ありふれた烙印で異世界再燃   作:黒霧 氷

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どうか、あなたの物語が見つかりますように。


※Library of ruinaの著しいネタバレがあります。ご注意ください。





Ep.7 出来損ないの翼

 

 

 

遂に、オルクス大迷宮深層『百層』に到達した。

あれから結構、エセアルラウネなどと言った面倒臭い魔物と対峙したりハジメ君とユエさんの魔法による蹂躙劇が行われた。

そう、ユエさんは魔法使いでありながら吸血鬼であった。様々な上位魔法を詠唱破棄で行い簡単に放ってくれる規格外の魔法使い。

正直僕の立ち位置が危うくなってしまったが、上級魔法ぐらいしか覚えてないというのがネックで、吸血して魔法が再度使えることがあるにしてもやはり燃費は悪いらしい。

ユエさんには申し訳ないと言われていたが、あんまりやる事がないと暇なのでハジメ君の服や今後に必要なスキルの組み合わせを考えていた。

そして何より、かなり強くなった。装備更新をそろそろしたいとも思っていたのも境目だろう。

 

 

====================================

 

南雲ハジメ 17歳 ? レベル:76

 

天職:錬成師

 

筋力:1980

 

体力:2090

 

耐性:2070

 

敏捷:2450

 

魔力:1780

 

魔耐:1780

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

 

====================================

 

 

===============================

 

 

 

相馬 アキラ 17歳 男 レベル:79

 

天職:魔剣士/蜜蝋の翼

 

筋力:2040

 

体力:2100

 

耐性:1960

 

敏捷:2070

 

魔力:2100

 

魔耐:2100

 

技能:剣術[+夜明之剣]・属性強化[+烙印付与]・治癒[+火炎再生]・耐久[翼之盾]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

 

 

 

===============================

 

 

 

 

「遂にここまでやってきたんだ」

「だね」

 

 

 

お互いに強い実感を噛み締めながら、拳を握り締める。

反逆者の謎や個人的な知りたい事が多いけど、そんな事はこれから起こる戦いにとってなんら意味はない。

今はただ、勝ち抜いて生きていく。それが大切だ。

そうして僕とハジメ君、ユエさんと一緒に百階層の階段を降りていく。そこには―――無数の巨大な柱に支えられた広大な空間が広がっていた。

完全に階段を降り、改めてこの壮大な空間を見つめる。柱は階段を降りてくる時よりも30mもあるような大きさであった。

 

 

「凄い……」

 

 

つい、口ずさむ。

地球にも『文化遺産』というものがあり、先代の人間が残した特別な建造物やあまりにも美しく『後世に伝えるべき』物などが文化遺産として登録されるが、これも一種のそれを感じさせた。

ただの柱が並び立つ、そんなシンプルな作りなのに奥行を見つめて行くほど圧倒的な壮大さが伺える。

 

 

「多分、反逆者の住処?」

「そうだったら、本当にここが最後って事になるね」

「ですね。三人で、ここを脱出しましょう」

 

 

そう覚悟を決め合い、そしてお互いが進む。

奥に行く度に、柱から光が浮かび上がっていく。魔法か何かだろうか?

そんな疑問を感じながら、周囲を見渡していき……遂に最後の柱を渡ろうとした瞬間。

赤黒い巨大な魔法陣が展開され、そこから巨大な怪物が召喚された。

それは、六つからなる龍の頭にそれぞれが違う紋様を持っていた。長い首で頭を動かしながら、鋭い牙が見える。

赤黒い瞳が、こちらを睨みつけてくる。

 

 

「(また血鬼の気配……!)」

 

 

『『『『『『クルゥァァァァァンッ!』』』』』』

 

 

そして、ハジメ君が武器を抜きお互いのポジションに動こうとした次の瞬間。

僕の真下に、青色の魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣の文字は緻密で相当な細かさだった。

しかし問題は、僕はその魔法陣を()()()()()()()()

だからこそ急激に背中が冷え出し縮地で移動しようとする。

だが体は動かない。まるで世界が止まってしまったかのように動かないのだ。

いや、よく目を凝らしてみると……本当に僅かな青い魔力が僕を縛り付けていた。

 

 

「(どういう、事だ!?)」

 

 

そして、二人の声が聞こえていく中僕一人だけが魔法陣によって転移させられた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

