どうか、あなたの物語が見つかりますように。
※Library of ruinaの著しいネタバレを含みます。ご注意ください。
「ハァァァッ!」ザァンッ!
『ぐぅっ……!』
結界を破りながら、蜜蝋の剣が極炎を振りかざしながら魔法陣を燃やし尽くす。
背中の翼で羽ばたきながら、プルートが魔法を唱える隙を与えず機会を伺いながら攻め込んでいく。
冷静に、そして一瞬で決めれる様に機会を伺うんだ。
そうすれば相手も無理は出来ない。
「〝茜示剣〟」
『何度も、同じ攻撃を喰らうとお思いですか!』
「だからこそ、だ」ザァッ!
『何っ……!?』
両翼が剣を掲げる僕を包み込みそして一気に突撃する。プルートは有効打のある技が無かったのか転移し距離をとったが、次に僕に目線を移した時には炎の斬撃に身を焦がされていた。
翼で炎の魔力を溜め込み、剣圧で放った。おそらく普通に剣を見せていたらバレていただろう。しかしプルートは回避してくる。もちろん回避の隙を逃したりはしない。
「甘い」ザンッ!
『ぐっ、はぁっ!』
「……」
そして、直剣の連撃から更なる隙を伺っていたのか僕の剣と片腕を鎖で縛り付ける。
どうやら小賢しくも機会を伺っていたようだ。
『フィリップ……希望は簡単に失われますよ。
あなたが信じている反逆者の者もきっと、エヒト様の前では容赦なく死ぬでしょう。
その為に反逆者が用意している魔物達には予め血鬼の血が紛れておりますから。
あなた達が気付かないウチに、お仲間が血袋になっているかもしれませんね』
「根拠があるのか?」
『エヒト様は偉大なる存在。私達が出来ない事をこなす事が出来る。奇跡と神秘を起こすのです。
あなたのような存在と違うのですよ』
まるで小馬鹿にするように言ってくるプルートは、こちらに対して魔法陣を展開する。
腕が動かせないと思うだけでここまで慢心するのか、そう思ってしまいつい笑みがこぼれる。
『……何を笑っているのでしょうか』
「いえ、あなたがあまりにも愚かすぎて―――ああ、
そんな事だから契約に騙されたのでは?」
『黙れッッッ!』
その瞬間、魔法陣から放たれた巨大な骸骨の腕を『金剛』で防ぎながら『纏雷』で鎖を焼き払い、一気にプルートに距離を『縮地』で詰めて胸に三連撃の剣閃が走り、血が零れていく。
突然の加速から攻撃に、プルートは動揺が隠せなかった。胸を抑えながら僕を恨めしそうに見つめてくる。
「どうした?」
『こんな事が……あっていいはずが無い……結局は何処までも、世界な不当なんだ』
ぐらつきながらそう呟くプルートを見て、僕は何かの悪戯心が刺激されたのか。
軽く煽ってみることにした。
「寧ろ、君を哀れに思うよ。
どうしてそんな契約に騙されているなんて自覚がないんだろう、って」
『何を、言って……』
「だって、可愛そうじゃないか。
君がエヒトとした契約、そもそもやってくれる訳がないんだから」
『っ……!ふざけるなっ!お前にあの方の何が分かるっ!』バッ!
そう煽ると、怒りで魔法を使い鎖を飛ばしまくるが僕には全く効かずに『纏雷』が鎖を焼き払いながら周囲に電撃が走った。
僕の腸は煮えたぎっている。
僕の大切な人を利用したのは、あの顔面ピエロ野郎ことオズワルドと合わせてプルートが増えた。
楽な方法で殺してやるなんて思わない。とことん苦しめて、倒す。
「だって、エヒトは君より強いんだろう?契約なんてものはもっと強い存在に対しては意味がないんだよ。
契約なんて、何時だってなかった事に出来るんだからさ。
君が一番
『っ…………!私は、あの方を信じている!あの方が見せてくれた奇跡は本物だ!神の神秘だ!
どんな契約や約束よりも、神の意思は絶対だ!』
「でも、それは結局言う事を聞いてるだけなんだ。
結局君はエヒトとやらの目的に従って、自分が叶えて欲しいお願いを叶えてもらう『約束』をしてもらっているんだから。
また騙されたんじゃないかな。とても哀れに見えるよ」
『
フィリップッッッ!!!貴様ァァァァッッッ!!!!
