「大井、水雷戦隊、出撃します!」
両手にそれぞれ14cm単装砲と12.7cm連装砲を積んだ大井が海上へと駆け出していく。
「大井さん気を付けて!」
その後ろ姿に声をかける電の手には61cm四連装魚雷が1本あるのみ。
本来であれば単装砲と魚雷が大井の、連装砲が電の初期装備ではあるのだが、数少ない
「電は出撃しなくていいのか!?」
横島の問いに青ざめた表情の電は、しかし覚悟を決めた声色で続ける。
「いざという時には泊地を敵に奪われないために爆破処分する要員が必要なのです、総合的に能力の高い大井さんに迎撃に出てもらって、泊地の最後を見届けるのが電の役目なのです!」
電から借りた双眼鏡を覗き込むと、沖合で魚雷を巨大化したような化け物と撃ち合っている大井が見える。聞いていたとおり、艦娘は艤装を身に着けるとかつての船の記憶を呼び覚ますのか、まるでスケートで滑るかのごとく海上を走り回っている。しかしよく見えないその表情は悲壮感すら漂わせているような気がした。
二人の決死の思いに中てられたのか、おろおろするばかりだった横島にもわずかばかりの男気らしきものが湧いてきた(ような気がした)。
「お、俺にもなにかできることが」
「しいて言えば危ないので避難するのです!」
さすがの横島も戦う少女たちを目の前に置いて逃げる選択肢を取ることができる程の外道ではない。
「くそ、さっきの機械に霊力を吸われたせいで文珠は1個が限界だし、何か、何かないか!?」
周囲をぐるりと見渡すと、打ち捨てられた小舟が目に入る。
「電! あの船を曳航することはできそうか?」
「ええ? は、はいなのです、あれくらいの小舟なら……」
「ううう、やりたくねーけどこれっきゃねー!」
涙目になりながら自分を鼓舞する横島と、横島が何を言い出したのか分からない電。
そして舞台はパラオ泊地近海へと移る。
「やだ、痛いじゃない!」
大井の左側面をイ級の5inch単装砲弾がかすめる。
直撃こそ避けたものの、これまでの微小ダメージが重なり既に一張羅のセーラー服はボロボロに崩れていた。艦娘の支給制服は本人のダメージを肩代わりする仕様となっており、一定のダメージ以下ならば身代わりになってくれる一種の反応装甲となっている。
しかしそれもここまでダメージを受けてしまうと次はない、いよいよ轟沈の二文字が脳裏に浮かぶ。
「っ、まだよ!」
回避運動でずれた二門の照準を修正し直し、渾身の一発をお見舞いする。
しかしイ級の耐久力も侮れないもので、蒼い体液をまき散らしながらも大井に急接近する。
「まさか、体当たりっ」
海上へと跳躍したイ級と視線が絡み合う、イ級に人語を理解する知能があるならば、まさに死なば諸共といったところだろうか。
瞬間。
「伏せろっ、大井ぃぃーーー!!」
聞こえるはずもない横島の声に反射的にしゃがみこむ。
そこへ炸裂するのは【爆】の効果を刻まれた文珠!
「うわぁぁっ、近すぎたーー!?」
電に曳航されてきた小舟ごと吹っ飛ぶ横島。
「大井さん! 助けに来たのですっ」
「電、アンタ、それに横島も」
爆炎が晴れていく視界の先では、見事に仕留められたイ級が沈没していくところだった。
「大井さんがご無事でよかったのです、うわぁぁん!」
電に抱き着かれながら、水上にへたり込むという艦娘ならではのしぐさを見せる。
「今のは一体……」
「横島さんの必殺技なのです! って、あ、横島さんは!」
「沈む! 沈む! 早く助kt(ごぼごぼごぼ」
「横島さんーー!?」
どうやら横島の何か知らの機転で助けられたらしいことを悟る。
「……ふん、変な奴なのに、やるじゃない」
小舟が沈んでしまい、大慌ての電に背負われて帰ることになった格好悪い横島を見ていると、不思議と笑みが零れてくる大井なのであった。
これにて第一章完です。
続きはなんとか近日中に……!
建造で誕生した艦娘は…?
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響