そして、次の瞬間に見えた光景には。

何処か見覚えがある場所。

いや、間違いなく僕はこの場所に何度も来た事があって、誰かと話していた様な感覚が走る。

この薄暗い道に小洒落た事務所のような物が建っていて、更に看板に『down Office』と描かれていた。

これは、僕こと―――フィリップが所属していた事務所だ。

 

 

「どうして、ここに」

 

『気付きましたか』

 

「!」バッ

 

 

謎の声が聞こえ、すぐに振り返る。

そしてその姿を体が認識し、強ばった。

そこにいたのは、僕が知っている人物だったから。

黒色の髑髏のような肉体、黒色と青色のヌオーヴォー生地のスーツ、シルクハットそしてモノクルを片目に付けて紳士のような立ち方を維持した存在。

『残響楽団』にいた、ねじれこと昨日の約束(プルート)だった。

何故こんな所に、という言葉を押し黙りスティグマ工房の剣を抜く。明らかに敵の幻影か僕の記憶を見て作り出した存在だと思ったからだ。

本人でなければ怖くない、そう感じていた。

 

 

「プルート……でしたっけ」

『覚えていてくれるのですね、フィリップ』

「お世話にはなりましたから。ですがあなたは、死んだはずでは」

 

 

紳士的な態度で答えたくれるプルートに対して、僕は改めて事実を突き付けるように死んだ事を伝える。プルートは少し押し黙った後に会話を再開してきた。

 

 

『確かに、死にました。しかし私達はチャンスを得ました』

「チャンス?」

『私達は別の世界に生まれ変わったのです。そして、その別の世界こそここ。トータスです』

「……!」

 

唐突に明かされる事実に、スティグマ工房の直剣を握り締める。つまり、今後『残響楽団』のメンバーと顔を合わせる事にもなると言われた様なものだ。精神的な思いも色々あるし、顔を合わせにくいのも確かだが……この世界でも『演奏』を奏でようとする『アルガリア』さんを頭に浮べる。確かあの人は、とあるフィクサーに非常に恨みを抱いていた。それを晴らすと同時に復讐するという形で図書館に押し入ったのは僕も覚えている。

しかしその復讐相手がここにいない今、何故この世界で生きているのか?どうしてねじれているのか?そう思った。確かに爪熊の時に彼女が話しかけてくる声は聞こえた。

()()()()だ。おかしいのだ。

カルメンさんがこの世界にいる事もそうだが、何故この世界に残響楽団のメンバーが転生している事も不思議でならなかった。

 

 

『我々は、本来では魂だけの存在となり世界を漂う一つの光でした。

しかしそれを掬いあげたのが、エヒト様だったのです。

我々はかの人の教えに従い、世界に仇なす反逆者を殺すように命じられました。そうすればどんな願いであろうと叶えるとも。

私はもう一度やり直したく願い、ここにいる『反逆者』を追い詰める予定でした。しかしこの世界の人間は、予想以上に手強かった。ならばこの迷宮の踏破者を狩り尽くす事でエヒト様の意志を叶える事が出来る……そう思いながらここに生きてきました。ねじれてはいますが、実際はアンデットですがね』

 

 

そう言って、淡々と説明するプルート。

しかし違和感はある。何だか、アルガリアに盲信している頃のプルートとそっくりだった。

もしかしてアルガリアとの記憶が無い?と思い、聞いてみることにした。

 

 

「プルート……アルガリアはどうした?」

『……アルガリア?何方でしょうか』

「残響楽団の時の記憶は覚えているのに、肝心な仕えていた人の名前すら覚えていないんだな、君は」

『……何を仰っているか、よく分かりませんね』

 

 

プルートはバツが悪そうに会話を終わらせ、青色の魔法陣を浮かび上がらせる。

そして青黒い謎の紙を取り出す。

 

 

『フィリップ。もしも戻ってきてくれるのなら、我々はあなたにチャンスを与えたいと思います。

あなたが取り戻したかった、サルヴァドールとユナにいる本来の世界に帰してあげましょう。私は契約した約束は破りません……騙される方が悪いとは思いますがあなたとは一緒に働いた事がある身、ここくらいはサービスしてあげる気はありますがね。

その代わり、あなたにお願いがあるのですよ……フィリップ』

「聞くだけ、聞いてみるけど」

『反逆者を殺して下さい。今、ヒュドラと戦っているあの二人と……あの奥地にいる『反逆者の眷属』を』

 

 

そう呟くプルートに対して、改めて剣を握り直す。

昨日の約束という名前はよく知っている。謎に現れるねじれであり、不当な契約で人々から物を奪う存在であると。

契約を一方的に突きつけ、破ろうにも体から内臓や大切な物を奪い殺されるか一生の傀儡にされる。

そんな話を聞いた上で、彼をもう一度信用出来るだろうか?

