「いなづま?」
人名にしては少々おもむきが強すぎる気がして思わず聞き返す横島に電は肯定して続ける。
「はい。暁型4番艦、駆逐艦 電なのです」
明らかに人名ではない自己紹介が返ってきて更に困惑が深まる。
「取り合えずこちらへどうぞ」
なんだかよく分からないまま応接室へ通される。
「すみません、いまお出しできるものが無くて……」
と、出てきたのは白湯である、どうやら煮沸消毒しただけの水らしい。
「ええと、横島さんはどうしてこちらに?」
電に促されて、横島は今日おのれの身に起きたことを説明したのだがどうにもうまく伝わらない。
「ごーすとすいーぱー……、はじめて聞くお仕事なのです」
「そんなバカな」
オカルトに興味がない人からはあまり良い印象を持たれることのない職業ではあるが「聞いたことがない」と言われるのはさすがに初めてである。
「それに、横須賀にあるのは鎮守府ではないのですか?」
更に齟齬が生まれる、自衛隊の名前が通じなかったのだ。
「何がなんだかわからん……」
ひとまず自分の事は棚上げして、電の事を聞いてみんとしてみたものの、こちらはこちらでやはり話が通じない。
「先ほども名乗った通り、駆逐艦の電なのです。民間人でも艦娘の存在はご存じのはずなのです」
曰く、いつの頃からか海上に出現し船を襲い始めた「深海棲艦」なる敵と戦う力を持った、超常の存在。生身一つで海上を走る少女。過去の大戦で戦った艦の魂を宿すもの。即ち艦娘。
目の前の少女はそのうちの駆逐艦「電」の魂を宿し生まれたのだという。
お互いの話を整理するうちに横島のなかで一つの仮説が立ち上がり始める。
「まさか、並行世界に移動しちまった……!?」
過去の事件では元始風水盤の力で一時的に月や魔界に飛ばされたことがあった。
また美神の力で中世時代にタイムスリップしたこともあった。
オカルト的には「よく似た別の世界」に飛ぶことだって可能といえば可能なのである。
「仮に並行世界じゃ美神さんの助けがくるとは限んねーぞ!? どうやって帰ったらいいんじゃーー!!」
鼻水と涙をまき散らしながら泣きじゃくる横島を前に電は、はわはわと困惑するのみ。
と、そんなカオスな状況を打破する人物が応接室の扉をぶちあけた。
「さっきからうっさいわよ電! なにやってんのよ」
「あ、大井さ「きれーなねーちゃん!」ん」
「ぎゃあ! なんなのよこの変態は!!」
「ずっと前から愛してましたっ!」
電が口を開くか否かの刹那の間に復帰した横島は、扉を開けた主である大井に抱き着かんと飛び掛かる。
辛くも回避した大井にどつかれながらも更に愛の告白を続ける横島の姿に、電は頭痛を覚えるのであった。
伝説の事前登録大井っちを採用。
ちなみに筆者は駆逐艦を小中学生、軽巡を中高生、
重巡を高校~大学、戦艦・空母を大学生以上、くらいで考えています。
もし違和感があったらごめんなさい。