠唱破棄した〝燃滾撃〟を撃ち込んだ。

灼炎の烙印が一つ目巨人に広がっていき、更に連撃を行うと一つ目巨人は堪忍したように謎のスキルを解くとその瞬間にハジメ君のドンナーがまたもや一つ目巨人を撃ち抜いた。

あっけなく終わった。なんという呆気なさ。

 

 

「『風爪』」

 

 

ハジメ君は正攻法で扉を開けることにしたのか、手を振るって僕達の宿敵である『爪熊』の技である『風爪』を使用してサイクロプスと呼んだ一つ目巨人の肉体から巨大な魔石を取り出し、よくよく見ると存在していた扉の凹みに嵌め込む。すると扉はその魔石から流れる魔力によって開閉し、奥の祭壇のような場所の通路が開く。

 

 

「神殿か……な?」

「かもしれないけど、こういうのは……あ」

 

 

ハジメ君が何かを見つけたのか、声を出しながら指を指す。どうやら『夜目』のスキルによって簡単に何かを見つける事が出来た。僕も目を凝らして見つめたが、一瞬で目を逸らした。ハジメ君は顔を傾げていたが、僕は明らかに奥にある存在から目を逸らしたくなった。

 

 

その瞬間だった。

 

 

轟音と共に、天空から謎の巨大な二本の尾を持ったサソリの様な魔物が落ちてきた。

しかし何かがおかしい。僕達が持つ『気配感知』に何一つ反応しなかったのも相当だが、何か個人的に嫌な空気を感じている。

そして、サソリの様な魔物……これからはサソリモドキと呼ぼう。その存在が四つの鋏を鳴らしながら遂にその違和感の正体の違和感に気が付いた。

瞳が赤色、そして何よりも広がる血の匂い。これは紛れもなく、都市にいたようなあの怪物……伝説上の存在とも言われていた、僕も見たことある馴染みの深い敵。

 

 

『ギシュァァァァッー!!!!!!』ガチガチガチ……

 

 

「血……鬼……」

 

 

そう口ずさみ、僕はすぐに動いていた。ハジメ君もこれに関してはすぐに異質だと感じて『天歩』と『縮地』によって空中に駆け出しながらサソリモドキにドンナーの強大な一撃を撃ち込む。しかし、その一撃は全く効いていないのかハジメ君の方に向かって一つ目の尾から謎の紫色の液体を噴射する。当たったら間違いなく不味そうなのは理解したのか、ハジメ君は縮地で回避している。かくいう僕は、詠唱破棄。

 

 

「〝茜示剣(クラッゼイゲ・シュヴェルト)〟」ザァンッ!

 

 

『ギィィァァァッ!!!!』

 

 

サソリモドキに対して撃ち込んだナハトとスディグマ工房の直剣の三連撃によって一方的に姿勢を崩したサソリモドキに対して、コトンという物音が響いた瞬間、僕は『縮地』で回避しながら爆撃音が響く。サソリモドキの悲鳴が響き渡りながらハジメ君がドンナーの銃撃音を鳴らしながら移動していくのが見えた。

しかし、チマチマ動くのに腹が立ったサソリモドキは二つの尾を交互に動かして散弾銃のように放たれる針と溶解液を放ってくる。

 

 

「『風爪』!」

 

「『豪脚』ッ!」

 

 

 

『ギシャォァァッ!』ドシュゥッ!

 

 

 

「錬成!」

 

 

しかし毒針を蹴り破り、風爪で溶解液を引き裂いて散らした僕達の攻撃の隙を突くようにサソリモドキの溶解液と尾から散弾針が飛んでくる。

そして、ハジメ君が突然取り出した迷宮の壁や床に使われている岩を僕の方向に向かって投げ出し、通り過ぎた瞬間に迷宮の岩は壁な様な岩盤に生まれ変わり攻撃を防いだ。僕はすぐに『空力』で足場を作りながら『縮地』で距離を詰め、サソリモドキの頭の上に乗る。

 

 

『ギシャゥァッ!』ブォンッ!