僕は、そうは思わない。

 

 

「断ります」

『……フィリップ。本当にその判断は正しいのでしょうか。

あなたも分かっているでしょう。人生というのは不平等であり残酷である事を。自分が信用していたものから一方的に裏切られ、契約していたものは簡単に自分の都合から契約を破る様な自己的な存在であると。

その様な存在を、生かす必要はありません。特に……ローラン。

あの存在のお陰で、私は大切な物を失った。

あれを生かす訳にはいかない。おめおめと生きている等許せるものか。

私にとって大切な約束を破られた身上、あの男に復讐する理由がある。

あなたもそうでしょう』

 

 

ローラン。それは、あの図書館にいたゲストを迎え入れる接待者。

しかし、僕は彼と何度も戦ったし何度も会ったことがある。

彼は強かったし、そして何より僕の恩師を殺した。

しかし……

しかし。

今の僕に、それは関係あるのだろうか。

僕はもうあそこで生きれるような人間じゃない。

サルヴァドールさんやユナさんに顔向け出来る様なものでもない。

結局の所、自分の一方的な思い込みで全てを遮断し空になった僕を埋めるものなんてなく。

今更あんな所に戻った所で、僕は二人に受け入れてもらえるはずがない。

そして何より……

 

 

「お前は、まるで自分の都合のいい契約の為に二人を差し引きに出したな。

お前は不当な契約が嫌いな癖に、自分からその契約を突き付けてくる屑だ。

あの二人を契約上の書類から名前に出したことを後悔させてやる。プルート」

 

 

僕の心は、激情の如くギラギラと燃えていた。

必ず奴を打ち倒す。過去の因縁と決着をつける為にと。

 

 

「この戦いに、決着を付けてやる」

 

 

その決意と共に、僕の背中から翼が生える。左側の翼は何時でも僕を包んでくれる。

僕の剣は、太陽の様に暖かい。その温もりが僕を生きていると証明させてくれる。

 

 

『仕方ありませんね。契約不成立です』

 

 

そう言って、プルートは魔法陣から展開した青白い骸骨の腕を大量に展開し僕に向かって放ってくる。

魔法陣から幾度も放たれる骸骨の腕を〝茜示剣〟で引き裂きながら、距離を詰める。

 

 

「はぁっ!」ブォンッ!

『おっと』

 

 

しかし、プルートに攻撃は当たらなかった。

彼は転移するような魔法を使う。しかもかなり高精度でどんな場所だって飛んでいける。

青白い魔法陣が浮かびながら、今度は結界を展開してこっちに広範囲に攻撃してくる。

しかし、それがどうしたかの様に僕は結界に向かって突撃し〝燃滾撃〟でその結界を穿ち壊す。

 

 

『……その強さは、あなた自身の力ですか』

「ええ」

『その様な蜜蝋の翼で、何が出来ると言うのですかね。

結局は騙されて、その翼までもぎ取られるのでしょうに』

 

 

そう言いながら、今度は鎖がまるで蛇のように動いて僕に攻撃してくるが全てを灼熱のまま切り裂く。

プルートはとにかく僕に対して攻撃が当たらないように避けるが、僕も多くは動かない。

プルートが明らかに手詰まっているのは明らかだった。僕に対して無下に攻撃をしたくないという事だろう。

 

 

『……苛立ちますね』

「そうですか」

『仲間を簡単に裏切り、あなたは自分の思いを貫き通すのは確かに勝手と言えるでしょう。

しかし……()()が見たら本当にその思いは止まらないのでしょうか?』

 

 

そう言うと、魔法陣を展開し一人の人物を出す。

その人物を見た時に、目を見開いた。

それは僕が知る、夜明事務所の先輩であるユナさんだったから。

 

 

「フィリップ……」

「ユナ、さん…………?」

「どうして、私を見殺しにしたの?」

 

 

その言葉で、僕の心臓が揺らぐ。

 

 

「どうして、あなた一人が生き残ったの。私が好きじゃなかったの?」

「僕、は……!」

「好きじゃないから、見捨ててもいいって事なの?」

 

 

心臓が引き締められるほどに、痛い。

分かっている、これは本人ではないと僕が一番分かっている。

ユナさんは、こんな事を言わないと分かっている。

それでも、耳を覆った。

 

 

「ふざけるな、あの時、あの時言ってくれたじゃないか!

