横須賀基地での事務手続きを終えた美神一行は、くだんの武装化捕鯨船とやらに案内される。
所謂キャッチャーボートと呼ばれる船を改造した物のようだが、美神はその装備に驚きを隠せなかった。
「……なかなかすごいわね、近代化改修とでもいうのかしら。高性能霊体レーダーに対水中霊体ソナー、霊視ドローン、衝角結界に拘束用の銀のモリ発射機が合計6門ですって?」
通常幽霊船狩りにここまでの装備を使用することはない、実際前回の依頼時に海上保安庁の船に乗っていた霊的装備は霊体レーダーくらいものだった。
「一体どんな相手を想定しているのかしら……?」
「まあいうて前回は潜水艦だったことですし、備えは多くて困るもんじゃないんじゃないすか?」
ダクダクと頭から血を流しながら答えるのは横島である、ハイレグワンピースの水着を着た美神の色香に飛び掛からんとして早くも制裁を受けている。
同じくフリルの付いた可愛らしい水着に救命胴衣を着けたおキヌには(一応)手を出してないあたり、あれで人を選んでいるところがあるらしい。
船は東南へと向かい、排他的経済水域を超え公海にでる。
「ここまでは順調ね」
「レーダー反応なしです」
「(絶景かな絶景かな)」
三者三様の様相を見せる美神一行。
「(美神さんのナイスバディもいいけど……)」
「(おキヌちゃんの可憐なところも捨てがたいよな!)」
こそこそと船員達がささやきあっているのを聞きつけた横島が即座に切り込む。
「あれは二人とも俺んじゃー!!散れっ」
「誰が貴様のもんじゃ!!」
「あ、あはは」
いつものじゃれあいが始まったことに困ったように苦笑いするおキヌであったが、続いた警報音に慌ててレーダーを確認する。
「美神さんっ、1時方向、距離1kmに巨大な霊体反応です!!」
「1kmですって!?」
何の前触れもなく湧き出た反応に船体から身を乗り出し周囲を確認するも姿は見えない。
前回の教訓を活かして即座に潜水艦の可能性を考える。
「横島くんっ、水中ソナーは!」
「感応ありっす! けど、これは!?」
巨大な波しぶきを上げながら浮上してくるその姿は潜水艦ではありえない流線、潮を吹く鼻息、そして優雅に海面をたたく巨大な尾をもつそれは。
「クジラの幽霊!
しかしそれだけではない、背中に見える2つの筒状の装備はまさしく砲塔であった。
「っ、結界展開しつつ緊急回避!」
『オオオオオオオォォォォォォ!!!!!!』
結界をたやすく貫通した巨大な咆哮に船体がビリビリと振動する。
その直後、鯨の背の砲門が火を噴く。
ゼロ距離射撃といって良いほどの近さにも関わらず幸運にも直撃は免れたようだったが、その爆風は大きく船体を揺るがし、そして不幸にも横島の体が投げ出される。
「おわあぁぁぁあ!」
「美神さんっ、横島さんがっ!」
そして。
ぱくりと。
「クジラに食べられちゃいましたーー!?」
直後、クジラの体が透けはじめ数秒後には跡形もなく消えてしまった。
「消えた…?」
「美神さん! 横島さんがっ、横島さんは!?」
「大丈夫、こんなこともあろうかと発信機と通信機も持たせてあるわ」
「でも食べられちゃいましたよ!? それに消えちゃって!!」
「……大丈夫よっ、横島くんの事だからきっと『あー死ぬかと思った!』って無事に戻ってくるわっ」
「うわぁぁん、横島さはぁーーん!」
ここで一旦美神さん&おキヌちゃんの出番は終了です。
次回からいよいよ泊地編をスタートできそうです。