』
怒りのまま大量の魔法陣を浮かべ、鎖や骸骨の腕が僕に迫り来る。しかしそんなものは僕を縛る鎖にもならず、蜜蝋の剣が極炎で全てを焼き付くしながら斬り払う。
ここまで落ちぶれてしまった彼は、最早悪魔というより醜い生き物か何かだった。
自らが騙されていると知らず、自らが嫌う契約と約束に縛られ踊らされている。そんな彼を解放させてやらなければならない。
自分のケジメとしても、そして元仲間であったことを温情として。
「怒るって事は、薄々君も気付いてたみたいだね……プルート」
『違うッ!あの方は、そんな事をする筈がない!私は信じている!あの方の絶対的な奇跡の力を!
あれさえ手に入れば!今度こそ私は全てを取り戻しヤツに復讐するのだ!ローランへと!』ダァッ!
「けど、君が何処まで怒ろうとも僕は負けない。
僕には君の様な怒りじゃない、二人の想いと僕自身が抱えると決めた罪に立ち向かっているんだ。
君は自ら騙された罪を認める事なく、そこに突っ立っているままなのかい?」ブォンッ!
『何処までも、侮辱する気か!』
遂に、結界の魔術と共に反射の魔法を使い僕の剣戟を反射させてぬる。
確かに攻撃は反射され、僕に返ってきた……しかし、傷つかない。
僕自身の覚悟と二人の力が、僕に共鳴している。今更僕自身に迷いなんてものはない。
プルートを打ち倒し、今後も立ち傍がる全てを打ち倒すだけなのだ。
「終わらせよう、プルート……君のその姿を見るのも今日で最後だ」
『不愉快極まりないお前を消してやる!私は、神の遣いなんだ!』
そう言いながら、巨大な魔法陣を展開する。
その間に未署名の五つの契約書に自分自身でサインし、力を増幅させる。そんな使い方があったのか、と感心する。
まぁ、自分で作った契約書に自分でサインするのはいささか変な光景であったが哀れすぎて何も言えなかった。
僕は、改めて剣をプルートに突き付け詠唱を始める。
「日の出を見る者の祈りと共に、雲に隠れよ」
極炎の蜜蝋の剣は、膨大な力を溜め込みながらゆっくりと炎が僕の体を包み込む。
恐れることはない。この炎は僕の勇気と意志を表す。
「日没を見る者の言葉と共に、海から離れよ」
そして、プルートの足元を零度の風が包み込み凍らせる。プルートは一切動じずに機会を伺っている。
本当に率直な男過ぎて、僕は少し笑みを零しながら昔の彼と比べる。
紳士的で、物怖じない彼の冷静な姿は何処にもなく。
そこには、神の口約束に乗り必死に足掻く愚者が。
神の言葉を信じたが故に体を悪魔にさえ明け渡した存在が。
『喰らえッッッ!!!〝伽藍堂手〟!』
そして、一切合切を通り越して掴みかかろうとする巨大な骸骨の鎖を纏った腕に向けて。
僕は剣を掴み、飛び出した。
何処までも自由に、そして……全てを打ち倒す為に。
二人の言葉を剣と胸に抱いて、一気に振り抜く。
「〝
蜜蝋の剣は、本来の姿を取り戻す。
それは本来形すらない炎。太陽の光の様な眩しくも燃え滾る炎のそれ。
しかし掴むことはない。人では太陽の炎など掴めない。
さかし、太陽に手を伸ばすことは出来たから。
太陽を掴むことだって、出来るはずなんだ。
そしてきっと太陽の炎は、何処までも暖かく。
誰かを心を照らし、その熱で解かしてくれるから。
『――――――――――――!?』
「プルート……君の事を想って、改めて言わせてもらうよ。
世界は欺瞞と嘘で溢れてる。きっと何もかも信じられない時が来る。
僕もそうだった……何を信じればいいか分からなかった事は沢山ある。
だけど、そういう時は。
君の感情を一番に信じるべきなんだ。
契約も約束も関係ない。君の思いこそがこの欺瞞と嘘の雲一つすらない純粋な感情なんだ。
例え神の契約が不当だとしても、君が心から助けを求めれば。
罪滅ぼしとして、君を助けるよ。僕達は
僕の言葉に、体が赤い炎に包まれながら燃え尽きていくプルートが僕を見つめてくる。
空虚な瞳だ。悪魔だというのに悪魔の気配すら感じない。