サルヴァドールさんが『応援を呼びに行くんだ』って頼んでくれたじゃないか!」

「そんな理由で、好きな私を切り捨てれるんだ?」

「うるさい……うるさい!なんでだよ!なんで!死んでから僕に文句を言うんだ!なんで今頃になって!」

 

 

頭の中が、ぐちゃぐちゃになる。

ユナさんの言葉一つ一つが僕の後悔をより引き上げてくる。

もしあの時、ユナさんの手を引けたら僕はあんな思いをする事はなかったなんて……思ったことなんて幾らだってあったから。

それが恩師の気持ちを引き裂くことになったとしても。

僕は彼女が好きだったから。

凄く頼りになって、冷静で、僕の代わりに呆れながらも仕事を手伝ったり引き受けてくれたことだってある。

未熟な僕に何度だって失敗に挫折しかけそうになった時にも、助けてくれた事だってある。

そんな人が、僕に対して今までの恩を忘れたなんて今言うなんて、ずるいじゃないか。

 

 

『フィリップ。結局あなたも同じなのです。

簡単に恩も、約束も、人は思いひとつで裏切る。だからこそ人間は醜く凄惨なものなのです。

そんな世界にしたくないでしょう。ならばエヒト様と共に来るのです……あのお方なら、本当に大切な物を取り戻す事が出来る。あなたが欲しかったものをもう一度その手に、寄せることが出来る』

「だから、フィリップ。私の事が好きなら……もう一度彼と協力してよ」

 

 

 

そう言って囁いてくるユナさんの言葉に……

耳を更に覆った。

ふざけるな。

なんで今、なんで今……今頃になって…………

 

 

 

〚だから言ったでしょ?この世界は、残酷なんだよ〛

 

 

優しく、暖かい声が聞こえてきた。

その声はまるで僕の耳にすっと届くように劈く。

 

 

「カルメン、さん……」

 

 

〚辛いよね、苦しいよね……君のその気持ちを私は解放してあげたい。そんな思いをまたするのなら、あの頃の姿に戻るのもいいって思わない?

君の、ありのままの姿に〛

 

 

「僕は……」

 

 

心が鐘のように揺らぎ、騒がしく鳴り続ける。

僕は、僕はどうすればいい。

全てはまやかしだって分かる。けど魂がそれを許さない。

偽物なのに、自分はユナさんの事が好きだから彼女の言葉に答えたいと言っている。

例えこれを振り切ったとしても、プルートは一方的に僕を追い込んでいくだろう。僕の心が折れる方が、きっと―――

 

 

 

「けどさ」

 

 

途端に、ユナさんの声が聞こえた。

僕が手を離し、ゆっくりと顔を上げるとしゃがみ込んだユナさんが僕を見つめていた。

 

 

「どうせ、図書館の任務で生き残るなんて無理だって分かってた。都市で生き残れないなんて事もあの世界が都合がいい時がないなんて事も」

『な、に……?これは、分身な筈だ……!』

「ユナ、さん……」

「けどね、やっぱり失敗しちゃう時は失敗する。

都市のフィクサーは失敗すれば簡単に信用を失うしその分を埋め合わせなきゃいけない。私だって苦労してる。

けどね、結局のところ誰も助けてくれない。

だからフィリップ、あなたが失敗するのはこの事務所を追い込んでるのも一緒」

「……」

 

 

ユナさんの言葉が、胸に突き刺さる。

そうだ、僕は……結局二人に迷惑を掛けてばかりだった。

ドジで才能もなくて、二人の後ろで上手くやるしかなかった僕を支えてくれたあの二人だった。

 

 

〚けど、ありのままの自分を解放すれば……そんな思いをせずに君の本当の姿を見せ 「でもね」

 

 

声を遮るように、ユナさんの声が僕の頭の中に響く。

 

 