 

 

「ハジメ、君っ!」

 

 

着地狩りの如く振り出される二本のサソリモドキの尾を剣で止めながら合図を送る様にハジメ君に視線を送る。

 

 

「いつでも!」ドパパパパァンッ!

 

 

そして、僕に向かって『ドンナー』の連撃が撃ち込まれる。その銃弾は電磁加速しながら僕を穿たんと迫り来る。

正直こんな事危なくてやってられない。しかしこれは僕とハジメ君のコンビネーションとタイミングが試される。

最高の瞬間がすぐ側まで来た瞬間、僕は剣を構えて『豪脚』で一気に足を動かして周囲に回転するように飛び上がり銃弾をまるで周囲に打ち返すようにスディグマ工房の直剣、ナハトによって全ての弾丸はサソリモドキの背中に跳弾し『烙印』が付与された銃弾はサソリモドキの殻を高熱で融解させながら弾け飛んだ。

 

 

 

『ギュィァァァァァァッ!?』ジュウァァァァッ!

 

 

しかし、この技の致命的な欠点がある。

それは弾き返す僕側にもとても反動としてダメージが来る。しかし、それでいい。

僕は己を奮い立たせながら、強く剣を握り締めて暴れ散らかすサソリモドキの頭の上で……激情を誓う。

 

 

「お前の汚れた血すらも、この激情で燃やし尽くしてやる!」

 

 

身体から極熱と翼が生え、エゴが発現する。

サソリモドキが烙印の炎傷に苦しみ悶え、ヨロヨロと動きながら壁に自分の背中を叩き付けんとした時に『縮地』により祭壇中央方向に飛ぶ事で避ける。

そして、蝋の剣を遠いサソリモドキに突きつけながら詠唱を開始する。

 

 

「我が剣よ、この乞い願いし想いを、激情と知れ」

 

 

サソリモドキはフラフラとしながら僕を見据え、棒立ちの僕に対して溶解液と散弾針で攻撃してくる。しかしそれを翼の盾が防ぎながら詠唱を続ける。

 

 

「この激情を以て、全てを燃やし尽くそう。そして……夜明と共に消え去ろう」

 

 

『ギュィァァァァァァッ!!!!』グワァッ!

 

 

「やらせる訳ないでし、ょっ!」ドゴォッ!

 

 

『ギュイァァァァッ!?』

 

 

 

すぐにこちらに近付いてお前を食い殺してやると言わんばかりに近付いて来たサソリモドキは、背後から『縮地』で加速しながら降りてきたハジメ君の『豪脚』『風爪』で足元を引き裂かれながらギリギリの距離で倒れ込む。

そして詠唱を完全に終えた僕は、蝋の剣を突きつける。

 

 

 

「〝燃滾撃(アインシュラーク・フルミナント)〟」

 

 

『ギィィァァァッ!!!!』

 

 

そして、サソリモドキの抵抗も虚しく『縮地』で背後を取った僕の三連撃によって二つの尾、四本の腕を切り飛ばされるサソリモドキは『烙印』の更なる灼炎の爆発によって、動かなくなった。

僕達の勝利である。

 

 

「アキラ君!流石だったね!」ダッ

「うん。中々大変だったよ」

「取り敢えず、サソリモドキは後で食べれるし今は……あの奥にあるあれを何とかしよっか」

 

 

そうして、僕はずっと目を逸らし続けていた……

この祭壇の中央部奥に存在している、下半身を埋められ無垢な上半身を晒す、金髪の少女に対して改めて見つめ直す事になったのだった。

 

 

 





・〝燃滾撃〟(アインシュラーク・フルミナント)

アキラが使う、E.G.Oである『蜜蝋の翼』と共に変化するスディグマ工房の剣を使用して放つ灼炎の魔法剣技。
全ての魔力を振り絞り、まるで焚べる様に極熱を放つ激情の剣を相手に牙突で撃ち込む必殺技とも言える火力を誇る。
基本的に一撃型が主流だが一撃で終わらせるより連撃した方が強い場合もある。
Library of ruinaの不安定E.G.O覚醒のフィリップが使用する『燃えたぎる一撃』がモチーフ。


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ハジメの性別、どうする?

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