ただ、理不尽に騙され信じれなくなってしまったが故にこの様な姿に成れ果ててしまった。
僕は同情しない。僕も同じ存在であったからか、彼らにも彼らなりの思う所があったはずだ。だがユナさんのあれは許せない。
しかし、僕はこいつに対してトドメを刺すつもりはなかった。
『―――騙そうとしたヤツに、手を伸ばすなんて……不合理だな』
「けど、愚かでもいいさ。僕は失敗して、騙されてもそれでも生き抜いてきたから。
こんな現実が嫌でも、自分から進まなくちゃ意味がないから。
目を逸らすのはもうやめたんだ。それでは、本当に見たい時に前が見えなくて……
聞きたい声を最後まで聞けなくて、本当に伝えたい事を伝えられないから。
僕は結局、失うのが怖かった。
けど、人は弱くない。弱い人もいるけど、きっとそれを乗り越える方法は幾らだって見つけれる。そして乗り越えた時に恐怖も共に消えていく。
人が恐怖を乗り越え、強くなっていくのに……僕は何をしているんだろう。
それこそ、僕は失うのが怖かったんだ。
サルヴァドールさん、ユナさん、オスカーさん、パメリさん、パメラさん……助けてくれた人達を自分の思想と傲慢さで失って、この先もどんどん犠牲にして行くことに」
『……』
誰かの為に動ける、誰かの為に命を掛けれる。だから僕は今は逃げてもいい。
そう思い込んで、5人も犠牲を出してしまった。
結局の所それはただの言い訳で、僕はろくに戦えない事を盾にして逃げていたんだ。
何も学ばない。何も変われていない。そんな僕が強くなれるはずがなかった。
だからこそ……ただ一人で。
たった一人で、全ての罪を背負おう。
例え誰かが僕の人生に手を差し伸べようとも、僕は罪を背負い一人で生き抜かなければならない。
傲慢と言われようと、強欲と言われようと。これは僕自身の罪であり罰だ。
そんな僕を誰かが助ける必要はない。僕は強くなり続けて多くの人を助ける必要があるから、誰かの助けは極力必要ない。
『歪……だな』
「歪んでますか」
『フィリップ……それは、あなた自身の思いさえも、まるで錠前の様に閉めるのですね』
「鍵なんて持っていませんがね」
『しかし、それは……あまりにもお門違い、というやつです……あなたは、この世界の人間ではない……都市の人間だ……そんな男が、都市の罪をこの世界に持ってきていい、はずがない……』
プルートの言葉には、一理ある。そう思っている。
しかしこれは僕自身の魂に結び付いた罪だ。
最早世界という話ではなくなっている。
「僕は結構ワガママですよ。例え都市の世界の罪であっても、僕はこの罪を贖罪すると決めたんです。
それならば、僕が犠牲にしてきた分多くの人を僕の命を焼き払って助け続けましょう。
最後にはこの身を散らす事になったとしても……僕には何も後悔はありません」
『…………………………』
「だからこそ、プルート……あなたも、自分の罪に向き合ってください。世界が虚構であり、欺瞞と嘘で満ち溢れているのなら……そんな人に手を差し伸べれる人であれと。
苦しみは分かち合える。知ってもらえる。だから手を差し伸べられれば、きっとその人はその手を取るから。
騙され、世界の存在を疑うのではなく。
騙し騙されの世界を、変えるべきなんだ」
『……フィリ…………ップ』
プルートは、膝をついてゆっくりと悪魔のようなねじれから戻っていく。まるでねじれという力が焼き払われたかのように。
『……私が、愚かだったのか』
「愚かではありません。弄ばれたんですから」
『いや……結局は、私自身も、私自身を欺いて……結局の所、行き場のない怒りと不条理に、苛立ちを覚えていたんだな……
君が言う、罪に向き合うというのは……私には、もう分かる気がしない』
「なら、理解するまで向き合いましょう。
僕はあなたの罪を返す姿を、何処までも見つめますから」
『……さながら、騎士といった所か』
ふっ、と笑いながらプルートは立ち上がり、僕の手を―――
その瞬間、プルートの体から全身が剣が内側から食い破った。
「プルート!!!」バッ!
