8月某日、美神除霊事務所にて。
「幽霊船狩りですか?」
『幽霊船狩り』というのは毎年行われる行事で、船舶の航行を妨げる幽霊船をとっつかまえて成仏させるというものだ。ICPOの超常犯罪課、通称オカルトGメンが日本にできてからは民間委託をやめ公務の一つとなっていたのだが……。
「そ。前にもやったことあったでしょ? オカルトGメンに仕事が行くようになって随分ご無沙汰だったけど、なんか大がかりな事件の対応中らしくて今回はこっちに回ってきたのよね」
横島とおキヌにそうボヤく美神だったが表情は一変して実に嬉しそうである。
「不況々々でここの所ずっとショボい依頼ばっかりだったけど、やっぱり国からの依頼は金額がでかくていいわね!」
ホクホク顔の美神を他所に以前の事を思い出す2人は複雑顔である。
「たしか前の時は潜水艦の幽霊船でしたよね、いきなり魚雷で乗ってた船が沈没しちゃったり」
「爆雷の巻き添えは食らうわ、銀のモリで射殺されそうになるわで、ほんと大変だったわ」
「あら、そんな事もあったかしら」
分かりきったことではあるが、この事務所において横島の命の価値は恐ろしく低く扱われている(なお当時のおキヌは幽霊だったので同様に扱いが雑だったことはいうまでもない)。
白々しく返す美神に苦笑するしかない横島であった。
「それじゃあ今回も海上保安庁の船で現地入りっスか?」
「……それが妙なのよね、
「ほげいせん、ってクジラを獲る船ですよね?」
「それに海上自衛隊の基地……、っスか? よくわかりませんけど管轄とかが違うんじゃ」
小首をかしげるおキヌと訝し気な横島にうなずき返す。
「何か思惑があるみたいなのよ、ICPOの西条さんに詳しい事情を聞ければよかったんだけど、さっきも言った通り何か大きな事件の対応中らしくて連絡取れなかったのよね」
思わず顔を見合わせる横島とおキヌ。
西条は美神を妹のように可愛がっていることもあり、多少のことであれば融通を利かせるはずである、それが資料の一つも寄こせないほどの忙しさとはどれほどの事件を抱えているというのだろうか。
「ま、詳しいことは現地にいってみればわかるでしょう。横島くんは荷物よろしく」
基本装備の神通根をはじめ、索敵用の見鬼くんや霊視ゴーグル、前回の反省を活かして防水加工が施された対艦破魔札一式、そして予備の精霊石などが詰められた巨大なリュックサックを背負えばいつもの横島の荷物持ちスタイルの完成である。
「どんな幽霊船だろうと、この美神令子が極楽へ行かせてあげるわ!」
と言いつつ、本編は横島くんがメインで美神さんは(ほぼ)出番がない予定です。
なおシロとタマモはお留守番です。