このデスゲームはR18に指定されました ~冒頭でモニターにA◯を放送事故ったせいで全員がエッチなスキルに目覚めてしまった!~   作:笠本

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※A◯を放送事故った冒頭のシーンはあらすじにある分だけです。
 これよりデスゲームものの定番、初戦で協力関係になった仲間と共に新たな敵と戦うセカンドステージが始まります。


第1話 プロローグ

女王(クイーン)、そろそろ新人(ニュービー)の入学式が終わるころかと」

 

「んー、そう。今回遅くない? まさか時間切れで全員死亡とかじゃないでしょうね。わざわざ私が出向いたんだからせめて鉄砲玉に使えるやつが残っててくれないと」

 

 深夜のビル街の裏通り。

 まばらな街灯がぼんやりと照らす道にビルが並ぶ。

 

 その内の一つ、五階建ての屋上に少女と数人の男たちが立っていた。

 

 女王(クイーン)と呼ばれ、一人だけ氷でできた椅子に座ってスマホをいじっていた少女が「あっ」と声をあげる。

 

「あーもう、あんたが話しかけるからゲームオーバーになっちゃったじゃない」

 

 白いワンピースに身を包み、手間を掛けて編み込まれた金髪を肩まで伸ばした深窓のお嬢様という感のある少女。

 

 そんな可憐な少女が文句をつけたのは三十代の男。七三分けの髪にメガネとスーツ着というパーツこそ地味だが、鋭い眼光が凶暴性を滲ませ、インテリヤクザと称した方が早い風貌。

 

 まったく対照的な二人。

 だが、男は「申し訳ございません」と少女の理不尽を受け止めた。

 

「まあいいけどね。しょせんソシャゲだし。現実(リアル)のデスゲームやってると、どうしても死んでもやり直せるって、ヌルすぎて本気になれないもの」

 

 少女はつまらなそうに言うと、首だけ背後にまわす。並んだ男たちに向けてスマホを放り投げた。

 慌てて受けとった年若い男に対して少女は目も合わせずに命じる。

 

「それ、デイリークエストこなしといて。ああ、でも報酬のチケット勝手に引いたら殺すからね」

 

 ゲームのノルマ作業を押し付けられた青年は、軽い調子で脅迫を交えてきた少女に対して悲しげな顔でうなづく。

「はい……分かりました。女王様」

 

「女王。それ、課金したらどうです。金さえつめばそこそこ有能な手下が揃いますよ」

 

「いやよ。私ソシャゲじゃ課金しないって決めてるの。現実(リアル)じゃインフレしすぎて新人が瞬殺されるからって、わざわざ網はってデビューするとこ狙うなんてセコイ真似してんのよ。現実が惨めになるじゃない」

 

「そうですかね。ですがスマホじゃあダブ(不要な)った手下(キャラ)は無駄になるだけですが、現実(ここ)なら潰してポイントに変えられる。よほど親切なシステムだと思いますがね」

 

「あー、キルポイントがトップの私が言うのもなんだけど、割とクソゲーよね、これ。ちまちまミッションクリアするより誰かを殺した方がてっとり早いって。今回の入学式じゃ何人が生き残ってるかしら」

 

「まったく。せめて1/4は生きていてほしいもんです。俺たちの支配領域(テリトリー)で開かれた入学式だっていうんで、戦闘系二十人が全員揃ってしまいましてね。アイツらのストレス発散に使う生贄も必要でして」

 

「なにそれ。ちょっと新人イジメが過ぎるんじゃない?」

 

「とはいえ油断はできませんよ女王。なにせかつて歓迎会でたった一人の新人の少女が巨大クランを叩き潰して、乗っ取った例がありますから」

 

「さりげなく自分を持ち上げるじゃない。私が乗っ取ったときのこのクランはせいぜい中規模だったでしょ。トップクラスにのし上げたのは、この私」

 

 少女が皮肉げな目線を送れば、男は肩をすくめて言った。

「あなたの異能力(スキル)を見て即座にボスの座を明け渡した俺の判断力は評価していただきたいところですがね」

 

「新人にも誰に尻尾をふるべきかを嗅ぎつける鼻は期待したいわね。あの頃ならともかく上級の級位(クラス)が巨大クランにまとまって三つ巴になっているいまの勢力図じゃあ、フリーの新人なんて一週間も持たないんだから。それこそ私だって無理ね」

 

「さて、それはどうでしょうか」

 

 屋上の奥、照明の届かぬ暗がりからコツコツと靴音をさせて一人の男が近づいてきた。

 

「ジョン・スミス…………案内人のあんたが絡んでくるなんて珍しいじゃない」

 

 ジョン・スミスと呼ばれた男。

 欧米圏ではありふれた名前と姓。転じてあからさまな偽名であることを隠していない。

 茶髪をきちりと後ろ流しに固めた、中年とも初老ともとれる年齢不詳な外見。

 名前からしても欧米人に思えるが、見方によって東洋人でも通じそうでもあり、人種不詳。

 

 その怪しげな男が薄っぺらい貼り付けたような笑顔で言った。

「お久しぶりです冷酷なる女王(ルースレス・クイーン)。いえいえ、何せ今回の入学式は少し異常事態(イレギュラー)が発生しておりましてね」

 

「イレギュラー? なに、もしかして 銀級位(シルバークラス)でも誕生したの?」

 

「入学式で自分以外の新人全員を倒し銀級位(シルバークラス)で突破したアナタもたしかに異常事態でしたがね。今回は全員が青銅級位(ブロンズクラス)のままですよ。それでもイレギュラーとしかいいようのない事態になっておりまして。

 