『待て!……来るな!』
その声に、つい引き止まる。
全身というあらゆる場所から、黄金の剣が光を放ちながらプルートを貫いている。まるで神の裁きかのように。
『やはり……私は、騙されていたのだな……最後まで、結局子供のように……理不尽をぶつけるしかなかった私は……赦されない……』
「ま、待ってください!今この剣を全てっ」
『いいんだ……結局は、分かりきっていた事なのだから。
だが、君の罪の向き合う姿に、心を動かされてしまったから……
神が、エヒトが、お怒りになったのかも……しれませんね』
まるで、自分に対するツケの様にプルートは嘲笑しながら消滅していく。
『フィリップ……契約だ』
「契約……」
『私の力を、お前に託す。これは、全てだ。
私の力をお前に全て明け渡す……私では、救えない人の物の為に、この契約の力と、魔法を使ってくれ……今度は、子供騙しではないさ』
「ま、待ってください!それなら、プルートは……!」
『私は、仕方ないんだ……結局何処まで行こうとエヒトの、掌の上なんだから……
フィリップ、この世界は、他の楽団員が牛耳ってる……『ライセン大峡谷』に向かうんだ……そこに、オズワルドが、いる』
「オズワルド……!」
オズワルド、それは僕をねじれさせた存在であり二人を騙って僕を陥れたねじれ。
怒りが込み上げてくるが、すぐに冷静になりながら落ち着く。逆に考えよう、やっとあの時のお返しが出来るのだと。
『すまない……アルガリア様は、この世界にいないが……あのお方に、謝ってくれないか……』
「嫌ですよ。同じ地獄で謝ってきてください……僕は、この生きる地獄を苦しみますから」
『は、は……手厳しいな……世界も、君も』サァァッ……
そう言いながら、僕は彼が出した契約書を見つめる。
何もやましい事が書かれていない、裏面にも何もない。
ただ僕の為に繋ぎ合わせる、契約書。
迷わずに僕はサインを付け、契約書が消滅していく。
『いい、それでいい……フィリップ……私には、出来ない事をやれるお前なら……その翼で、飛べる筈だ……
こんな、醜い存在の願いを、叶えてくれ……私を騙した、エヒトを、どうか……反逆者達を、救ってやってくれ……』
「……元よりそのつもりですよ。
あなたの仇は取りますから、もう休んでください」
『…………ありがとう……約束だからな』
そう言って、プルートは消滅していった。
魂はまるで元の世界に還る様に、地獄の様な場所に堕ちていく。
それでいい、それこそ元のあるべき場所だから。
この生き地獄を耐え抜いたら、僕もそこに飛び込もう。
そして、元の世界へと戻っていく。
その時―――
「!」
事務所の扉が開き、サルヴァドールさんとユナさんの人影が見えた。
二人で依頼に行くのだろうか、そう思っていた時……もう一人の影が追いかけに行ったのを僕は見逃さなかった。
それは、
僕がその姿を追い求めるように、手を伸ばすが―――やめた。
僕が願ってももう手に入らないものを、今更追い求める気はなかった。
それに、2人は僕を見てくれる。
だからこれは全てまやかしなのだ。
しかし……あの姿に、一つの憧れがある。
もう一度やり直したいとも。
そして二人を救いたいとも。
だがその傲慢は赦されないし、僕が罪を払い終わったところで叶わないだろう。
だからこそ……決別を付ける。
「フィリップ……後は、頼んだよ。
僕は―――相馬アキラは、地獄の道を進むから。
どうか君のまま、そのまま……突き進むんだ」
そう言い残し、僕は元の場所へ帰っていく。
ハジメ君を助けなければ。
―――――――――――――――――――――――――――――
僕が改めてこの場所に戻ってきていた時には、ハジメ君はユエさんの膝元に倒れていた。
ユエさんは僕を見つめると、「ハジメが……」と呟いて涙を零していた。
「……大丈夫。生きてるって信じれば、きっと彼は生きれる。
僕が時間を稼ごう」
二つの翼を広げ、目の前で二人を睨み付ける六首のヒュドラを見つめながら僕は剣を突き付ける。
遅いかもしれない……間に合わなかったかもしれない。
しかし、僕はハジメ君が祈ってくれた時間を無駄にしたくない。
きっと共に打ち倒すことを夢見た彼を倒れたなんて、認めない。
だからこそ……
「この戦いに、決着を付けよう」
より極炎の炎が僕自身を包み込み、一気に飛び出してヒュドラの攻撃が炸裂してくる。
炎から氷の伊吹が飛んでくるが、全てを焼き払いながら一気に首に連続の斬撃で斬りかかり鮮血が舞い散っていく。
もっと速く。
「〝落陽〟」ゴォォッ……!
