魔法教師の不本意な英雄譚   作:gp真白

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4時限目: 最小の労力と、不機嫌な理論訓練

 

 

1.最小の労力による「非効率な」訓練方針

レオンの研究室は、特級魔法大会への強制参加が決まって以来、以前にも増して不機嫌な空気に満ちていた。レオンは、自身の**「首」がかかっているにもかかわらず、自身の「最小の労力」という信条を曲げようとはしなかった。

 

「いいか、カイト。リリアーナ君」レオンは、冷めた紅茶を前に、二人に告げた。「私がこの面倒な大会に割く労力は最小限とする。無意味な体力づくりや、派手な演習に時間を割く必要はない。我々の目的は、霍乱の『無限の論理』を打ち破り、私の『最終定理』の理論的な優位性を証明することにある」

 

レオンが考案した訓練内容は、「理論の極限圧縮」と「実践での瞬時展開」に特化した、常識外れのものだった。

 

「カイト。君は『多層マナ拡散の瞬時展開』の精度を、現在の十倍に上げろ。私の『集中術式』を、極限まで広げるための盾だ」

「リリアーナ君は、君の『光闇連環安定化のシミュレーション』の欠陥を洗い出せ。君の理論は、私の『最終定理』の『理想形』を求めている。この訓練は、君の傲慢な理論を完成させるための、私からの特別補習だと思え」

 

レオンの指導は、理論の核心のみを突き、生徒たちには膨大な理論計算と、一瞬の実技しか求めなかった。

 

2.理論家たちの衝突と、霍乱への苛立ち

カイトは、レオンの最小限の指導に不満を露わにした。

 

「先生!特級魔法大会は、ただの理論証明の場ではありません。実戦での適応力も必要です!霍乱の『無限の論理』は、それを理解しているからこそ、貴方を『有限の概念に囚われた理論家』と嘲笑っているのです。こんな非効率な訓練で、本当に勝てるのですか?」

 

「黙れ、無能が」レオンは冷たく言い放った。「非効率なのは、実戦の場そのものだ。理論が完成していれば、実戦など一瞬で終わる。君の理論が『無限の論理』を前に陳腐だと証明されるのが怖いだけだろう」

 

そこに、リリアーナが割って入った。

 

「カイト・アステル。あなたの『拡散理論』は、霍乱の理論の『普遍性』を前に、自らの理論が『未完成』であることを認めなさい。しかし、私も霍乱の傲慢さは許せない。彼の『無限』は、私の『調和』を否定する。レオン講師殿、私はこの訓練を通じて、私の『連環安定化要素』を完成させ、霍乱の理論の『傲慢さ』を論理的に打ち砕きます」

 

リリアーナは、レオンの訓練が、結果的に自身の「理論の完成」に繋がることを理解し、不本意ながらも熱意を見せ始めた。

 

3.レオンの理論的覚悟

レオンは、三人の論争を遮り、訓練の最後に、鉄剣を抜き放った。

 

――『集中・拡散融合理論・応用:術式核の極限圧縮』

 

レオンは、自身の術式核を、カイトの『拡散理論』が受け止められる限界まで圧縮し、リリアーナの『安定化シミュレーション』の理論値を瞬時に超えるよう指示した。それは、「理論が実戦を凌駕する」ための、レオンの究極の実技だった。

 

レオンは、汗一つかかずに術式を収束させ、鉄剣を鞘に戻した。

 

「今回の大会は、私の『最終定理』の構成要素を、貴様ら三人の理論家が実戦という『面倒な実験場』でテストする場に過ぎない」

 

レオンは、三人に背を向け、冷めた紅茶を一口飲んだ。

 

「これ以上、面倒な労力は割かない。後は、大会で理論を証明するだけだ。優勝しないと私の安寧が崩壊し、お前たちを永遠に指導するという最悪の事態になる。しっかりやれ」

 

レオンの「首」と「安寧」**を賭けた、不機嫌で非効率な理論訓練は、こうして幕を開けた。

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