魔法教師の不本意な英雄譚   作:gp真白

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6時限目: トーナメント開幕と、不本意な弟子たちの予選

 

 

1.シード枠の「時間潰し」

王立特級魔術学院の特設闘技場。豪華絢爛な会場は、王族貴族と観客、そして警備隊でごった返し、レオンにとって**「安寧とは最もかけ離れた場所」**と化していた。

 

レオンは、特別講師枠としてシード権を獲得しており、霍乱(かくらん)もまた、遠方からの特別交換留学生としてシード枠に配置されていた。彼らはトーナメントの終盤まで、直接対決を避けることになっていた。

 

「チッ、全く面倒だ。こんな非効率な空間で、時間を潰さなければならないとは」

 

レオンは、冷めた紅茶のカップを手に、闘技場の予選を見下ろしていた。彼は、自らの『最終定理』の構成要素を実践でテストするという目的のために、この時間を有効活用するしかなかった。

 

2.苛烈な予選:弟子たちの「理論のぶつけ合い」

レオンは、時間潰しがてら、予選トーナメントに出場しているカイトとリリアーナの試合に目を向けた。二人は、レオンの『最終定理』という共通の理論を巡って激しく反発し合う理論家だ。

 

まず、リリアーナの試合。彼女は、『光と闇の調和理論』を基にした精密な連環術式で相手のマナ回路を徐々に追い詰めた。彼女の術式は、完璧な理論に基づいているがゆえに、相手が理論的な受け身を取れないと判断すると、容赦なくそのマナ回路を一時的に「焼き切った」。相手の生徒は、意識不明の状態で運ばれていった。

 

次に、カイトの試合。カイトは、『多層拡散理論』を応用し、自身の理論の脆弱性を隠蔽しつつ、極限まで効率化されたレオンの『集中術式』の応用技で、相手の術式を一瞬で多方面から拡散・崩壊させた。彼もまた、勝利のためには相手が二度と立ち上がれないほどのダメージを与えることを厭わなかった。その容赦ない攻撃は、彼が「代用品」であることを証明させないための、理論家としてのプライドの現れだった。

 

3.舞台裏の「頑張り」とレオンの溜息

闘技場の予選が終わり、意識不明の生徒が続出する光景を見て、レオンは深い溜息をついた。

 

(レオン内心):「私の『集中』とカイトの『拡散』は、やはり『安寧』とは最も遠い理論だ。リリアーナの『調和』も、理論の完成度が高すぎるがゆえに容赦がない。面倒極まりない」

 

その時、レオンの視界に、舞台裏で奔走する二人の姿が入った。

 

• アリオス・クレメンスは、警備隊を率いて、意識不明の生徒を次々と運び出し、観客の動揺を抑えるために大声で指示を飛ばしている。彼は、**「人死にが出るな」**というレオンとの約束を果たすため、常に神経を尖らせていた。

 

• アストレイアは、聖女の白い法衣を翻し、運ばれてくる生徒たちに**『光の治癒術』**を施していた。彼女の聖なるマナは、理論的な攻撃で「焼き切られた」マナ回路を、静かに修復していた。彼女は、レオンの理論の危険性を知っているからこそ、「最終防護壁」として、現場での治療に全力を尽くしていた。

 

レオンは、自分の「理論の証明」という自己中心的な目的のために、「最も面倒な後始末」を、アリオス・クレメンスとアストレイアという二人の協力者に押し付けている事実を認識した。

 

「チッ、全くふざけた話だ」

 

レオンは、彼らの「頑張り」を褒める代わりに、いつもの口癖を吐き出し、次の試合開始までの「面倒な時間潰し」を再開した。彼の『最終定理』の構成要素である二人の弟子は、準決勝で激突する運命にある。

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