『グッルルァァァアッ!』
そして、黒色の模様を持つ龍頭が僕の頭の中に何かの記憶を流す。それは、サルヴァドールさんとユナさんが僕を罵倒し、失望し僕を見捨てるそんな姿。
「〝白夜〟」
しかし、それは何一つ響かない。
寧ろ僕の心の極情をより滾らせた。
よくも……あの二人を出汁にして僕を騙そうとしてくれたなと、復讐の炎を燃やしながら、距離を詰めて白い炎の斬撃を無数に飛ばしヒュドラの首がボトボトと落ちていく。
『グァァァァッ!?』
「何故痛がる?―――あんな事をしたのに、自分が痛い時には叫ぶんだな。人の痛みも知らない
『グルルルォォォッ!』カァッ!
そして、再生したヒュドラの首から連続で放たれる龍の息吹をもう一度〝白夜〟で切り裂きながらより接近して脚を斬り落とす。
極炎の炎がヒュドラの脚を焦がしながら、僕はゆっくりと飛行しながら更にヒュドラに切りつく。しかし……
「うっ゛っ……!?」
どくん、そんな心臓の音と共に蜜蝋の力が少しずつ削れていく気がした。
この力は強大で、長続き出来ない。それは理解していたが今のタイミングなんて……!
まだ、まだ終わってないじゃないか……!
『グルルルァァッ!』
「まだ、終われない!終わってたまるか!例え僕が死んでも―――」
お互いに攻撃の準備を終え、そして駆け出した瞬間。
ドパァンッ!という空を炸裂する音が、ヒュドラの首を穿ちながら横切った。
後ろに下がりながら振り返ると、そこには……僕が立ち上がると信じていた、ハジメ君の姿があった!
「ハジメ君!」
「遅かったよ……いや、死にかけてただけだからまだいいけどさ」
「死にかけるなんてそんな、君はきっと生き残るって信じてたよ」
「ひとまず、何処に行ってたか聞く前にアイツを一緒に倒そう。ユエも協力してくれる」
「そうだね……そうしようか!」
『グゥォォォルルルッ!』
ヒュドラの威圧が僕達に飛ぶも、全く恐れずに僕達はお互いの攻撃を繰り出していく。もはや止められない。
ハジメ君がドンナーを撃ち込みながら、僕は極炎を燃やす剣でヒュドラの首を引き裂いてどんどんと攻め入る。
ヒュドラの特殊な攻撃は『金剛』で止めながら、ハジメ君の連撃をサポートするように後ろから魔法剣技で支えていく、
そして、ヒュドラの命の力はどんどんと削れて行きながら遂に首が再生の速度を落としていく。
『グルルルァァッ!?』
「っ……まず、い……」
しかし、それは僕のエゴもそうだった。
最早太陽の炎に蜜蝋の翼が溶けて堕ちるイカロスの様に、僕の羽は溶け出していた。
手に余る力なのは、理解している。だが、まだ!
まだここで……止まる訳にはいかないんだ!
「ハジメ君!決めよう!」
「ああ!ユエ、頼むよ!」
「ん!」
そして、お互いが飛び出すと共に僕は蜜蝋の剣に全ての魔力を流し込みながら詠唱を始める。
「我が剣よ、この乞い願いし想いを、激情と知れ」
ヒュドラの連続の龍の息吹を、最後まで溶けかけた僕の翼が守ってくれる。
「この激情を以て、全てを燃やし尽くそう。
そして……夜明と共に消え去ろう」
そして、剣に全ての魔力を流し込み終わる。剣は極炎を燃やしながらギラギラと輝いていた。
「〝蒼天〟」
「〝錬成〟ッ!」
更に、ハジメ君とユエさんの魔法と錬成の二つのコンボで一気に体を焦がし灼かれていくヒュドラ。
しかしその体がニュルニュルと音を立てて再生していく……エレナさんの血が含まれた影響だろう。
しかし、それすらも僕は激情と共に焼き払おう。
その穢れた血を一つ残さず燃やし尽くしてやる。
「〝
駆け出しながら、その極炎を纏って光煌めく炎の剣がヒュドラの心臓を穿ちながら、突き抜けた。
全身の汚れた血を焼き払いながら……まるで全てから罪が浄化されるように、その炎は消えずにヒュドラの全身を侵食して、ヒュドラの肉体が崩れ落ちた。
遂に、ヒュドラを打ち倒した。
「やっ…………た…………やっと、乗り越え…………た」
しかし、限界だった僕の意識と全ての魔力を込めた決死の一撃によって……僕の視界は、迫る二人を見つめながら暗転してしまった。
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