「それだけ失敗を知っても、バカ正直に努力をしてるフィリップを見てると……負けられないなって感じたことは多いよ。

なんであんなに失敗して、負けても落ち込まないんだろうって。

私だったら、きっと折れてる。けどフィリップは私達を失って心が折れてたくらいなのに。

私とサルヴァドールがいないと、世話が焼けるってずっと思ってけど。

あなたもずっと頑張ってる姿に勇気付けられてのは……ほんの少しだけホントだから」

「…………!」

「フィリップ。

基本を知る事もいいけど、広い世界に飛び立って。

あなたが大地を駆け出して飛ぶ鳥を見てるなら、まずは大地よりも高く飛べると空に羽ばたいて。

あなたは、その為に色んな事を学んできたんでしょ。

私が教えたことを、忘れないで。

だから……私みたいに失敗しないで。

フィリップならやれるって信じてたから、あの場を任せたように。

きっと出来るから」

 

 

そう言って、ユナさんは消えていった。

もうあの声は、聞こえてこない。

僕は剣を掴み直して、胸の中に潜む激情を燃やし尽くす。

大切な人に、僕は二度を裏切られるのだろうか?

例え幻影だとしても、今の言葉を信じ切れるのだろうか?

都合のいいように聞こえたのかもしれない。

けど……僕は、今のユナさんの言葉を信じる。

それが僕にとって羽ばたけるのなら、何処までも飛ぼう。

 

 

「偽物の翼でも、いいんだ……

僕の翼は、溶けてしまいそうでも……

日の出を見る鳥のように、僕は……空へ」

 

 

出来る。

飛ぼうと思って、飛べたことは無いけど。

飛んでみたいと思った気持ちは本物だから。

僕は何度だって立ち上がれるから、

立ち上がってきっと飛べるって信じてくれた二人がいるから。

僕は……この決意と激情を風にして。

 

 

「飛び上がれ」

 

 

僕の背中には、蝋で作られた二つの翼がある。

一つは包み込むように暖かい翼。

もう一つは、冷たくも大きな翼。

出来損ない、けれどきっと僕にとっては憧れた翼。

僕はこの二つに、守られてきた。

二人の思い。

きっと出来る。雛鳥から成長した今の僕なら飛び立てる。

僕が本来いる場所へ飛び立つ為に。

僕が本来、あるべき場所へ。

 

 

「何度だって羽ばたいて、例えどんなに苦しくても。

諦めたくないんだ。飛び立つ事を」

 

 

そして、生まれ変わった蝋の剣は完全に固まっていた。

鋭く空を切れるような長い直剣に変わっていた。

そして、左腕には『ディアモンド』の盾が蜜蝋に固められていた。

しかしそれは、まるで黄金の様に煌めいていた。

太陽に照らし出された結晶のように艶めいている。

そして僕の体を包み込む、白い蝋の鎧。

まるで強い英雄の騎士のようだ。

 

 

『まさか……そんな事が、あるのか……』

 

 

 

「プルート……今度こそ、決着を付けよう。

お前は僕の怒りに触れすぎた。

知らないのか?お前は、その力に頼り過ぎた……いや、過信し過ぎたんだ。

それが僕をより羽ばたかせる事になるなんて思いもしなかったんだな……昔とは違う僕を見ていなかった、お前の過信が原因だ」

 

 

『…………ならば、仕方ない。

こちらも、全力で行くとしましょう。

その判断と、その考えが何処までも愚かであった事を思い知ってもらいましょうか』

 

 

プルートは、己の姿を変えた。

魔法陣は体に烙印のように焼き付き、黒色の骸骨の体は禍々しく黒曜石の様に生まれ変わる。そして、悪魔の角と尾を揺らしながら魔法陣を展開する。

この因縁に、決着を付ける。

そして……この試練を乗り越える。

海の様に広く、太陽のように熱くとも。

楽に僕にはこの翼と、二人の言葉があるんだから。

 

 

 






・E.G.O「翔明の騎士」

それは、一つの可能性の到達点。
イカロスは、父の言いつけを破り海に堕ちた。
彼は空を飛ぶというその全てに喜びと自由を感じた。
しかし彼は言葉を真に受け止めることはなかった。
しかしもし、彼がその言葉を真摯に受け止め空を飛べば。
本当の自由を父と共に手に掴むことが出来る。
彼らは空へと駆け出す為に、その出来損ないの翼を創り上げた。
しかしそんな翼で、飛ぶ事が出来た。
それはきっと、牢獄から出る事を夢見続け必死に努力し続けた賜物。
今度は、堕ちない。
今度は、飛び過ぎない。
そうすれば……
きっと彼に代わる、英雄へと。
何処までも飛び、何処までも届くその翼を広げて。




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ハジメの性別、どうする?

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  • 女に変える
  • 性別:ハジメになる
  • なんてこったパンナコッタ
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