…………っと。私にはこれ以上明かす権限がございませんが、ええ、これは忠告ですよ女王(クイーン)。今度の新人は勧誘など考えずに全力で叩き潰すことをおすすめいたします。いや、ほんと積極的にさくっと殺っちゃうべきかと」

 

 普段はひょうひょうとした態度の黒服(スタッフ)の、珍しく真剣な顔での言葉に少女は、目に輝きをのせる。

「へえ、ちょっと興味でてきたわね」

 

 ジジッと小さな音をたてた無線機。監視役の手下からの連絡。インテリヤクザが手にしたそれに対応する。

「―――分かった。…………女王、新人が出てきます」

 

 向かいの廃ビル。かつては複合施設だったその一階、ずっと閉まったままだったシャッターが開かれようとしていた。

 

 五階から地上を見下ろした少女。

「予定変更、そのまま待機させて。私が出迎える。あんたも付いてきなさい」

 

 言うや、少女は柵から身を乗り出し、何の迷いもなく飛び降りた。

 

 音もなく地面に着地。続けてインテリヤクザ風の男がドンと降り立つ。

 

 シャッターがガラガラと音をたて、ゆっくりと上げられていく。

 

「ういしょっと……あれ、人がいるじゃん」 

 

 シャッターを上げて姿をあらわしたのは大学生ほどの青年。中肉中背の人の良さそうな顔つき。シャツに薄手のジャケットを羽織ったラフな格好。

 

「へえ、たしかにちょっと違うみたいね」

 

 少女は青年のとぼけた表情に驚きを口にした。

 

 入学式とは正体不明の組織が主催するデスゲームに強制的に参加させられた者が、異能力(スキル)を与えられるイベントの通称である。

 三十人の男女が特殊な空間に放り込まれ、指定された条件をクリアするまで出てこれない。

 逆に言えば脱出できた者はスキルの発動に成功し、多くは他者を害して一定のポイントを獲得しているということである。

 

(――――だから入学式を終えたばかりの新人は自分が手にした異能力(スキル)に酔いしれているか、人を殺した罪悪感に震えているか、そのどちらかなのに。なにコイツのとぼけた顔は)

 

 まるで深夜のバイトを終えて出てきたとでもいわんばかりの自然さ。

 実際なにかの間違いで、普段は参加者以外が排除されるこのエリアに、手違いでまぎれこんだのかとも考えた。

 

 だが青年は言った。

「ここにいるってことは、もしかして君もこのデスゲームの参加者?」

 

「ええ、そう。といってもすでに一年間このゲームを続けてる、まあベテランってやつね。新人にちょっとしたアドバイスをしてあげようと思って、出迎えたってわけ」

 

「へえ、そりゃ助かる。俺は一ノ瀬イツキ」

 

「私は愛染(あいぜん)アイリス。後ろのインテリヤクザは植田。私達はこのデスゲームで最大のクランである"高潔な(ドランカー)る酔客(ドノーブル)"のトップよ」

 

「そっか、俺もこの99期生っていうのかな? それのリーダーをやらせてもらってる」

 イツキが背後に親指を向け、まだ中に人がいるのだとアピールしてきた。

 

「そう、支配者ってわけ」

 

 このデスゲームにおいてポイントを稼ぐには誰かを殺害するほか、システムに(のっと)り他者を支配下におくという方法がある。

 穏便に言えば、一定の負担と引き換えに庇護を得られるクランがそれである。だが加減をしなければ一方的に奴隷として搾取することも可能なのだ。

 

 ゲームに放り込まれて短時間でシステムを理解し、他者を屈服させ支配する力量。

 

 新人とはいえ、それができるのであればクランという組織においても有用であろう。むろん自分がさらのその上の支配者(ボス)であると理解させたうえでのことであるが。

 

「なら話は早いわ。あんたとその配下全員、私のクランに入りなさい」

 

「ちょー、女王(クイーン)! さくっと殺っちゃえって言ったじゃないですかー」

 少し離れた場所からジョン・スミスの声がした。

 

「黙ってなさい。決めるのは私」

 

「あっ、ジョンさん。こんなところにいたんですか!」

 一ノ瀬イツキがそんな案内人ジョン・スミスに軽い調子で声をかけた。

 だが男はすっと顔をそらす。

 

 イツキはあれっという顔をしてさらに声をはりあげた。

「ジョンさーん! 素人ナンパもの大好きなジョン・スミスさーん!」

 

「ばっ、バカ! 大声で叫ぶな!」

 

「素人……ナンパ……はあっ? いったい何を……」

 女王アイリスがイツキの台詞に困惑。すると彼は手にしていた青いナイロンバックを振り上げた。

 

「ジョンさーん! あそこにレンタルBD忘れてましたよー! この『リアル素人ナンパ シリーズVol.153:渋谷センター街で深夜の声掛けしたら終電逃してさまよう22歳Eカップのフリーターをゲット。彼氏居ない歴1週間の欲求不満美女はホテルにつくなりシャワーもそこそこナンパ師にむしゃぼりついてくる貞操観念もお股もフリーターだった件:レンタル専用特典映像20分付き』。なんかあの空間が消えそうになってたんで持ってきときましたー!」

 

「はっ!? はあっ!? なにそれー!?」

女王(クイーン)、AVのタイトルです。先月の素人ジャンルでトップでした」

 世知に長けたサブリーダーの植田がアイリスをフォロー。

 

「おい、なんなのスミス。アンタ、新入の案内やってたんじゃないの? 何へんなモン見てんの」

 

「いや、人違いじゃないですかね。ジョン・スミスとかよくある名前ですし」

 ジョン・スミスはアイリスの視線からすっと顔をそらした。

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